順天堂大学とジョンソン・エンド・ジョンソン、モバイルヘルスで収集した医療ビッグデータをAIで解析へ

順天堂大学とジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 ビジョンケア カンパニーは、生涯にわたって「健康と見える喜び」を提供するための医療システムの構築を目指し、個人の健康やライフスタイルデータの活用に関する共同研究「デジタル医療講座」を、2020年5月より開始すると発表した。

■デジタルメディスンの分野で、日本発のイノベーションを目指す

2019年に裸眼視力1.0未満の小中高生の割合が過去最高を記録するなど、子どもの近視問題が注目される昨今、世界に目を向けても、世界人口の半数となる50億人が2050年までに近視になると推定されており、うち10億人が失明リスクの高い重度の疾患や、強度近視になることが予想されている。最新の研究では、視力の低下と認知症の関連性が示唆され、また、緑内障や60歳未満の白内障患者も増加傾向にあるなど、眼の疾患を早期に発見し、最適な治療を受けることの重要性は年々高まっている状況だ。

こうした状況下、ドライアイや眼精疲労などの症状と生活習慣の関連性を明らかにするためのアプリ『ドライアイリズム 』をはじめ、医療アプリ分野で豊富な実績を誇る順天堂大学と、アイヘルスカンパニーとして人々のクオリティ・オブ・ビジョン(QOV)への貢献を使命とするジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 ビジョンケア  カンパニーがタッグを組み、個々の患者にあった最適な予防・治療の実現に向けた共同研究に着手する。デジタル医療を用いたSociety5.0時代の医療を実現させることを視野に、スマートフォンやウェアラブルデバイスなどのモバイルヘルスをはじめとしたIoMT機器から個人の健康やライフスタイルに関する情報を収集、人工知能(AI)を活用した  疾患発症リスクの予測や行動変容の促進、ならびに個別化医療・先制医療に向けた医療システムの構築を目指すとのことだ。

■モバイルヘルスで収集した医療ビッグデータをAIで解析

従来の施設中心型の医療から、患者中心かつ日常生活圏で予見的・生涯的な医療ケアへと、パラダイムシフトが起こるSociety5.0時代の鍵を握るモバイルヘルスだが、本研究の最大の特徴も、モバイルヘルスによる個人の健康やライフスタイルデータの収集にある。具体的には、スマートフォンのアプリで収集したデータから患者の状態を推測し、ドライアイの疑いから角膜異常のリスクまで、早期受診を促すデータとして患者に提供する予定だという。また、患者の日々の状態を可視化し、診断支援のデータとして、医師に提供するなど、収集したビックデータを集約・分析し、個々人にとって価値ある情報に変換することで、眼科領域での個別化医療や先制医療に活用していく計画とのことだ。

〈研究内容〉
モバイルヘルスをはじめとしたIoMT機器から個人の健康やライフスタイルに関する情報を収集し、疾患発症リスクの予測や行動変容の促進ならびに個別化医療・先制医療に向けた医療システムを構築する。また、その過程で、患者の行動変容を促すスマートフォンのアプリ開発も行い、医療機器としての認証および特許の取得を目指す。

【第1段階】モバイルヘルスを用いた個人の健康データの収集の有用性と妥当性を検証
・スマートフォンのアプリによる個人の健康やライフスタイルに関連する観察研究の実施
・収集した個人の健康データと、実際の検診による診療情報の妥当性と信頼性の検証

【第2段階】モバイルヘルスによる疾患予測や行動変容の促進とその効果を検証
・収集したビッグデータをAIにより解析し、疾患・罹患リスクや行動変容の促進を行うアルゴリズムの開発と効果の検証

【第3段階】診断支援のためのインフラを開発
・個人の健康やライフスタイルに関連した情報と、ゲノム・オミックス情報を掛け合わせた個別化医療・先制医療システムの構築
・医療機関への情報提供を目的とした、モバイルヘルスの標準化によるインフラの開発
出典元:プレスリリース
〈期待する成果〉
個人のデジタルデバイスから収集されたビックデータを活用することで、以下の成果を期待しているという。

1. モバイルヘルスによって個々人の健康・ライフスタイルデータを継続収集し、自身の健康状態をリアルタイムかつ数値などで把握し、自己管理することができる
2. モバイルヘルスで収集した個々人のデータを医療機関と共有し、個別化医療を実施することができる
3. モバイルヘルスで収集した個々人のデータをもとに、アルゴリズムによる疾患発症予測、重症化予測ならびに行動変容の促進ができる
4. モバイルヘルスで収集した個々人のデータとゲノム・オミックス情報を組み合わせることで、精密医療や先制医療が可能となる

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