コロナ禍に生まれたスタートアップ・Priv Techの実践DX 前編 〜バーチャルオフィスやホワイトボード、使用ツールを大公開〜

まさかのコロナ禍に会社設立

私が代表を務めるPriv Tech株式会社は、今年の2020年3月に設立されました。51%を株式会社ベクトル、49%を株式会社インティメートマージャーが持つジョイント・ベンチャーです。事業内容は2020年6月に成立した改正個人情報保護法や、昨今の3rd Party Cookie規制など、プライバシーに配慮した「Privacy Tech(プライバシー・テック)」事業を展開しています。

2019年後半から設立の準備をはじめ、2020年3月の設立を計画していました。しかし、2020年1、2月あたりから新型コロナウイルス感染者が日本でも増え始め、まさかのコロナ禍真っ只中の設立となりました。当時は、プロダクトも社内の仕組みも、社員もまだまだ揃っていない状況下で、私たちがどのようにその状況を乗り越えたか、また具体的にどのようなDXを実行してきたかについてご紹介いたします。

DXの領域が多岐に渡るため、前編・後編の2回にわたり、ご紹介します。

カルチャー

【Priv Tech Culture】
・Output First
・No Rules
・High Salary & High Incentive

まず、コロナの影響で、設立してすぐに出社が難しい状況となりました。そのため、メンバーと日常的に話すことが難しくなり、日々のマネジメントに悩まされることとなりました。これを解決しようと思い、Priv Techの大原則として掲げたのが、「Output First」です。プロセスに関するマネジメントや評価はせずに、アウトプットに対してコミットをしてもらうという考え方です。幸い、参画メンバーは私がヤフーやスタートアップから引き抜いてきた優秀な人材で構成されていたので、すんなりと受け入れられました。

次に、「Output First」を実現するために必要な要素として、「No Rules」を掲げました。Priv Techにはルールというものがありません。もちろん、信頼できる優秀なメンバーだけで構成されているのもありますが、アウトプットにこだわってもらうために、考えた結果が「No Rules」です。
Priv Techには、働く場所や就業時間・コアタイム、休日、承認プロセスといった類のルールが一切ないですし、これからも作るつもりはありません。各メンバーが自身で考え、最も効率のよい最短距離でアウトプットを出してくれさえすればいいのです。
これに関しては、最近話題の書籍でNetflixについて書かれた「No Rules」の内容が近いかなと思います。我々も、とても参考にしている良書です。
最後に「High Salary & High Incentive」ですが、Priv Techは、我々が考える働き方やプロフェッショナリズムにあう人材しか採用しません。そのため、必要になってくるのが「High Salary & High Incentive」です。まだまだ設立間もないスタートアップですが、人材に関しては少数精鋭のメンバーをこだわって採用し、可能な限り彼らには見合った報酬を提供しています。
ここまで、我々が考えるカルチャーの紹介をしました。ここからは、本記事の主題となるDXの話をしていきます。実践している領域が多岐にわたるので、前編・後編の2回に渡って、我々が実践しているDXを紹介します。
まず前編は、コミュニケーションに関わる内容です。

コミュニケーションツール

我々の「Priv Tech Culture」を実践するためにはDXが肝となってきます。まず一番始めに導入したのがコミュニケーションツールのSlackです。
これはもうワールドワイドのデファクト・スタンダードと言っても過言ではないと思います。我々は、全てのコミュニケーションをSlackに集約させています。メールも使っていますが、Slackに連携させSlack上で確認できるようにしています。G SuiteとSlackを連携させているので、カレンダーなどもSlack上で確認・通知ができるようになっています。

リモート会議

リモート会議ツールは、Googleのmeetを利用しています。G Suiteを利用しているので、その延長上で利用しやすかったのが選定理由です。
一方で、オンラインセミナーの開催はZoomを利用し、用途別によって使い分けております。

バーチャルオフィス

ここまでは、予定されたコミュニケーションに必要なツールの紹介をしました。フルリモートでスタートアップがモノづくりを行っていくために、足りないのが、普段の何気ない会話や意見の出し合いといったコミュニケーションです。これがないことによる弊害は、意外にあったと思います。まだ参画して間もないメンバー同士が関係値を作っていくには、こういった何気ない会話が必要です。
これに関しては、「oVice」というバーチャルオフィスのツールを利用しています。バーチャルのオフィス上に、出社しているメンバーの顔アイコンが表示され、それがアバターとなります。oViceには、執務室エリアや、会議室、はたまたリラックスできるソファー席などが自由に設置でき、自由に自分のアバターを移動させることができます。メンバーに話しかけたいときは、そのアバターを操作し話しかけたい相手に近付いたら、声が届きます。話が終わって、遠ざかると声は届かなくなります。
oViceの利用によって、コミュニケーションの頻度が何倍にも増えて、組織の横のつながりが強化されたと感じています。

ホワイトボード

スタートアップや新規事業で欠かせないのが、ホワイトボードです。企画会議などで、ホワイトボードに絵などを描きながら、会議を進行していくことは、よくあることだと思います。メンバーそれぞれが離れた場所で仕事をしている我々は、このホワイトボードが物理的に利用できませんでした。
そこで利用をしたのが「Microsoft Surface」と「Microsoft White Board」です。Surfaceは、タッチパネル型のPCで、タッチペンも使えます。この2つの組み合わせによって、オンラインでホワイトボードを共同編集しながら、ディスカッションができるようなりました。これはもう、リアルの対面でホワイトボードを囲いながらディスカッションしているのと同じです。

前編のまとめと、後編に向けて

我々スタートアップもそうですが、ビジネス全般においてコミュニケーションは肝です。そしてこのコロナ禍では、そのコミュニケーションが難しい状況となっています。そのため、まず優先して検討が必要なのがコミュニケーション領域のDXだと考えております。
前編は、そのコミュニケーション領域の話をしましたが、後半はそのコミュニケーションを基軸に設計していった他領域のDXのご紹介をしていこうと思います。具体的には、セールスやマーケティング、オンラインアシスタントなどの領域です。また、DXの全体像や我々が考えるDXの在り方に関しても書いていきます。

人気記事

TVer 取締役とテレ東名物Pが語る、テレビと配信の未来【前編】 YouTubeもNetflixも、テレビの敵ではない?

TVer 取締役とテレ東名物Pが語る、テレビと配信の未来【前編】 YouTubeもNetflixも、テレビの敵ではない?

テレビが「お茶の間の王様」とされていたのも今は昔。2021年5月にNHK放送文化研究所が発表した「10代、20代の半数がほぼテレビを見ない」という調査結果は大きな話題を呼びました。そんなテレビの今を「中の人」たちはどのように受け止めているのでしょうか。そこでお話を伺うのが、民放公式テレビポータル「TVer」の取締役事業本部長である蜷川 新治郎氏とテレビ東京のクリエイティブプロデューサーを務める伊藤 隆行氏。前編では、コネクテッドTVの登場によって起きた変化や、YouTubeやNetflixといった競合コンテンツとの向き合い方についてお届けします。

「8割以上の精度で、赤ちゃんが泣く理由が判明」CES2021イノベーションアワード受賞。注目の日本発ベビーテック企業とは

「8割以上の精度で、赤ちゃんが泣く理由が判明」CES2021イノベーションアワード受賞。注目の日本発ベビーテック企業とは

テクノロジーの力で子育てを変えていく。そんなミッションを掲げ、泣き声診断アプリや赤ちゃん向けスマートベッドライトなど、画期的なプロダクトを世に送り出してきたファーストアセント社。「CES2021 Innovation Awards」を受賞するなど、世界的に注目を集めるベビーテック企業である同社の強さの秘密とは。服部 伴之代表にお話を伺いました。

なぜ日本企業のDXはうまくいかないのか。シリコンバレーで活躍するパロアルトインサイトCEO 石角友愛氏と立教大学ビジネススクール田中道昭教授が、要因を徹底解説

なぜ日本企業のDXはうまくいかないのか。シリコンバレーで活躍するパロアルトインサイトCEO 石角友愛氏と立教大学ビジネススクール田中道昭教授が、要因を徹底解説

緊急事態宣言の度重なる延長、オリンピック開催是非の議論と、依然混沌とした状況が続く日本とは裏腹に、シリコンバレーではワクチンの複数回摂取が進み、市民がマスクなしで屋外を出歩く風景が見られ始めているそうです。コロナ禍と呼ばれる約1年半の間、アメリカのメガテック企業、ベンチャー企業はどのような進化を遂げたのか。DXを迫られる日本企業は何を学ぶべきなのか。『いまこそ知りたいDX戦略』、『“経験ゼロ”から始めるAI時代の新キャリアデザイン』の著者であり、パロアルトインサイトCEO、AIビジネスデザイナーの石角友愛さんをゲストに迎え、立教大学ビジネススクール田中道昭教授がお話を伺います。

「銀行は将来、もはや銀行である必要がない」デジタル時代の金融に求められるものとは。SMBCグループ谷崎CDIO×東大・松尾教授×デジタルホールディングス 鉢嶺

「銀行は将来、もはや銀行である必要がない」デジタル時代の金融に求められるものとは。SMBCグループ谷崎CDIO×東大・松尾教授×デジタルホールディングス 鉢嶺

コロナ禍を経て、全世界のあらゆる産業においてその必要性がますます高まっているDX。DXとは、単なるITツールの活用ではなく、ビジネスそのものを変革することであり、産業構造をも変えていくほどの力と可能性があります。そして、全ての日本企業が、環境の変化を的確に捉え、業界の枠を超え、積極的に自らを変革していく必要があります。 今回は、AIの第一人者であり東京大学大学院教授である松尾 豊氏にご協力いただき、デジタルホールディングス代表取締役会長 鉢嶺 登氏と共に、金融業界大手の中でいち早くデジタル化に着手した三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMBCグループ)の谷崎 勝教CDIO(Chief Digital Innovation Officer)にお話を伺います。DXの必要性を社内でどう伝え、どのように人材育成を進めてきたのか、また金融・銀行業界はDXによってどう変わっていくのか。デジタルならではのメリットとは。SMBCグループの取り組みに迫ります。

コロナ禍でラジオが復権!? 民放ラジオ業界70年の歴史を塗り替えたradiko(ラジコ)の「共存共栄型 DX」とは

コロナ禍でラジオが復権!? 民放ラジオ業界70年の歴史を塗り替えたradiko(ラジコ)の「共存共栄型 DX」とは

Clubhouseをはじめ、新勢力が次々と参入し、拡大を見せる音声コンテンツ市場。その中で、民放開始から70年の歴史に「大変革」を巻き起こしているのが“ラジオ”です。放送エリアの壁を取り払う、リアルタイムでなくても番組を聴けるようにするといった機能で、ラジオをデジタル時代に即したサービスに生まれ変わらせたのは、PCやスマートフォンなどで番組を配信する『radiko(ラジコ)』。今回は、株式会社radiko 代表取締役社長の青木 貴博氏に、現在までのデジタルシフトの歩みと将来の展望について、お話を伺いました。

世界のMaaS先進事例7選。鉄道・バス・タクシーなど交通手段を統合したサブスクモデルも!

世界のMaaS先進事例7選。鉄道・バス・タクシーなど交通手段を統合したサブスクモデルも!

国内でMaaS(Mobility as a Service)実証が活発化している。新たな交通社会を見据え、既存の交通サービスの在り方を見直す変革の時期を迎えているのだ。 交通社会は今後どのように変わっていくのか。MaaSの基礎知識について解説した上で、海外のMaaSに関する事例を参照し、その変化の方向性を探っていこう。

アコム新社長 木下政孝氏×立教大学ビジネススクール田中道昭教授対談。デジタルネイティブ企業が金融業に参入し、キャッシュレス化が加速するなか、アコムが描く未来戦略とは

アコム新社長 木下政孝氏×立教大学ビジネススクール田中道昭教授対談。デジタルネイティブ企業が金融業に参入し、キャッシュレス化が加速するなか、アコムが描く未来戦略とは

2021年6月23日開催のアコム株式会社の株主総会および総会終了後の取締役会において、木下政孝氏が新社長に就任しました。1993年に業界で初めて自動契約機「むじんくん」を導入し、2016年に「イノベーション企画室」を設立するなど、金融業界でも積極的に新しい取り組みやデジタルシフトを推進してきたアコム。新社長である木下氏は今どんな想いで会社のトップに立つのか。激動のコロナ禍を経た上で見えた、デジタルでは担えない、人の役割とは何なのか。立教大学ビジネススクール田中道昭教授がお話を伺います。

Walmart、Amazon、Peloton。コロナ禍で米メガテック企業に起きた変化から日本企業は何を学ぶべきか。シリコンバレーで活躍するパロアルトインサイトCEO石角友愛氏、立教大学ビジネススクール田中道昭教授が徹底議論

Walmart、Amazon、Peloton。コロナ禍で米メガテック企業に起きた変化から日本企業は何を学ぶべきか。シリコンバレーで活躍するパロアルトインサイトCEO石角友愛氏、立教大学ビジネススクール田中道昭教授が徹底議論

緊急事態宣言の度重なる延長、オリンピック開催是非の議論と、依然混沌とした状況が続く日本とは裏腹に、シリコンバレーではワクチンの複数回摂取が進み、市民がマスクなしで屋外を出歩く風景が見られ始めているそうです。コロナ禍と呼ばれる約1年半の間、アメリカのメガテック企業、ベンチャー企業はどのような進化を遂げたのか。DXを迫られる日本企業は何を学ぶべきなのか。『いまこそ知りたいDX戦略』、『“経験ゼロ”から始める AI時代の新キャリアデザイン』の著者であり、パロアルトインサイトCEO、AIビジネスデザイナーの石角友愛さんをゲストに迎え、立教大学ビジネススクール田中道昭教授がお話を伺います。

Googleやビル・ゲイツも出資する“代替肉”スタートアップ「インポッシブル・フーズ」〜海外ユニコーンウォッチ#2〜

Googleやビル・ゲイツも出資する“代替肉”スタートアップ「インポッシブル・フーズ」〜海外ユニコーンウォッチ#2〜

「ユニコーン企業」ーー企業価値の評価額が10億ドル以上で設立10年以内の非上場企業を、伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほどに珍しいという意味だ。かつてのfacebookやTwitter、現在ではUberがその代表と言われている。この連載では、そんな海外のユニコーン企業の動向をお届けする。今回は欧米を中心に注目されている「代替肉」を扱う「インポッシブル・フーズ」を紹介する。