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「若者の車離れ」から一転、若者がWebで車をサブスク利用する時代に!?トヨタ自動車豊田社長の命を受け、自動車業界に大変革を起こすKINTOの全貌に、立教大学ビジネススクール田中道昭教授が迫る

100年に一度の大変革期を迎えていると言われる自動車業界。Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)といった「CASE」と呼ばれる新しい領域で技術革新が起こり、テスラなどのベンチャー企業の台頭も著しい領域です。そんな自動車業界において、長らく変化が起きてこなかったのが車の「売り方」。その「売り方」を変えるというミッションで、トヨタ自動車 豊田章男社長の命を受けて立ち上げられたのが、愛車のサブスクリプションサービス KINTOです。KINTOは自動車業界に一体どんな変化をもたらし、どんな世界を目指すのか。株式会社KINTO 代表取締役社長 小寺信也氏をゲストに迎え、立教大学ビジネススクール田中道昭教授がお話を伺います。
前編は、小寺社長のトヨタ時代の経験やKINTO立ち上げの背景、「若者の車離れ」にサブスクリプションモデルがどう受け入れられたのか、など、KINTOが躍進する理由について伺います。

*本稿は対談の要旨であり、実際の対談内容は動画をご覧ください。

自動車業界100年に一度の大転換期に、売り方も変える。トヨタ自動車 豊田社長から直々に受けたミッションがKINTOのはじまり

田中:デジタルシフトタイムズ田中道昭です。本日は、株式会社KINTOのKINTO TOKYO ジャンクションにお邪魔しておりまして、本日のゲスト 株式会社KINTOの代表取締役社長の小寺社長にお話を伺います。本日はよろしくお願いいたします。

小寺:今日はどうもありがとうございます。

田中:まず後方をご覧頂くと、KINTOの文字の両側に白い雲のようなものがあります。小寺社長、いきなりで恐縮ですが、KINTOという名前との由来がきっとあるのではないかと思うのですが。

小寺:はい。最初にお伝えしておくと、KINTOの名付け親はトヨタ自動車の豊田章男社長です。

田中:すごいですね。ご本人から。

小寺:はい。名前の由来は、西遊記の觔斗雲(きんとうん)から来ています。

田中:ではこの両側の白いものは、やはり雲なわけですか?

小寺:はい、雲をイメージしています。觔斗雲(きんとうん)はモビリティという意味で言うとすごいのです。CO2を出さない、排気ガスを出さない、騒音も出さない、なおかつ自動運転です。理想的な乗り物なので、それをイメージして觔斗雲(きんとうん)。そこからKINTOと。

田中:觔斗雲(きんとうん)からきているKINTOなのですね。なおかつ豊田社長自らが名付け親ということで。

小寺:そうなんです。

田中:さらにいきなりで恐縮ですが、元々小寺社長はトヨタの本体で常務やEVP(エグゼクティブ・バイスプレジデント)を務められて、豊田社長の命を受けて、KINTOを始められたと伺っています。せっかくなのでいきなりその話題から入りますが、どんなミッションを豊田社長から受け、今どんなことをされているのでしょうか。

小寺:私は3年前の2018年の1月にトヨタファイナンシャルサービスに移り、それからKINTOの事業案を手掛けています。異動直前に、トヨタ自動車の社長である豊田から呼びつけられ「今、自動車業界は100年に一度の大転換期にある。特に自動運転の開発やEVなど、色々な技術開発は進んでいるが、こと売り側を見てみると何も変わっていない」と話をされました。

田中:売り側が変わってない、と。

小寺:はい。これは車ができてからずっと同じです。基本的に、車の良さをお客さまに知ってもらう説明をして、場合によっては試乗してもらい、最後に値引き交渉。それで、お客さまにご納得頂ければ買ってもらう。このやり方だけなんですね。これだけ世の中にデジタルマーケティングが普及してきている中で、車の売り方は変わっていない。こんなことが続くわけがないので、売り方のところでも大変革を起こして欲しいということで、「新しい売り方を考えろ」というお題をもらいました。

田中:「新しい売り方を考えろ」というのがミッションだったんですね。

小寺:ええ、それがミッションでした。世の中で保有から利活用へのシフトが起きていたので、車も必ず同じことが起きるに違いない。そうすると、車は我々OEM側が保有してお客様に利用して頂くということになるので、アセットビジネスになる。ですからファイナンスカンパニーが後ろ側にいないと多分新しい売り方は作れないだろうと。それでトヨタ自動車からトヨタファイナンシャルサービスにいって、そこで新しい売り方にチャレンジしている。そういうことです。

田中:なるほど。呼びつけられたというお話ですけれども、なかなか呼びつけて頂ける方も少ない中で、そのミッションを受けて。その時からサブスクリプションというアイデアはあったのか、あるいは1年ぐらい練りに練って考えられたのか、どのような経緯だったのでしょうか?

小寺:最初はやっぱりピンと来なくて。何のことかな?という感じだったんです。

田中:本当に考えろということで、そこからは委ねられたわけですね。

小寺:はい。それで18年の1月に移籍するまでの数ヶ月間は結構悶々としていましたね。

田中:悶々としますね。

小寺:本当に何をすればいいのかな?というのもありましたし、自分はもしかするとクビになって外に追い出されたのか、本当に何かを期待されてるのかが分からず悶々としながら色々考えていました。ただ、保有から利活用の世界に入ってきて、何かやろうとすると、たぶんベースになるのはサブスクリプション、あるいはフルサービスリースという形態だろうということを思いついて、そこから一年ぐらいかけて構想を練って。それで1年後、19年の1月にこの会社を立ち上げました。

田中:なるほど。小寺社長はトヨタ自動車で本当に輝かしいご経歴をお持ちで、営業部門の商品企画や経営企画、マーケティング部を歴任されてきました。売り方を考えろというお題もそういったバックボーンがあったからなのかもしれません。本当はここからお伺いするべきだったかもしれませんが、まずは小寺社長のトヨタ自動車における略歴をお聞かせいただけますか?

小寺:はい。私は昭和59年にトヨタ自動車に入社しました。トヨタ自動車販売とトヨタ自動車工業が合併したのが57年なので、トヨタ自動車二期生になります。基本的には営業部門が長く、その他には企画系の仕事、商品企画やマーケティング企画、事業企画などをほぼ一貫してやってきました。そして、部長になる少し前くらいから「変わった仕事は小寺に回せ」と言われることが増えていきました。短期のプロジェクトを転々とするような、そういう仕事を10年ぐらいしていましたね。

田中:その「変わった仕事は小寺さんに」というのは、自分では評価しがたいかもしれませんが、どういうところに着目されたのだと思われますか?変わった仕事というのも、実際には色々な意味があると思います。まさに今回も新しい仕事で、豊田社長からのミッションですよね。

小寺:人間が少し変わっているということだと思うのですが(笑)。よく例えとして人に伝えるのは、少し変わった小難しいことは得意で、簡単なことが下手なんですよ。ゴルフに例えて言うならば、木の下からのリカバリーショットは結構うまく打つんです。

田中:木の下からのリカバリーショットが得意なんですか(笑)?

小寺:そうなんです、逆にフェアウェイから打つとシャンクして横にボールが飛んでいってしまう。仕事ぶりもそんな感じなのです。

田中:そうですか。なるほど。

小寺:ええ、それで飽き性なので。短期にガッと集中して何かを立ち上げて、また次のお題と言われた方が気持ちも盛り上がるところはありますね。

田中:今回、対談にあたってプロフィール、略歴書を秘書の方から頂きましたが、本当に短期で次々と重要なセクションを動かれています。そういう意味では元々のご性格としてもそれがあっていたし、むしろ小寺さんの強みを活かすような配置がずっと続いてきたということなのですかね。

小寺:たまたまそういう仕事に巡り会えた部分はあると思います。

田中:やはりこれだけの頻度で重要なところに移っていくというのは、トヨタ自動車の中では珍しいローテーションなんですか?

小寺:珍しいと思いますね。やはり大きな会社なので、大きな組織の長を何年も続けてやるのが一般的なパターンですから。そもそもプロジェクトチームそのものがそんなに多くはありませんので。

田中:そうですか。ということは、どちらかと言うとプロジェクトができる度にそのチームにという感じですかね?

小寺:イメージ的にはそんな感じでしたね。

田中:そうですか。前にお話をお伺いした時に、テスラとトヨタとの協業時のご担当もされていたということで。なかなか答えづらいとは思いますが、小寺さんは個人的にテスラをどう評価されていますか?

小寺:今のテスラとは経営陣などがほぼ入れ変わってるのですが、すごく魅力的な会社でした。

田中:どういったところが魅力的だったのでしょうか。

小寺:ものすごくパッションを持っていて、めちゃくちゃ働く人たちのかたまりのような。一途だったですかね。

田中:イーロン・マスク自身も非常にハードワーカーで有名な人ですもんね。

小寺:雰囲気としては、昭和時代の高度成長期の日本の会社のような感じです。

田中:高度成長期の日本の会社。

小寺:もうとにかく働いていました。

田中:そういう意味ではきっと、高度成長期のトヨタ自動車もそういう感じだったのでしょうかね?

小寺:そうだったと思います。最初の頃、1年2年ほどテスラに通っていて、イーロン・マスクは流石に出てこられないのですが、経営陣とご飯を食べに行くんですね。飲みに行って話してると、最近の若い奴らは面白くないと。誘っても飲みに来ないんだと。シリコンバレーのテスラの人もこんなこと言うんだな、と思いました。

田中:なるほど。やはりハードワークも時によっては必要ということですね。

小寺:だと思いますね。

田中:本当はもう少し突っ込みたいところですが、テスラの話はこの辺にさせていただきます。

そのように様々な重要プロジェクトをされてきた中で、今のミッションを受ける前の職歴で言うと、思い出深いプロジェクトはどういうものになりますか?

小寺:今やっていることが一番面白いです。

「クルマの愛し方を拡張する」。顧客と継続的に良い関係を築いていくために採用したのがサブスクリプション

田中:は早速今やっていらっしゃることに入らせていただきます。まずは私としては経営者である小寺さんに、KINTOというビジネスに対する哲学や思い、こだわりからお伺いしたいと思います。小寺社長のこのKINTOという会社における哲学というのは、一言で言うとどんなところになりますか?

小寺:KINTOが提供するサービスはサブスクリプションと呼ばれるのですが、正しくは「愛車サブスクリプション」です。愛車という言葉をつけてあるんです。これも実はトヨタ自動車の豊田社長のこだわりなんですけれども。

田中:よく使われますよね。

小寺:車はいつまでも愛おしい存在でいてほしいから、利活用の世界でカーシェアになってもコモディティ化するのは嫌だと。こういう思いが強いんですね。それをサポートするようなサービスを我々が提供したいなと思っていまして。なので、車ともっと気軽に付き合って欲しい、車を楽しんでほしい、こういうことをサービスメニューに展開してお客様に提供しようと、こんな会社であり続けたいと思っています。

田中:なるほど。そういう意味では元々、現状のKINTOのサイトに小寺社長の経営の哲学として「クルマの愛し方を拡張する」という言葉が書かれていて、すごく感銘を受けました。車の愛し方を拡張する会社がKINTOであると。

小寺:ちょっとカッコよく言い過ぎですかね。

田中:本当に、車の乗り方ではなくて愛し方を拡張するというところが見事に表れてるなと。要するに、名実ともに、おっしゃっているだけではなくて、実際の商品サービスに表れているなと思ったのが、「モビリティマーケット」というサービスです。「モビリティマーケット」自体が車の愛し方を拡張するサービスだと思うのですが、そんな文脈も踏まえてご説明いただけますでしょうか?

※モビリティマーケット
株式会社KINTOが、2021年4月に立ち上げる、国内外の企業と提携し、多様なモビリティサービスを提供するオンラインプラットフォーム。


小寺:我々が若い頃、車が暮らしの真ん中にありました。車は憧れの存在だったのです。車があると、例えば週末が楽しくなる、人生が豊かになる、そういう存在でしたが、今若者の車離れで車の存在はどんどん端っこに追いやられてしまっています。これを真ん中に戻すために何をやるべきなのかと考えた時に、昔のように車で楽しむあの世界をもう一度再現すればいいのではないかと。

今、世の中は情報に溢れていて、車がなくても楽しいことはたくさんあります。逆に車で楽しもうと思ってインターネットでリサーチしても、そういうことに行き着かないんですよ。だったら車で楽しもうと思った人は皆さん一回このサービスに入ってください。ここにいろんな楽しみ方、車との付き合い方があるので、迷ったらここに来てくださいと、そういうサービスを提供したかったのです。

田中:なるほど。「モビリティマーケット」の中には、トヨタの出資先や関連先、提携先など様々なサービスが含まれていると思います。車の乗り方ではなくて車の愛し方を拡張するということで言うと、例えばバンライフ。車を移動の手段だけではなく、そこに住んでしまう、その中で色んなものを楽しむ。やはりそれはまさに最初に車の愛し方を拡張するというミッション、ビジョンから派生しているのでしょうね。

小寺:「モビリティマーケット」は車関連、あるいは車を使った楽しみ方を売っていて、当たり前ですが、車を売ってはいません。車を売るサブスクリプションサービスと、車を売らない車の楽しみ方を売る「モビリティマーケット」の、今のところ2本柱です。

例えばバンライフにしても、キャンピングカーにしてもそうですが、週末そういうことをやりたいと思った時に、自分の持っているプリウスではやはり小さくて行けないわけです。だったら週末だけこういう車借りてみたらいかがですか?と提供すればいいのですが、キャンピングカーってどこで借りるんだっけ?というのがよくわからないですよね。キャンピングカーを使ったことがないと、初めて使うのはやはり度胸がいるしわからない。ですからそれをパッケージにして、ここに行って一泊二日で遊んできて頂いて、ここまでセッティングして、はいどうぞというと、入っていきやすいのではないかと。

こういうものをどれだけバリエーション多く持てるかどうかが、これからの我々のターゲットです。より拡充していきたいですね。

田中:そういう意味では「モビリティマーケット」に、サブスクリプションの本質が表れてるのかなと思います。従来の車というと、ほとんどの場合は自分でお金を出して買うか、ローンか、リースかというところで、売り方も販売店が中心だった。まさに豊田社長からのミッションとして、売り方から根本的に変えるという中でサブスクリプションを選ばれた。

私はサブスクリプションというのは、本質的には売り方や支払い方の違いではなく、やはり顧客との継続的な関係性だと思うのです。いかに顧客と、関係性というのも企業からの上から目線ではなく、顧客とのフラットな関係性、非常に継続的で親密な関係性が結べていないと解約されてしまう。ですからそういう関係性が求められているのかサブスクリプションなのだと思います。

そういうフラットな関係性が一旦顧客と、なおかつ今だとデジタルやスマホの中でできてしまうと、他のサービスをアップセル、クロスセルするという観点で言うと、従来の車を売るだけの関係性よりは、おそらくサブスクで結ばれている継続的なフラットな関係性の方が強いと思うんです。

そういう中で「モビリティマーケット」のような商品は、おそらく従来のトヨタ自動車よりはKINTOの方がローンチしやすかったと思うのですが、その辺はいかがですか?

小寺:従来ローンにしても、現金売りにしても、トヨタ自動車とお客様との関係で言うと、車を売ったところで関係が切れてしまうのです。いわゆる売りっぱなしで、お客様がその車をどういう風に活用するかは関知しない形態なんですよ。

だったらサブスクリプション、フルサービスリースでずっと我々の車を使っていただいて、その間に様々なカスタマーエクスペリエンスを提供しようと。KINTOはこれができる唯一の形態だと思うんです。ここにどれだけの付加価値をつけられるか。車がスクラップになるまでお客様と付き合っていけるかが、これからの将来の、サブスクリプションの可能性だと思います。

若者の車離れに異変!?20・30代の利用者が多く、Web経由での購入が約6割

田中:そういう意味では、色々なデータを拝見して驚いたのは、まさに売り方が変わったというところで、なんとWeb経由での購入が6割を占めると。チャネルが全く変わりましたよね。車を売るというとディーラーが中心で、それこそWebで売るというのはテスラの世界だと思っていたのですが、なんとKINTOではもうすでにWebチャネルでの販売が6割ということです。これは最初から企図されていたのですか?

小寺:これは蓋を開けてみるまでわからなかったです。目標設定はしなかったのですが、大体の勘では、2、3割かなと。

田中:2、3割程度だと?

小寺:ええ、思っていました。

田中:2、3割だと思っていたということは、残る8割はどんなチャネルだと思われていたんですか?

小寺:やはりトヨタの販売店ネットワークには強力な販売力がありますので、そこに私たちもすがりたかったというのもありますし、彼らにWebは勝てないだろうと思っていました。そしたらそうでもなく、だんだんわかってきたのは、販売店と深い関係性を保っているお客様もいれば、敷居が高く少し苦手というお客様もいらっしゃる。特に若い方々、今中古車に乗っている方や初めて車を買う方にとっては敷居が高いんですよね。そういう意味では、Webには商品情報が全部ありますので、心ゆくまで検討するという買い方が今の時流には合ってるのかなと感じています。

もう一つびっくりするのは、契約の時間帯です。契約のゴールデンタイムが夜の9時から11時で、これは販売店が開いていない時間帯です。9時から11時というと、多分家で食事を終えて、そこからインターネットで車選びを始めて契約にいたる。もう一つのゴールデンタイムは平日の昼休みです。おそらく会社勤めの方々が昼休みのちょっとした時間を使って最後の契約を入れるということが起きています。それから正月三が日の朝の4時とか5時の例もあります。

田中:正月三が日に売れてしまうわけですね。

小寺:売れるんですよ。お盆休みも同じです。

田中:そもそもディーラーが開いていないですね。

小寺:ええ、ですからディーラーやってない時の方が、車が売れるのではないかと、みんな驚いていますよ。

田中:そうですか。Web経由の契約が6割というのはマーケティング的に色々なことを物語っていると思います。まず、KINTOの利用者のプロファイルを拝見した時に、従来の車の購入層と比べると断然若年層、二十代三十代がすごく多いですよね。これも企図はある程度されたのでしょうが、ここまで通常の販売よりも若い人が利用しているというのは、やはり想定以上ですか?

小寺:想定以上ですね。もちろん若者の車離れと言われている中で狙いではありましたが、ここまでウェイトが大きくなるとは、正直思っていませんでした。

田中:なるほど。あとは利用状況でもうひとつ驚いたのが、これまで全く車を買われたことがない、免許は取ったけれども自分でリースなのかローンなのか現金なのかはともかく、全く車を保有したことがない人が、相当KINTOを利用されていることです。これはどう分析されているのでしょうか?

小寺:先ほど申し上げたとおり、販売店に来て商談をするのが苦手な方もいらっしゃいますし、あと理由として大きいのは、任意保険に関する課題です。任意保険には、ご存知の通り等級があり、車を最初に買って任意保険に入る時の金額は高いのです。無事故を繰り返すとだんだん安くなっていきますが、これが、金銭的にハードルが高くなる要因でもあります。KINTOの場合はこの料金も組み込んで、等級を外しています。

田中:等級を外してるわけですか?

小寺:ええ、何歳の方が買われても同じ価格です。ですから、この等級を平たくいうと平準化した、そんなコンセプトです。

田中:それはやはり保険会社とかなり交渉されて実現されたのでしょうか?

小寺:交渉というか一緒に作り込んだという感じです。

田中:そうですか。料金が魅力的な秘訣になったということですね?

小寺:初めて車を買うお客様には大変魅力的な価格になったと思います。

田中:やはり自動車保険は本体高く、バカにならない金額ですしね。あとは20代30代の人が多いのは、マーケティング的に、テレビCMで菅田将暉さんを起用されていることも大きいのではないかと思います。時系列でいくと、ああいう若い俳優さんを起用されたので、若い人たちが目を向けたという面と、そもそもサブスクリプションという価値観に対して若い人が共感を持ったという面の、どちらの方が先だったのでしょうか。

小寺:我々が一番に難しそうだと思ったのは、とにかく商品の認知度を上げることでした。KINTOという名前を聞いたことがない、車のサブスクリプションがなんだかさっぱり分からないという方々に、まず名前だけでも覚えてもらおう、商品の理解はその次にくると考えました。

名前だけでも覚えてほしいという時に、このデジタルマーケティング全盛の世の中でも、やはりテレビコマーシャルは相当効き目があります。そこに良いコマーシャルが作れて、これがたまたま当たって。今は認知度で言うともう5割の手前ぐらいです。

田中:もうそこまで来てるわけですね。そしてやはりテレビCMのプロモーション戦略にそういうフィロソフィーがあって、それが今の結果にもつながっているということですね。

コロナ禍、マイカー需要の見直しで契約数が躍進。ついにはレクサスがサブスクで登場

田中:もう一つお伺いしたいのは、コロナ禍で一気にKINTOの契約件数が伸びたということです。コロナ禍において自動車の販売自体他のモビリティよりは活躍されており、その中でも特にサブスクのKINTOの件数がコロナ禍で増加したというのは、どういう風に分析されていらっしゃるのでしょうか?

小寺:KINTOが増加したというよりも、車の魅力そのものが再認識されたということだと思います。やはり公共交通機関で満員電車に乗って移動するのは少し怖いということがあります。週末移動するなら自分の車という閉鎖された空間で、家族と一緒に出かけたい。「やっぱり車って悪くないよね」と見直され、今車を買おうかなと思う人の比率がだんだん上がってきている。その流れに乗っかっているのだと思います。

それから、ステイホームで販売店に行くのも難しいという時に、インターネットで全部情報が入るというのも大きいと思います。Webで全てが検索できて、なおかつ契約までできますので、その点もWeb比率が上がることに貢献しているのかなと思います。

田中:なるほど。そんなことでサブスクの今の利用状況をお伺いしましたが、一方でいろんな手を打たれていて、利用可能な車種もすごく増えていますよね。元々15車種であったところ、一月の発表では31種に増えていますし、あと昨年からはなんとサブスクでレクサスまで乗れるということでした。車種を増やし、なおかつ新型の人気の車種投入については、トヨタ自動車との交渉上大変なのか、あるいはすごく歓迎されているのか、どちらなのでしょうか?

小寺:トヨタ自動車との交渉はあまり関係なく、我々の商品設定の能力の問題でした。最初は小さい会社だったので車種を絞って5車種で立ち上げ、それでいろんなトライを繰り返して、 PDCA を回していく中で次第に色々なことが分かり、商品を作りやすくなってきたので、それならフルラインナップ化しようかということで、レクサスも取り入れたわけです。

田中:なるほど。レクサスをサブスクする人というのは、やはりレクサスを従来買っていた人とは違うのですか?

小寺:結構似通っている感じがしています。トヨタと比べると個人事業主の方の比率が高いです。いわゆる彼らはもともとリース商品に対する理解があり、このサブスクリプションがいいのではないかと乗り換えてくださっている、ということですね。

それからもう一つは商談の簡単さで、販売店に行かなくても、夜中にワンクリックすれば買えるということ。レクサスのお客様は、レクサスのこの車と決めてる方が多いですから、そういう人にはあっているのかもしれないですね。

田中:なるほど。そういう方は従来通り販売店に行って、買い方・使い方というところでサブスクを選ぶ方が多かったので、新規層と同じようにWebから入ってというよりは、従来通り選んでいる中で乗り方をサブスクで選んだという感じが多いのでしょうか?

小寺:レクサスも店頭で買われる方とWebで買われる方の両方がいらっしゃり、半々か少しWebの方が多いという気がします。

田中:そうですか。では本当に豊田社長のミッションは既にコンプリートしていて、売り方が変わってきているということですね。

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中国企業の最新動向から、DXのヒントを探っていく本連載。今回は、ガソリン車に代わるモビリティとして期待が高まるEV(Electric Vehicle=電気自動車)と、その核とも言える自動運転技術で世界をリードする中国の強さに迫ります。前編では「EV先進国」の名を欲しいままにしているその理由を、国の政策や技術の面から探ってきました。後編となる今回は、自動車産業に参入してきた新興メーカー3社を紹介するとともに、日本の立ち位置の考察、中国が抱える課題を話題に進めていきます。

Facebookも注目の「メタバース」とは何か? スマホ向けメタバース「REALITY」のDJ RIO氏に聞く

Facebookも注目の「メタバース」とは何か? スマホ向けメタバース「REALITY」のDJ RIO氏に聞く

Facebookが社名を変更し、中核事業に据えるほど力を入れる「メタバース」。2021年8月にはグリー株式会社が、今後2~3年で100億円規模の事業投資を行い、グローバルで数億ユーザーを目指すと発表しましたが、その中核を担うのが、グリー株式会社の子会社であり、これまでバーチャルライブ配信アプリを手がけてきたREALITY株式会社です。今回は、そんな同社の代表を務めるDJ RIO氏にインタビュー。そもそもメタバースとは何なのか。なぜこんなにも注目が集まっているのか。メタバースは、世界のあり方をどのように変えるのか。メタバース初心者のビジネスパーソンには必読のインタビューです。

デジタル戦略で生まれ変わるカインズ。ホームセンターからIT小売企業への変遷の軌跡【前編】

デジタル戦略で生まれ変わるカインズ。ホームセンターからIT小売企業への変遷の軌跡【前編】

生産労働人口の減少を受け、日本企業はいよいよ生き残りをかけたデジタル化に取り組まなければいけないと言われるフェーズに入ってきました。とはいえ、それができている企業とそうでない企業との差が激しくなっているのも現状です。 そんななか、ホームセンター大手カインズでは、40年かけて積み重ねてきたホームセンターとしてのあり方を見直し、IT小売企業として生まれ変わろうとしています。カインズでデジタル戦略本部長を務め、戦略の指揮をとる池照 直樹氏に、同社のデジタル戦略についてお話を伺いました。 前編は、カインズがどのようにしてデジタル化を実現させていったのか、具体的な取り組みを交えてお届けします。