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DX・カーボンニュートラル・量子コンピューティング。「人と、地球の、明日のために。」東芝ができること。東芝 島田太郎新社長×立教大学ビジネススクール田中道昭教授【後編】

2022年3月に東芝の代表執行役社長 CEOに就任した島田太郎氏。デジタル分野のトップを務めた島田氏は、「東芝でデジタルが分かる初めての社長」として就任時から大きな注目を集めています。昨年開催された「Digital Shift Summit 2021」では「日本企業がデジタルシフトでGAFAに打ち勝つ方法」というテーマの鼎談に立教大学ビジネススクールの田中道昭教授と、デジタルホールディングス代表取締役会長の鉢嶺登氏とともに参加し、東芝および日本企業の未来についての展望を語っています。

島田氏は、日本を代表する企業である東芝でどのような事業を強化し、どう舵取りをしていくのか。東芝の考える顧客中心主義とは? 東芝の技術はカーボンニュートラルにどう寄与するのか? 島田社長が抱くビジョンに迫ります。

後編は東芝の「人と、地球の、明日のために。」という企業理念に込められた思い、島田社長の考えるリスキリングのあり方、量子コンピュータの持つ可能性などについてお話をうかがいます。

顧客の欲望を満たすより、「人類の未来への貢献」を優先

田中:島田社長のお話で鍵になるのは、顧客個人がどう思うかという点です。私は経営者が話すときに、どんな言葉を多用しているかに着目していますが、アマゾンのジェフ・ベゾスは「カスタマー(顧客)」という言葉をよく使います。彼は「カスタマー・セントリック(顧客中心主義)」を「顧客の声を聞き、イノベーションを起こして発明し、カスタマイズする(Listen, Invent, Customize)」の3つで定義しています。

島田:「カスタマー・オブセッション」とよく言っていますね。

田中:マイクロソフトのサティア・ナデラCEOも、企業文化として「成長マインドセット」(※1)の次に、「カスタマー・オブセスド(顧客の声に耳を傾ける)」ことの重要性に触れています。ジェフ・ベゾスもサティア・ナデラも顧客の声に耳を傾けるという謙虚な姿勢が成長マインドセットであると述べています。GAFAMの経営者の方が個人や人間、顧客を見ている一方で、日本の経営者はいきなりデータの利活用やプラットフォームの話になってしまいます。どうすれば顧客個人と向きあえるようになるのでしょうか?
(※1)「Growth Mindset」の訳。スタンフォード大学教授でありキャロル・ドゥエック氏が提唱した、成長するための思考のこと。サティア・ナデラCEOは、マイクロソフトの企業文化を変革するためにこの概念を取り入れており、マイクロソフトのカルチャーの一つとして提示されている。

島田:東芝とはどういう会社なのかというと、企業理念である「人と、地球の、明日のために。」という言葉どおりの会社です。私は「カスタマー・オブセッション」のような考え方には少々疑問を持っています。カスタマーの欲望を満たせばいいのか、それは果たして人のためになっているのでしょうか。資本主義の影を強く感じることがあります。

田中:確かに、その世界に閉じ込めてしまう一面もあるかと思います。

島田:そのような一面を少し感じるのです。そういう企業が成功している側面もありつつも、製品を多く売ることやお金を多く使ってもらうことが本当に正しいのかどうか。それは東芝のカルチャーとは違います。僕はそれを大切にしたいと思っています。例えばソニーは高級なおもちゃ会社で、洗濯機などの家電はつくりません。皆が面白いと思うものを作る会社で、これは素晴らしいことだと思います。パナソニックは二股ソケットに代表される、人々の生活を楽にさせる、生活に役立つ商品をつくっています。

では、我々はどうか。「人と、地球の、明日のために。」という理念どおり、世の中に全くないものを作り出して、人類の未来のために貢献することにスイッチが入る人が東芝には多くいます。そういう観点で見ると、データビジネスなどはいやらしいビジネスのようにも見えます。ですから、それは本当に人と地球のためになっているのかを毎回聞くようにしています。人の欲望を利用して成長するビジネスとは違うビジネスの形です。僕はそのほうがビジネスとしてサステナブルだと思っています。そういうマインドを持っている日本企業の人は多い。そこをもう少し掘り下げて考えていけば、突破口はあるはずです。諦めていたことが突如として輝く時代が来るはずです。例を挙げると東芝には異常な人が多いんです(笑)。

田中:異常といいますと?

島田:例えば、インフラを皆で使えるようにするために専用のOSではなくて、Linux(リナックス)を用いています。リナックスで運用しようとするとさまざまな問題も出てきますが、コストは安く、安定していて、顧客のためにもなります。儲けることよりも人のためになるかどうかを考えます。

ただ、リナックスには脆弱性があります。その問題を解決するためにOSを書き替えて、皆のインフラとして使えるようオープンにしました。普通の企業であれば儲からないことをやっていたら注意されますが、東芝では文句をいう人がいないどころか、むしろ賞賛されます。同じような例はまだあります。SQL(※2)はオラクルが世界中に普及したので、SQL自体のローエンドコードを書ける人がアメリカにはほとんどいないらしいのです。しかし我々は、IoT専用に世界最高レベルの「GridDB」というデータベースをつくりました。

ただ、そのままだと皆が使えないのでSQLで呼び出せるように、一からSQLのコードを書きました。そこまで手間をかけたらオーバーヘッド(※3)が発生するものですが、一からコードを書いているので大丈夫なのです。多分、アメリカで同じことができる人はほとんど残っていないと思いますが、我々の会社にはできる人がいます。これまでは、プラットフォームの上にプラットフォーム、プラットフォームの下にプラットフォームをつくるというレイヤー構造でした。今、あまり注目されていないレイヤーに新たなプラットフォームを出現させることができれば勝機はあります。
(※2)データの操作や定義を行うためのデータベース言語。
(※3)コンピュータの処理時に発生する負荷のこと。


田中:別のレイヤー構造をつくるという発想ですね。

島田:新しい構造をつくるにはオープン化しないといけません。かつ、どこでクローズの部分を持つのかということもはっきりさせないといけません。そういうシステマチックな思考が多くの日本企業には欠けていて、直接的なソリューションをつくってしまう。それをやめれば勝てると思います。

田中:「人と、地球の、明日のために。」というレイヤー構造をどうつくるか。それに尽きるということでしょうか。

島田:そうですね。ただ、レイヤー構造は常にモジュラー型(組み合わせ型)で更新されるものです。レイヤー構造をつくるアプリの構想もあるので、できれば会社を辞めて、僕個人でつくりたいと思っています(笑)。

田中:そこはコンフィデンシャルな話ですか?

島田:そんなことはなくて、いくつもアイデアはあります。なにか不便だなと思ったとき、ここにレイヤーをつくれば一気に楽になることはよくあります。僕がいいたいのは、そういった訓練を普段からすることが極めて大事ということです。決められた範囲内で最適の解を出そうとするのではなく、ゲームのルールを変えるという視点です。

全体を俯瞰して捉え、自ら役割を問い直すリスキリングが重要

田中:今、日本でも「リスキリング(※4)」という言葉が注目されていますが、島田社長が在籍されていたシーメンスのあるドイツはリスキリングの先進国ですね。なかでもボッシュのような会社が最先端だと思います。ボッシュのリスキリングを分析してみると、産業のリスキリング、事業のリスキリング、社員のリスキリングを三位一体で進めていることが分かりました。産業と事業のリスキリングを定義できるような人材をリスキリングする。これが重要だと思いました。
(※4)DXや技術革新での変化に対応するため、新たなスキルを学ぶこと。

島田:それをシステム思考といいますが、システムエンジニアリングの考え方はケネディ大統領が主導した月面着陸計画(アポロ計画)の時代につくり出されたものです。ゴールにたどり着く手段はいくつも考えられるけれど、最もよい方法はどれかを考え出す。目的がはっきりしてきたとき、これはハードウェアにやらせるべきかソフトウェアにやらせるべきか、むしろやらない方がいいのか、といった具合に全体のシステムとして考えることが極めて大切であり、その思考訓練が重要だと考えています。

具体例を挙げますと、私は以前、飛行機の設計をしていました。そこには東大を卒業した優秀な人間がたくさんいましたが、最も目立っていたのは「鳥人間コンテスト」に出場した経験のある人でした。鳥人間コンテストでは全体を取りまとめる必要があります。飛行機も巨大なシステムですから、一つのプロダクトというより、一つのシステムをつくり上げる必要があります。ものの見方がぜんぜん違う。頭がいい、悪いの問題ではないのです。

田中:確かに飛行機の製造だったら分業になるところを、鳥人間コンテストでは数人ですべてを考える必要がありますよね。

島田:チーフエンジニアはすべてのことを頭に入れていないと務まりません。そのような規模で全体を俯瞰して考える訓練が極めて大事になります。それをカスタマージャーニーに置き換えてもいいわけです。システム的に俯瞰的に見ているということですから。今、自分がやっていることから離れて、高いレベルでコンセプチュアルに見て、その中でなにをすべきか考え直す。このリスキリングが一番大事だと思います。

田中:本当にそれがリスキリングですよね。ケネディの月面着陸という目標設定の話が出ましたが、人間は目標設定されると自分で考え始めるわけですよね。島田社長は元々、細かい説明ではなく方程式を示すという話をされています。宇宙の話といえばイーロン・マスクですが、私は彼もベンチマークしています。イーロン・マスクは車を車と思わず、工場を工場と思わずに進化させてきました。工場をマシンをつくるマシンと捉えているわけです。彼のいう物理学的思考の工場版とは、「アウトプット(生産台数)=ボリューム(生産規模)×密度(サプライヤーを含めた生産拠点の稠密性)×速度」といった方程式です。この考え方で成長させてきた製造業の経営者は今まで皆無だったと思います。対して、島田社長の方程式はどのようなものでしょうか?

島田:社内で示しているのはもう少しコンセプチュアルな「DE(Digital Evolution)・DX(Digital Transformation)・QX(Quantum Transformation)戦略(※5)」というものです。デジタル化を分解して考えると、目の前の顧客のサービス化を進めるのがDEです。対して、DXの私の定義は、顧客をマルチのカスタマーにしていくことです。つまり直接の顧客からお金をいただかずに、他の人からお金をいただく。この方程式を皆に示したら数百以上のアイデアが出てきてて、すでに50以上のプロジェクトが走っています。それらが完成してくると、2025年あたりから利益率が上がりまったく違う世界に変わっていくと思います。
(※5)QXにより量子コンピュータが実現すると、従来のコンピュータでは困難だった領域の計算や、巨大な空間での最適化ができるようになると期待されている。

田中:DE・DX・QXに分解したことで道筋が見えたということでしょうか。

島田:そうですね。やはり一番の問題は、自分で自分の仕事をここまでと、決めてしまっていることです。デジタルの製品は価格も安くなりがちですが、サブスクにしたりサービス化したりすることで大きな違いが生まれます。そうすることでお客様の情報を得ることができますから、次の提案も大きく違ってきます。どこに線を引くのかを根本的にやり直したことが重要なポイントです。

東芝が目指すのはCO2排出量をマイナスにする「カーボンネガティブ」

田中:今年の6月に発表された東芝グループの経営方針では、非常にアグレッシブな数値目標を出していたことが印象的でした。日本の小売業は昨対超えを狙い苦労していますが、もちろんそれは大変であるものの、グーグルでいうところの10倍を狙うムーンショットのような思考からしかイノベーションは生まれません。10倍という目標を持つことで、自分の競争している土俵を変える、産業を再定義する、商品サービスを再定義するなど、これまでとはぜんぜん違う発想が生まれてくる。この中期経営方針の目標を見たときに、これは10倍思考が背景にあると思ったのですが、ズバリいかがでしょうか?

島田:そのとおりですが、これはトップダウンではないんですよ。社長に就任してから、中期経営計画の資料をつくるまでに3ヶ月しかありませんでしたから。それまで私が東芝にいた4年間で考え方や準備が整ってきて、皆がその考え方に馴染み、出てきた数字を少し減らしたのがこの目標です。

田中:減らして出したんですね、謙虚ですね。

島田:全部達成できるとは限らないので(笑)。もちろん、昨対変化で見ると、まだ難しい領域もあるかもしれません。特にデジタルに関しては減らして出しました。

田中:2025年までの3年間で営業利益3,600億円を目指す。ここに対する自信はいかがでしょうか?

島田:私は中長期に体質変換をしていくことのほうが大切だと考えています。誰がロシアのウクライナ侵攻を予測できたでしょうか。新型コロナウイルスの影響もそうですが、そういった不測の事態は必ず起こります。個々の年度の数字については、もちろん社長ですから聞かれます。それよりも、本当に会社がトランスフォームできるのか? 変革を達成して、まったく違う形で成長できるようになるのか? ということを重視しています。

田中:次におうかがいしたいのは、今の日本の課題についてです。さまざまな要因があいまって円安になり、個人消費に非常に大きな影響を与えています。特に小売業は大打撃ですね。一方、円安だからこそ、日本の製造業にはチャンスがあると思います。製造業×DXの方向で企業再編が進んでいる中、東芝の果たす役割は非常に大きいかと思います。製造業×DXの文脈で、スケールフリーネットワーク以外で御社が中核になって果たせる役割にはどのようなものがあるのでしょうか?

島田:一番はカーボンニュートラルです。さらに我々が目指すのは排出量をマイナスにするカーボンネガティブです。今朝も新聞の記事になっていましたが、このままでは2050年のカーボンニュートラルは達成できないと。2020年に新型コロナウイルスの影響で世界中がロックダウンした際にはCO2が大きく減ったようですが、ずっとそのレベルで減らさないと2050年の目標は達成できません。これは絶望的な状況で、本当に真剣に取り組まないといけないでしょう。

我々はエネルギーカンパニーなので、新技術を用いたパワー半導体などをどんどん提供していきます。ただ、誰もがCO2を減らすといっていますが、実際には排出権を買っているだけのケースもありますし、本当に十分な量を減らしているのかどうかという問題があります。1970年代頃はガソリンが安かったので、車の燃費を気にしてる人はほとんどいませんでした。しかし、ガソリンの値段が上がるにつれて燃費を気にする人が増えてきました。80年代は車の安全性よりもスピードが重要でした。ところが、ボルボのような企業が安全性を謳うと安全性に配慮しない車は売れなくなってくる。

これからは自動運転の時代です。自動運転が好きか嫌いか関係なく、自動運転機能がついていない車は売れなくなってくるでしょう。それと同じで、CO2をたくさん排出する製品は誰も買わなくなってくると思いますし、そう変わらないと世界中が本気になりません。だから僕はスマートレシートで商品のCO2排出量を見えるようにしたいのです。

田中:ビル・ゲイツは本気でCO2をゼロにすべきだと発言しています。彼はテクノロジーでCO2をゼロにできると確信していますし、「インダストリー4.0(第4次産業革命)」の名手であるドイツのボッシュは、CEOだけでなく75%の社員がテクノロジーで環境問題が解決できると信じているとHPに記載されています。

島田:それは私もまったく同感です。環境問題はテクノロジーでしか解決できないですね。テクノロジーは問題を見える化しますが、テクノロジーを進化させるには、企業の空気やそれを後押しする国民の理解が進まないと駄目だと思います。

田中:ビル・ゲイツがよくいっているのは、ただ行動を起こして終わるのではなく、貢献度の大きさに着目せよということです。その行動はCO2をゼロにするためにどれだけ貢献しているのか。東芝はこの分野で非常に貢献度が大きいかと思います。

島田:我々はカーボンネガティブを目指しています。ゼロではなく、マイナスにする。そのためにCO2をキャプチャー(捉える)する技術などの研究を進めています。そこまでやらないとカーボンニュートラルは実現できないでしょう。

量子コンピュータが実現する未来とは?

田中:東芝は、製造業というだけでなく原子力などのエネルギー研究も進めてきました。マイクロソフトの創業者よりも東芝のほうが潜在的にテクノロジーで解決できるソリューションをお持ちでしょうね。

島田:正直にいって我々のほうがテクノロジーはあるでしょう。次世代の安全性を高めた原子力発電所も研究を進めています。CO2削減の鍵となるテクノロジーはカーボンキャプチャー(※6)だと思います。CO2を減らすだけではなくて、取り除いてしまおうと。そのCO2を地中に埋めたり、また燃料にしたり、そういった技術開発もしています。
(※6)発生したCO2を大気に放出する前に回収して、地下などに貯留する技術。

田中:この間テレビを見ていたら、小学生が夏休みの自由研究でCO2吸収装置をつけたドローンを開発したというニュースが流れていました。そういう意味では日本もまだまだ捨てたものではないですよね。そこで東芝の果たす役割は大きいですし、「人と、地球の、明日のために。」という企業理念は本当に気候変動対策と直結していますね。

島田:多くの会社のCEOと話をしても気候変動についての話題になります。ここまで皆が課題と感じている問題であるということは、これ以上のメガトレンドはないわけです。この領域に注力することは、世界中のお金が集まるところに注力しているといえるかもしれませんね。

田中:年々暑くなる地球環境問題ですから、イノベーションが求められますね。

島田:EV化が進むとパワー半導体を使う量が莫大に増えます。アナログ系の半導体ではまったく足りていない、車が作れないくらい足りていないわけです。パワー半導体の領域は今後大きく成長するでしょう。それも含めてカーボンニュートラルという意味なのですが、その他にも新しいタイプのペロブスカイト太陽電池(※7)も開発を鋭意進めていまして、25年度には開発、上梓できるだろうと考えています。タンデム型(※8)の太陽電池だと、エネルギー変換効率が30パーセントを超える可能性があるので、EVを1日30キロ走らせることができます。充電なしでそこまで走れるという、産業そのものを変革させるほどのインパクトがある開発を進めています。

量子系の開発については、今は量子コンピュータそのものよりも量子シミュレーションのほうが現実性があります。量子が優れているのは、 非常に巨大なところからの集約ができるので、創薬や新しい材料の発見などに貢献できると考えています。
(※7)灰チタン石(ペロブスカイト)と同じ結晶構造を持つ有機無機混合材料を使用した電池。エネルギー効率が高く、次世代電池として期待されている。
(※8)二つの太陽電池をボトムセルとトップセルとして重ね合わせ、両方のセルで発電することにより発電効率を上げること。


田中:QXの実現もそこまで先の話ではなさそうですね。

島田:量子のなにが凄いかといいますと、広い空間であっという間に答えが出るんですね。東芝の量子の研究者にいわせると「エネルギーの低いところに答えが落ちていく」らしいです。計算ではなく、空間が歪むのでそこに瞬間的に答えが落ちていくという。これは経済学でいう「ヒューリスティック(※9)」に似ていると思うんです。なぜその答えになったのかと聞かれても分からないけれど、頭の中で判断している。それがエネルギーが低いということです。これは極めて効率のいい手法です。正直にいうと、今のデジタルは異常に思えます。

デジタルとはすべてを0と1に置き換えて、それを力技で動かすやり方ですが、極めてエネルギー効率も計算効率も悪い。物理的に物事がもっと動くように、コンピュータは物理型のコンピュータ、もしくは脳型のコンピュータ、もしくは量子型のコンピュータに回帰すべきであると考えています。量子の研究はマイクロソフトもグーグルもIBMもやっています。それによりノイマン型コンピュータ(※10)の呪いを乗り越えられるでしょう。
(※9)経験則をもとに、ある程度正解に近い解を見つけ出すための発見方法のこと。
(※10)メモリに内蔵されたプログラムを読み込んで順次実行するコンピュータ。ハンガリー出身の数学者であるジョン・フォン・ノイマンによって提唱された。現在のコンピュータのほとんどがこの方式を採用している。


田中:デジタルの領域、エネルギーの領域、量子コンピューティングの領域、それらすべてを一気通貫で見渡せる島田社長にうかがいたいのは、東芝はどのような産業をどうアップデートしていくのでしょうか? そもそも、東芝とはなにをする会社なのか最後に教えていただけますか。

島田:それは本当に「人と、地球の、明日のために。」という言葉に集約されていると思います。世の中にないものをつくる、世の中のためになるものをつくる、といったことにエキサイトする人たちが集まったのが東芝なのです。コアバリューそのものが東芝をディファイン(定義づけ)しているわけです。それができなくなったとすると、もう東芝ではありません。QXの話などは、今は皆さん驚かれるでしょうが、5年後にはそれが当たり前になっていくでしょう。誰もが不可能と思うことを実行するのが東芝です。

田中:なるほど、「人と、地球の、明日のために。」ですね。
本当に、これからのますますのご活躍を心からお祈りしております。今日はお忙しいところ、ありがとうございました。

島田:どうもありがとうございました。

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Facebookも注目の「メタバース」とは何か? スマホ向けメタバース「REALITY」のDJ RIO氏に聞く

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Facebookが社名を変更し、中核事業に据えるほど力を入れる「メタバース」。2021年8月にはグリー株式会社が、今後2~3年で100億円規模の事業投資を行い、グローバルで数億ユーザーを目指すと発表しましたが、その中核を担うのが、グリー株式会社の子会社であり、これまでバーチャルライブ配信アプリを手がけてきたREALITY株式会社です。今回は、そんな同社の代表を務めるDJ RIO氏にインタビュー。そもそもメタバースとは何なのか。なぜこんなにも注目が集まっているのか。メタバースは、世界のあり方をどのように変えるのか。メタバース初心者のビジネスパーソンには必読のインタビューです。