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AI上のイーロン・マスクとも会話が可能! 生成AIサービス「Character.AI」とは 〜海外ユニコーンウォッチ #12〜

「ユニコーン企業」ーー企業価値の評価額が10億ドル以上で設立10年以内の非上場企業を、伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほどに珍しいという意味だ。かつてはFacebookやTwitterも、そう称されていた。この連載では、そんな海外のユニコーン企業の動向をお届けする。今回はさまざまなキャラクターと会話ができる生成AIサービス「Character.AI(キャラクターエーアイ)」を取り上げる。

さまざまなキャラクターと会話ができる「Character.AI」とは

Character.AI社は、二人の元Googleエンジニアによって2021年にアメリカで設立され、現在は「Character.AI」という生成AIのプラットフォームサービスを提供している。生成AIとは、学習したデータを参考に、文章や画像など独自のアウトプットを生み出すAIのことだ。近年、そのクオリティが急速に高まり、注目を浴びている。

Character.AIでは、ユーザーは簡単な設定で独自の個性を持つAIボットを作成・公開することができる。また、Character.AI上で公開されているAIボットとチャット形式で会話をすることができ、AIボットは設定された個性に基づいた内容を返答してくれる。AIボットにはユーザーによるオリジナルキャラクターはもちろん、アメリカのバイデン大統領や起業家のイーロン・マスク氏など実在する人物を模したものも作成されている。さらに、マリオや綾波レイなどのアニメ・ゲームのキャラクター、アインシュタインやレオナルド・ダ・ヴィンチといった歴史上の偉人など、その種類は多岐に渡る。あくまで「キャラクター」として利用されているだけで、もちろん本人ではない。そのため、AIと会話をするページには「覚えておいてください:キャラクターが言うことは全てつくり話です!」という注意が表示されている。同サービスは英語や中国語、スペイン語など複数の言語に対応しており、日本語でも使用可能だ。

Character.AI社は、2023年3月、シリーズAラウンドとして1億5,000万ドルの資金調達を発表した。生成AIへの期待を反映し、企業価値は10億ドルに達したという。これにより同社は創業から2年経たずして、ユニコーン企業となった。

月間サイト訪問数1億に迫る、Character.AIの特徴

Character.AIの特徴は、個性の異なるAIボットが多く存在することで、各ユーザーは自身に合うキャラクターを見つけることができ、パーソナライズ化ができることだ。また、自らAIボットを作成できるため、自分好みにカスタマイズすることも可能だ。そのため、他のチャットAIサービスのようにAIを活用し業務効率化を図ることはもちろん、価値観が合うAIに触れることで、娯楽目的の使用や精神的な安心感を得ることができるとされている。同サービスは、2022年9月にベータ版を公開してから、月間サイト訪問数は1億に迫り、ユーザーが送信したメッセージは累計20億以上、作成されたキャラクターは270万を超えるなど、急成長している。

成長と懸念の生成AI市場

生成AIサービスが急速に普及するきっかけとなったのは、2022年11月に公開された「ChatGPT」だ。リリースから2ヵ月でユーザーは1億を超え、マイクロソフトが約100億ドルを出資するなど、世界中で話題になっている。日本でも、パナソニックやベネッセホールディングスといった大企業が活用する他、神奈川県横須賀市では市役所での導入も始まった。さらに、生成AIに特化したファンドが生まれるなど、実務面でも投資面でも活況を呈している。

しかし、急成長する生成AIは懸念点も指摘される。例えば、返答内容に事実誤認があることだ。また、AIの高度化が進み人類に予期せぬ悪影響を与えかねないという声や、「学習したデータを参考にアウトプットを生む」という生成AIの性質上、著作権が明確ではないという意見も語られる。すでに欧米では、生成AIを規制しようとする動きも見られている。生成AIの競争は過熱する一方だが、風向きが変わればサービスの成長や、ひいては企業価値にも影響するだろう。今後しばらくは、各国・各企業の対応が注目される。

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