AIとは?人工知能について基礎から解説

AIという言葉は数十年前から存在していたものの、これまではSFの領域といったイメージをお持ちの人が大多数だったのではないでしょうか。
しかしChatGPTを皮切りに、昨今、AIが身近になりつつあると実感してきた人も多いことでしょう。
そこで本記事では、近年注目を集めているAIがどのような技術なのか、具体的にどういった分野で活用されているのかなどを、基礎的な部分から解説していきます。

AI(人工知能)とは

AIについては明確な定義は定まっていません。
人の知能を模したコンピューターシステムであれば広い意味ではAIといえます。
しかし、一般的に現在では機械学習、深層学習、自然言語処理などを活用したシステムが典型的なAIとみなされます。
では、実際の人の知能とAIにはどういった違いがあるのでしょうか。
これは、まず学習の方法が挙げられます。
人はさまざまな経験から能動的に学習できる一方で、現在のAIは与えられたデータからしか学習できません。
また、社会規範や常識といった定義の曖昧な判断基準を設定することもAIの不得手とするところです。
ただ、これらの難点は徐々にクリアされつつあります。
学習方法については、教師のような役割を持つデータを用意することで、学習データに重み付けをして一定の方向性を保った学習ができるようになっています。
そして、社会規範や常識については生身の人を相手にフィードバック付きのやり取りを繰り返すことで身につける手法が取り入れられています。
AIは人工物であることによって融通の効かなさがどうしても生じてしまいがちです。
しかし、そうした特徴もさまざまな工夫によって克服されつつあるといえます。

AIの定義と歴史的な背景

AIの起源は1950年代に遡ります。
1950年、数学者のアラン・チューリングが著書「計算する機械と人間」ですでに人工的に作られた知能に焦点を当てています。
チューリングマシンやチューリングテストといった言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、それらはこのアラン・チューリングがおこなった思考実験が由来です。
そのアラン・チューリングを皮切りにAI研究はいまに至るまでさまざまな組織・人によって続いています。
代表的なところでは、マサチューセッツ工科大のジョセフ・ワイゼンバウム氏や、アラン・チューリングと同時代のジョン・フォン・ノイマン氏などが挙げられるでしょうか。
また、組織としてはAI研究黎明期からMIT、ARPA、スタンフォード人工知能研究所、エディンバラ大学が主要な研究拠点となっていました。
そんなAI研究は、20世紀末期の1997年にAIがプロのチェスプレイヤーに勝利したことがひとつのマイルストーンになったと言われています。
チェスといえば高度な知性が要求されるゲームのひとつです。
そのプロに勝利したことでAIが人の知能に肉薄したことが証明されたということでしょう。
なお、この時期にAI研究が花開いたのは、コンピューターの基礎的な処理能力の飛躍的な高まりも重要な要因です。
とはいえ、それでも当時のCPUやメモリはメガが基本的な単位でした。
対して、現在、世間を賑わしているChatGPTなどは45TBもの言語データを参照しているとのこと。
そうした技術的なインフラが急速に整ったことを考えると、ここへ来てAI研究が一気に日の目を見ることになったのも決して不思議ではないかもしれません。

AIの種類と分類方法

ひとくちにAIといっても、特化型と汎用型に分類されます。
特化型は読んで字のごとく特定のタスク処理に特化したAIです。
ChatGPTなどは対話型の言語処理に特化したAIといえます。
対して、汎用型AIはいくつものタスクに対応できるAIです。
SFで登場する、人の生活を総合的にサポートするAIなどは汎用型のAIといえますが、現状、研究段階であって実用化にまでは至っていません。
そして、そうしたAIは種類や用途によってコアとなる関連技術も異なってきます。
現在、AI関連技術で一般的なものは強化学習、深層学習、自然言語処理ですが、それぞれAIが活用される分野によって用いられるものが異なります。
このようにAIの進化に伴い新しい種類が生まれたのは、情報インフラの飛躍的な発展が背景にあります。
一般的に、テキスト、音声、画像の順に情報量は飛躍的に増大します。
そうしたデータ量に耐えうるインフラが整うにつれて、AIの種類も徐々に増えてきたというわけです。

AIが使われる分野

自動運転

自動運転はその名のとおり、自動車の運転を完全自動化する技術です。
自動運転搭載車は高精細デジタルマップとGPSを組み合わせて現在地を把握し、車載センサーでその他の情報をリアルタイムに補いつつ、安全に目的地への運転を遂行します。
ただ、従来のロボットの弱点は視覚情報。
かつてのロボットは人の目ほど広範な資格情報を瞬時に判断することはできませんでした。
しかし、AIの登場によってさまざまな個体情報のパターン化が可能になったことにより、刻々と変化する資格情報を処理できるようになりました。
これにより自動運転技術はすでに実用レベルにまで成熟したといわれています。
そして、自動運転が実用化されることで期待される効果は実に広範な領域に及びます。
たとえば、シンプルに交通事故件数が減少するであろうことはまっさきに期待できることです。
あるいは、自動運転によって必要に応じて車を呼び出せることから駐車場が減少し、他の用途による土地の有効活用につながることも期待されます。
そのほか、渋滞解消、エネルギー効率のよい運転実現など多岐にわたる効果も予想されています。
一方で、それだけに実用化には多方面の課題も残されています。
事故発生時の保険の扱い、法的な責任、またドライバー不在による犯罪件数増加や人との交流の減少といった社会的な問題点も指摘されています。
とはいえ、こうした課題すべてを一気呵成にクリアするような解決策を出すのは困難と言わざるを得ません。
あちらを立てればこちらが立たないようなトレードオフの問題も少なくないでしょう。
そのため、自動運転は技術的に成熟しても実用化までにはさらに時間を要すると言われています。
そうした事情から、自動運転は私有地内での試験運用から公共交通、一部の都市での試験導入など、段階を経て徐々に社会へ浸透していくことになるでしょう。

ロボット工学

ロボット工学とは、ロボット関連の技術を研究する学問領域の総称です。
なにをもってロボットとするかは曖昧ですが、いずれにせよロボットを構成するセンサや部品が研究対象で、そしてAIもロボット工学の分野に含まれます。
すでに産業用ロボットは一大マーケットを築いていますが、今後、AIが組み込まれることでさらなる効率化が期待されます。
しかしながら、いまのAIの精度では人の手による管理には一歩及ばず。
完全にAIにオペレーションを任せるにまでは至っていません。
とはいえ、AI導入に意欲的な企業はすでにMLOps(Machine Learning Operations)と呼ばれる、AI開発と運用を一体化させた取り組みを推進しています。
今後、ロボット工学が飛躍的に発展していくのも時間の問題かもしれません。

医療・健康管理

医療・健康管理分野でもAIの活用が期待されています。
一例として、Googleの関連会社であるディープマインド社はタンパク質の立体構造を予測するAIを開発しました。
従来でもタンパク質の立体構造は人の目で調べることが可能でした。
しかし、その組み合わせは膨大で、極めて多額の費用や長い年月を要するものでした。
そこでディープマインド社はAIを活用して2億種類ものタンパク質分子構造の予測をデータベース化。
これによって、これまでにくらべて創薬にかかる時間が飛躍的に短縮される可能性が出てきました。
また、医療・健康管理には高度な知識が必要とされます。
その点、短期間に膨大なデータを学習できるAIは知的作業を担当する人材不足を解消できる可能性もあります。
ただ、医療・健康分野は人の身体に直接的な影響を与えることから倫理的な課題も多数抱えています。
また、医療・健康分野に所属する人は政治的にも大きな発言力を持つことから、AIの普及で権益を脅かされる層の反発も予想されます。
それらを考慮すると、医療・健康分野でAIが普及するのは他分野よりいくぶん緩やかな足取りになるのではないでしょうか。

ファイナンス・ビジネス分野

ファイナンス・ビジネス分野でのAI導入は比較的早く浸透してきたように思えます。
個人向けとしては、資産運用にAIを活用するロボアドバイザーがすでに一般化しています。
また、企業向けとしても、幅広い情報源から有用なものをまとめるキュレーターとしての役割をAIが果たすことになるのではと思います。
ただ、AIは運用を続けるほどに精度が下がっていくことが問題点として挙げられます。
したがって、資産運用などを任せる場合には定期的なメンテナンスが必要です。
そうした保守の部分をいかにして整備していくかがファイナンス分野でのAI活用の主要な課題となるのではないでしょうか。

テキスト・音声・画像処理

テキスト・音声や画像の処理は今後のAIが活用されやすい分野のひとつです。
現在、注目を集めているChatGPTやbardといったサービスは主にテキスト処理に特化したAIです。
しかし、すでにAIは音声処理や画像処理にも対応しています。
画像処理については少し前にMidjourneyが一躍話題になり、その精度の高さに多くの人が驚嘆の声を上げていたのも記憶に新しいはずです。
システムによって差異もあるかとはおもいますが、これらは画像・音声・テキスト情報をベクトル化することで同じように計算可能にすることで実現しました。
これによって、たとえば「ネコ」というテキストと「猫の画像」を紐づけてAIに学習させることができるようになったわけです。
AIがテキスト・音声・画像を扱えるようになったことで、もはや二次元については万能ともいえる領域に達したともいえるかもしれません。
ただ、当然ながらそれにともなう問題も存在します。
よく言われるものはフェイクニュースです。
AIが作成するテキストや画像はもはや人の手によるものか判別が難しいものも珍しくありません。
それらを組み合わせれば極めてもっともらしいフェイクを作るのも容易いこと。
現状は意外と簡単な部分からフェイクと判断できるポイントもなくはないものの、それも技術的には容易に改善できるとされています。
今後、人がAIを活用していくうえではこうした偽情報を見極める能力も求められてくることでしょう。

ChatGPTとは

AIの技術とアルゴリズム

機械学習と深層学習

機械学習とは、機械すなわちコンピューターが自らパターンやルールを学習する方法です。
アルゴリズムは問題解決方法や物事の処理方法です。
たとえば、機械学習のアルゴリズムといえば、コンピューターがどういった手順でパターンやルールを学習するかという流れです。
そして、深層学習は機械学習のアルゴリズムの1種です。
深層学習では、ニューラルネットワークと呼ばれる人の脳神経を模した数理モデルが使われます。
モデルというだけにいくつかの種類があり、現在は「オートエンコーダ」「畳み込みニューラルネットワーク(CNN)」「リカレントニューラルネットワーク(RNN)」が主流です。
オートエンコーダは異常検知に使われやすいアルゴリズム、CNNは画像認識を得意とするもの、RNNは時系列を意識したアルゴリズムです。

自然言語処理とコンピュータビジョン

自然言語処理とは、人が日常的に使用している言語をコンピューター処理に利用する技術です。
一般的に、コンピューターに指示を出すには機械言語が必要です。
CやRuby、Javaといった、いわゆるプログラミング言語です。
そうした機械言語ではなく自然な言葉をコンピューターの入力としてアウトプットを出せる技術が自然言語処理です。
自然言語処理で利用されるアルゴリズムは目的や用途によって異なります。
たとえば、テキスト要約では抽出的要約や生成的要約と呼ばれるアルゴリズムが採用されています。
一方で、テキストではなく画像を処理する技術がコンピュータービジョンです。
単なる画像処理ではなく、三次元情報のアウトプットがあることが特徴です。
三次元を二次元に落とし込む処理がコンピュータグラフィックス(CG)、二次元から三次元を導出するのがコンピュータビジョン(CV)といった説明もされがちです。
そして、コンピュータビジョンのアルゴリズムには主にCNNが活用されています。

強化学習

強化学習とは、機械学習の手法のひとつです。
深層学習との違いは人の干渉があることです。
強化学習では学習内容を人が設定し、必要に応じてアウトプットを評価して適宜修正をおこないます。
強化学習で利用される主なアルゴリズムは「Q学習」「Sarsa」「モンテカルロ法」などです。
そして、人が学習する際に「切磋琢磨」という言葉があるように、AI同士の協力・対戦なども組み合わせた強化学習であるマルチエージェント強化学習と呼ばれる手法も存在します。

クラスタリング

クラスタリングは、ある集合をなんらかの規則(アルゴリズム)で分類することです。
そしてクラスタリングのやり方は主に階層型クラスタリングと非階層型クラスタリングに分けられます。
階層型クラスタリングは、名前のとおり幾段階もの階層を作りながら個々のサンプルをグループ化していく方法です。
しかし、階層型クラスタリングはサンプルをひとつずつグループ化していくことから、大量のデータを対象とする処理には不向きというデメリットがあります。
一方で、非階層型クラスタリングは大容量のデータ分析にも適しているという特徴があります。

AIの課題と将来性

AIの課題と問題点

AIが精度を高めるためには大量の学習データが必要です。
しかし、学習対象となるデータには適切なものを使う必要があります。
たとえば、事実無根のフィクションが多いデータを学習したAIは誤った情報を回答する頻度が高くなるでしょう。
したがって、AI技術には学習対象として十分な品質のデータを適切な方法で集めなければならないという課題があります。
そして、正常にAIが動作しているとしても、そうした回答に至るまでの過程が複雑すぎて人には理解できなくなるという「解釈性・説明性」の問題が生じえます。
また、昨今ではAIに組み込まれるアルゴリズムが学習データの偏りによって特定のバイアスを受け、不公平な判断をすることがあるとの問題も指摘されています。
そのほか、AIへ質問した内容が他のユーザーへの回答に引用されてしまい機密事項が漏洩するなどのセキュリティリスクも顕在化しています。
さらにいえば、かねてから危惧されているようなAIの暴走を回避するための制御・監視の問題も抱えています。
たしかに、AIは極めて大きな可能性を持った技術です。
しかし同時に、解決すべき課題や問題点が多数存在することも忘れてはならないところです。

AIの将来性と期待される分野

すでに触れたように、AIの技術はさまざまな領域に大きな変革をもたらすことが期待されています。
たとえば、自動運転技術が普及すれば渋滞や公共交通の過密乗車などの交通インフラに関する問題は劇的に改善される可能性があります。
また、AIの持つ膨大な推測データは精密医療や予防医療の発展にも寄与することでしょう。
あるいは、エネルギー効率の向上や自然災害の予測にも役立つと言われています。
もちろん、AIを用いた新産業や画期的なビジネスモデルが生まれることもあるでしょう。
少なくとも、ChatGPTに代表される対話型AIはすでにカスタマーサービスなどに活用され始めています。
将来的にAIが私達の生活を大きく変えていくことは間違いないでしょう。

まとめ

・AIに明確な定義はないものの、戦後すぐにその研究は始まっている
・ひとくちにAIといっても特化型・汎用型があり、汎用型はいまだ実用化には至っていない
・AIは自動運転、医療、工業、ファイナンスなど幅広い分野で利用される
・AIの活用は多大な恩恵が期待される一方で解決すべき課題も多い

AI技術は1950年のアラン・チューリング氏が提唱したころから研究が始まり、幾度かの停滞期を経つつも、昨今、情報インフラの充実を契機に飛躍的に発展してきました。
その技術は人々の生活を激変させる可能性もある一方で、解決すべき課題や問題点も少なくありません。
しかし、ビジネス分野ではすでに部分的な活用が始まっています。
また、ChatGPTをはじめとした対話型AIについてはいよいよ一般向けにもリリースされるに至りました。
今後AIが我々の生活に一層身近な存在になっていくことは間違いないでしょう。

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