デジタイゼーションとは?具体例や進め方・関連用語との違いを解説

デジタイゼーションは、アナログで行ってきた業務をデジタル化することによって、データベースを構築したり、手作業で行われていた膨大な単純業務をRPA(Robotic Process Automation)などの自動化ツールを使って、業務負担を軽減することです。そんなデジタイゼーションの実現に向けたポイントを解説します。

近年、労働力人口の減少への危惧から、長時間労働の解消や、非正規と正社員の格差是正、高齢者の就労促進など、労働者にとって働きやすい環境を整える、働き方改革の推進が叫ばれています。また、オンライン化が普及し、リモートワークが導入されたことによって、オフィスに通勤しなくても業務が行えるよう、デジタル化に着手する企業が増えています。

とくに日本では、長時間労働を良しとする風潮が続いてきたという背景があり、残業代のつかないサービス残業など非効率な働き方が問題視されてきました。定時で退社し、従業員の生活と仕事のバランスを考えるワークライフバランスを重視する動きが広まっています。こうした働き方を実現するためには、業務自体を効率化して、早く帰ることができる環境を整えることも大切です。そこで企業が取り組むべき、ビジネスの効率化に向けた考え方をデジタイゼーションと呼びます。

まずはデジタイゼーションについて知っておこう

まずは、デジタイゼーションについて解説します。英語では「Digitization」と表記され、IoT(Internet of Things)やデジタル技術を活用することによって、ビジネスの効率化を目指す概念です。コスト削減や日常の作業が軽減されることによって、クリエイティブな作業に集中できるようになり、よって商品やサービスの付加価値を高めることができるといったメリットもあります。デジタル化によって業務を効率化する試みがデジタイゼーションです。

デジタイゼーションとは?

デジタイゼーションは簡潔にいえば、業務のデジタル化を指します。従来は契約書や資料、あるいは顧客リストなど業務に必要な書類を紙で管理していた企業もあるでしょう。アナログに頼った作業には、デジタルリテラシーの低い人でも行えるメリットがありますが、効率面ではデジタル化された業務と比べ物になりません。データベースを構築したり、手作業で行われていた膨大な単純業務をRPA(Robotic Process Automation)などのロボットツールを活用することで、自動化を目指すのが、デジタイゼーションの特徴です。

デジタライゼーションとの違い

デジタイゼーションに似た用語として、「デジタライゼーション(Digitalization)」という言葉があります。こちらは単なる作業のデジタル化を意味するのではなく、ビジネスモデルや戦略を含めて長期的な視野でデジタル化を推し進めていく考え方です。たとえば、音楽の視聴はアナログレコードからCDになり、さらにダウンロードして聞くデジタルデータへと変化しました。こうした変化により、ショップに足を運ばなくても、すぐに新しい音楽を購入し、聞くことができるようになりました。さらに、近年流行しているサブスクリプションのストリーミングサービスでは、定額の料金を支払うことで、所有していない音楽も聴き放題になります。こうしたデジタル化によるビジネスモデルの変革を指すのが、デジタライゼーションです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)との違い

またもうひとつのデジタル用語として、「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation/DX)」という言葉があります。業務やビジネスプロセスのデジタル化ではなく、製品やサービス、ビジネスモデルそのものを変革するとともに、組織、企業文化、風土をも改革し、差別化・競争優位を確立することを指します。企業のデジタル化の取り組みが、社会全体までに及ぶような試みのことを指しています。

デジタイゼーションで得られる効果とは?

デジタイゼーションに取り組むことで、具体的にはどんな効果が得られるのでしょうか? デジタイゼーションによって獲得できるメリットを解説します。

自動化による作業の効率化

日本では少子高齢化が進んだことによって、労働力の中心である生産年齢人口(15歳から64歳まで)が大きく減少しています。そのようななか、どうすれば限られた人材で効率良く仕事をしていくかが、課題となっています。例えば、バックオフィス部門や製造部門に多くみられるルーティンワークの大部分をデジタイゼーションによって自動化させることによって、大幅に効率化が実現できます。

並列作業での時短が可能となる

並列作業を機械に任せ自動化することで、業務の時短が可能になります。例えば、複数台のPCを並べて同時に作業を行った場合の効果測定についてですが、手作業で行った場合「約5人日」かかった作業が、デジタイゼーションによって自動化されたことで「約1人日」程度で終えることが可能になったという事例もあります。

ヒューマンエラーの回避

手作業によるアナログ作業のデメリットは、人的なミスが発生することです。とくに膨大な量の単純作業を行っていると、必ずミスやトラブルが発生するリスクがあります。そこでデジタルツールの導入や自動化を行うことで、人的なミスを大幅に削減することもできます。また、デジタルツールを導入することで、ノウハウ共有をしやすくなり属人化防止の効果も見込めます。
しかし、慣れないスタッフによるデジタル作業においても、ツールやPCの設定ミスが発生するリスクがあり、どちらが優位とはいいにくいのが現状です。入力ミスや設定ミスといったヒューマンエラーをどう回避するのかは、効率化において常に課題となります。

デジタイゼーションの具体例

デジタイゼーションの具体的な事例を知れば、より理解できるはずです。代表的なデジタイゼーションの事例をいくつかご紹介します。

紙書類を電子化する

オフィスワークに限らず、ビジネスの現場では大量の紙を使用します。社内の報告書や稟議書、会議の議事録、パンフレットやカタログなど、さまざまなものがあります。これらをプリンターで出力せず、タブレットなどに送信して使用したり、スキャニングしてPDF化し、スタッフにメールで配布するといった紙書類を電子化することもデジタイゼーションのひとつです。

承認印を電子印鑑化する

紙書類が引き続き使われている理由のひとつに印鑑の存在があります。企業によっては承認や決済で印鑑を使用することが業務フローとして決まっており、書類を電子化しても、結局印刷して押印することになります。そこで、印鑑や承認印、検品済印など、社内で使用する多くの印鑑を電子印鑑化することで、ペーパーレス化だけでなく、業務の効率化が図れます。大量のPDFファイルに電子印鑑を連続で捺印できるサービスなどもあり、承認印の電子印鑑化はデジタイゼーションの一歩になります。

電子化した書類をクラウド上に保存する

書類を電子化したら、あわせて社内のシステムにクラウドを設け、そこに保存する業務フローにすれば、メンバーとファイルの共有ができるようになります。共同でひとつのファイルを編集して保存しておけば、必要なときにアクセスし、各自が使用することが容易になります。リモートワークなど遠隔地からクラウドにアクセスできる体制なら、さらに利便性が高まります。

アナログ広告からデジタル広告に移行する

チラシを印刷し街頭で配布する、あるいは印刷したポスターを掲示するなどのアナログ広告もデジタル広告に移行することができます。チラシからダイレクトメールやウェブ広告へ、ポスターもデジタルサイネージを利用することができます。アナログ広告よりも、より多くのターゲットにPRでき、さらに消費者の行動データを収集するなど、デジタル広告ならではの利点も享受できます。

会議をオンライン化する

コロナ禍になり、ウェブ会議ツールを利用したオンラインでの会議や打ち合わせが急増しています。これまでなら、勤務地の異なる者同士が一同に介するときには、時間や交通費などの経費もかかっていました。しかし、オンライン化することで移動の時間も不要になり、業務もその分、効率化できます。また、働き方改革への対応や、パンデミックや自然災害などに対するBCP(事業継続計画)対策にもなるため、導入する企業が増えています。

ITデバイスを導入する

ペーパーレス化し、ウェブ会議を導入するなど、デジタイゼーションのメリットをより受けるなら、タブレットPCやノートPC、あるいは高性能なスマートフォンなど、ITデバイスの導入は欠かせません。

デジタイゼーションを進める手順とは?

では、デジタイゼーションを進めたい企業はどのような手順でデジタル化に着手すれば良いのでしょうか? 

1.業務プロセスを可視化する

業務のプロセスをデジタル化するにあたっては、まず自社で行っている業務のプロセスを可視化してみることが大切です。どんな手順を踏んで業務を行なっているのか?どんな人が関わり、どのようなことに気をつけて作業が行われているのか?できるだけプロセスを分解することで、それをデジタル化する方法を考慮していきます。

2.デジタル化が必要な部分を洗い出す

業務プロセスが可視化したら、デジタル化できる業務と、デジタル化が難しい業務に仕分けしていきます。

3.どのツール・サービスを利用するか決める

いきなり自社でアプリやビジネスツールを開発して運用するのは難しいでしょう。手軽に利用できるデジタルツールや無料のITサービスも多く登場しています。デジタル化したい業務をどのツールやサービスを使えば、デジタル化し、効率化できるのか、吟味していきましょう。

4.デジタイゼーションを実行する

使用するツールやサービスが決定したら、システムの設定を決定したり、業務の橋渡しをするスタッフも必要になります。よりデジタル化の効果が出るように、既存の部門とコンセンサスを取りながら、デジタイゼーションを実行に移します。

デジタイゼーションを成功させるポイント

アナログ作業をデジタルにただ置き換えれば済む話ではありません。より実効性のあるデジタイゼーションにするため、抑えておきたいポイントを考えます。

優先順位を明確にしてから取り組む

デジタイゼーションで業務が効率化すると口では伝えても、慣れ親しんだ業務が変わることへ抵抗感を示すスタッフもいます。そのため、できるところからスモールスタートで実行していくことが成功の鍵になります。とくにデジタル化させたい業務と、そうではない業務と、優先順位を明確にしてから進めると、よりスムーズに社内に浸透するはずです。

組織としてデジタル化に取り組む

デジタル化する業務によっては、一部の部署からスタートするのも構いませんが、それでは効果が限定的になります。したがって、ペーパーレス化を会社の方針にするなど、組織が一丸となってデジタル化に取り組むことが大切です。とくにアナログの書類と、デジタルの書類が混じると、管理方法が異なるため、かえって使いにくい体制になってしまいます。

現場の声を聞きながら進める

デジタイゼーションを進める意識が強すぎると、便利なデジタル機能やサービスを無理やり導入しがちです。ですが、実際にデバイスを操作したり、サービスを利用するのは現場であることがほとんどです。したがって、どのようなワークフローに変えると、使いやすいのか、どんなポイントを抑えたサービスを選定すべきなのか、きちんと現場スタッフからヒアリングを行い、参考にすることも重要なポイントです。

DX化を実現するためのステップ

デジタイゼーションは、DXを進めていくうえで最初のステップとなります。デジタイゼーションが完了した後は、どのようにDX化を実現していけば良いのか、一般的な手順を紹介します。

デジタライゼーションを進める手順

デジタイゼーションから、さらに一歩進み、デジタライゼーションに取り組む場合には、次のような手順が考えられます。
デジタライゼーションは一企業の業務のデジタル化から派生して、その効果を社会にまで波及させようとする考え方です。そのため、プロセスのデジタル化から行動分析や購買分析といった、顧客の分析を行う必要があります。なぜなら、デジタル化によって既存の顧客の体験がどのように変化するのか、顧客との接点に現在、どのような課題があるのかを考える必要があります。
顧客分析が終わったら、あらためてペルソナを設定しなおします。もしターゲットに変化が出るようなら、どうすれば顧客満足度を獲得できるのか、カスタマージャーニーマップなどを作成し検討していきます。その結果、サービスやチャネルなどを設計し直す必要が生じる可能性もあります。
DXを実現することによって、新しい事業価値や新しい顧客体験が創造できるかどうかも重要な視点です。どうすれば、顧客満足度が向上するのか、課題を解決するまでのソリューションを検討していきましょう。

DXを進める手順

デジタル化によって、作業をただ効率化するのではなく、顧客体験を効果的に変化させることが重要です。そのために必要なポイントを解説します。
デジタイゼーションとデジタライゼーションは手段と目的のような関係性です。デジタル技術を導入し、業務を効率化していなければ、デジタイゼーションを推進することによって、新たな顧客体験を創出することはできません。デジタイゼーションとデジタライゼーションを同時に進めることによって、ゴールが明確になり、目指すべきDXの姿が見えてきます。
まったく新しいシステムを構築するには、手間と時間がかかりすぎて、かえって効率が悪くなる危険性があります。既存のシステムが持つ良い点を活用することによって、デジタル化すべきポイントや、課題になる点が見えてくるものです。既存のシステムを破壊するのではなく、うまく活用しながら、顧客体験を効果的に変化させることが欠かせません。
アウトソーシングは業務の効率化する際に武器になることはありますが、コアとなる技術については、内製化しデジタライゼーションを実現する体制を構築することによって、顧客との接点が明確になります。問題点があれば、スムーズに課題発見につなげることができるため、アウトソーシングせずに内製化する部分を残しておくことが重要です。

DXに不可欠なテクノロジー

デジタルトランスフォーメーションを推し進めるときには、どんなテクノロジーが活用されるのでしょうか? 

AI(人工知能)

AIと聞くと、システムやコンピュータが自動的に判断する魔法のツールのように感じますが、業務で主に活用する場合には、膨大なデータの分析などに使われるのが一般的ですが、既に多くの企業がDX推進にAIを活用しています。データの予測や分析、音声や画像の解析、テキストや音声データの自然言語処理など、対応可能な業務が増え続けており、自社に適したAIを活用しながらDXを推進する例が増えています。

Generative AI(生成系AI)

AIのなかでも、Generative AI(生成系AI)は、DX推進のため、近年急激に活用が広がっている技術の一つです。Generative AI(生成系AI)は、AIが自ら新しい情報やコンテンツを生成することができる技術です。テキストをはじめ、音楽や画像、動画など、さまざまな種類のコンテンツの生成に利用されています。OpenAI社が開発した対話型AIチャットサービス「ChatGPT」が普及したことも影響し、Generative AI(生成系AI)という言葉や概念が広がりました。業務効率化だけでなく、人手不足の解消にも役立っています。

IoT

IoTはInternet of Thingsの略で、モノのインターネットと訳されます。現在、インターネットとつながるデバイスはスマホやパソコンなど通信機能を備えたデバイスに限られます。IoTはあらゆるものを、インターネットにつなげることによって、互いに通信したり、センサーを通じて情報の取得を行うことによって、日常生活を便利にする技術です。

5G

携帯電話に代表されるモバイル通信ネットワークは、1980年代に広く普及しはじめました。アナログ方式の携帯電話に採用された通信システムである1G(第1世代通信システム)からスタートし、2G、3G、4G、そして5Gとおよそ10年ごとに新しい通信規格が登場してきました。ちなみに2Gは1990年代に登場したデジタル方式の移動通信システムで、メールの送受信など低速のデータ通信が可能でした。NTTドコモがW-CDMA方式の3Gサービスをはじめたのが、2001年のこと。そして現在、主流となっている4Gは2010年代に登場しています。4Gに続く5Gという第5世代の移動通信システムサービスが登場したのが、2020年3月のことです。超高速かつ低遅延での通信が可能になるため、今後、広く普及していけば、私たちの生活がより便利になると期待されています。

デジタイゼーションを進めて業務をスマートに

これからも、デジタイゼーションは、さまざまな業務の効率化に採用されると考えられています。データベースを構築したり、手作業で行われていた膨大な単純業務をRPAなどの自動化ツールを使って、業務負担を軽減することによって、私たちの働き方が大きく変わります。たくさんのメリットを享受できる概念がデジタイゼーションです。

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