これまでの技術では、地上から水中の魚を観察すること自体の難しさや、竿や糸を通じて得られる感覚を元に魚の行動を解釈する際のあいまいさを排除しきれていなかったという。smartLure Model Zeroは、通常のルアーと同じように泳がせるだけで、着水の瞬間から離水するまでの間、魚の生息環境である水中の温度や明るさ、ルアーの動き、水深トレースを高精細にデータ化するセンサーモジュールを搭載している。これらのデータは、ユーザーが要求したタイミングでアプリに転送され、アプリ上で位置情報や日時情報のほか、気象条件、月齢や潮汐など魚の行動、ひいては釣果に影響する情報と統合される。スマートルアー社は、魚がルアーに食いつくまでの過程のデータを世界中の釣り人から収集してビッグデータ化し、環境条件のほか、ルアーのタイプやカラー、動きと釣果との関連性、いわば釣りの秘密を解き明かすことを目指しているという。将来、スマートルアー社のIoTルアーが普及すれば、これまで身近にありながら見過ごされてきた水辺環境の変化や、魚の生息数の把握につながるデータが得られる。これらのデータは、自然状態での魚の行動を知る強力な手がかりになる可能性があり、魚類研究者からはすでに強い関心が寄せられているという。釣りは自然環境に依存した営みであり、スマートルアー社では、IoTルアーを通じて得られた知見を、水圏の環境保全や、魚の生息数の管理などにつなげていきたいと考えているとのことだ。
smartLure Model Zeroの予約販売は日本時間の4月26日正午、クラウドファンディングサイトKickstarter上で、日本・米国向けにスタートする。バッカー(予約購入者)向け出荷は、2022年2月から始める予定だという。スマートルアー社は、2017年の創設以来、IoTルアーの開発を進めてきた。2021年1月、商品試作(EVT=Engineer Verification Test)レベルのセンサーモジュール30機が完成。3月からのフィールドテストでは、実際に魚を釣りあげ、魚がルアーに食いつくまでの過程における高精細なデータを安定して取得できることや、電源ボタンを一度押すだけで1日中センシングを続け、釣り人が要求した時にアプリをワンタップするだけで、データを転送、その場で視覚化して表示できることなどを確認した。フィールドテストで商品試作機の性能を確認する一方、ここまでの開発で量産コストも把握できたため、スマートルアー社ではセンサーモジュール量産のメドがついたと判断し、今回のクラウドファンディングを行うとのことだ。