調査レポート「デジタル変革の投資を最大化する5つの指針」が公開 多くの企業で事業部間の連携不足が明らかに
2020/7/3
アクセンチュアは最新調査で、デジタル変革(DX)に取り組む多くの企業が、主要事業部間の連携不足によりプロジェクトへの投資効果を十分に得られていないことが明らかになったと発表した。
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アクセンチュアの最新調査レポート「デジタル変革の投資を最大化する5つの指針:部門の枠を超えたコラボレーションがもたらす効果」は、公開されている財務情報のほか、日本を含む11カ国の経営幹部1,550名(製造および産業関連企業のR&D、エンジニアリング、生産、サプライチェーンの各部門)に対するアンケート調査を基に作成された。調査時期は2020年2月。本調査は、新型コロナウイルスによる影響が全世界に拡大する前に実施されているが、調査報告ではパンデミックのような危機や経済後退が引き起こす状況や問題点を指摘しており、「Never Normal(全く新しい日常)」な状況下において企業が執るべき指針を論じているという。
アクセンチュアでインダストリー X.0事業をグローバルで統括するマネジング・ディレクターのナイジェル・ステイシー(Nigel Stacey)氏は次のように述べている。
「企業は成長に伴い、組織がサイロ化する傾向にあります。部門ごとに機能を集約させた組織では、部門内のニーズを優先して、部門間の連携が阻害されやすい状況が生まれます。新型コロナウイルスの危機によって企業のデジタル変革が加速する今、この閉鎖的な組織の課題が改めて浮き彫りになっています。組織全体のデジタル化が阻害され、事業の復旧の遅れと成長の停滞を招く大きなリスクになるのです。」
■事業部間の無駄な競り合いによるコスト
アクセンチュアでファンクションネットワーク&プログラムをグローバルで統括するシニア・マネジング・ディレクターのレイチェル・バーテルズ(Rachael Bartels)氏は次のように述べている。
「デジタルプロジェクトを計画、実行しようとしても、サイロ化した組織ではイノベーションが阻害され、組織の成長とパフォーマンス向上の機会を失う恐れがあります。業界をけん引するリーダー企業は、現在のパンデミックの影響の有無にかかわらず、事業の成功のために組織全体および事業部間でのコラボレーションが必要不可欠だということを十分に認識しています。」
今回の調査では、部門の枠を超えたコラボレーションに成功している企業を「チャンピオン企業」と定義づけ、その特長を分析した。チャンピオン企業は調査対象の日本企業の13%(グローバル全体で22%)で、デジタル変革によって高い価値を生み出すために、事業部間の連携に注力している。
2017年から2019年に事業部門のデジタル変革を推進した結果、チャンピオン企業はその他の企業に比べて大幅に業績を向上させたことが分かった。日本のチャンピオン企業のデジタル変革による収益は27.7%増加しており、その他の企業(11%)の2倍以上にのぼる(グローバル全体ではチャンピオン企業27.1%に対してその他企業6.6%で、4倍の収益)。また日本のチャンピオン企業は、その他の企業のおよそ1.6倍(グローバル全体1.5倍)もの投資をデジタル変革に向けて行っており、EBIT(支払金利前税引前利益)は19.8%(グローバル全体27%)増加している。一方、その他の企業のEBITは7.3%(グローバル全体2.1%)に留まっている。
■チャンピオン企業の主な取り組み
チャンピオン企業では、IoTデバイスの管理やエンジニアリングデータのデジタル化など、従業員同士のつながりや部門間連携を促すプロジェクトを優先して取り組んでいる。またチャンピオン企業では、デジタルソリューションとプラットフォームの相互運用を実現している。グローバルのチャンピオン企業の71%が、「複数のデジタルプラットフォームを連携してコミュニケーションを活性化している」と回答した。
また、事業計画を推進する情報技術と、製造や運用を制御する運用技術の連携に関して明確なルールを策定し、実践している。日本のチャンピオン企業では、スマート工場・設備保全(50%)、デジタルスレッド(製造全工程のデジタル化、45%)、クリーンモビリティ(環境負荷の低いモビリティ、40%)といった分野に優先して取り組んでいることが明らかになった。
アクセンチュア インダストリー X.0マネジング・ディレクター兼グローバル・リサーチ責任者のラガフ・ナラサライ(Raghav Narsalay)氏は、次のように述べている。
「景気後退の最中であっても、企業はデジタル変革を推進していく必要があります。ただしデジタル変革を成功させるには、部門横断で連携しなければなりません。部門間のコラボレーションは、効率や生産性と同様、困難な状況下における事業の成功や他社との差別化を計る重要なバロメーターになりつつあります。」
調査レポートは、公開されている財務情報のほか、R&D、エンジニアリング、生産、サプライチェーンの各部門の企業幹部1,550名 を対象としたアンケート調査に基づいて作成している。アンケートは、年商10億ドル以上の企業(11カ国14業界)を対象に2020年2月に実施した。
調査対象業界
航空宇宙・防衛、自動車、自動車部品、化学、消費財・サービス、ハイテク、産業機器、ライフサイエンス、医療機器&テクノロジー、金属・鉱業、石油・ガス、その他天然資源、半導体、公益事業
調査対象国
日本、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリス、アメリカ