山梨市とNTT東日本、ICTを活用した「地域版スマートシティ」を本格展開へ
2020/11/17
山梨県山梨市と東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)は、山梨市の基幹産業である農業分野でのIoT活用による課題解決を起点に、自営無線ネットワークをベースインフラとした街づくりを進めている。山梨市は、2017年2月から自営無線ネットワークを活用し、圃場における環境センシングや盗難対策、市内における防災対策を進めてきたが、2020年12月より、同ネットワークを福祉分野への活用に発展させ、地域版スマートシティとして本格展開すると発表した。
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■概要
日本の自治体の多くが人口10万人以下の中小規模自治体であるなかで、山梨市も同様に人口約3.5万人の地方都市となるが、本事例はこうした中小規模自治体が、地域課題の解決や街づくりのために無線ネットワークやセンサー等を地域実装し、自立して運用しているスマートシティの実例といえるとのことだ。
■これまでの取り組み
・山梨市が、地域の課題を横断的に解決する自営無線ネットワーク「LPWA」基地局を市内5拠点に整備
・農業での活用を起点に、河川の水位監視や地崩れ監視等の防災分野へ活用領域を拡大
・各センサーは、太陽光や照明光、機械の発する振動、熱などのエネルギーを採取し給電するエナジーハーベスティングシステムを採用することで、電源確保が困難なエリアでも運用が可能
<農業:圃場の環境データセンシング>
シャインマスカット生産農家の圃場において、温湿度や照度等の環境データを取得できるセンサーを設置し、クラウドを通じて自宅や外出先等から確認できる仕組みを構築している。圃場の環境データをリアルタイムに把握することで、圃場の巡回回数を必要最低限にすることができ、巡回頻度を20%削減した。また、JAが保有する栽培マニュアルとセンサーで可視化された圃場の状態を常に照合しながら栽培ができることで、失敗の少ない安定栽培も実現。
<農業:シャインマスカットの盗難対策>
高単価のため被害が多いシャインマスカットの盗難対策として、圃場の出入り口に人感センサーを設置し、人の動きを検知した際に指定のメールアドレスにアラート通知ができる仕組みを構築している。盗難発生時の迅速な対処や心理的な犯罪抑止効果が期待でき、生産者の経済的損失や経営意欲低下等の抑止を実現。
<防災:水位監視、地崩れ監視>
自治体の防災対策として、市が管理する河川や土砂災害の特別警戒地域の一部にセンサーを設置し、災害時の状況確認や定期巡回稼働低減等、市域情報を効率的に把握できる仕組みを構築している。河川や傾斜地の状況をリアルタイムに把握でき、災害発生時には指定のメールアドレスにアラートが通知されるため、現場特定の迅速化や早期復旧にもつながる。更に2020年12月からは、センシングした水位データを山梨市のホームページで公開し、オープンデータ化を図ることで、住民向けサービスとして提供していく。
■新たな取り組み(福祉分野)
・高齢者の安否確認や緩やかな見守りに向け、「自宅」と「高齢者が集まる施設」の出入りを検知し、あわせて自宅の環境情報等を可視化することにより、宅内外を一貫して安否確認する仕組みを構築
・災害時の安否確認として、災害避難所に出入りした際に検知する仕組みを整備
・各センサーは照明や圧力、振動等のエネルギーを電力に変換できる電源レスのセンサーを採用しているため、電池切れで正しく検知ができないといったリスクを回避可能
【取り組み①】
センサー等を身に着けた高齢者が自宅・公民館を出入りした際に家族等にメールを通知する。日常生活への浸透性が高い靴内蔵センサーを活用することで、高齢者が意識することなく見守ることができる。
【取り組み②】
高齢者の自宅に温度や照度等の環境情報を取得できるセンサーや、ドアの開閉状況を検知できるセンサーを設置することで、宅内状況の可視化や異常検知時の家族への通知が可能。
【取り組み③】
災害避難所に出入りした際に検知する仕組みを構築する。この仕組みにより、災害時に高齢者が無事に避難できたことを確認できるとともに、どの避難所に居るかの位置情報を把握することができる。