サスティナブルとは? 企業活動にとって重要なESGとCSRの違いも徹底解説

サスティナブルという用語は、国連が「SDGs」を達成目標として掲げてから広く使われるようになりました。持続可能性な社会を実現するために、生活のなかで数ある取り組みを意識することは重要ですが、企業がサスティナブルを目指すことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。業界別でみた企業事例も加えながら徹底解説いたします。

サスティナブルとは?

サスティナブル(Sustainable)とは、「持続する」という意味の「sustain」と「~できる・可能な」を表す「able」からなる言葉です。

「持続可能な」「ずっと続けていける」という意味があり、環境や経済・人間・豊かさを未来までずっと平和に継承し続けられるよう、地球環境や社会への配慮を表す言葉として使われています。

現在、このサスティナブルな社会の実現を目指して、世界中がさまざまな取り組みを始めています。

特に、地球の環境破壊と資源の枯渇については警鐘を鳴らす多くの報告書やレポートが発表され、年々注目度が高まっています。

しかし、環境問題だけでなく、未来の世代や世界中のさまざまな人々が平和と豊かさを享受できるようにすることや一人ひとりの行動変容が、サスティナブルな社会を実現するために重要になってきます。

サスティナブルへの取り組みの歴史と背景

サスティナブルな社会実現への取り組みが始まった背景には、深刻な環境破壊問題があります。

例えば、産業革命以降に急上昇してきた大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が急上昇しています。これは、経済活動によるCO2排出量の急増が主因となっています。

それに伴い世界の平均気温が上昇し、気候変動をもたらし、異常気象を引き起こすなどの深刻な影響が出ています。

このような、サスティナブルな考え方が生まれる背景となった歴史について詳しく見ていきましょう。

ローマクラブによる「成長の限界―人類の危機」レポート発表

1972年にローマクラブによって発表された「成長の限界―人類の危機」というレポートでは、地球温暖化やその影響による気候の変化、水不足や砂漠の発生、災害の発生、環境問題の悪化、天然資源の枯渇などによってこの先起こると予測される危機が報告されました。

その内容は、「このまま人口増加や環境汚染などの傾向が続けば、資源の枯渇や環境の悪化により、100年以内に地球上の成長が限界に達する。」というものです。

人類が近い将来に直面するであろう危機に対して警鐘を鳴らしたこのレポートによって、深刻な環境破壊の現実とその結果起こると予想される人類の未来について、全世界が知るところとなりました。

経済成長と環境保護の両立で持続可能な発展を目指す2つの取り組み

1980年頃にはドイツで「エコロジー的近代化論(Ecological Modernization)」が注目を集めました。これによって、経済成長と環境保護が両立できる可能性が多くの人に知られるようになります。

その後、1984年には国連が設立した「環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)」が、「持続可能な発展こそが、将来の世代のニーズを満たしうる発展である」と定義し、サスティナブルという概念が広がりました。

地球サミットによる21世紀へ向けた行動目標「アジェンダ21」

それを受けて1992年6月、ブラジルでおこなわれた地球サミットでは、21世紀に向けた持続可能な開発のための人類の行動計画「アジェンダ21」が採択されました。
アジェンダ21のなかには、開発途上国における貧困や持続不可能な生産と消費の行動様式、人口問題、国際経済の構造なども取り上げています。

森林破壊や砂漠化、有害物質の管理などのさまざまな問題に対して行動を起こし、持続可能な社会へと変化させていくため、環境への影響を最小限に抑えた「持続可能な発展」に取り組むよう全世界へ求めました。

全世界が合意した地球サミット2002の「MDGs」

2002年の地球サミットでは、極度の貧困と飢餓の撲滅、ジェンダー平等、環境の持続可能性の確保、開発のためのグローバルパートナーシップなどを目標に掲げる「MDGs」が全国連加盟国で合意されました。

MDGsは「ミレニアム開発目標」とも呼ばれ、現在のSDGsの前身ともいえるものです。2015年の達成期限までに、このMDGsへ多くの国が取り組み、生活環境は改善されてきました。

一方で、貧困、教育、母子保健、衛生といった分野では格差が浮き彫りとなり、MDGsから取り残される人々についての課題が残されました。

そこで2015年、「誰ひとり取り残さない」という考え方にもとづいてSDGsが誕生します。

「SDGs」とは何か

「SDGs」とは、「Sustainable Development Goals」の略称で、「持続可能な開発目標」のことです。SDGsは、2015年9月におこなわれた国連サミットで採択されました。これによって「サスティナブル」という考え方がこれまで以上に全世界へ広まり、さまざまな取り組みが一層注目されるようになりました。

持続可能な開発目標を達成するためには、「経済成長」「社会的包摂」「環境保護」という3つの核となる要素の調和が欠かせません。

どれか1つだけに突出することなく、経済・社会・環境という3つの要素すべてのバランスがとれることで、未来の世代にも豊かさが続いていくサスティナブルな社会が実現されると考えます。

また、SDGsは、環境問題のみならず貧困や飢餓、経済成長、教育、ジェンダーといったさまざまな課題に対し、豊かさを追求しながらも地球環境を守り、「誰ひとり取り残さない」ことを強調して掲げられました。2016年から2030年までの15年間に達成すべき17の目標と、それにともなう169のターゲットから成り立っています。

例えば、一つ目の「貧困をなくそう」という目標に対するターゲットは7つあり、「1日150円以下で生活する人をゼロにしよう」「貧困や弱い立場にある人を守る仕組みをもっとつくろう」「誰もがお金を稼ぐために必要なモノや知識に手が届くように」「適正な政策枠組みをつくり、貧困を真に解決する投資を増やそう」などといった具体的な行動ターゲットがあります。

また、二つ目の「飢餓をゼロに」という目標に対しては「誰もが毎日、安全で栄養のあるものを食べられる社会に」「特に、幼児・女子・母親・高齢者の栄養不足を解消しよう」「世界中の農業を、何があっても続けられるものに変えていこう」「小規模食料生産者を支援して、生産性と所得を倍増させよう」など8つのターゲットが掲げられています。

他にも、サスティナブルを知るうえで重要なものに、「ESG」があります。「ESG」には、企業が主体となってサスティナブルを目指す意味が込められています。

「ESG」とは何か

「ESG」とは、Environment(環境)Social(社会)Governance(ガバナンス/管理・統治)を組み合わせた言葉のことです。

2006年に当時の国連事務総長コフィー・アナン氏が「責任投資原則(PRI)」の中で、投資判断の新たな観点として発表しました。

ESGを理解するためには、企業、ビジネスパーソン、投資家、消費者といった多面的な視点で、①環境・②社会・③ガバナンスのそれぞれが持つ意味を考える必要があります。

①    「E(Environment)」の環境問題であれば、温暖化や気候変動、森林破壊、海洋汚染や大気汚染などの問題だけではなく、個人や企業の日常的な活動がこうした問題にどう関連しているかを具体的にイメージしてみればわかりやすいでしょう。

例えば、CO2を排出するガソリン車に乗ることは地球温暖化や気候変動に関わっていたり、ビニール袋やプラスチック容器を使うことはごみ問題や自然破壊に繋がっていたり、ペットボトル商品を作ることは海洋プラスチックごみ問題に影響していたりします。

こうした個人や企業の日常的な活動が、それぞれの問題に関係し影響を及ぼしていることを認識し、「誰かが解決してくれる」と他人ごとのように考えるのではなく「自分ごと」として捉え、行動変容を意識していくことが大切です。

②    「S(Social)」の社会問題は、ジェンダー不平等、過重労働、パワハラや社会的弱者への強制労働による深刻な人権問題などの社会的な問題の解決が求められます。

③    「G(Governance)」の統治は、企業統治(コーポレート・ガバナンス)を指すことが多く、企業は不祥事や問題を起こすことのない統率のとれた経営をおこなうことが重要です。

企業内の統治だけではなく、環境問題(E)や社会全体の問題(S)も含めた広い視野で、サスティナブルな経営が求められています。

SDGsとESGの違い

ESGとSDGsは似た内容を持つ言葉ですが、それぞれが指し示す意味は異なります。

SDGsは国連の加盟国が採択した全世界共通の「目標」です。それに対し、ESGは環境、社会、ガバナンスの3つの観点から、企業の長期的な成長に影響するという考え方のもと、企業が取り組むべき経営指標と言えるでしょう。

つまり、企業がESGに取り組むためのヒントになるのがSDGsです。

SDGsに掲げられた目標やターゲットに貢献することは、企業としては必要不可欠となっています。

ESGに取り組むことは企業の成長に必要不可欠であると同時に、新たなビジネスチャンスを生みだす可能性も秘めているのです。

企業が自発的に社会貢献をおこなうことを指す「CSR」という言葉もあります。

「CSR」とは何か

CSR(Corporate Social Responsibility)とは、企業が自発的にお金や時間を使って社会貢献することを指します。

CSRが生まれた背景には、企業が公害問題や粉飾決算など、さまざまな環境や社会への問題を起こしてきた経緯があります。このため、企業は倫理的な観点から自発的な社会貢献を意識する必要がありました。

企業が社会的責任を果たすためには、企業が販売する製品が安全で倫理的な活動にもとづいて作られていることや、環境に配慮したサービス・製品であること、ボランティア活動や寄付などに積極的に取り組むことが大切です。

サスティナブルな社会を目指すための企業の取り組み

サスティナブルな社会を実現するために企業が取り組んでいる事例を業界別にご紹介します。

①ファッション業界の取り組み

ファッション業界では、ファストファッションの流行により大量生産・大量消費がおこなわれてきました。

衣類を作る際に生じる化学物質汚染水・温室効果ガス・CO2は、地球環境に大きな影響を及ぼします。

他にも、大量の在庫廃棄は自然環境への配慮に欠けると指摘されるようになったり、毛皮利用のための動物の殺処分や、発展途上国の労働者を低賃金で働かせたりしていることも、問題視されるようになりました。

そこで、ファッション業界のサスティナブルな取り組みとして、使わなくなった衣類の回収、リサイクルをはじめ、地球環境への負荷が少ない天然由来素材やオーガニック素材を使用した商品を開発しています。

また、アニマルフリー、フェアトレード、受注生産制への取り組みなども増えています。

たとえば、「その時点で消費者に受け入れてもらえなくても正しいことは躊躇なくやる」という強い意志のもと、独自のESG活動に取り組んでいるのが、「ZARA」を子会社に持つアパレルメーカーのインディテックスです。

インディテックスの掲げる目標は、世界各国の政府が掲げるものよりも厳しく、2020年に設定した目標のうち「100%の店舗をエコショップに転換」「100%の店舗に使用済み衣料品コンテナを設置」「森林認証を受けた繊維を100%使用」「すべての傘下ブランドでレジ袋廃止」「化学物質の適正管理をするZDHCにコミット」を既に達成しています。

ZARAだけでなく、ユニクロ・GU・H&M、無印良品、UNITED ARROWS、green label relaxing、URBAN RESEARCH、Patagonia、ワコールなどでも着なくなった洋服の回収サービスを実施しています。店舗によっては、回収に協力すると割引クーポンやポイント付与など特典がもらえるところもあるので積極的に利用しましょう。

アルマーニ・グッチ・ヴェルサーチェでは動物保護の観点からリアルファー禁止、ステラ・マッカートニーではリアルファーやレザーの禁止のみならず、可能な限りのリサイクル素材を活用したデザインを展開しています。

②フード業界の取り組み

フードロス(食品ロス)による大量廃棄は、地球環境への負荷や資源の無駄遣いであり、大量の廃棄食品を焼却処分するために排出されるCO2・温室効果ガスも問題視されてきました。

大量廃棄の一方で、飢餓に苦しむ国も存在し、地球全体では深刻な貧困問題も抱えているのが現状です。

そのほか、食料品を輸送するための輸送エネルギーやCO2排出、ストロー・割り箸・プラスチック容器なども地球環境への配慮が欠けていると指摘されてきました。

そこでフード業界では、食品ロスを削減する取り組みをはじめ、無農薬栽培野菜の利用や、輸送を必要としない地産地消を推進する動きが強まっています。

また、食品ロスとなる食材を福祉施設や子ども食堂、生活困窮者へ届ける活動や、販売期限超えの米の寄付などのフードバンク活動、代替肉・サスティナブルシーフード・スマート米の利用などの取り組みもおこなっています。

例えばスターバックスコーヒーではいち早くESGに注力し、これまで毎年10億本使われていたプラスチックストローを全廃しました。

また、99%のコーヒーをエシカルに調達し、マイボトルの推奨や、紙カップではなくできるだけマグカップで提供しています。

スターバックスの取り組みはそれだけでなく、小規模コーヒー生産者がバイヤーから安く買い叩かれるのを救済するため、コーヒー生産者へ低金利融資をおこなう非営利団体に投資し、財政援助を続けているのです。

難民の雇用も具体的な目標を掲げて推進しており、幅広く環境や社会に貢献していることで消費者からも高い評価を得ていると同時に、社会全体のESG活動への意識を高めることに大きく寄与しています。

ほかにも、コメダ珈琲の新業態「KOMEDA is」は、植物由来をコンセプトに、サスティナブルコーヒー・植物由来にこだわったフード、コーヒーかすを使用した壁や廃ガラスを再利用した照明など、地球環境や循環型経済に配慮した店づくりをしています。

③住宅業界や住まいに関する取り組み

住まいとSDGsには多くの繋がりがあります。例えば、暖房をたくさん使う家ではCO2を多く排出し、高性能なエアコンも、電気が止まってしまっては使えません。このように、住まいは環境問題に繋がっており、住宅にもサスティナブルな社会を実現するために貢献できるスペックを考えることは重要です。

企業の取り組みとしては、大手不動産会社のヒューリックが発行した「SLB(サスティナビリティ・リンク・ボンド)があげられます。SLBとは、企業が掲げたESG目標と発行条件が連動する社債のことです。

ヒューリックは、ESGの考え方に基づいて設定した2つの目標のうち、どちらか一方でも達成できなかった場合は、投資家に支払う利息の利率を0.1%上乗せする(クーポンステップアップ)という条件を付けて社債を発行しました。

これにより、ヒューリックは投資家や消費者へESGに取り組む姿勢を見せ、自社にはESG目標未達の場合のペナルティを科すことによって活動への本気度を高め、サスティナブルな社会実現へも貢献しています。

今後の目標

日本は世界全体で見るとSDGs達成ランキング上位国の取り組みには及ばず、とくにSDGsの「目標12:つくる責任 つかう責任」についての課題が多いのが現状です。

この背景には、そもそもSDGsやCSRについての認知度が低いことや、サスティナブル意識が広まっていないことが要因にあると考えられます。

そのほかにも、CO2排出量を減らし、気候変動に対して具体的な対策を講じる必要もあるでしょう。島国であるため、海洋資源を守ることや世界の国々とのパートナーシップも重要な課題です。

こうした課題の解決には、国民1人1人に「SDGs」の意味と生まれた背景を知ってもらい、サスティナブルな意識を広げることが重要です。

サスティナブルな未来と地球環境改善のために日常生活でできること

世界の国々や企業の取り組みを紹介してきましたが、サスティナブルな社会を実現するためには、政府や企業だけではなく、私たち一人ひとりが日常生活の中でできることから始める必要があります。

難しく考える必要はなく、簡単にできるサスティナブルな取り組みはたくさんあります。

私たち1人1人の意識が地球全体の未来を変える力になるということを念頭に置いて、身近なことから日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

・ペットボトルのリサイクル
・レジ袋をエコバッグに
・ストローを使わないか紙ストローに
・近所なら自動車より自転車を使う
・ゴミの分別出しを徹底する(リサイクルゴミ・資源ゴミなど)
・買ったものを使い切る・安いからと余計な消費を控える
・地産地消を意識(輸送エネルギー消費やCO2排出を抑える)
・マイボトル・マイ箸などを持参する
・ペーパーレス(プリンタで紙に出力していた写真などをデータ保存に)
・3R(リユース・リデュース・リサイクル)を意識
・着なくなった洋服はリサイクルに出す
・洋服やインテリアはなるべく「長く使える」目線で選ぶ
・なるべく地球に還るエコ商品を選ぶ(化学洗剤ならエコ洗剤、クエン酸や酢にするなど)

【さいごに】私たち1人1人の意識と行動がサスティナブルな社会を実現する

現在、私たちが住む地球は多くの深刻な問題に直面しています。環境破壊に繋がる従来のやり方を変え、持続可能な社会を実現していかなければ、近い未来に環境破壊や天然資源の枯渇問題は臨界点を超えてしまうのです。

そうなれば、人類の成長は限界を迎えてしまうと予測されている現状を、私たちは真剣に受け止めなければなりません。今だけのことや自分・自国だけの利益に目を向けるのではなく、未来へとサスティナブルな社会を実現し、地球規模での全体の豊かさや成長を考えていく必要があります。

そのためにも、まずは私たち一人ひとりが、この問題を自分ごととして捉え、意識と行動を変えていくことが大切です。その小さな行動の積み重ねがやがて大きな力になり、地球の未来を変えることでしょう。今日から日常生活の中で、自分にできる範囲のサスティナブルな取り組みを始めてみませんか。

Article Tags

カテゴリ

Special Features

連載特集
See More