近年、あらゆる業界においてデジタルトランスフォーメーション(DX)が推進されている。司法分野も例外ではなく、「2割司法」という言葉で揶揄されるほど人々にリーガルアクセスが確保されていない現状を改善するため、民事裁判手続きのIT化を政府が推進しているが、完成は早くても2025年とされているという。一方で政府は、裁判外紛争解決手続き(Alternative Dispute Resolution=ADR)のオンライン化(ODR)にスタートアップの参入を促すことでリーガルアクセスの改善に弾みをつけるため、2019年度以来3年連続で「成長戦略フォローアップ」の重要施策としてODRを位置づけ、現在は法務省に設置された「ODR推進検討会」において、広くODRを社会実装するための政策について議論が交わされている。
このような政府の後押しを背景として、ミドルマンはユーザー本位の視点から法的紛争解決のあり方をリデザインし、ユーザビリティの高いリーガルサービスを提供するため、チャットによる本格的なODRシステム「Teuchi」を開発し、時間や場所の制約を受けることなく、スマホひとつで法的トラブルを解決することができる手続きを実現し、2020年1月からシェアリングエコノミー領域で実証実験を開始し、2020年9月には「Teuchi for 敷金」、2020年12月には「Teuchi for 離婚」をリリースした。
ミドルマンは2020年3月にシードラウンドでの資金調達を実施し、コロナ禍を追い風とした国内のODR社会実装をリードしてきたが、新型コロナウィルスと社会との調和にはもう少し時間がかかることを考慮すれば、このような状況はODRの社会実装をもう一段加速させるための千載一遇のチャンスであり、ここでアクセルを目一杯踏み込んで事業を推進するためには更なる資金調達が必要との経営判断に至ったという。
今回の新日本法規出版からの資金調達により、ユーザーの利便性向上に向けた「Teuchi」の機能強化および新たな対象領域向けサービス開発を進めるための開発およびマーケティング体制を強化する。併せて、Win-Winの解決を目指すエンジン開発ためのR&D部門を立ち上げる。なお、ミドルマンはADR認証取得を予定しており、現在、法務省による最終審査を受けているところで、今後、シリーズA調達に向けた準備を開始する予定だという。
新日本法規出版は、1948年の創業以来、法律関係書籍を中心とした出版事業を通じて信頼のおける法律情報を提供しており、近年は、イノベーション創出を推進し、新しいアイデアやテクノロジーを活用した法律実務サービスの開発・提供に取り組むため、自社でアクセラレーションプログラムを実施し、積極的にリーガルテック系スタートアップに資本参加するなど、既存サービス領域に囚われないチャレンジを続けているという。今回の新日本法規出版とミドルマンの基本合意は、ODR領域における業務提携に向けた検討を進めるためのものであり、両社の知見とネットワークを最大限に活かせるODR関連サービスの開発に共同で取組む予定だ。両社は協業を通じて、SDGsやsociety5.0によるリーガルアクセス改善の社会的要請に応えるため、共に司法のDXを更に加速させ、ユーザビリティの高い新たなリーガルインフラサービスとしてのODRの社会実装を推進することで、紛争解決のデジタル化およびオンライン化を実現し、ビジネスとしてのODRを成立させるとともに安心安全な社会構築を目指すとのことだ。