マネジメントをテクノロジーで変革する。 国内外から注目を集めるHR Tech「KAKEAI」とは。

少子高齢化による労働人口の減少や働き方の多様化により、企業はより一層の業務効率化が求められている。そんな中、期待されるのが人事領域をテクノロジーで変革するHR Techだ。

HR Techスタートアップとして国内外から注目を集めるベンチャー企業に、株式会社KAKEAIがある。彼らが提供する「KAKEAI」は、コミュニケーションをの“質”を改善するクラウドサービスだ。

マネジメントにデジタルを活用することで生まれる効果とはどのようなものなのか。特にAI技術はどう貢献していくのか。同社代表取締役社長CEO本田 英貴氏にお話を伺った。

テクノロジーでマネジャーをサポートし、コミュニケーションの“質”を改善する

―まず、「カケアイ」の概要を教えてください。

カケアイはマネジャーをサポートし、マネジメントにおけるコミュニケーションの“質”を改善するクラウドサービスです。現場のマネジャー次第で、生産性・業績・エンゲージメントに大きな変動があるとも言われます。退職理由の「本音」でも「上司との関係」は常に上位です。現場マネジャーは、企業と従業員をつなぐキーパーソンです。それにも関わらず、現場のマネジメントは一向に属人的なままであり、マネジャーの個人力に委ねられ続けています。そのような状態をテクノロジーによって解決するために生まれたのが「カケアイ」です。


カケアイにはマネジャーをサポートする機能が複数あります。例えば、メンバーとの面談をサポートする機能、メンバー同士の同僚に対する気づきを拾い上げる機能、一人ひとりへの最適な関わり方がアウトプットされるアセスメント機能などです。

基盤になっているのは、「上司はどういう特徴の人なのか、部下はどういう特徴の人なのか、上司は部下に何をして、それが部下の役に立ったのか、それともそうでなかったのか」等のファクトを集め、上司や部下に適時適切に提供することでより良いメンバーマネジメントを促すというアプローチです。

―シーンとしては1on1での利用が多いのでしょうか。

おっしゃる通り1on1や頻度の高い面談におけるコミュニケーションの基盤ツールとして利用されるケースは多いです。上司と部下の掛け違いはさまざまなシーンで生まれるものですが、例えば1on1では、部下側は「上司から1on1をしようと言われるが、話すと期待と全く違う対応ばかりでげんなり…」、上司側は「相手の様子や、期待されていることをさぐりさぐりで話してはいるが、どうも伝わっていない感じがする…」といったケースがよくあります。

例えばカケアイを使うと、部下はマネージャーに、前もってその日に何を話したいのか、どんな対応をして欲しいのかというアジェンダをとても簡単に伝えておくことができます。マネージャーにとっては、相手である部下が「具体的にアドバイスを求めているのか、話を聞いて欲しいだけなのか、一緒になって考えてほしいのか、ただ単に報告したいだけなのか…」ということを掴むことすら難しいものです。それを事前に把握しておけるだけでも1on1の時間を有効に活用することができます。たったこれだけでもお互いにとって有効なわけですが、カケアイではアジェンダに合わせて、うまく会話をするためのコツが自動的にレコメンドされます。これは、自社だけではなく他社も含めた世界のマネジャーが実際に部下に対してとっている行動の中から自動的に生成されるものです。例えば「途中で口を挟まずまずは全ての話をしっかり聞き、最後に意見を伝える」とか「自分の経験談は求められた時だけ話す」「腕組みをしないできちんと目を見てしっかりうなずく」という具体的なものです。

現在、カケアイを導入いただいている企業の業種業態や規模はさまざまです。

どのような効果がみられるかを検証するため、敢えて、カケアイを使うチームと使わないチームをつくり、成果を確認させていただくケースもあります。毎月の効果測定の結果、カケアイを使っているチームの方が業績が上がったり、離職率が下がるといった結果も出ています。

また、定性的には、マネージャーの方々から部下とずれを感じなくなったと言う手応えや、他のマネージャーがやっていることを見て刺激を感じたという声をいただいています。一方、メンバーの方々からは、きちんと自分を見てくれていると感じるようになったといった声も上がっています。

マネジメントに悩み、鬱になった経験から生まれたサービス

―サービス立ち上げまでの経緯を教えてください。

私は元々リクルートで人事をやっており、中間管理職がいかにメンバーの力を引き出し、組織パフォーマンスを高められるのかをテーマにした領域を担当していました。例えば、人事がハブになり、マネジャーに「部下の○○さんはこんな人だから、こんな時にはこうすれば良いのでは?」とアドバイスしたり、マネジャーの皆さんに他者のやり方を伝えるのも仕事でした。人材育成のための会議や、管理職向けの研修などさまざまな取り組みを進めましたが、当然、最終的な現場でのコミュニケーションはマネジャーの個人の力に任せるしかありません。また、人事異動も担当していました。この人をこちらに配属すればより良い成長や、組織成果に繋がるのではないか、といったことはデータの上では予測できますが、現実の人事異動とはそう綺麗に進むことはなく、人を出す側の都合や受け入れ候補側の都合、市況等々のさまざまな要因によって異動先を決めざるを得ません。そんな仕事を通じて、人がどこで誰と働くか、そして日常を素晴らしいものにできるかどうかは、結局のところ「運」の要素が非常に大きいと感じていました。

そんな中、サービス立ち上げの転機になったのは自分自身の360度評価の結果でした。私自身、管理職としてメンバーのマネジメントを行っていたわけですが、人事として多くのマネジャーのさまざまな知見に触れていたこともあり、自分のマネジメントに自信を持っていました。ところが、メンバーからの無記名のフィードバックには「あなたには、誰もついていきたくないって知ってます?もっとマネジメントを学んだ方がいいのでは?」と書かれていました。

ショックが大きすぎて、本当に目眩がしました。自分宛のフィードバックではないのではないかと何度か確認もしましたが、自分宛のものに違いありませんでした。それでも冷静になり、受け止めながら仕事をしていたのですが、メンバーにとても気を使うようになり、組織としての業務量は減らないにも関わらず、業務を一人で背負うようになりました。そんなある時、眠れなくなることが続き、さらに頭痛が激しくなりました。病院に行くと重度の鬱だと診断され、それから3ヶ月ほど休職することになりました。

休職中、仕事人生が終わったようなどん底の気持ちから少しずつ自分のこれまでについて考えられるようになっていく中で、マネジャーとしての言動を振り返り、自分自身はメンバーに対して「ただ単に自分がされて嬉しいことをしていただけで、相手にとっては逆効果」だったということに気づかされました。それこそ「運」でたまたま自分のメンバーになったことで、ひどい日常を過ごさせたり、人生を狂わされた人もいるということに、とてつもなく申し訳ない気持ちになりました。

自分のようなダメなマネジャーも、困っているマネジャーも世界には大勢いて、何よりそれによって困っているメンバーも大勢いる。言いようのない懺悔のような気持ちの中で構想したのが、マネジャーをサポートし、コミュニケーションの“質”を改善することで、マネジャー個人の経験や勘という個人力に依存することが招く非生産的な状況を変えるというカケアイです。

リモート環境下でマネジメントに求められること

―新型コロナウイルス感染症の影響で、リモート勤務が推奨されています。今の状況がメンバーマネジメントのあり方にどのような影響を与えるのか教えてください。

仕事の依頼の仕方、評価の仕方、部下側のコンディションの問題などの変化への対応の必要性は、さまざまなところで語られ始めていますが、今後、マネジメント層自身のメンタリティが引き起こす問題がより一層表面化していくと思います。

リモート勤務が進み、現場のマネジャーの皆さんからは実際にこのような声をいただくようになっています。
「部下がリモートでサボっているように感じイライラする」
「仕事柄、アウトプットを示しづらいので、自分がどう見られているか不安」
「踏みこんだ会話ができずストレス」

ただでさえ、上司と部下は掛け違いやすいものであるにも関わらず、部下の様子が見えないことで、疑心暗鬼・不安・攻撃性等が表出しやすい状況に陥り、ズレやすい状態を上司側が自ら生み出してしまいがちです。さらに、リモート状態ではコミュニケーションのズレをリカバリーするのは難しく、より一層拡大してしまいがちです。

対面を織り交ぜながら、質の高いコミュニケーションや信頼関係を担保し、マネジメント層側が自滅していかないという視点が非常に重要だと思います。

マネジメントの役割は「管理」から「支える」へ

―今後の展開を教えてください。

新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークが急速に進んだことにより、私たちが5年後にイメージしていた世界が突然訪れたという感覚です。出社前提の時代に比べ企業の求心力が相対的に落ちる中で、企業と従業員の結節点である現場のマネジャーの重要性はより一層増します。その意味でも、よりマネジャーをサポートできるサービスが求められると思っています。サービス開発のスピードを上げ、より一層お役に立てる状態をつくります。

―リモートワークが急速に進んだこともあり、今後ますますメンバーマネジメントの領域においてもデジタル化が進んでいくと思います。マネージャーの役割はどう変わっていくと思いますか。

まず、これまでのように、対面だからこそ機能しやすかった「立場」というものの価値が圧倒的に下がります。マネジャー自身が、ファクトやデータを元にしながら、いかに適切なタイミングで適切に関わりメンバーを支えることができるか、それ自体がマネジャーの役割であり力の差が出る部分になると思います。

マネジャーの重要性は高まり続け、役割も大きく変わる。まさに、コロナ禍において最も変化が求められている仕事かもしれません。デジタルの力も活かしながら、新しい基準で自らの力を構築し直すことが必要だと思います。
株式会社KAKEAI のHPはこちら
https://company.kakeai.com/

Article Tags

Special Features

連載特集
See More