矢野経済研究所、「モビリティDX」に関する調査を実施

株式会社矢野経済研究所は、大きな変化に直面する自動車産業の将来動向についてIT・データの観点から調査・研究を行ったと発表した。その結果、MIC(モビリティ・インフォメーション・サークル)の構築が今後の競争上のポイントになると考えるとのことだ。

MIC(Mobility Information Circle:モビリティ・インフォメーション・サークル)概念図
出典元:プレスリリース
自動車ビジネス 価値の転換
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■調査結果概要

現在、自動車のコネクテッド化が進んでおり、自動車メーカー(OEM)は走行データや車両データ、乗員データなどを通信回線を介して、常時、取得できるようになってきた。今後もその動きは強化され、クラウド上のデータベース[モビリティPaaS(Platform as a Service)内、車両・乗員データ]に蓄積されるようになると見込まれる。そして将来、自動車メーカーは、このビッグデータをどのように運用し、活用するかが競争のポイントになると矢野経済研究所では考えるという。本調査において同社は、こうした自動車がもたらすビッグデータ活用・運用の流れを「モビリティ・インフォメーション・サークル(以下、MIC)」と名付け、整理した。

今後、既存の自動車メーカーやEVカーで新規参入を狙う新興メーカーにとって、競争の尺度はMICをいかに早く確立できるかに移ってくると同社は考えている。それほどまでに、自動車ビッグデータの活用・運用は重要な要素になってくるという。

MIC概念図の右側(MIC)はOEMの社内や自社グループ内での新しいデータ循環を示し、企画・設計段階のシミュレーション用途などにデータは活用されていく流れを描いている。また、自動車用のさまざまなアプリが開発され、個人の趣向に合わせてた最適化が志向され 「個車化」が進むと予測している。

MIC概念図の左側(MIC for Service)は多様な企業に対して、クラウド上のデータベースからデータ提供することで新サービス創造を支援しようとする流れを示す。モビリティからの情報を利用した新しいサービスを生み出すエコシステムとしての姿である。

ハードウェア(以下、H/W)としての自動車の価値は、将来、低下していく可能性が高い。それにかわる成長の源泉となるのが、このMIC for Serviceとなる。そこでは、新サービスが事業として成立するのか、シミュレーション等を行うサービス開発基盤が搭載されていくのではないかと予測している。

■注目トピック

・自動車ビジネスでの「価値の転換」
自動車ビジネスにおいて、価値の源泉が急激に変化しつつある。モノづくり、データ取得&連携、モビリティサービスという3階層に分けて、自動車ビジネスの価値転換の推移を整理した。

【レイヤ1 モノづくり】
ビークルOSの登場により、クルマのスマホ化が起きようとしている。ビークルOSを境に自動車開発がソフトウェアとハードウェアに水平分離されようとしており、また、EV化により部品点数の削減・組立の簡素化などが志向され、モノづくりの価値は低下していくと見られている。

【レイヤ2 データ取得&連携】
これまで、OEMと顧客との情報連携は分断されていた。しかし、コネクテッド化により、OEMはさまざまなデータを得られるようになるため、モノづくりに代わり、データづくりの価値が上昇してくると予測。これからはデータを活用した設計開発により、よりニーズに見合った自動車開発を行う必要がある。

【レイヤ3 モビリティサービス】
今後、H/Wとしての自動車の価値は相対的に低下していくことが考えられ、OEMにとってはデータを活用した「コト売り」が重要になると見込まれる。コト売りとは、モビリティデータ、インフォメーションを活用した各種サービスのことを指す。OEMは単にH/Wを製造・販売するのではなく、データをつくり、サービス化することでビジネスを拡大していくとみられるとのことだ。

■調査要綱

1.調査期間: 2021年8月~10月
2.調査対象: 車載ソフトウェア/ビークルOS/モビリティPaaS/自動車産業の設計・開発動向/自動車産業のビジネス構造
3.調査方法: 同社専門研究員による専門家への直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用

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