メディアドゥとトーハン、市場拡大・出版の新市場創出を目指し資本業務提携
2021/3/26
株式会社メディアドゥは2021年3月25日、紙出版の取次大手・株式会社トーハンと資本業務提携を締結したと発表した。また、同社がトーハンを割当先とする第三者割当増資を行うとともに、トーハンが第三者割当の方法により処分する自己株式を同社が取得することを決定した。
■本提携の目的
メディアドゥは国内2,200の出版社と150の電子書店を繋ぐ電子書籍取次最大手だ。電子書籍の黎明期から流通を担い、蓄積してきた知見とテクノロジーを駆使し、近年は紙の出版市場を含む出版業界全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)と市場拡大、および出版の新たなマーケット創出に必要とされる存在になることを目指している。直近の具体的な取り組みとしては、コンテンツの権利保護や資産化、マーケティング強化などを目指したブロックチェーン技術活用のプラットフォーム開発や、電子・紙の出版物の売上と印税を統合管理し業務効率化を図る出版社向けシステムの開発などに注力している。トーハンは3,000の出版社と5,000の書店を結び、創立以来70余年にわたり紙出版物の取次及び流通を担ってきた、流通総額の約3分の1以上を占める業界を代表する企業だ。中期経営計画「REBORN」においては「本業の復活」と「事業領域の拡大」の二方針を掲げ、最近では返品減少と書店経営の健全化を目指し、ニーズに応じた適正な流通を行う「マーケットイン型流通」を提唱し、出版流通の構造改革に意欲的な取り組みを行っている。
テクノロジーと電子書籍に広い知見を持つメディアドゥと、全国各地の書店との関係が深く紙出版物に多くの知見を有するトーハンが手を組み、書店の紙の出版物を接点に、デジタルコンテンツを活用した全く新しい体験を生み出し、市場拡大・出版の新市場創出を図ることを目指して、本提携を締結することとなったとのことだ。
■本提携の展望
■本提携の概要
・書店におけるデジタルコンテンツ関連事業
メディアドゥはこれまで、個数の制限を持ったデジタルコンテンツの概念として「デジタル・コンテンツ・アセット」(DCA)を提唱し、ブロックチェーン技術の開発を進めてきた。この知見を生かし、今夏をめどに、これまでにない全く新たなアプローチで、書店を訪れて本を購入した読者などに、数量限定のデジタルコンテンツを「デジタル資産」(NFT)として付与するモデルの実証を行う。このようなNFTを活用した事業は、書店の手をほとんど煩わせることなく実現可能で、全国各地の書店の店頭フェアやイベントでも活用できるという。また、通常の電子書籍販売のほか、「デジタル教科書やデジタル教材」、「電子図書館」についても、全国各地の書店がその流通に参画できるような事業の検討を進めている。
・出版マーケティングおよびNetGalley関連事業
メディアドゥの出版マーケティングサービスである、書籍のゲラを電子データで書店員や図書館司書、ネットインフルエンサーなど、影響力のある読者に配布し販促につなげるNetGalleyをさらに多くの出版社が活用することで、トーハンが推進するマーケットイン型流通との相乗効果により、業界の大きな課題である返品状況の改善を目指す。さらに、両社がもつ電子と紙の販売情報を一元化し、電子と紙の統合的なマーケティング情報を出版社、書店および電子書店と共有することも目指す。
・その他
メディアドゥは、紙・電子すべての出版物などの制作と販売に関わる情報を一元管理するクラウド型サービス(出版ERP)を開発している。このサービスを出版社が広く活用することで、必要な情報を正確に早く書店、電子書店、図書館、書評サイトなどに提供し、電子と紙の出版市場双方の拡大を目指すとのことだ。