本実証実験は、総務省の実証事業「4K8K高度映像配信システムの産業横断的な活用に向けた調査研究」の一環として、緊急災害時の救助や避難誘導などをより正確に、かつ迅速に行う目的で実施。ドローン搭載の8Kカメラは、想定される被災地の、その時点の被災状況を短時間で広範囲に詳細に撮影でき、5G経由で災害対策本部や救助隊などに配信すれば、災害発生時の課題解決に役立つものと考えているとのことだ。
■背景
昨今、日本においては、地震や津波、河川の氾濫、土砂崩れなどが頻発する中、緊急災害時に被災地の状況を詳細に把握し、救助や避難誘導などに役立てるため「SIP4D(府省庁 連携防災情報共有システム)」などの取り組みが始まっている。しかし、防災ヘリやドローンによる被災状況の撮影映像はハイビジョン(2K)画質が一般的となっている。他方、普及が進む5Gは、大容量の8K映像をリアルタイムで送受信できる。そこで、映像配信高度化機構が開発中の「4K8K高度映像配信システム」を利活用し、8Kカメラ搭載のドローンなどで撮影した高精細映像を、5Gを使って、ほぼリアルタイムに伝送すれば2Kよりも16倍も高精細な8K映像(言い換えると、2K画質であれば一度に16倍も広域の被災エリアを撮影できること)で、被災状況をより正確に広範囲に把握できるため、被災者の救出や避難誘導、被害軽減などに役立つものと期待されているとのことだ。
■実証概要
今回は、仙台市の「近未来技術実証ワンストップセンター」の協力のもと、東日本大震災の被災地の荒浜地区や作並地区などを1月にドローンで撮影した8K映像(被災地想定)を、京都府の「けいはんなロボット技術センター(被災現場想定)内の実験施設で、ドローンよりNTTドコモの5Gでアップリンク伝送し、神奈川県にある「4K8K高度映像配信システム」を経由して、東京都の「ドコモ5GオープンラボYotsuya(災害対策本部想定)」にダウンリンク配信し、大型の8Kディスプレーに上映して画質の劣化や遅延等について検証した。さらに、将来的に現場の救助隊などが持つタブレットを想定したモニター(救助隊想定)には、広域な8K映像の一部(救助隊が見たいエリア)を切り出して表示した。
■各社・機関の役割
映像配信高度化機構:「4K8K高度映像配信システム」の供出。実証取りまとめ。
三菱総合研究所:実証事業の請負、取りまとめ。
NTTドコモ:5Gを含む回線の手配、供出。5G実験施設の供出。技術支援。
富士通:「4K8K高度映像配信システム」の開発支援、運用、システム設計、技術支援。
シャープ:ドローン搭載8Kカメラと5G送受信機の開発、供出、映像撮影、5G配信。
アストロデザイン:8K映像の切り出しシステムの開発、供出。
■実証結果
3日間の実証実験の結果、想定される被災地域の8K映像を、「4K8K高度映像配信システム」経由で、5Gを含むネットワークを使って、想定上の災害対策本部や救助隊など複数拠点に、回線の込み具合により多少の遅延時間はあったものの高画質のまま伝送できたという。被災地の状況を広範囲に8K高精細映像で把握できることが確認されたとのことだ。