DX戦略

北米を中心に世界100カ国で展開。日本お菓子のサブスク「Bokksu」人気の秘訣

「Bokksu」は、毎月定額で日本のお菓子が箱詰めで届くサブスクサービス。これまで北米を中心に世界100カ国以上に発送しています。お菓子の種類は月ごとに変わり、日本の文化を紹介する冊子と共に、オリジナルの箱に詰められて送り届けられます。「日本のオーセンティック(本物)なお菓子を通じて、世界との架け橋になりたい」と語るのはニューヨークにあるBokksu Incの子会社である日本法人ボックス株式会社の代表取締役を務める小谷 真一氏。お菓子で日本と世界をつなぐという壮大な野望についてお話を伺います。

ざっくりまとめ

- Bokksuは日本のお菓子を箱詰めにして届けるサブスクサービス。創業者ダニー・タン氏が日本のお菓子をアメリカの友人に配った際、とても喜ばれたことからサービスの着想を得た。メインの顧客は北米に住む30~40代で、日本やアジアに興味を持っている人。

- お菓子と一緒に日本文化を紹介する冊子を同梱している。単にお菓子を届けるだけではなく、オーセンティックな日本のお菓子を通じて日本文化を海外に伝えることを目的としている。

- Bokksuと組むことで海外販路を開拓した地方メーカーは数多く存在する。今後も日本と海外の文化の架け橋になることを目指す。

メインターゲットは北米在住30~40代の日本やアジアに興味を持っている人

――Bokksuはもともと、創業者のダニー・タン氏がアメリカで友人に日本のお菓子を送った際に大変喜ばれた経験から思い至ったサービスだそうですね。ダニー氏の経歴含め、創業時のエピソードを教えてください。

Bokksuはアジア系アメリカ人のダニー・タンが2015年に創業した企業です。彼はスタンフォード大学卒業後、日本に留学して、楽天で働いた経験があります。もともと日本文化が好きで、故郷のニューヨークに戻った際、友だちに日本のお菓子を振る舞っていました。それがとても評判がよく、その経験からBokksuのアイデアが生まれました。当時はアメリカから日本のお菓子を取り寄せようとしてもルートがなく、だったら自分でやってみようと会社を起ち上げたのが始まりです。創業したての頃はなんの伝手も手掛かりもなかったので、来日した際、店頭で小売りされているお菓子を大量に購入してサービスを続けていました。

――日本法人はいつ、どのようにして生まれたのでしょうか?

日本法人の創業は2018年の5月です。Bokksuはサービスの性質上、日本で商品を購買するので、日本円での決済が必要になります。ボックス株式会社は日本で商品を仕入れて、消費者に届ける機能を担っています。

――Bokksuはアメリカがメインの市場とのことですが、主なユーザー層を教えてください。

アメリカとカナダの消費者がほぼ8割を占めています。残りは欧州が中心です。顧客層はあまり細かく分析はしていませんが、人種や出生地に関係なく、日本やアジアの国々に興味を持っている人が多いです。年齢は30~40代が中心です。

――日本円にして約5,000円という価格の設定はどういう理由でしょうか?

若干高めではありますが、仕入れの原価や送料を考えるとこれがギリギリのラインです。結果的には、多少値段が高くても、商品の価値を理解していただける顧客に購入していただいています。

――普段自分では手に取らないような珍しいお菓子を見繕い、箱詰めで送ってくれるBokksuに、ある種のワクワク感を求めている面もあるのでしょうか?

それもあると思います。毎月のテーマに沿ってお菓子を選んで送るので、届くまでの期待感や開けたときのビックリ感があります。自分で選ぶよりも、Bokksuが厳選したお菓子が届くことに面白さを感じてくれる層が利用していると分析しています。

オーセンティックなお菓子を媒介に、繊細な日本の文化を海外へ届ける

――お菓子に同梱されている、日本文化を紹介する冊子について教えてください。

毎月のテーマに合わせて選んだお菓子を単純に詰め合わせて売るのではなく、日本の文化について解説した冊子を同梱しています。たとえば春は桜・お花見にまつわる解説を入れて、お届けしたお菓子がどこで作られ、どんなシーンで食べられるかなど、お菓子をきっかけにして、より深く日本を理解できる内容になっています。商品画像などのビジュアルは、すべてニューヨークオフィス内にある自社スタジオで撮影しています。冊子デザインも自社のデザインチームですべて作成をしており、あくまでも欧米目線で見た日本のクールさを演出することこだわりを持っています。

――人気が高い月はいつでしょうか?

やはり花見と月見の時期です。通常の時期はコーポレートカラーであるオレンジの箱を使用していますが、お花見の時期は桜を模したピンクの箱にしたり、月見の時期は黒い箱にシルバーの月をあしらったり、箱自体にバリエーションを付けています。

――BokksuのWebサイトでは「authentic(本物)」という単語がよく使われていますが、そこにはどんなこだわりがあるのでしょうか?

海外において日本から連想されるのは、最近では漫画やアニメなどのポップカルチャーが多いですが、各地に伝わる伝統的なものや、地方で地道にがんばっているローカルなものなど、まだまだ知られていない日本の魅力を備えた商品がたくさんあります。そのような魅力の詰まっている「本物志向」のお菓子や生活雑貨を、今後はさらに取りそろえていく方針です。富士山や歌舞伎など、いわばありきたりのイメージではなく、その土地に隠れた名産品や文化があることを知って欲しいと思っています。

お菓子の味一つとっても、甘いとも辛いともいいがたい独自の風味や、単純ではない日本特有の感性があります。日本各地のお菓子を通じて、そういった日本文化を世界に届けたい。そのためにはBokksuを多くの人に知ってもらう必要がありますし、世界中の多くの人々に「日本のお菓子はおいしい」と実感してくれるよう、数多くのお菓子を取り揃えていきたいと考えています。

日本とアメリカで大きく異なる味覚

――たとえばアメリカ人から見て、日本のお菓子はどのように思われているのでしょうか?

食べた経験がある人からは、日本のお菓子は間違いなくおいしいと思われています。それに対してアメリカのお菓子は甘いものは甘い、辛いものは辛いとハッキリとしています。日本の場合、たとえばクッキーひとつとっても、たくさん種類があります。また、日本のお菓子ではないですが、グミだと海外ではあまり見られない様々なフレーバーが日本には存在します。そういったバリエーションの豊富さは日本ならではだと思います。

弊社の顧客に限らず、従来のアメリカのお菓子では見たことの無いもの、味わうことのできないものを求める傾向があるのは確かです。だからといって日本でおいしいと思われているものが、必ずしも海外でウケけるとは限りません。そういった意味で弊社の商品選定基準は厳しく、採用される一つのお菓子の裏側では、落選するお菓子が多数存在します。

Bokksuと組むことで、海外販路を開拓した地方メーカー

――取引先の開拓はどのようにしていますか?

コロナ禍以前は東京ビッグサイトのような大きい会場で開催される展示会に出向き、メーカーの方々と対面で商談をしていました。コロナ禍に入ってからは、そのような展示会はなかなか開催されなかったので、Webなどから情報を収集していました。1日に何十ものメーカーと商談できた展示会に対して、Webでの検索は効率が落ちる面もありますが、情報の精査と比較がしやすいため、吟味して商品を選ぶことができると思います。

――Bokksuで取り扱うことによって販路を開拓できた事例を教えてください。

京都にある飴メーカーや札幌の饅頭メーカーなど、Bokksuを介して海外への販路を築くことができた例もあります。地元では有名で、さらに海外展開をしたいとなってもその術がない。コロナの影響でどんどんと売上が落ちてゆき、このままでは死活問題になる。このように切迫した状況のなか、何とか別の販路を見出そうという形での商談もあります。

――今後、あらゆる産業でDXが進むことで、日本のお菓子づくり、ものづくりにはどのようなチャンスが生まれるでしょうか?

主にプロモーションにおけるDXでしょうか。弊社でも動画系SNSのアカウントを運用していますが、ある程度の効果があるという結果がでています。ただ、地方のお菓子メーカーが、自分たちだけで始めようとするのは非常に難しいと思います。SNSを得意とするプレイヤーやプラットフォームとタッグを組むことが重要で、それが地方メーカーにおけるDX戦略になると考えています。我々もまだ模索中の段階です。

――最後に今後の展望を教えてください。

まずは北米、つまりアメリカとカナダでの認知度をさらに高めていきます。さらに、お菓子のセレクトも徐々に変えていきます。単純な甘さや辛さに頼らない独特な味覚のお菓子をアメリカの市場に流通させたい。そしてお菓子を通じて、日本と海外の文化の架け橋になっていくことが目標です。
小谷 真一
ボックス株式会社 代表取締役

これまでは「消費者視点の物流」がテーマ。大手ECプラットフォーム・大手アパレル製造小売り・大手百貨店などで20年以上小売業における物流、消費者から見た物流に携わる。Bokksuを日本と他国との文化的架け橋となるアジア一番のサブスクリプションサービスのプラットフォーマーに成長させることが目標。

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