SKAdNetwork4.0の活用方法とは?「業界のリーダーが語る、アプリマーケティングの歴史と最新情報」イベントレポート

近年、消費者行動のデジタル化にあわせて、ECサイトや自社アプリの開発を始める企業が増えています。しかし、さまざまなチャネルに参入し、顧客との接点を増やす一方、ECサイト・アプリ・店舗などのチャネルを横断したユーザー情報の共有や分析ができていない企業も多いのではないでしょうか。また、世界的なプライバシー保護の潮流もあり、デジタルマーケティングにおけるデータの取り扱いは厳格化が進んでいます。この流れはデジタル広告だけでなく、アプリマーケティング活動や、その計測環境にも大きな影響を与えています。

このような状況のなか登場したのが、Appleが提供する、プライバシーに配慮した計測ソリューションである「SKAdNetwork(以下、SKAN)」です。SKANを活用することで、アプリにおいてユーザーのプライバシーに配慮したデータの計測が可能となります。

SKANも含めたアプリマーケティングの最新情報や事例を提供するため、株式会社オプトは、2024年4月25日、オフラインイベント「業界のリーダーが語る、アプリマーケティングの歴史と最新情報~SKAdNetwork4.0と最前線の評価方法とは?~」を開催しました。今回は、本イベントのなかから、セッション「SKAdNetwork4.0とは?KPIの設計とその評価方法」をレポートします。本セッションでは、株式会社オプト アドセントラル室 アプリスペシャリストの名取 虎之介氏が登壇し、SKANの有用性や具体的な活用方法などを解説しました。

SKANが必要な理由

名取氏は、「なぜ、SKANが必要なのか」というテーマから説明を開始しました。従来のトラッキングは、IDマッチングやフィンガープリンティング、Androidリファラーなどを、Webかアプリか、iOSかAndroidかなどに応じて、組み合わせて活用していました。こうしたなか、Appleのプライバシー規制が導入され、iOSのアプリにおいてIDマッチングが機能しなくなり、iOSのアプリからの流入が広告成果と紐づかないようになってしまいました。

ここで登場したのがSKANです。これを踏まえて名取氏は、「現時点で、私が考えるベストプラクティス」を伝えます。Andoroidは基本的に従来通りで、Webに関してはAndoroidリファラーを用い、アプリに関してはIDマッチングを用います。iOSでは、Non-SRN媒体(※)についてはフィンガープリントが有効だと言います。一方、GoogleなどのSRN媒体にはフィンガープリントが活用できないためSKANが有効です。名取氏は、「このようにデータソースを分けて考えることで、iOSでのGoogle広告の機会損失を防ぐことが今のマーケターには求められている」と語りました。

※Non-SRN媒体:モバイル計測パートナーの計測リンクを使用してイベントを計測するアドネットワーク。
セミナー投影資料からの抜粋

セミナー投影資料からの抜粋

名取氏の解説は、SKANにおける「タイマー」に移ります。SKAN経由でアプリをインストールし、初回起動すると、裏側では24時間計測できるタイマーがスタートします。このタイマーが動いている期間でなければ、データを取得することができません。そして、タイマーが動いている間に、何らかのアプリ内イベントが発生すると、タイマーはリセットされます。例えば、ゲームアプリにおいて、初回起動から12時間後にチュートリアルを突破したとすれば、その時にタイマーはリセットされ、そこからさらに24時間計測できるようになります。これが繰り返される仕様となっています。タイマーが動いている24時間の内に、アプリ内におけるイベントが発生しなければタイマーは終了します。タイマーが終了すると「ポストバック検証期間」に入り、24時間以内に配信媒体へポストバックが送られ、実際の広告効果の計測が可能になります。

SKANを使った計測方法と、SKANの課題

次に、話題はSKANにおいてアプリ内イベントの発生有無を可視化する機能である「コンバージョンバリュー(CV Value)」の説明に移ります。CV Valueは、64通りのシナリオを設定できますが、名取氏は注意点として、「64個のイベントを設定できる訳ではなく、64通りのシナリオのパターンを設定できる」と強調します。単なるイベントではなく、「インストール以外にイベントが何も発生していない」「チュートリアルは突破したけれど、他のイベントは何も発生していない」など、どういう状況が起きているかというシナリオのパターンを定義することで、初めてCV Valueを活用できるようになります。パターンの定義にはさまざまな方法があり、カスタマイズ性が高いため、アプリ内イベントをいかに計測するかを見極め、設定する必要があります。

名取氏は、SKANの課題についても言及し、三つの問題点を挙げます。一つ目は、「24時間以降のデータは正しくない」ということです。初回起動の際に24時間のタイマーは必ず動くため、この期間の計測は正しいと考えられます。しかし、24時間以降は、アプリ内イベントが発生しなければタイマーは止まり、データが欠損している場合が考えられるため、正しいデータを取得できているとは限りません。対応策としては、確実に取得できている初回起動から24時間以内のデータを基に運用することが考えられます。
二つ目の問題は、「遅延による広告運用への影響」です。アプリ内イベントが発生するとタイマーはリセットされ続けるため、ポストバックが送られないという「遅延」が発生します。これに対し、名取氏は、タイマーを強制的に止め、ポストバック検証期間に入る「アクティビティ期間」を設定することを勧めます。確実なデータを取得できている期間は、初回起動から24時間以内であるため、アクティビティ期間も24時間に設定し、24時間が経過するとポストバック検証期間に入るようにすることで、遅延は最大でも約2日に抑えられるとのことです。

三つ目の問題は、「Web計測が未対応」という点です。例えば、Google関連の広告では、Searchの計測は未対応です。ディスプレイ面とYouTube面は計測可能ですから、Search面の計測を異なるデータソースで保管する処理が必要になります。基本的には、MMPや媒体CVがデータソースとして考えられますが、MMP(※)はSRN媒体でフィンガープリントが活用できないので、媒体CVを活用し、想定CVを算出した上で、DisplayとYouTubeとの合算をGoogle広告の評価とするという手法を名取氏は提案しました。

※MMP:Mobile Measurement Patnerの略称。広告キャンペーンの成果やモバイルアプリのパフォーマンス、そしてユーザーエンゲージメントを計測・分析し、その内容をレポートなどを通して提供するサービス。

SKAN活用の最適解

最後に、名取氏は、SKAN4.0の活用方法に触れました。SKANは、それ自体がとても進化しています。現在の最新版は、Ver4.0です。Appleによると、来年にはVer5.0が登場する予定とのこと。最新のSKAN4.0のアップデート内容を見てみると、Web計測への対応やポストバック数の増加、また、事業主に直接データを送ることができるようになりました。ただ、SKAN4.0が最新ですが、広告市場を見てみると、SKAN3.0のポストバックが多い状況です。このような現状に対して、名取氏は「SKAN4.0が部分的に含まれることに注意が必要」と指摘します。今回、問題点として挙げられた「初回起動後の24時間以内のデータのみ使用可能」「Web計測は未対応」という点は、SKAN4.0では「初回起動後35日までのデータが使用可能」「Web計測に対応」と変更されています。そのため、SKAN3.0までのデータとSKAN4.0のデータで対応が変わることに着目する必要があります。このように、事業主がAppleから直接データを受け取ることができるようになったため、SKANのバージョン毎のデータも取得することが可能になっています。名取氏は、「これにより、きちんとデータの整理を行い、広告成果を可視化することが、SKANの活用方法だ」と語りました。

名取 虎之介

株式会社オプト
アドセントラル室 アプリスペシャリスト

マーケティング系ベンチャー企業にて新規プロダクトのグロースを経験後、 2021年にオプトに入社。 入社後は業種問わず幅広いアプリ顧客を担当。 主にデジタル領域におけるマーケティング支援に携わる。 チャネル横断でのKPI設計や売上予測を基にしたデータドリブンなプロモーションを得意とし、プランニングから広告運用、分析まで一貫した支援を行っている。 2023年にアプリ顧客を主担当とするチームを新たに組成し、アプリマーケティング支援に注力。

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