2021年度中の提供開始に向けて、民間企業と連携しながら開発を進めているという。これまでの市民・市民以外に加えて「電子市民」という新たなカテゴリーを設けて、官民の様々なサービスを提供するe-加賀市民制度を通して、これまで加賀市と接点のなかったような人々へも加賀市の魅力をオンライン・オフラインの両面から届け、リモートワーカー及び移住者を増加させ、将来的な人財や産業集積を図るとのことだ。
■e-加賀市民制度(加賀版e-Residency)とは
デジタル個人認証技術でマイナンバーカードや国民ID等と紐づけた、法令上の市民とは異なる電子上の市民「e-加賀市民」に、様々な分野で市民に準じた官民サービス を受けられる仕組みや、加賀市に来るための動機づけを行うなどの、サービスや支援の仕組みを構築するもの。
■なぜ、加賀市がe-Residencyを始めるのか
加賀市では、マイナンバーカードの交付率が65.1%、申請率が76.5%(令和3年4月30日現在)と全国の市区で圧倒的No1を誇っており、既にマイナンバーカードを活用したデジタルサービスの提供を全国の自治体でもいち早く開始しているという。e-加賀市民制度の展開についても、既に市民向けに開発・提供しているサービスを基軸としているため、全てのサービスをゼロから構築する必要がないことから、加賀市の強みを活かすプログラムであると考えているとのことだ。
■「e-加賀市民制度(加賀版e-Residency)」の提供に至った経緯
全国有数の温泉地である加賀市は、山代温泉、山中温泉、片山津温泉の加賀温泉郷が有名で、毎年多くの観光客が訪れている。小松空港から 車で約20分と、各都市からのアクセスが良いことに加え、2024年春ごろには北陸新幹線の加賀温泉駅も開業予定など、手軽に行ける温泉地としての機運が高まっている状況だという。一方で加賀市は、主に「人口減少」と「観光客減少」といった2つの大きな課題に長年悩まされている。加賀市の人口は、1985年の約8万人をピークに、2021年5月現在で64,822人と減少の一途を辿っている。2014年には、日本創成会議が示した「消滅可能性都市」の一つに指摘されており、市も強い危機感を覚えているとのことだ。また、観光客は1980年代の約400万人をピークに、2019年には約180万人と半減。そして新型コロナウイルス感染症の影響もあり、2020年は約100万人にまで減少しており、年間8万人にまで伸びていたインバウンド観光客も期待できない深刻な状態だ。このように「人口減少」と「観光客減少」という2つの課題に対して、時代に即したソリューションを用いた改善が加賀市の急務となっていた。これら2つの課題を解決し、加賀市の魅力をより多くの人々に届ける施策として、e-加賀市民制度(加賀版e-Residency)を提供するとのことだ。
■「e-加賀市民制度(加賀版e-Residency)」が“開放”する加賀市の可能性
e-加賀市民制度とは、加賀市のサービスを拡張し、世界に開放するデジタル制度。従来の法令上の市民とは異なる”電子上の市民「e-加賀市民」”という制度を創設し、様々な分野で市民に準じた行政サービス等を提供する。
利用者はe-加賀市民になることで、例えば以下のようなサービスを受けられるように検討している。
・滞在日数に応じて、加賀市往来時の宿泊費等を支援
・市民のみを対象としていたセミオンデマンドタクシーの利用
・移住体験プログラムの優先提供
・市の施設であるコワーキングスペースや会議室を無償貸出し
・移住時における手続きのワンストップ支援
・法人設立時の手続きを市が支援
e-加賀市民になると、まずオンライン上で、加賀市のデジタルサービスにアクセスすることが可能になる。例えば、市の政策決定のための電子投票システムを用いた意向調査に参加できたり、実際に加賀市に訪問する際に、一定の滞在日数を超える場合に限って、加賀市に滞在時の移動や宿泊費等の支援を受けたりすることができる。また、加賀市が運営しているコワーキングスペースを無料で使用することができるなど、日中は仕事に集中、夜は各温泉街にある総湯を利用することで、心身共に快適な環境で仕事を進めることができる。
中期滞在を通じて加賀市の魅力を見出だし、移住や拠点化を検討するe-加賀市民には、移住体験プログラムや、お試し居住体験の家の利用 、補助金の交付などのプログラムを提供し、移住に向けた支援を行う。移住の際には、引っ越しワンストップサービスと連携して必要な手続きを最小限にし、引っ越しにまつわるあらゆる「面倒」を解消するべく支援していく方針とのことだ。
なお、e-加賀市民になるための申請や、補助金の交付申請は全て電子上で行うことを想定しており、既に市民に対して提供している「行かない・書かない・待たないサービス 」のコンセプトを体験することが可能だ。また、なりすましや多重登録を防ぐために、マイナンバーカード等を活用したデジタルIDソリューション”xID”を用いて本人確認や電子署名を行う形を採用するという。