DX戦略

自社で経理部門を持つ時代は終わる!?コロナ禍で大企業からの問い合わせ急増が物語る、経理DXの未来

セールスやマーケティング領域に比べ、デジタルシフトが遅いとされる経理領域。未だに紙ベースや対面形式での業務がメインであることが多く、コロナ禍でのリモートワークに対応できなかったという声もあがっています。
そんな中、「バーチャル経理アシスタント」を提供するメリービズでは、大企業からの問い合わせがコロナ前に比べて7倍に増加。経理をアウトソーシングすることで、スタッフはコア業務に注力することができ、生産性の向上が見込めます。
コロナのビフォーとアフターで経理はどうデジタルシフトしていくのか。経理のデジタルシフトが遅れている原因はどこにあるのか。メリービズ株式会社の代表取締役、工藤 博樹氏の見識を伺いました。

ざっくりまとめ

・「バーチャル経理アシスタント」はオンライン上にチームを作り、経理業務をサポートするサービス
・導入することで、社員は定型的な作業から解放されて生産性が上がり、働き方改革の推進にもつながる
・これからは企業も個人も専門性を磨いていく時代。一企業がすべての機能を持つスタイルからの脱却も

日々の経理業務をアウトソーシングすれば、社員はより生産性の高い仕事に取り組める

―御社が提供する「バーチャル経理アシスタント」について概要を教えてください。

一言で説明すると、「日本全国のプロの経理スタッフが、あなたの会社の経理業務をすべて引き受けます」というサービスです。オンラインのバーチャル経理チームというと、日常のコミュニケーションを心配されるかもしれませんが、多くのお客さまは慣れてくると、スタッフが本当に隣にいるかのごとくコミュニケーションが取れるようになっています。

電話だと「この程度のことを聞くのに手間を取らせて申し訳ないな……」なんて気が引けるケースがあるかもしれませんが、Slackなどのツールを使えばほとんどストレスを感じずに、日常のやり取りができます。

―利用するにあたって、会社の規模や業種は問わないのでしょうか?

業種や会社の所在地、企業規模などは一切問いません。スタートアップであっても上場企業であっても、それぞれのお客さまのご要望に合うようにカスタマイズしてサポートを行います。お客さまは単純作業から解放されるので、付加価値の高いコア業務により多くのリソースを割けるようになります。

―導入はどんな流れで行われるのでしょうか?

まずは日々の経理業務においてどんな課題を抱えていて、我々にどんな業務を依頼したいのかという点をヒアリングします。次は、目的の確認です。残業を減らしたいのか、コア業務に集中して生産性を上げたいのか、具体的な先方の要望を確認していきます。

成約後にオンボーディング期間があり、我々のコンサルタントが担当する業務に適したリモートチームを編成して、実務を進められる体制をつくっていきます。およそ3カ月~半年ぐらいを要しますね。

実際の業務の進め方については、いきなり大量の仕事を移管するのではなく、段階的にお引き受けするほうが着実に進められますね。例えば、請求書を数千枚発行する業務があるとしたら、その一部のみを引き受けるというイメージです。

最初のプロジェクトが上手くいくと、さらに追加でご依頼いただくケースが多いです。手始めに経費精算をお引き受けし、そこから請求書の発行、支払いの手続き、といったように担当する経理業務を増やしていきます。仕事を進めながら、お互いのペースを掴んでいく流れです。

経理のリモート化に対応できなかった大企業からの問い合わせが、前年比で7倍増加

―新型コロナウイルスの影響で大企業からの問い合わせが増えたそうですが、どんな背景があるのでしょうか?

コロナ前だと、我々のお客さまは中小企業がメインでした。2019年頃は求人倍率が非常に高くて、企業は採用が本当に難しい時期でした。特に、経理担当を採用するのが難しい中小企業からのニーズが高かったんです。

昨年はコロナの影響で、上場企業の2割が決算発表に遅れが生じたという事態になりました。多くの企業が「このままだとマズい」と感じたようです。株主をはじめ、ステークホルダーへの報告が遅れるのはなんとしても避けたいし、このままでは月次の決算にも影響が出てしまう、ということで大企業からの問い合わせが昨年比7倍になりました。

―大企業といえども、まだまだデジタル化が進んでいなかったということですか。

そうですね。どこの企業を見ても、経理のデジタル化は第一歩目といった感じでしょうか。デジタル化が進んでいない理由は、大企業の多くがイントラネットにある基幹システムを使いながら、紙の書類メインで経理業務をしている状況だったからです。紙にまだまだ頼っていて、システムもオンプレミス(自社運用)型なので社内でないと使えない。つまり、普段から対面業務がメインだったので、当然リモート対応はできなくなるわけです。そのためお困りになっていたという状況です。

―対面で仕事を進めるというオペレーションしかなかったわけですね。

コロナ以前でも、経理のデジタル化が遅れているという課題は、潜在的にどこの企業も感じていたと思うんです。でも、経理の課題は「重要だけど緊急ではない」分類でした。今すぐに手をつけなくても時間があるときにやればいいだろう、と。もともとあった課題が、コロナの影響で一気に顕在化したということでしょう。

経理のDXの妨げになっているのは、日本の「税制」や「独自の商習慣」

―では、大企業で経理のデジタル化が進んでいない理由はどこにあるのでしょうか?

セールスやマーケティングなど、売上に直結する分野に関しては「Salesforce」をはじめ、いろいろなクラウドソフトが生まれています。対して、バックオフィスである経理領域のデジタル化が遅れている理由の一つに、海外の会計ソフトを日本にローカライズすることが非常に難しいという問題があります。日本独特の商習慣があったり、消費税額が変更されたりなど、ローカライズには適さないところが多々あるんです。例えば「Quickbooks」という海外で大きなシェアがある会計ソフトであっても、日本で使っている企業は少ないんですよ。外資系の一部くらいでしょうか。

「Slack」には日本法人がありますが、会計ソフトに関しては日本にそこまでのマーケットはない状況ですね。日本の企業が開発した「マネーフォワード」や「freee」などのクラウドソフトが出てくるまで、どこも旧来の対面、紙ベースでやっていたわけです。

―海外企業のクラウド会計ソフトは、日本のマーケットには今後も参入してこないのでしょうか?

ニュージーランドの企業が開発した「Xero」という会計ソフトがありますが、これはアメリカでもマーケットを拡大中です。現状、そういった企業は日本市場に関心がなさそうではありますが、コロナの影響で変わってくるのかもしれません。

ただ、会計ソフトに関してはガラパゴス化することが仕方ない側面もあるんです。他の国のマーケットを見ても、イギリスはイギリスで強いプレイヤーがいて、アメリカにはアメリカで強いプレイヤーがいるような状況です。

創業100年、老舗商社の初パートナーに選定

―実際に「バーチャル経理アシスタント」を導入して、成功したという企業の事例を教えてください。

弊社のWebサイトでも公開している事例ですが、井上特殊鋼株式会社という企業の例があります。創業100年以上の老舗商社が、我々のようなパートナーを初めて迎え入れるということで、会社としてはかなり大きな判断をしてくださり、今もご一緒させていただいています。

全国に事業所を展開する、長い歴史を持つ商社ですので、月々トータルで2,000枚、明細も合わせると25,000件程度の膨大な数の処理すべき請求書があがってくるため、もっと効率的に処理できないかとお悩みでした。システム化もなかなかできずに、すべて手作業で対応されていて、リソースが割かれてしまっている状況でした。

―導入の成果はどうだったんでしょうか?

最初はセキュリティ面でご心配もあったそうですが、納得できるまでご説明をさせていただきました。導入後は、非常にご満足いただいております。

これまで全国の小規模の事業所においては、営業事務が経理事務も兼任している状況で、毎月10日間ほどは経理業務にかかりっきりになってしまい、営業事務の仕事まで手が回らなかったそうです。逆に大きな規模の事業所では経理事務が独立しているので、10日間ほどで経理業務が終わると手が空いてしまうことも多かったそうです。そこに我々が上手くサポートに入らせていただくことで業務上のロスを減らしました。リモートによる業務フローを構築することで、コロナの影響もかなり抑えられ、順調にプロジェクトが進んでいます。

―「バーチャル経理アシスタント」を導入する際に、留意すべき点があれば教えてください。

まず、我々ができるのは「ルール内で決められた作業」だということです。「請求書の支払の判断」など、意思決定はできません。あくまで、お客さまの指示に従って業務を進めることになるため、作業が適切に行われているかどうかをチェック・判断できる担当者の方が必要になります。

そして、「バーチャル経理アシスタント」は、都度変わる作業よりも、定常的な業務を依頼していただくほうがメリットを感じていただきやすいですね。都度バラバラと業務を振っていただくのではなく、明確に決められたタスクを我々が安定的に処理して、付加価値の高い仕事は社員の皆さんに進めていただく。そのように分業体制ができているお客さまほど、ご好評をいただくケースが多いです。

これからの時代は専門性に特化した企業と個人の時代になる

―最後に、今後の展望を教えてください。

日々、経理のアウトソーシングを引き受ける中で生まれた我々の強みは「業務デザイン」と「組織デザイン」です。お客さまからの依頼をヒアリングして、最適な形で業務フローを組み立てていく。これが「業務デザイン」です。

その業務を効率的に実行するために適材適所でチームを編成するのが「組織デザイン」です。弊社には900名の登録スタッフがいますので、お客さまの業務体系にマッチした人材を柔軟に配置できます。この「業務デザイン」と「組織デザイン」は経理以外の業務にも応用できると思うので、今後は他の分野にもチャレンジしていきたいと考えています。

―自社の強みを活用して、業務の幅を広げていくということですね。

れからは会社にも個人にも専門性が求められる時代になるでしょう。昔のように、一つの企業が生産ラインも物流も、経理も、労務も、と自社内にすべての機能を持つのではなく、コアな分野だけに特化するようになると思います。大きな仕事をするときには、他の専門性が高いパートナーと組んでいく。メリービズとしても、自分たちの強みを活かしつつ多くの企業さまのサポートをしていきたいと考えています。
『バーチャル経理アシスタント』は、"オンラインなのに隣に居るような"経理スタッフがリモート/オンラインで業務を代行するサービスです。全国900名以上のプロ経理人材が「経費精算」「請求書発行」「月次決算」「会計ソフト導入支援」のほか、「給与計算」「勤怠管理」などの関連業務まで幅広く対応。各社に合わせた業務内容とチーム編成をカスタマイズできます。東証一部上場企業から中堅・中小企業、スタートアップ企業までさまざまな企業が利用中。
バーチャル経理アシスタント

『バーチャル経理アシスタント』は、"オンラインなのに隣に居るような"経理スタッフがリモート/オンラインで業務を代行するサービスです。全国900名以上のプロ経理人材が「経費精算」「請求書発行」「月次決算」「会計ソフト導入支援」のほか、「給与計算」「勤怠管理」などの関連業務まで幅広く対応。各社に合わせた業務内容とチーム編成をカスタマイズできます。東証一部上場企業から中堅・中小企業、スタートアップ企業までさまざまな企業が利用中。

工藤 博樹
メリービズ株式会社 代表取締役

カナダ生まれ。カナダ、シンガポール、フランス、日本育ち。  東京工業大学修士課程修了/ INSEAD(Financial Times Global MBAランキング1位) MBA取得。日本IBM グローバルプロジェクトのプロジェクトマネージャーを担当。経営戦略事務所にて大手企業向けに経営戦略をコンサルティング。ロコンドの立ち上げ。GREEグローバルアライアンス担当。自身の苦労や周りの起業家の悩みから事務作業を楽にできるサービスを用意したいと考え、2011年7月にメリービズ株式会社を創業。2015年にFinTech協会を創立。

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