HRテックが普及している背景とは?有効活用するためのコツも紹介

近年、企業の人材管理や採用業務にかかる負担をテクノロジーで軽減させる「HRテック」に注目が集まっています。ここでは、HRテックがどのようなものか、導入することでどのような効果が得られるのかを説明するとともに、具体的なサービス例を紹介します。

近年、少子高齢化の影響により、人材不足が深刻化している企業が増えていることが問題視されています。限られた人材で従来通り成果を出し続けるのは難しいため、何らかの対処をしなければならない企業は増えていくでしょう。

そのような時代の中で、人材管理や業務の効率化をテクノロジーで推進させる「HRテック」に注目が集まっています。HRテックの導入によって事業を健全化できると期待されていることから、今後は多くの企業で導入が進むかもしれません。

今回は、HRテックに焦点を当てて、導入により期待できる効果やうまく活用するためのコツを説明するとともに、具体的なサービス例も紹介します。

そもそもHRテックとは?

HRテックは、「Human Resource(人材・人事)」と「Technology(技術)」を組み合わせた言葉で、ビッグデータ解析やAI、クラウドなどの最先端技術を活用して人事課題を解消させることをいいます。

欧米では、以前からHRMS(Human Resource Management System)のように人材管理にシステムが活用されていましたが、終身雇用が一般的であった日本ではあまり普及していませんでした。しかし、近年は、働き方改革が推進されたり労働力の不足が問題になってきたこともあり、教育や金融、農業やファッションなど、さまざまな分野にテクノロジーが導入されるようになりました。人材管理の分野でも、テクノロジーを導入する動きが活発化してきていることから、今後はHRテックがさらに普及していくと考えられます。

HRテックが急速に普及した要因

近年、HRテックが急速に普及した要因として、次の3つが挙げられます。

・スマートフォンやタブレットの普及
・データ分析のテクノロジーが向上した
・さまざまなシステムがクラウド化している

以下では、HRテックが急速に普及した要因について掘り下げて説明します。

スマートフォンやタブレットの普及

1つ目の要因として、スマートフォンやタブレットの普及が挙げられます。

従来も人事向けのソフトウェアは多数開発されていましたが、多くは一般従業員を対象にしたものではありませんでした。しかし、最近は、スマートフォンやタブレットを利用して、従業員1人ひとりが情報を直接入力できるツールがいくつも開発されています。効率的に管理できるようになるため、今後はこのようなツールの導入がさらに普及していくと考えられます。

また、スマートフォンやタブレットを利用すれば、正確なデータをリアルタイムに集約することも可能になります。以前は口頭や書面、メールなどで伝えていた、申し送りや人事評価のフィードバックなどの情報もタイムリーに伝えられるようになるので、より効果的な人材管理をおこなえるようになります。

データ分析のテクノロジーが向上した

2つ目の要因として、データ分析のテクノロジーが向上したことが挙げられます。

企業の規模が大きくなるほど、取り扱う従業員のデータは膨大になります。情報収集の方法も、口頭や書面だけでなく、メールやスマートフォン、ウェアラブルデバイスや勤怠データなど多岐にわたるため、「集めた情報をうまく分析できない」と悩む企業も増えてくるかもしれません。

しかし、近年、AIや機械学習などのテクノロジーが普及してきたことで、ビッグデータを手軽に活用できるようになっています。これらを利用することで、従業員のデータをただ蓄積するだけでなく、意思決定や企業の将来性を予測するなど、さまざまな場面に活用できるようになると期待されています。効率的に成果を出せる事業運営をするためにも、テクノロジーを活用する企業は増えていくでしょう。

さまざまなシステムがクラウド化している

3つ目の要因として、さまざまなシステムがクラウド化していることが挙げられます。

従来のHRテックでは、「オンプレミス型」といって、まずソフトウェアのライセンスを購入し企業内にサーバーを設置、そのうえで人材管理をおこなう方法が主流でした。しかし、最近はクラウド上で人材管理できるソフトウェアが普及してきたため、導入コストを抑えつつ手軽に人材管理できるようになっています。

クラウド型のHRテックには、データ移行やバージョンアップなどの手間を抑えやすくなるというメリットもあります。スタートアップ企業でも簡単にHRテックを導入できるできます。

HRテックの活用で期待できる効果とは?

実際にHRテックを活用すると、どのような効果が期待できるのでしょうか?

以下では、HRテックの活用で期待できる効果を具体的に説明します。

社内コミュニケーションの活性化

HRテックには、ビデオチャットやビジネスチャットなどのツールが含まれています。IT技術の導入が進むと対面でのコミュニケーションがおろそかになってしまうと思われがちです。しかし、ツールをうまく活用すれば、場所が離れていてもタイムリーなコミュニケーションが可能になるため、そのような不安を解消しつつ、より円滑に仕事が進むようになると考えれられます。

HRテックを活用すれば、口頭や書類のやりとりで起こりがちなミスを防ぎやすくなります。

効率的な業務を推進させられる

HRテックを活用すると、給与計算や勤怠管理、従業員の労務管理などの定型業務を効率化させることも可能になります。これまで手作業でおこなっていた業務を自動化させられれば、業務負担を大幅に軽減できるでしょう。

また、業務を自動化すれば、人的ミスも防げます。どこを間違えたのかをチェックする業務が不要になるので、より生産性の高い仕事ができるでしょう。自動化によって作業が効率化すれば、長時間労働や休日出勤などの問題も軽減できるので、健全な事業運営につながると期待できます。

適正な人材管理が可能になる

これまでは人事担当者の経験や勘で判断していた人材採用や評価といった業務も、HRテックを活用すればデータに基づいた客観的な情報をもとに判断できるようになります。従業員のデータをAIで分析すれば、1人ひとりが持っている特性や能力を活かした業務の割り振りも可能になるでしょう。

人材を適正に見極めながら効果的な配置や育成ができれば、それぞれの能力を活かして仕事の生産性を高められると期待できます。従業員も、客観的なデータに基づいて公平に人材管理してもらえていると実感できれば、仕事に対して前向きな気持ちを持ちやすくなるでしょう。

離職率の改善が見込める

離職率の高さを問題視している企業は多いですが、HRテックを活用すれば、過去の離職データを参考にして有効な対策を講じることが可能になります。

たとえば、離職する可能性が高い人材を早期に発見したり、勤務地や給与などの条件を変更することで離職率がどのように変化するかをシミュレーションすることが挙げられます。人間関係の相性の分析をすれば、適正な人員配置を考える材料にすることもできるでしょう。

HRテックを有効活用するためのコツとは?

企業に導入することでさまざまな効果が期待できるHRテックですが、うまく活用できなければ思ったような効果を得られないかもしれません。HRテックを有効活用するコツとして、次の2つが挙げられます。

・HRテックを導入する目的を明確にする
・HRテック人材を確保・育成する

HRテックにもさまざまな種類がありますが、これらのコツを意識してHRテックの導入に取り組めば、企業が抱えている課題を解消しやすくなるでしょう。以下では、HRテックを有効活用するためのコツについて詳しく説明します。

HRテックを導入する目的を明確にする

「HRテックを導入すれば人材管理がスムーズになる」と思われがちですが、システムを導入するだけで企業が抱える課題を解決することはできません。HRテック導入による効果を高めるためには、まず企業が抱える課題にはどのようなものがあるのか、どのような状態になれば課題が解消されたといえるのかを考えましょう。目的を明確にしてからHRテックの導入を進めることがポイントです。

また、HRテックにもさまざまな種類があるので、目的が明確化していないと適したツールを選べません。企業の課題を解消するためにはどのような機能が必要なのか、ツールが企業の業務に適用しやすいかを考えやすくするためにも、なるべく具体的に目的を考えておきましょう。

HRテック人材を確保・育成する

HRテックを導入しても、データを入力したり、分析した結果を判断するなどの業務は人間がおこなわなければなりません。場合によっては、企業の方針にあわせてツールをカスタマイズする必要性も出てくるでしょう。

HRテックを企業に最適化させるためには、HRテックに関する知見を持った人材が不可欠です。HRテックを扱える人材を積極的に採用したり、HRテックに関する研修会を開催したりすることで、ツールをより効果的に活用できるようになるでしょう。

求人や採用におけるHRテックのサービス例

HRテックにもさまざまな種類があるため、実際にどのようなサービスが提供されているのかをイメージしにくいかもしれません。

以下では、求人や採用におけるHRテックのサービス例を紹介します。

Wantedly

Wantedlyは、やりがいや職場環境などの面で企業と求職者をマッチングするSNSサービスです。一般的な求人のように、給与や待遇などの条件で企業と求職者を結びつけるものではないため、企業は優秀な人材を確保しやすくなり、求職者は自己実現をしやすくなると期待されています。

具体的な職種としては、エンジニアやセールス、マーケティングやデザイナーなどIT人材が多い傾向があります。求職者は企業に気軽に話を聞きに行くことができるので、一般的な採用手順のように募集要綱に基づいて履歴書などを送付するといったハードルの高さを感じにくいのが魅力です。

HARUTAKA

HARUTAKAは、WEB面接を可能にするHRテックです。時間や場所にとらわれることなく企業と求職者が面接できるので、地方に住んでいる人や海外居住者ともオンラインで面接を進められます。

また、動画選考を導入することで、履歴書などの書類からは読み取れなかった求職者の様子を把握することも可能となります。ライブ面接やエントリー動画を録画する機能もついているので、面接担当者以外の人と情報共有すればより企業のニーズとマッチした人材を確保しやすくなるでしょう。応募者の情報をデータベース化することもできるので、応募から採用までの一連の流れを一元管理して採用業務の負担を抑えられるのも魅力です。

人事管理に関するHRテックのサービス例

HRテックは採用の場面だけでなく、人事管理にも導入する企業が増えています。

以下では、人事管理に関するHRテックのサービス例を紹介します。

カオナビ

クラウド型の人材管理システムの「カオナビ」は、従業員が得意とする業務や過去の評価、思考の傾向などの情報を一目で把握できるツールです。従来の人材管理では把握しきれなかった従業員1人ひとりの能力や経験、特性などの情報を知ったうえで戦略的にマネジメントできるので、より効果的な人材管理が可能になると期待できます。

また、カスタマイズ性にも優れています。企業のニーズにあわせて人材情報を適切にデータベース化してくれるので、ツールを業務に活かしやすくなります。メールや専用サイトからの問い合わせなど、サポート体制も充実しているので、ツールの利用に関して困ったことがあればスムーズに対応してもらえます。

HRMOS CORE

HRMOS COREは、株式会社ビズリーチが提供しているクラウド型の人材管理ツールです。点在的になりがちな従業員情報を一元管理できるため、現状の把握と分析が容易になるのが魅力です。

また、直感的に使用できるユーザーインターフェースのよさも魅力。ツールに慣れるまでに時間がかかりにくいため、従来の業務からスムーズに移行できると期待できます。目標管理や評価もシステム内で完結させられるので、上司や従業員の負担も大幅に軽減できるでしょう。

労務管理に関するHRテックのサービス例

HRテックは、労務管理にも活用が進みつつあります。HRテックで効果的な労務管理ができるようになれば、人材管理の負担を抑えやすくなるとともに、従業員のモチベーションアップにもつながるでしょう。

以下では、労務管理に関するHRテックのサービス例を紹介します。

KING OF TIME

KING OF TIMEは、パソコンやスマートフォンなどを利用して勤怠管理をおこなうツールです。インターネットさえつながっていればどこからでも情報を入力できるので、オフィスを離れて仕事をする営業スタッフやリモートワーカーにうってつけです。つかいやすいユーザーインターフェースになっているので、ITツールが苦手の従業員でもスムーズに活用できるでしょう。

また、企業の就業規則に沿って、有給休暇や残業時間などを計算することも可能です。従来は口頭や紙媒体でおこなっていた各種申請もツール上でおこなえるようになります。法改正への対応が無料だったり、サポート体制やセキュリティ面の充実度も高かったりと、サポート面も充実したツールです。

バイバイタイムカード

バイバイタイムカードは、タイムカードやタイムレコーダーなどを使用して管理されている出退勤情報の記録や集計を自動化するツールです。クラウド型のサービスとなっているため、導入や運用が簡単なのが魅力です。

導入する際は、専任のコンサルティングチームが企業のニーズを入念にヒアリングしてくれるため、企業の就業規則に沿ったシステムにすることができます。ホテルや旅館業、運輸や倉庫業、流通やサービス業など従来の方法では勤怠管理が難しかった業種でも、適切に勤怠管理できるようになると期待されています。

まとめ

ここでは、HRテックの概要や導入によって得られる効果、導入する際のコツや具体的な導入事例を説明しました。

HRテックにもさまざまな種類があるため、業種や企業が抱えている課題によって導入すべきツールが変わってきます。ここで説明した内容を参考にして、今後どのようなHRテックを活用するのが望ましいかを考えられるようにしておきましょう。

Article Tags

Special Features

連載特集
See More