矢野経済研究所、国内企業のDXへの取り組み状況についての調査・考察を発表

株式会社矢野経済研究所は、国内企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組み状況について調査を実施し、DXに対する意識や意欲についての考察を発表した。

出典元:プレスリリース
出典元:プレスリリース

■調査結果概要

本調査ではDX(デジタルトランスフォーメーション)を、革新的な製品やサービスの開発、ビジネスモデルの変革、イノベーションを実現する「革新的な取り組み(攻めのDX)」、基幹システムの刷新やテレワーク対応、既存業務効率化、業務プロセス・組織風土・企業文化を変革する「IT刷新(守りのDX)」の2つに分類し、国内の民間企業および公的機関523社・団体に対し、郵送アンケート調査を行った。

アンケートでは、革新的な取り組み(攻めのDX)への意欲とIT刷新(守りのDX)に対する意欲、それぞれについて8段階の数値(「8」が積極的、「5」が普通、「2」が消極的、初めて聞いたを「1」としている)で回答を得た。そのため、数値が大きいほど積極的であることを示している。国内の民間企業および公的機関523社の平均値は、それぞれ革新的な取り組み(攻めのDX)が3.37、IT刷新(守りのDX)が3.78であった。どちらも「普通」を示す5を下回り、企業のDXに対しての消極的な姿勢が明らかになった。また、僅か0.41ポイントではあるが、IT刷新(守りのDX)への意欲が革新的な取り組み(攻めのDX)への意欲を上回っており、日本の平均的な企業は革新的な取り組みへの意欲が乏しく、その結果も想像通りの印象だという。

なお、IT刷新(守りのDX)について初めて聞いた(「1」と答えた)比率は2.3%(12社)であったが、革新的な取り組み(攻めのDX)について初めて聞いたと回答した比率は20.5%(107社)となっており、ユーザ企業のDXに対する理解、とくに攻めのDXへの認知は不十分であった。DX関連ベンダは、DXに対する啓蒙活動の手を休めている暇はないと考えるという。

■注目トピック

ポテンシャルが高いサービス業
本調査で行った法人アンケート調査結果に加えて、DX関連ベンダへの調査などから業種別にDXへ取り組む意欲や意識の高さについて、考察している。とくに革新的な取り組み(攻めのDX)への意欲や意識の高さについて、ポテンシャルが高いのはサービス業だったとのことだ。

サービス業と一口に言っても、さまざまな業種の企業が混在しており、サービス業内でもDXに対する温度差はある。運輸や建設業、医療分野などでDXへの取り組む意欲が高いが、飲食業はSNSを活用したマーケティング、集客やキャッシュレス決済などに留まっていることが多い。また、不動産業はこれまで余りDXが進んでこなかった業種のひとつだが、コロナ禍で対面営業が困難であったり、内見が減少したり、さらにはテレワークに起因する事業所賃貸契約の解約や家賃減額など、環境が大きく変わり始めたことから、攻めのDXに対するポテンシャルが膨らみ始めたと推測している。

もっとも、金融業などはこれまで既にある程度、攻めのDXを進めているため、調査結果では今後の意欲が低めに出た可能性もある。また、DXの推進については、多くの業種で大手企業から中小企業への流れはあり、今のところテレワーク等の必要に迫られたところ以外のDXについては中小企業にまで降りてきているとは言い難い。そのため、業種別というひとつの物差しで全て測りきれるものではないと考えるとのことだ。

調査概要
1.調査期間: 2020年5月~7月
2.調査対象: 国内DX関連ベンダ、民間企業および公的機関・団体等
3.調査方法: 同社専門研究員による文献調査、電話・e-mailによるヒアリング調査、ならびに法人アンケート調査併用

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