DX戦略

未だペーパーレス化できてない現場は多数。ノンデスクワーカーが働く全企業の現場DX を目指す「カミナシ」の挑戦

現在、さまざまな業界・職種で進められているDXですが、浸透の実態はまちまち。とくに工場などで作業者(ノンデスクワーカー)として働く方々の業務は、いまだにアナログに管理されているのが日常です。

そんな課題を解決すべく開発されたのが、株式会社カミナシが提供するノンデスクワーカー向けの現場改善プラットフォーム「カミナシ」。カミナシの活用で現場の業務はどう変わるのか。代表取締役の諸岡 裕人氏にお話を伺いました。

ざっくりまとめ

- 現場改善プラットフォーム「カミナシ」はノンデスクワーカーの業務を効率化するツール
- 手間がかかっていた報告業務が大幅に効率化され、現場の課題をよりスピーディーに解決できるようになった
- カミナシは代表である諸岡氏の「ノンデスクワーカーの課題を解決したい」という創業当初からの想いから生まれた
- ITを活用すれば現場担当者がさらにポテンシャルを発揮して働けるようになる

ペーパーレス化に着手できてない会社はまだまだ多い?!「カミナシ」導入が最後のチャンス

ー現場改善プラットフォーム「カミナシ」の概要を教えてください。

カミナシは、ノンデスクワーカーの業務を効率化するツールです。現場で発生するチェック作業などの業務フローをより正確に、誰もが同じ基準で行えるようにしたり、各店舗のレポート実施状況をダッシュボードで一括管理できます。ただ、業務フローや作業は企業によってさまざまです。カミナシは各社の業務フローに合わせてドラック&ドロップだけ、つまりノーコードで自社に最適なアプリを作成でき、現場の細かな業務を効率化します。

現在は、コンビニ、飲食チェーン、ホテルなど、全部で14ほどの業界に導入いただいています。オフィスで働く以外の、いわゆるノンデスクワーカーがいる全ての会社がターゲットで、日本には約150万社あるといわれています。なかでも、弊社がもともと食品工場向けのサービスを提供していたこともあって、食品製造業のお客さまが一番多いですね。

また、今年の6月に施行された衛生管理に関する制度「HACCP(ハサップ)」の影響でさらに問い合わせが増えました。HACCPによって、企業は食品の製造や提供の際に記録を残すことが義務化され、その影響は食品工場だけでなく、ホテルやコンビニ、スーパーや食品を提供するカラオケチェーンにまで及びました。それに伴って、記録機能のあるカミナシをご検討いただく機会が増えたのです。

お客さまにサービスを導入いただく理由としては大きく二つで、まず一つは紙の消費が激しく、今の時代にそぐわないので変えたいという理由です。

もう一つは、拠点が多く、紙でのやり取りをより効率的に管理できるようにしたいという理由です。とくにコロナ流行後は出張が難しくなり、今までのように頻繁に現地に行けなくなりました。そんな状況で紙やメールでのやりとりを続けると、何が行われているのかわからなくなってしまいます。そこで、ペーパーレスによる効率化が必要だよね、とカミナシをご検討いただく場合が多いですね。

ペーパーレスというと「そんなの何年前のブームだよ」と言われますが、実際の現場ではデジタル化どころかペーパーレス化すら始められていないところが非常に多いです。

アプリ導入初日で現場からの報告が10倍に。担当者のモチベーションも上がり、体制強化にもつながった

ーとくに印象に残っているお客さまがいれば教えてください。

とある食品工場を営むお客さまは印象に残っています。コンビニのお惣菜を作っている工場が広島にあるのですが、カミナシ導入前は情報伝達を紙で行っていました。現場で何が起こっているのかを解読するために、管理者は溜まっている紙束をひっくり返したり、デジカメで撮影した現場の写真をいちいち確認したりする必要があり、非常に手間がかかっていました。

それがカミナシを導入したことで意思疎通がスムーズにできるようになりました。とくに大きく変わったのは、パートさんが毎月上げる不具合に関する改善報告の数です。導入前は月2件ほどだったのが、導入初日で19件も上がってきました。

なぜそんなに数が増えたのか確認すると、これまでは報告を紙で行っていて手間だったことがわかりました。必要事項を記入し、問題となっている箇所をデジカメで撮影してExcelにまとめるなど、一つ報告するのにも大変な工数がかかっていたのです。

カミナシの導入により、現場にあるタブレットで写真を撮り、必要な情報をポチポチ押すだけで簡単に報告ができるようになりました。これまでより圧倒的に楽に情報が伝えられるようになったので、報告の件数が一気に増えたのです。

パートさんたちは自分たちが報告した不具合が次の日には共有され、改善されるようになったので「自分たちの上げた情報はこんなに役に立つんだ」と感じ、さらに協力的になってくれたそうです。

他にも、お客さまからはよく、作業ミスや管理者の確認作業が大幅に減って作業品質が上がったという声をいただきます。また、レポートの作成機能により、紙の記入やデジカメの写真取り込みなど面倒な手間を省けることも喜ばれるポイントです。

ノンデスクワーカーのためのツールでなければ意味がない。創業の志を貫き、掴んだ二度目の正直

ーサービス立ち上げまでの経緯を教えてください。

そもそも私が起業を志すようになった背景には、経営者だった父の影響があります。また、父の会社に勤める従業員の97.5%が現場での作業者で、自分自身もオフィスワークをしながら、現場のオペレーションを回していた経験から、ノンデスクワーカー、つまり現場の作業者のためになるツールを作ろうと決めていました。

そんな想いから3年ほど前、食品工場向けのSaaSの開発に取り組み始めました。品質管理、衛生管理の課題を解決するため、資金調達もしながら3年ほど取り組んだのですがうまくいかず、結局、昨年の11月に事業のピボットを決断しました。

次に立ち上げる事業について議論するなか、創業から一緒にやってきたCPOと意見が割れるようになりました。彼はオフィスワーカー向けのサービス開発を思い描いていたんです。3年間の苦しかった経験から、自分自身も一時期はCPOの意見に賛同しそうになりましたが、それだと私が取り組む意義がないと気づいたんです。

元々私自身が、現場作業者を経験していて、その領域の課題解決をしたいと起業したのに、オフィスワーカー向けのサービス開発を行うわけにはいかないと思ったのです。

話し合いを重ね、最終的にはCPOとは別の道を歩むことになりましたが、現場作業者のためのサービス作りに舵を切る決断をしました。これまで苦楽を共にしてきた仲間との別れはつらかったですが、最後は自分の意思を貫いて進む道を決めました。

そこからは、お客さまへのヒアリングを繰り返し、アプリのデザインを描きながらプロダクトを作る日々でした。辞めずに残ってくれたエンジニアと一緒にお客さまの現場に入って、現場の痛みを肌で感じながら開発していきました。

とにかく大きな市場に挑戦したいと考え、業界に特化した機能は一切作らずに汎用性を追い求めました。これは口で言うほど簡単ではありません。ある業界の要望を聞いたら、それを他の業界でも役に立つ形で開発する必要があります。かなり難易度の高い開発となりましたが、開発チームが中心となってやり切ってくれました。
その結果、食品業界だけではなく、現在ではホテルや飲食、印刷など14の業界で導入いただいています。

現場担当者のポテンシャルはまだまだこんなものではないはず。ITの力で、さらに成果が出る環境づくりを

ーお客さまにサービスを導入するまでの流れを教えてください。

だいたい、問合せから3ヶ月後にはアプリを使いこなせるようになります。

サービス導入をスムーズに進めるにあたって重要になるのは大きく二つの要素です。一つ目は上役の人、つまり部長や役員クラスの人たちが本気になっているかどうかです。やっぱり、これが一番大きいですね。

二つ目はお客さまが求めることと我々が実現したい世界観とがずれていないことです。お客さまの中には、我々の提供できる価値以上の成果を求める方もいらっしゃいます。「業務プロセスの全てがデジタル化されるんでしょう?」とか「基幹システムとスムーズに連携できるんでしょう?」と問合せいただく方も多いのです。その場合はきちんと、我々のサービスは何にどこまで有効なのかという話をします。

ー今後の展望を教えてください。

引き続きカミナシの提供に全力を注いでいきたいです。

私自身、現場の作業者も管理側の仕事も経験して、どちらの世界も見てきています。家業では2年ほど現場責任者をしていましたし、起業してから4年間は会社のトップとしてIT業界の中で戦ってきました。

そんな経験をした上で思うのは「今の時代はITを使えるかどうかで能力キャップが決まる」ということです。個々人が発揮できる能力は、ITという武器をどれほど使いこなせるかに左右されます。

現場で働く皆さんは現在、ITを使わなくても毎日決められた仕事を完璧にこなし、成果をあげ続けています。それは素晴らしいことですが、そこに我々のITツールを導入していただければ、さらに現場で働く人たちの能力が解放され、彼らが本来発揮できるはずだった才能が解き放たれると思っています。

具体的には、より効率的に仕事が進められ、その分成果を出すことに集中できる環境をつくれると思うのです。 成果が出ればやりがいにつながりますし、さらに仕事を頑張る中でお給料が上がる人も増えるはずです。

これからもノンデスクワーカーの方々の課題に着目し、業務の無駄を削減するサービスを展開していければと思います。
諸岡 裕人
株式会社カミナシ 代表取締役

1984年生まれ。2009年 慶応大学経済学部卒業後、リクルートスタッフィングで営業職を担当。2012年 家業であるワールドエンタプライズ株式会社に入社し、LCCのエアアジアジャパンやバニラエアの予約センターの立ち上げ、JALの羽田機内食工場の立ち上げなどに携わる。その中で感じた現場のペインを解決するため、2016年12月に株式会社カミナシ(旧社名:ユリシーズ株式会社)を創業し、ノンデスクワーカーの業務を効率化する現場改善プラットフォーム「カミナシ」を開発。

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