コロナ禍に生まれたスタートアップ・Priv Techの実践DX 後編 〜セールス領域やオンラインアシスタントの使用サービスを大公開〜

前編に続いて、後編もPriv Techが実践しているDXの取り組みをご紹介していきたいと思います。コロナ禍に誕生したPriv Techは、設立と同時にDXの実践が求められました。前編ではコミュニケーション領域のDXをご紹介しましたが、今回はセールスやオンラインアシスタントの領域を取り上げます。そして最後に、スモールに始める全社DXの考え方もお届けできればと思います。

セールス

Priv Techの営業組織

Priv Techの営業組織は、まだ創業間もないため専任を置いておりません。Priv Techにフルコミットしているメンバーは私を含めて、計5名となります。それに加えて、株主のベクトルやインティメートマージャーからそれぞれハーフコミットのメンバーが数名手伝ってくれているような状況です。
営業手法に関しても、創業から間もないため、リードジェネレーションに投資することがなかなかできません。本来であれば、広告出稿やイベント出展などをしたいところですが、資金不足であったり、新型コロナウイルス感染症の影響でリアルイベントの開催が難しかったりと、リード獲得が厳しい状況でした。
いかに効率が良い手法で営業を進めていくかが重要だと考え、我々はセールスフォースドットコムの「Sales Cloud」を即契約し、リードから商談、受注までをSaaSで管理しながら動くことに決めました。

子会社であるPriv Techから始めるグループ全体のDX戦略

その後、Priv Techの「Sales Cloud」の活用方法をグループ全体に横展開すべく動き出し、今まさに導入を進めているところです。コロナ禍でグループ全体のDX推進が課題となっていたため、横展開までを視野に入れてPriv TechからスモールにDXを始め、グループ全体へと導入していく運びとなりました。

最終的には、グループ会社を横断して、顧客リストやリード情報が可視化され、商談の進捗状況も一目で分かりやすくなる予定です。日々のリード創出から、グループ全体のヨミ管理の精度まで向上させていくことがゴールだと考えています。

始めの一歩は、営業領域の「Sales Cloud」からですが、次は「Slack」をグループ全体に導入することを検討しています。またすぐに一大プロジェクトが待ち構えているかと思うとプレッシャーに感じますが、グループ全体の効率化がDXによって進むことにより、グループの売上や利益にも貢献できるのではないかと考えています。

オンラインアシスタント

DXはIT化だけでは実現できない

本記事の冒頭にも記載しましたが、Priv Techのフルコミットメンバーは5名です。その5名は、経営企画やプロダクト企画、営業などさまざまな業務領域を兼務している状態です。特に、創業フェーズである現在は、本来であればプロダクト創りに専念したいところです。そこで、創業後すぐに契約したオンラインアシスタントサービスが「キャスタービズ」です。
DXと聞くと「デジタル化」を意味していると思いがちですが、本来の目的はデジタルやITを浸透させることによって、普段の業務や生活が効率的に、そして豊かになることだと考えています。業務の効率性を目的として考えるのであれば、ITだけではなく、人的リソースを上手に使うことも重要ではないでしょうか。Priv Techでは、業務領域単位で社内リソースと社外リソースのどちらを使うかを切り分けており、バックオフィス系の業務のほとんど全てを「キャスタービズ」にアウトソーシングしています。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を利用する目的と近いかもしれません。人が手作業で行っていた業務をロボットによって自動的に処理させるのがRPA、自動化が難しい業務を我々に変わって対応してくれるのが「キャスタービズ」といったイメージです。

具体的には、月額10万円で30時間分の業務を行っていただいています。時間単価で換算すると、3,333円/時間です。これは、Priv Techメンバーの報酬を時給換算した場合よりも低い単価となります。
そのため、Priv Techメンバーにはコア業務を、そして「キャスタービズ」にはノンコア業務をという分担で、徹底して切り分けているのです。

コミュニケーション基盤は、「Slack」

「キャスタービズ」のフロント担当には、Priv Tech専任の方を付けていただいています。我々はそのフロント担当の方と日々コミュニケーションをとり、実業務の多くは裏側にいる「キャスト」と呼ばれるクラウドワーカーさんたちに行っていただきます。
つまり、業務を円滑に進めていただくためには、フロント担当の方とのコミュニケーションが肝となります。そのコミュニケーション基盤としては、前編でご紹介した「Slack」を活用しています。フロント担当の方にもPriv Techメンバーの一員として「Slack」に参加していただくことで、ストレスなくノンコア業務を切り出すことに成功しました。

今後のDXの方向性

前編と後編の2回に分けて、我々が実践しているDXをご紹介しました。今後、さらなるDXの戦略として我々が考えていることは、「All Vector」という観点です。「Sales Cloud」の事例でも書きましたが、Priv Techからスモールスタートし、グループ全体へ横展開する流れのことを指しています。
大きい組織で、いきなり全てをデジタル化するというのは、難しく非現実的だと思います。
一方、今回の我々がとったプロセスは再現性が高いと考えています。全社へと導入する前に、まずは一部組織や子会社からスモールにDXを実践し、そしてその成功体験と共に仕組みやノウハウを横展開するのが望ましいのではないでしょうか。
我々は、まだ道半ばですが、またDXに関する進捗や面白い事例が挙がった際には、記事としてお届けしたいと思います。引き続きよろしくお願いします。
中道 大輔
Priv Tech株式会社 代表取締役
株式会社ベクトル Chief Privacy Officer 兼 新規事業戦略室 室長

ソフトバンク株式会社やヤフー株式会社にて、データビジネス領域の事業開発や新規事業を複数経験。キャリアを通じて、データ軸やデジタルマーケティング領域でのビジネス開発を得意とする。    
2020年3月Priv Techを設立し、ベクトルグループにジョイン。Priv Techでは、GDPRや改正個人情報保護法への対応ソリューションの提供など、プライバシーファーストな事業を展開。また、親会社ベクトルにてCPO(Chief Privacy Officer)と新規事業戦略室 室長に就任。CPOでは、ベクトルグループを横断して、ユーザーのプライバシーやパーソナルデータを守る関所としての意思決定機関を、新規事業戦略室ではPriv Tech以外にも新規事業の戦略立案を行う。

人気記事

住友生命が「保険を売らない」フラッグシップ店を銀座の超一等地に出店した理由。住友生命社長 高田幸徳氏×立教大学ビジネススクール田中道昭教授対談

住友生命が「保険を売らない」フラッグシップ店を銀座の超一等地に出店した理由。住友生命社長 高田幸徳氏×立教大学ビジネススクール田中道昭教授対談

デジタルシフトが加速するなか、大きな変革を求められている保険業界。そんななか「リスク」に備えるだけではなく、リスクを「減らす」健康増進型保険“住友生命「Vitality」”を提供するなど、デジタルの力でいち早く事業変革を実践しているのが住友生命保険相互会社です。今回はそんな同社が8月24日に銀座にオープンさせたばかりの「住友生命『Vitality』プラザ 銀座Flagship店」を舞台に実施された、同社の社長高田幸徳氏と立教大学ビジネススクール田中道昭教授の対談の模様をレポート。前編では、高田社長自ら銀座Flagship店をご案内いただきながら、銀座の一等地に「保険を売らない」保険ショップをオープンさせた狙いや、Vitalityによって住友生命が実現したいビジョンについてお話を伺いました。

「8割以上の精度で、赤ちゃんが泣く理由が判明」CES2021イノベーションアワード受賞。注目の日本発ベビーテック企業とは

「8割以上の精度で、赤ちゃんが泣く理由が判明」CES2021イノベーションアワード受賞。注目の日本発ベビーテック企業とは

テクノロジーの力で子育てを変えていく。そんなミッションを掲げ、泣き声診断アプリや赤ちゃん向けスマートベッドライトなど、画期的なプロダクトを世に送り出してきたファーストアセント社。「CES2021 Innovation Awards」を受賞するなど、世界的に注目を集めるベビーテック企業である同社の強さの秘密とは。服部 伴之代表にお話を伺いました。

世界のMaaS先進事例7選。鉄道・バス・タクシーなど交通手段を統合したサブスクモデルも!

世界のMaaS先進事例7選。鉄道・バス・タクシーなど交通手段を統合したサブスクモデルも!

国内でMaaS(Mobility as a Service)実証が活発化している。新たな交通社会を見据え、既存の交通サービスの在り方を見直す変革の時期を迎えているのだ。 交通社会は今後どのように変わっていくのか。MaaSの基礎知識について解説した上で、海外のMaaSに関する事例を参照し、その変化の方向性を探っていこう。

日本初フリマアプリ創業者、フィンテックで第二の挑戦。「家計簿プリカ B/43」とは ?

日本初フリマアプリ創業者、フィンテックで第二の挑戦。「家計簿プリカ B/43」とは ?

元祖フリマアプリ「フリル(現ラクマ)」の創業者として知られる堀井 翔太氏が、二度目の起業に挑戦している。次なる舞台はフィンテック。プリペイドカードとアプリを組み合わせた支出管理サービス「B/43(ビーヨンサン)」は早くも若者を中心に人気を集め、2021年7月にはグローバル・ブレインやANRIなどから10億円の資金調達(2020年)にも成功したことを公表しています。フリマアプリをヒットさせた堀井氏が、なぜフィンテックで二度目の起業に挑んだのか。B/43で解決を目指すイシューとは。ユーザーに選ばれるプロダクトを生み出すための秘訣とは。新規事業開発者必見のインタビューです。

デジタルシフトカンパニーへの変遷、中核企業だったオプト3分割の真の狙いとは。デジタルホールディングス 取締役 グループCOO 金澤大輔氏に立教大学ビジネススクール田中道昭教授が迫る

デジタルシフトカンパニーへの変遷、中核企業だったオプト3分割の真の狙いとは。デジタルホールディングス 取締役 グループCOO 金澤大輔氏に立教大学ビジネススクール田中道昭教授が迫る

2020年7月にオプトホールディングから社名を変更したデジタルホールディングス。従来のインターネット広告代理事業に代わり、企業のデジタルシフトを支援する事業を中核に据え、日本社会の挑戦の先陣を切り、社会のデジタルシフトを牽引する存在となっていくことを掲げています。 デジタルマーケティングの先進国アメリカでは個人情報を保護する法整備が進み、Web上でのクッキーの使用に大きな制限がかけられた結果、ウォルマートのような膨大な顧客データを持つ企業が自らメディア化する流れが生まれています。そんな中、日本の広告産業はどう変化していくのか。また企業のデジタルシフト事業を中核に据えたデジタルホールディングスはどう変化していて、変革の先にどんな未来を見据えているのか。元株式会社オプトの代表取締役社長CEOにして、現在は株式会社デジタルホールディングス 取締役 グループCOOを務める金澤大輔氏をゲストに迎え、立教大学ビジネススクール田中道昭教授がお話を伺います。

大手ゲーム会社も注目!今後のNFT市場をゲームが牽引する理由。

大手ゲーム会社も注目!今後のNFT市場をゲームが牽引する理由。

今年に入り、突如として注目度の高まった「NFT(非代替性トークン)」というキーワード。アート業界のバズワードとして認識している人も多いかもしれません。ところが実は、NFTはゲーム業界の未来、IP(知財)コンテンツの未来を考える上でも欠かせないキーワードであることをご存知でしょうか。そこで今回お話を伺ったのが、世界No.1を記録したNFTを活用しているブロックチェーンゲーム『My Crypto Heroes』(現在の運営はMCH社)を開発したdouble jump.tokyo株式会社の代表取締役 上野 広伸氏です。この新たなテクノロジーは、ゲームの世界にどのような変化をもたらすのでしょうか。そのポテンシャルに迫ります。

【保存版】全企業の経営者・DX推進者に贈る、デジタルシフトを成功に導く10箇条

【保存版】全企業の経営者・DX推進者に贈る、デジタルシフトを成功に導く10箇条

新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、デジタル化が遅れていると言われ続けていた日本でも「デジタルシフト」「DX」という言葉を聞かない日はありません。しかし、その重要度や緊急度に対して、正しく認識できていない企業・経営者はまだ多いというのが現状です。 アメリカのコンサルティングファーム「イノサイト」によると、S&P500を構成する企業の平均寿命は年々低下してきており、2027年にはわずか12年になると予想されています。自動車に保険、ヘルスケアから不動産まで、GAFAをはじめとする巨大テック企業の影響を受けない業界は、今や皆無と言っても過言ではありません。あらゆる業種・業界が飲み込まれる「デジタル産業革命」待ったなしの現在、具体的にどのような手順、心構えでデジタルシフトに臨むべきなのか? 事業ドメインをデジタルシフト事業へと変更し、多くの産業・企業のDXを支援している株式会社デジタルホールディングス 代表取締役会長の鉢嶺 登氏は、「中途半端にDXに着手する企業は大抵失敗する」と語ります。

コロナ禍でラジオが復権!? 民放ラジオ業界70年の歴史を塗り替えたradiko(ラジコ)の「共存共栄型 DX」とは

コロナ禍でラジオが復権!? 民放ラジオ業界70年の歴史を塗り替えたradiko(ラジコ)の「共存共栄型 DX」とは

Clubhouseをはじめ、新勢力が次々と参入し、拡大を見せる音声コンテンツ市場。その中で、民放開始から70年の歴史に「大変革」を巻き起こしているのが“ラジオ”です。放送エリアの壁を取り払う、リアルタイムでなくても番組を聴けるようにするといった機能で、ラジオをデジタル時代に即したサービスに生まれ変わらせたのは、PCやスマートフォンなどで番組を配信する『radiko(ラジコ)』。今回は、株式会社radiko 代表取締役社長の青木 貴博氏に、現在までのデジタルシフトの歩みと将来の展望について、お話を伺いました。

Googleやビル・ゲイツも出資する“代替肉”スタートアップ「インポッシブル・フーズ」〜海外ユニコーンウォッチ#2〜

Googleやビル・ゲイツも出資する“代替肉”スタートアップ「インポッシブル・フーズ」〜海外ユニコーンウォッチ#2〜

「ユニコーン企業」ーー企業価値の評価額が10億ドル以上で設立10年以内の非上場企業を、伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほどに珍しいという意味だ。かつてのfacebookやTwitter、現在ではUberがその代表と言われている。この連載では、そんな海外のユニコーン企業の動向をお届けする。今回は欧米を中心に注目されている「代替肉」を扱う「インポッシブル・フーズ」を紹介する。

人×デジタルの力でウェルビーイングに寄り添える生命保険会社へ。住友生命社長 高田幸徳氏×立教大学ビジネススクール 田中道昭教授対談

人×デジタルの力でウェルビーイングに寄り添える生命保険会社へ。住友生命社長 高田幸徳氏×立教大学ビジネススクール 田中道昭教授対談

デジタルシフトが加速するなか、大きな変革を求められている保険業界。そんななか「リスク」に備えるだけではなく、リスクを「減らす」健康増進型保険“住友生命「Vitality」”を提供するなど、デジタルの力でいち早く事業変革を実践しているのが住友生命保険相互会社です。今回はそんな同社が8月に銀座にオープンさせたばかりの「住友生命『Vitality』プラザ 銀座Flagship店」を舞台に実施された、同社の社長高田幸徳氏と立教大学ビジネススクール田中道昭教授の対談の模様をレポート。後編では、4月1日の就任から半年を経た高田社長の所感をはじめ、同社が掲げる新たな事業戦略、高齢化社会においてVitalityが果たす役割、生命保険業界の未来などについてお話を伺いました。

Googleやビル・ゲイツも出資する“代替肉”スタートアップ「インポッシブル・フーズ」〜海外ユニコーンウォッチ#2〜

Googleやビル・ゲイツも出資する“代替肉”スタートアップ「インポッシブル・フーズ」〜海外ユニコーンウォッチ#2〜

「ユニコーン企業」ーー企業価値の評価額が10億ドル以上で設立10年以内の非上場企業を、伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほどに珍しいという意味だ。かつてのfacebookやTwitter、現在ではUberがその代表と言われている。この連載では、そんな海外のユニコーン企業の動向をお届けする。今回は欧米を中心に注目されている「代替肉」を扱う「インポッシブル・フーズ」を紹介する。

「8割以上の精度で、赤ちゃんが泣く理由が判明」CES2021イノベーションアワード受賞。注目の日本発ベビーテック企業とは

「8割以上の精度で、赤ちゃんが泣く理由が判明」CES2021イノベーションアワード受賞。注目の日本発ベビーテック企業とは

テクノロジーの力で子育てを変えていく。そんなミッションを掲げ、泣き声診断アプリや赤ちゃん向けスマートベッドライトなど、画期的なプロダクトを世に送り出してきたファーストアセント社。「CES2021 Innovation Awards」を受賞するなど、世界的に注目を集めるベビーテック企業である同社の強さの秘密とは。服部 伴之代表にお話を伺いました。

世界のMaaS先進事例7選。鉄道・バス・タクシーなど交通手段を統合したサブスクモデルも!

世界のMaaS先進事例7選。鉄道・バス・タクシーなど交通手段を統合したサブスクモデルも!

国内でMaaS(Mobility as a Service)実証が活発化している。新たな交通社会を見据え、既存の交通サービスの在り方を見直す変革の時期を迎えているのだ。 交通社会は今後どのように変わっていくのか。MaaSの基礎知識について解説した上で、海外のMaaSに関する事例を参照し、その変化の方向性を探っていこう。