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コロナ禍に200億円以上の資金調達を実施 買い物代行サービス「インスタカート」〜海外ユニコーンウォッチ #1〜

「ユニコーン企業」ーー企業価値の評価額が10億ドル以上で設立10年以内の非上場企業を、伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほどに珍しいという意味だ。かつてのfacebookやTwitter、現在ではUberがその代表と言われている。この連載では、そんな海外のユニコーン企業の動向をお届けする。今回は買い物代行サービスを展開し、新型コロナウイルス感染拡大により需要が急増している 「インスタカート」を紹介する。

食料品・日用品の買い物代行サービス「インスタカート」

インスタカートは現CEOのアプアバ・メフタ氏によって2012年に創業された、食料品や日用品に特化した買い物代行サービスで、北米を中心に展開している。インスタカートのサービス上には提携する小売店の食料品や日用品が並ぶ。利用者がアプリから購入したいものを選ぶと、「ショッパー」と呼ばれるスタッフが代わりに店舗へ行き、商品を購入。その日のうちに自宅まで配送してくれる仕組みだ。注文してから配送されるまでの時間が短いため、生鮮食料品を購入することができる。近年、関心を集める「シェアリングエコノミー」としても注目されている。

ユーザーは、インスタカートが提携する様々な店舗の商品を購入することができ、それが即日配送される。インスタカートは配送料や商品の価格を少し上乗せし、利益を出す。ユーザーから見れば、「少し高くなるけれど家にいながら複数のお店の商品の買い物をできる」というところが価値になっている。500都市以上で対応し、提携している小売業者は300以上。提携先にはウォールマートやセブンイレブンも含まれている。

インスタカートのビジネスモデルで特徴的なのは、商品は提携する小売店にあり、あくまで買い物代行のみをしているため在庫を持たずに済むことだ。これにより、スーパーがネット注文に対応するよりも圧倒的にコストを低く抑えられる。さらに、実際に購入・配送するショッパーはいわゆる「ギグワーカー(インターネットを通して単発の仕事を請け負う労働者)」なので正社員を雇うよりも低コストであり、配送に必要な設備や投資も不要であることが利益率を押し上げている。

新型コロナウイルス感染拡大を受け200億円以上調達も…

インスタカートはサービス提供以来、規模を拡大していた。そんな中、今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受け、「できる限り外での買い物を控えたい」というユーザーの思いから需要が激増。企業価値も上昇している。2020年6月に同社は2.25億ドル(約235億円)の資金を調達、その時の企業価値は137億ドル(約1兆4300億円)だった。それが、同年10月、さらに2億ドル(約208億円)の資金調達を発表。企業価値は177億ドル(約1兆8479億円)となった。また、インスタカートは同年3月、需要急増に伴いショッパーを新規で30万人採用すると発表。さらに同年4月には追加で25万人の採用を発表し、新型コロナウイルスの影響による失業の受け皿としても注目された。

しかし、良いニュースばかりではない。インスタカートのショッパーを含む「ギグワーカー」については、その位置付けが問題視されている。アメリカ・カリフォルニア州では、ギグワーカーを正規の「従業員」として扱うことを義務付ける法律を回避する法案に関する住民投票が行われる。同州では、ギグワーカーを保護する州法により、ウーバーとリフトが、それぞれが運営するライドシェアサービスに関わる運転手を従業員として雇用するよう訴訟を起こされ、敗訴している。しかし、この州法を回避する内容となっている「プロポジション22」という法案が住民投票にかけられるのだ。賛成多数であればギグワーカーの立場は現状のままになりそうだが、反対多数であれば州法が適応され運転手を従業員にする必要が生まれる。プロポジション22の住民投票は2020年11月3日に実施される予定だ。

このようなギグワーカーに関する今後の展開次第では、インスタカートを含む、ギグワーカーに頼るビジネスモデルの企業は今よりも多くの負担を強いられることになるかもしれない。日本でも、ウーバーイーツの配達員による事故の被害者が、配達員とともに運営会社のウーバー・ジャパンに対しても損害賠償を求める訴訟を起こし、判決の行方が注視されている。

日本ではネットスーパーが本格化するか?

日本に目を向けると、インスタカートと同様の買い物代行サービスでは、ダブルフロンティア株式会社が提供する「Twidy(ツイディ)」が2018年にリリースしている。しかし、現在の対応小売店舗は4店舗、対応エリアも東京都内の8区に限られており、インスタカートほどの勢いがあるとは言えない状況だ。

そもそも、食料品はEC化率が低い。経済産業省がまとめた「電子商取引に関する市場調査」によると、2019年の「食品、飲料、酒類」のEC化率は2.89%にとどまっている。この調査の9つの分類の内、「その他」を除いた8つの中では「自動車、自動二輪車、パーツ等」の2.88%に次いでワースト2位の水準だ。EC化率の高い他の分野は、「事務用品、文房具」が41.75%、「書籍、映像・音楽ソフト」は34.18%、全体の平均が6.76%となっている。

食料品のEC化率が低い理由はいくつか考えられるが、鮮度を保つ必要があり長期間倉庫に眠らせる訳にはいかない食料品の在庫問題はその一つだろう。その点、インスタカートやTwidyのように買い物の代行に特化し、在庫を持たないビジネスモデルは有利だ。また、新型コロナウイルスの影響で2020年のEC利用率は上昇しているとも考えられる。

一方、そのようなプラットフォーマーだけではなく、イオンやイトーヨーカ堂などネットスーパーに力を入れる小売業者も増えている。アメリカと同じく、新型コロナウイルス感染拡大による「巣ごもり需要」を受けて、その流れは加速しているようだ。イオンは2020年10月、ネットスーパーを含むデジタル化戦略を進めるために600億円の資金調達を発表している。コロナ禍を契機に日本でも食料品のオンライン購入が広がるかもしれない。

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