愛知県がんセンターとNEC、AIと実験免疫学の融合によるがん免疫療法を目指す基礎的共同研究を開始
2020/7/6
愛知県がんセンターと日本電気株式会社(以下 NEC)は、人工知能(AI)と実験免疫学の融合により、精度の高いがん抗原同定システムの構築と治療選択バイオマーカーの開発を行い、革新的個別化がん免疫療法の臨床応用に繋げることを目的とした基礎的共同研究を開始すると発表した。
■背景
愛知県がんセンター腫瘍免疫制御トランスレーショナルリサーチ分野は、これまで愛知県がんセンター呼吸器外科、呼吸器内科と共同で、患者検体を用いたトランスレーショナルリサーチを実践してきた。本分野は実験免疫学を専門とし、手術で得られた切除腫瘍等から、患者一人ひとりのがんの免疫微小環境や腫瘍抗原特異的免疫応答の解析を行っている。一方、NECは、AIを活用した創薬分野への応用研究を進めている。がん免疫研究の分野においても、独自のAIによるネオアンチゲン予測システムを開発しており、本システムは世界で高い評価を得て、Parker Institute for Cancer ImmunotherapyおよびCancer Research Institute が設立・運営する国際コンソーシアムTESLA(Tumor neoantigEn SeLection Alliance)に日本企業として初めて参画しているという。
■共同研究の概要
がん患者の腫瘍内のT細胞が認識するがん抗原を、AIによるネオアンチゲン予測技術と実験免疫学的手法を組み合わせて同定する。まず、患者のゲノムシーケンスのデータから、AIを用いて、ネオアンチゲンを予測する。そして、その患者のT細胞を用いて、予測された抗原に対する反応性をスクリーニングすることでネオアンチゲンを同定する。将来的には、得られた質の高いがん抗原データを使用し、より精度の高いネオアンチゲン予測システムの開発を目指す。
2. 腫瘍微小環境の解析と免疫療法の治療選択バイオマーカーの開発
患者一人ひとりにおける腫瘍内の免疫微小環境を包括的に解析する。愛知県がんセンターが保有する臨床情報とゲノムシーケンスで得られる遺伝子変異や遺伝子発現情報、そして上記の実験免疫学的手法で得られたデータ等から、AIを活用して免疫療法の治療選択に有効なバイオマーカーを開発する。