デリバリーアプリの新生「menu」に聞く・コロナ禍で売上を伸ばす飲食店がやっていることとは
2020/9/14
現在、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、多くの飲食店はこれまでとは違う形で営業を行っています。席数を半分にしたり、営業時間を短縮したりと、サービスが制限されるなか、どうやって売上を伸ばすのか、試行錯誤されている経営者も多いのではないでしょうか。
テイクアウトやデリバリーに力を入れるのは、状況を打開する選択肢の一つ。緊急事態宣言以後、街では頻繁にUberや出前館などの配達者を見かけるようになりました。
とはいえ、テイクアウトやデリバリーは、どんな料理なら売れるのかなど、店内で飲食物を提供するのとはノウハウが異なります。課題を乗り越え、多くのお客さまにご利用いただくにはどうすればいいのか。デリバリー&テイクアウトアプリの中でも新しく、テイクアウトの初期費用・販売手数料無料で飲食店サポートを行なっている「menu(メニュー)」の運営会社・menu株式会社プロモーション本部長の山敷真氏にお話を伺いました。
Contents
ざっくりまとめ
- コロナ流行の前後で飲食店のデリバリーアプリ導入のニーズは「コスト削減」から「売上アップ」に変化
- 体験を売りにしている店舗や、持ち帰りによる品質低下を懸念する店舗はテイクアウト・デリバリーサービスの導入が遅れている
- テイクアウトやデリバリーだからこそ頼まれやすいメニューが存在し、専用に新メニューを開発している飲食店も多い
- 生き残るには、環境の変化に合わせ、スピーディーに新しい施策を実施することが必要になっている
デリバリーアプリ「menu」って?
スマホ一つでデリバリーやテイクアウトの注文ができるサービス「menu」の運営を行っています。menuを使って、予め料理を注文しておくことで、ユーザーは待ち時間なく料理をテイクアウトできますし、特定のエリア内であれば指定の場所に届けてもらうこともできます。
デリバリー可能なエリアはどんどん広がっていて、現在は東京23区や神奈川県など関東エリアの他に、大阪でもサービスの展開を始めています。
コスト削減から売上アップへと変化する飲食店のニーズ
4月から2年間、テイクアウト手数料を無料にするというキャンペーンを開始したこともあり、爆発的に増えました。これまで数千店舗だったご登録店舗数が、ここ数ヶ月で一気に3万店舗以上に増えています。
ーコロナ前後で飲食店側のニーズはどのように変わっているのでしょうか?
そうですね。コロナ以前はどちらかと言うとオペレーションコストを下げるためにとご利用くださる飲食店さまが多かったです。例えばアプリを活用しWebで注文を受けられるようにすれば電話受付にかかるコストが削減できます。予め電子決済しておいてもらえれば、店頭でレジ打ちをする手間も省けます。
ただ4月からは、来店が減った中で売上を戻したいという理由でmenuの導入を検討する飲食店さまが増えました。席数に依存せず、お料理を提供したいと考えるお客さまが増えたのです。
ーmenuを活用するのはどんな飲食店さまが多いのでしょうか?
幅広いジャンルの飲食店さまにご利用いただいてますが、最近は居酒屋さまなど、大きな打撃のあったところのご登録が増えています。また、これまでテイクアウトやデリバリーに抵抗感のあった高級店さまのご登録も増えています。
ーアプリを利用するユーザーもここ最近は増えてきているのでしょうか?
増えています。1月から5月にかけて利用者数は12.5倍に伸び、とくに4月は第三者機関が選ぶアクティブユーザー数が最も伸びたアプリに選ばれたりしました。
飲食店はどのようにデリバリーやテイクアウトを活用しているのか
カフェなど、ある種、体験を売りにしているようなところはなかなかデリバリーやテイクアウトを導入するのは難しいのではと思っています。料理だけでなく、その場で食べること自体がユーザーからすると、一つのメリットになっていますので。
また、持ち帰りにより多少クオリティが下がるかもしれないと懸念され、導入までに至らない飲食店さまも多いです。我々としては、品質が落ちないための対策をご提案していければと思っています。
ーmenuをはじめ、デリバリーやテイクアウトをサポートするサービスは最近増えています。それらのサービスをどのように活用する飲食店さまが多いのでしょうか?
基本的には、複数のサービスに同時に登録している飲食店さまが多いです。まずは登録してみて、実際に注文が入るのかどうか、うまくオペレーションが回せるのかを確認して、継続して活用するのか辞めるのか、判断する店舗さまが多いですね。
一方で高級店さまの場合は、menuだけ登録しているというところも多いです。通常のお店とは違うオペレーションがあり、そこに細かく対応できるからと選んでいただけています。例えば、高級店さまは仕入れの状況で提供できるメニューが変わってきますので、2日前からの予約を必須にしたりしています。
ーデリバリーやテイクアウトアプリを活用するのは、どんなユーザーが多いのでしょうか?
デリバリーに関しては、ある程度所得の高い層が多いのだと思います。イメージとしては3〜40代のDINKSであったり、手取りが多い方などです。とくにmenuは購入単価が他のサービスに比べて高い傾向があります。高級店のご登録が多く、良いお店の料理が食べたいと活用いただくユーザーが多いからです。
ー具体的にユーザーがどんな風にアプリを活用するのか教えてください。
テイクアウトに関しては、ランチの時間帯に予約をしておいて、お昼になると近くの店まで取りに行くという使い方が一般的です。お惣菜やおつまみよりは、丼などの主食を注文頂く方が多いです。価格帯は700円など比較的安めですね。
一方、デリバリーに関してはご利用いただくシーンが多様化しています。ワンコインの需要もありますが、オードブルセットで4000円といった、比較的高価格のお料理を注文いただくケースも多いです。一人だけでなく、家族やパーティーで食べるために使っていただくなど、幅広いシーンでご利用いただいています。
デリバリー・テイクアウトを始めるまでの流れ
大体2週間くらい見ていただければと思います。
具体的にはまず、デリバリーやテイクアウト対応のメニューやその価格などを決めていただく必要があります。また、必要なオペレーションを組んでもらう必要があり、その際はタブレットなどがあるとスムーズです。
サービス開始までの一番のハードルは、食べ物を入れる容器をご用意いただくことです。容器によっては、中身がこぼれてしまったり、持って帰るまでに冷めてしまったりします。ユーザーさまにベストな状態で届けるためには、適切な容器をご用意いただく必要があります。汁物は漏やすいため、サランラップの上から蓋をして、さらにサランラップでまく、あるいは外れにくい蓋を使用することやラーメンなどは麺と汁物をわけるなど美味しくお召し上がりいただける工夫をするなども必要だと思います。
ーどんなメニューだと注文されやすいのでしょうか?
テイクアウトとデリバリーでは注文されやすい料理が違います。例えばテイクアウトだと、一人で食べる用のお弁当が注文されやすかったりします。テイクアウトやデリバリー専用の料理を新しく開発される飲食店さまも多いです。
例えば、「鳥幸」など、全国に複数の店舗を展開されている東京レストランツファクトリーさまは、menu限定で新しい商品を作っており、その売れ行きが好調だとのことです。また、同じく多くのレストランを経営されているきちりホールディングスさまも、元々テイクアウトやデリバリーのためのメニューは用意していませんでしたが、新しく販売を開始すると、すごく売上げが伸びたとのことでした。
環境の変化に対応し、新しい施策へのスピーディーな挑戦が必要
やはり変化にいち早く対応され、新しい対策をスピーディーに実施できる店舗さまが最終的には生き残るのかなと思っています。我々は今、2年間手数料無料というキャンペーンを行っています。3ヶ月でも半年でもなく2年間に設定したのは、それぐらい長い戦いになることを見越してです。この期間の中でいかに業態を変え、新しい環境に合わせた変化ができるのかが求められているのだと思います。
ー具体的に飲食店は、どのように変わっていけば良いのでしょうか?
デリバリーやテイクアウトを前提として、お客さまに良い体験をして頂けるような商品の設計をするのも一つかなと思います。例えば、お料理を豪華な容器に入れて、綺麗な風呂敷でラッピングをし、提供する店舗さまもあります。
ーアプリの活用などデジタル化の波が飲食業界にも押し寄せています。そんなトレンドに置いて行かれないためには何を意識するというのでしょうか?
例えば、デジタル上でうまくお店を宣伝する工夫が必要です。これまではお店がそのまま街の中でメディアになっていることが多かったですが、街から人が消えるとそういうわけにもいかなくなるからです。
我々としても、飲食店さまの力になれるよう、蓄積したノウハウを共有し、売上を伸ばすサポートをしていきたいです。
HPはこちら:https://service.menu.inc/service/
menu株式会社 プロモーション本部長
山敷 真 ヤマシキ マコト
大学在学中に学生向けSNS事業を立ち上げ、卒業後電通に入社。メディア部門にて媒体買付、新規事業の立ち上げ等を経験後、ビジネスプロデュース部門にて大手インターネット企業に対するマーケティング戦略の立案・実行支援業務を経た後、当社に入社。