ChatGPTを仕事にどう使う? 【「ChatGPTのビジネスにおける活用法と限界」ウェビナーレポート】
2023/4/4
知りたいことや聞きたいことをテキストで入力すると、あらゆることについて人間のような文章で回答してくれる対話型AI「ChatGPT」が日本を含め世界中で話題になっています。誰でも無料で利用できるため、「早速使った」という人も多いかもしれません。しかし、とりあえず使ってみたものの「実際に普段の仕事で活用するにはどうすればよいのか」「ChatGPTの普及で何が変わるのか」などの疑問を抱いた方もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、国内最大7万人超のAI・データ人材プラットフォームを運営する株式会社SIGNATEが2023年3月7日に開催し、代表取締役社長CEOの齊藤 秀氏が登壇したウェビナー「ChatGPTのビジネスにおける活用法と限界」の内容をもとに、ChatGPTの最前線をレポートします。
Contents
リリース2ヵ月で1億ユーザー達成。世界中で話題を呼ぶChatGPT
齊藤:株式会社SIGNATE 代表の齊藤です。簡単に自己紹介をさせていただきます。弊社はスタートアップとしてAI/DX領域で事業を展開しております。主に、DX人材育成として法人・個人のデジタルスキルの育成と、コンペティションの運営を行っており、国内最大のデータサイエンスプラットフォームを保有しています。日々、AIの利活用をしていて、個人的にもChatGPTには毎日お世話になっています。
まずは、ChatGPTについておさらいをします。
アイデアの提案が得意なChatGPT
先に結論をお伝えしますと、このように整理しております。
このようなChatGPTの機能をふまえて、ビジネスにおける活用方法としては、大きく分けて二方向が考えられます。一つ目はコミュニケーションの支援です。業務全般あるいは各職種において、日々の対人コミュニケーションで活用できます。二つ目は知識を獲得することの支援です。リサーチ業務を効率化するような使い方などを想定しています。ここに挙げたのは一例に過ぎず、もっと多くの適応領域があるでしょう。ただ、現状では、人の作業を完全に代替することは難しく、あくまでも補助的な使用になると思います。
ChatGPTの活用方法について、いくつか具体例をご紹介します。
ChatGPTはマーケティング・PR領域と相性がよい!?
他にも人事・採用においての求人票の作成や、研究開発の際に大量の論文を要約してもらうなどの活用方法もあります。また、ソフトウェア開発にも有効です。実は、英語圏におけるChatGPTの一番の用途はプログラミングだそうです。
このようなChatGPTの活用は今後さらに進むと思います。ただ、今のインターフェースですと、ChatGPT上でプロンプトを入力し、その回答を確認して、業務に戻るというUXで少し面倒です。おそらくこれからは、メーラーやSNS、チャットツールなど、さまざまなサービスにChatGPTが埋め込まれていくと思います。そうなると、ちょっとしたアクションをするだけで必要な文章が生成され、アドバイスをもらえるという世界が来るはずです。実際に、ChatGPTではないですが、ドキュメント管理ツールの「Notion」ではAIのアシスト機能が実装されています。使ってみると、ものすごく便利で生産性が上がります。このような機能を使いこなせるかどうかで、1日の時間を有効に使えるかが分かれると感じました。ChatGPTもAPIが公開されたので、これから関連サービスが爆発的に増えると予想されます。
ここまでChatGPTに関して全体的なお話をしましたが、個人的な見解として、ChatGPTの本質的な価値に触れたいと思います。AI全体にもいえますが、ChatGPTに対する批判の一つに「回答に間違いがある」という指摘があります。これは、前提として、答えのある問いをしているから「間違い」が生まれるわけです。しかし、そもそもChatGPTはチャットであり対話システムなので、会話を続けていくことに真の価値があります。そのため、「正解のない問い」にこそ向いているのではないかと思っています。ChatGPTは、一度のやり取りではなく対話を繰り返すと、前に出した回答結果をふまえた回答をしてくれます。そのため、会話の連続性が非常に重要で、これを通じて、人間の思考を探索したり整理したりし、さらにインスピレーションを受けて、新しい創発をすることにこそ価値があると思います。
「プロンプトエンジニアリング」でChatGPTはさらに真価を発揮
まず、「プロンプトエンジニアリング」という言葉をご紹介します。ChatGPTでは、プロンプトの書き方によって結果が大きく変わります。さらに、同じ内容を聞いても、毎回同じ結果が返ってくるわけではありません。そのため、ChatGPTの回答を引き出すテクニックが重要になります。このような工夫をすることを「プロンプトエンジニアリング」といいます。海外ではこの領域でさまざまな研究がなされていたり、ノウハウが流通したりしています。例えば、「あなたはプロのマーケターです」といったようにChatGPTに人格を与えると、そのように振る舞って回答します。または、「表で出してください」「300字で出してください」など、答える形式や長さを指定すると、それに応じた回答をしますし、一度返答があったあとに「それはなぜですか」と聞くと、その根拠を示したりもします。これら以外にも非常に多くのテクニックがありますが、お伝えしたいのは、こういったテクニックを上手く使えると、よりChatGPTの真価を発揮できるということです。
フリーランスのマーケットプレイスとして有名な「Fiverr」を見ていると、最近、AIのカテゴリが増えて新しい仕事が生まれているようです。例えば、ChatGPTを使ったアプリケーションの開発やチューニングの仕事、また、画像生成AIを活用したアート作品やクリエイティブの依頼などが見られます。面白いと思ったのは、ファクトチェックの仕事です。先ほどもChatGPTは間違えることがあるというお話をしましたが、AIがつくったものを専門家の視点で確認するという仕事が生まれています。まさにこれは、AIを前提とした新しい職種です。今後もこれらに限らず、新しい仕事や職種が出てくると思われます。
司会:ありがとうございました。それでは、ここから質疑応答に移ります。「回答についての事実確認が必要になると思うのですが、どのように行うのが効率的でしょうか」といただいております。
齊藤:これは難しいです。ChatGPTは情報を大量に処理した内容を返すので、それを一つひとつ確認していると時間が取られてしまい、まだここは課題が残っていると思います。個人的には、「絶対に間違ってはいけない」という厳密性が求められるときや、表現がかなり厳しく制限されているような用途では、そもそもChatGPTの使用有無を再度検討したほうがよいと思いますし、使用したあとも回答内容を精査する必要があると思います。そのため、まずは、そうしたことがあまり影響しない領域から使うのがよいでしょう。
司会:ありがとうございます。続いて、「プロンプトエンジニアについて、もう少し情報をお願いします」とのことです。
齊藤:先ほどの通り、プロンプトエンジニアリングは、プロンプトを最適化してChatGPTの応答をよりよくしていくという概念です。人間が質問の仕方を工夫すると、よりよい情報を引き出すことができるので、これが得意な人はプロンプトエンジニアに向いています。さらに、この工夫を人力でやるだけではなく、AIを入れたりプログラミングを活用したりすることもできます。このように、プロンプト全体を技術的に扱うノウハウを持っている人がプロンプトエンジニアと呼べると思います。
司会:ありがとうございます。それでは以上で、本ウェビナーを終了させていただきます。本日はありがとうございました。
齊藤:ありがとうございました。
齊藤 秀
株式会社SIGNATE 代表取締役社長CEO
オプトCAOを経て現職。幅広い産業領域のAI/データ活用業務を経験。データサイエンティスト育成及び政府データ活用関連の委員に多数就任。博士(システム生命科学)。
筑波大学人工知能科学センター客員教授
国立がん研究センター研究所客員研究員