ポーラがサブスク事業に参入! 前例のない新しいモデルのサービスをスピーディに開発できた秘訣とは
2023/5/31
あらゆる業界でサービス形態の一つとして導入が進んでいるサブスクリプションサービス。化粧品の製造販売やエステ事業などを幅広く行う美容業界の老舗、株式会社ポーラでも、エステのサブスクサービスがスタートしています。ポーラがサブスクサービスをローンチするにあたって導入したのが、オプトインキュベートが提供するクラウド型開発プラットフォーム「Pocone(ポコン)」。ローコードで新規事業のシステム開発をスピーディに実現し、短期間でのPoC(概念実証)を可能にする、サブスク型、マッチング・シェアリング型の新規事業開発をサポートするSaaSです。
今回は、株式会社ポーラビジネスモデル開発室の伊藤 優駿氏、西口 宏二氏、伊東 由佳氏、今野 友貴氏に、エステのサブスクサービス立ち上げの経緯や、その際にPoconeを導入した理由についてお話を伺いました。
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コロナ禍をきっかけに、オンラインとオフラインのサービスを融合
伊藤:エステ事業と化粧品事業を分断して考えられる方が多いのですが、弊社は「美容」というものに関して、スキンケアやメークだけではなく毎日の睡眠や食事、運動習慣などもトータルで考えて、自分の肌と心と体すべてを慈しむこと、と定義しています。エステと化粧品のどちらかを重要視するのではなく、この二つを通してお客さま一人ひとりに合った最高のケアを提案し、ありたい姿でいるためのサポートをしていく。これが弊社の想いであり姿勢ですね。
——そのような想いを貫くなかで、コロナ禍が訪れたことは大きなインパクトを受けたのではないでしょうか?
伊藤:そうですね。弊社はECサイト、百貨店などのプレステージストア、そして我々が所属する肌だけでなく全身のケアまで行うトータルビューティーと複数のチャネルを有しているのですが、特にお客さまと対面するエステを軸にしたトータルビューティーチャネルが大きな打撃を受けましたね。お客さまの足が止まってしまい、ご来店いただけない状況が長く続きました。お客さまからすると「このご時世に、美容のために外出する」という行動を選択しづらかったように思います。現在は、コロナ前と同等に客足が戻るまでには至っていませんが、徐々に回復している印象がありますね。
——コロナ禍で変化する消費者行動に合わせて対応を変えた部分はありますか?
伊藤:これまでトータルビューティーチャネルは、店舗空間というリアルの場を通して心地よさや美に対する楽しさを体験していただくチャネルとして存在していましたが、コロナ禍では大きく対応を転換せざるを得なくなりました。お客さまと対面でお会いできないため、Zoomなどを使ったオンラインカウンセリングの活用が加速しました。
それに加えて「フルフィルメント」というシステムも多く利用されていますね。これは、カウンセリングをして、お客さまに合った化粧品などをURLでお送りするECサービスです。通常のECサイトはお客さまが自身で商品を選択するしかないのですが、そこにカウンセリングを加え、お客さまの美に寄り添う要素を足したものです。コロナ禍をきっかけにオンラインとオフラインが融合し、ポーラのビジネスモデルも変化していることを実感します。
ポーラがサブスクサービスを導入した理由
伊藤:ポーラのエステサブスクは、必要なインターバル期間を加味しながら、お客さまが通いたい回数だけご利用いただける形で提供しているサービスになります。
——エステサブスクを始めるに至った経緯は、やはりコロナ禍での消費行動の変化が関係しているのでしょうか?
伊藤:ときを同じくして、というだけで、コロナ禍による消費行動の変化などが要因で生まれたサービスではないですね。
西口:コロナ禍が直接的なきっかけではありませんが、会社としての機動力を高めていこうと動き出した時期に、偶然にもコロナ禍が重なったことでよりそういった動きの必要性が高まった部分はあると思います。
伊藤:エステサブスクを始めた大きな理由は、新たなお客さまにご利用いただき、かつ長くご愛顧いただきたいという想いからです。国内市場が縮小の一途をたどっている現在、どこの企業も新たなお客様と出会うことが難しくなっていると思います。そのような状況のなかで、ポーラのサービスをより多くの方に体験いただくためにはどうしたらよいか、そしてそのお客さまにいかに継続していただけるか、という課題を見つめたときに、サロンのサブスク化が課題解決の手段の一つとして挙がりました。
Poconeのメリットはスピーディな開発だけではない!
伊藤:Poconeを利用した理由はいくつかあるのですが、まず一つがスピード感ですね。新規事業の立ち上げには、「石橋を叩いて渡る」という要素も必要でしょう。しかし、変化が激しい世の中において一つずつ石を叩いて渡っていると、ローンチのタイミングですでに需要がなくなっていることも考えられます。他社が持つよいものを利用することで、我々が本当に提供したいサービスをいち早くお客さまにお届けすることを最優先した結果、Poconeの導入という結論に至りました。
——当初、どの程度のスピード感で実証実験に取り組むことを想定していたのですか?
伊藤:エステサブスクの構想が出てきたのが2022年9月頃でした。エステサブスク以外にも、さまざまな新規事業が企画として立ち上がっていますが、早期にテストが可能な企画案については遅くとも1年以内、できれば半年ほどでテスト開始というスピード感で動いています。このスピード感は社の方針として経営陣からも求められている要素です。エステサブスクは、Poconeの利用により4ヵ月ほどで準備が完了し、2023年1月にテストを開始しています。
——スピード以外の部分では、どんな理由がありますか?
今野:データ検証が迅速に行える点も、Poconeを導入した大きな理由です。我々がサロンのサブスクサービスをローンチした理由である新たなお客さまにご利用いただき、かつ長くご愛顧いただくという点について、実際にこのサブスクがどれくらい作用しているのかを迅速に数字で確認できます。
伊藤:お客さまがサブスクのなかでどのメニューを選んでいるのか、どの程度の頻度で来店していただいているのか、といった利用状況について確認できるところが非常に大きいメリットですね。また、既存の顧客コードを紐付けられることも、Poconeを選んだ重要なポイントでした。エステサブスクで来店頻度を高めることによって、我々がもともと持っていた化粧品販売や通常のエステに対してどう好影響を及ぼすのかを検証できたことはとても有意義でした。お客さまの消費行動を確認できることで、今後のメニューの改定などにも活かせると考えています。
伊東:Poconeにはサブスクサービスに即した機能が充実していており、さらにその機能がお客さまから見たときに非常にフレキシビリティが高いこともメリットだと感じています。チェックイン機能や解約関連の機能がつくり込まれている印象です。特にサブスクは一度解約してしまったらもうそこで終わり、というイメージを持っているお客さまが多いのですが、Poconeの場合だと「今月はあまり来店できないから一旦課金を止めて、来月からまた始めよう」といった変更を気軽に行えます。非常にお客さま目線で設計されていると感じますね。
伊藤:現在、弊社が化粧品やエステで運用している決済システムが新規事業に対応していないため、サブスクに対応した決済管理が行えるのも、我々にとっては大きなメリットでした。
美容業界のトップランナーが目指す展望とは
伊藤:実証実験で浮き彫りになった、というよりも、今後の実証実験で注視していくべきだと考えている懸念点はあります。いわゆる「いつでも自由に使える」モデルであるサブスクをサロンビジネスに導入したことで、予約枠が埋まるのが早まってしまい、これまでエステを利用していた既存顧客の満足度が下がってしまう。逆に、既存顧客で予約枠が埋まってしまいサブスクからサービス利用を始めた新規顧客が予約できずサブスクとして機能しない、などの事態が起こらないかどうかが、現在危惧しているポイントです。
現在は3店舗でサブスクサービスを行っていて、幸いそのような事態には陥っていないのですが、今後店舗を拡大して展開したときに、どの店舗でも同じ状況をつくり出せるかどうかが今後の課題であり、Poconeを利用しつつ検証していく必要があると思っています。特にポーラの場合は、お客さまの空き時間とマシンの空き状況に加えて、ビューティーディレクターの空き状況も予約の可否に関わってきます。ビューティーディレクターが専任でつくことが大きなメリットではありつつも、サブスクサービスにおいては諸刃の剣になる場合もあるのではと考えています。
——エステサブスクも含めた、今後の展望についてお教えください。
伊藤:実は、サロンビジネスのサブスクはあまりうまくいかないのではないかと思われていました。しかしその後、我々のエステサブスクも含め、さまざまな美容系のサブスクが出始めており、そろそろ効果検証の結果が出てくる頃なのではないかと思っています。事業として成り立つのか、どういったところがポジティブに映り、どういった部分がネガティブな要素になるのかを我々もしっかりと検証して、効果的なオペレーションを確立していきたいですね。
そして、このエステサブスクが、トータルビューティーを叶えるための一つの入り口、選択肢になればと思っています。サブスクサービスから入って化粧品も一緒に使っていただいたり、逆にこれまで化粧品を利用していた方にもサブスクを利用していただいたりと、お客さま一人ひとりの美を多角的に叶える仕組みの一端を担っていきたいですね。
西口宏二(チームリーダー)
伊藤優駿(新ビジネス企画担当)
伊東由佳(Pocone導入店舗担当)
今野友貴(システム担当)
全国に約25,000人いるビジネスパートナー(ビューティーディレクター)の可能性拡大に向け、ビジネスパートナーの各組織の法人化を担う事業部門。法人化した組織の経営安定化に向け、事業の複線化、また既存事業(化粧品販売)とのシナジー効果を期待し、新ビジネスの企画も担っている。