矢野経済研究所、「モビリティDX」に関する調査を実施
2021/11/9
株式会社矢野経済研究所は、大きな変化に直面する自動車産業の将来動向についてIT・データの観点から調査・研究を行ったと発表した。その結果、MIC(モビリティ・インフォメーション・サークル)の構築が今後の競争上のポイントになると考えるとのことだ。
■調査結果概要
今後、既存の自動車メーカーやEVカーで新規参入を狙う新興メーカーにとって、競争の尺度はMICをいかに早く確立できるかに移ってくると同社は考えている。それほどまでに、自動車ビッグデータの活用・運用は重要な要素になってくるという。
MIC概念図の右側(MIC)はOEMの社内や自社グループ内での新しいデータ循環を示し、企画・設計段階のシミュレーション用途などにデータは活用されていく流れを描いている。また、自動車用のさまざまなアプリが開発され、個人の趣向に合わせてた最適化が志向され 「個車化」が進むと予測している。
MIC概念図の左側(MIC for Service)は多様な企業に対して、クラウド上のデータベースからデータ提供することで新サービス創造を支援しようとする流れを示す。モビリティからの情報を利用した新しいサービスを生み出すエコシステムとしての姿である。
ハードウェア(以下、H/W)としての自動車の価値は、将来、低下していく可能性が高い。それにかわる成長の源泉となるのが、このMIC for Serviceとなる。そこでは、新サービスが事業として成立するのか、シミュレーション等を行うサービス開発基盤が搭載されていくのではないかと予測している。
■注目トピック
自動車ビジネスにおいて、価値の源泉が急激に変化しつつある。モノづくり、データ取得&連携、モビリティサービスという3階層に分けて、自動車ビジネスの価値転換の推移を整理した。
【レイヤ1 モノづくり】
ビークルOSの登場により、クルマのスマホ化が起きようとしている。ビークルOSを境に自動車開発がソフトウェアとハードウェアに水平分離されようとしており、また、EV化により部品点数の削減・組立の簡素化などが志向され、モノづくりの価値は低下していくと見られている。
【レイヤ2 データ取得&連携】
これまで、OEMと顧客との情報連携は分断されていた。しかし、コネクテッド化により、OEMはさまざまなデータを得られるようになるため、モノづくりに代わり、データづくりの価値が上昇してくると予測。これからはデータを活用した設計開発により、よりニーズに見合った自動車開発を行う必要がある。
【レイヤ3 モビリティサービス】
今後、H/Wとしての自動車の価値は相対的に低下していくことが考えられ、OEMにとってはデータを活用した「コト売り」が重要になると見込まれる。コト売りとは、モビリティデータ、インフォメーションを活用した各種サービスのことを指す。OEMは単にH/Wを製造・販売するのではなく、データをつくり、サービス化することでビジネスを拡大していくとみられるとのことだ。
■調査要綱
2.調査対象: 車載ソフトウェア/ビークルOS/モビリティPaaS/自動車産業の設計・開発動向/自動車産業のビジネス構造
3.調査方法: 同社専門研究員による専門家への直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用