XRデバイスの登場やeスポーツの興隆でメタバース市場が成長している。2022年中にはMETA社の「Meta Quest 2」(旧Oculus Quest)や、ソニーのプレイステーション用VRヘッドマウントディスプレイ「PlayStation VR2」の発売が予定されているほか、FortniteやMinecraftといったバーチャル空間のゲームも、盛り上がりを見せている。今後、没入感のあるメタバースの応用領域はゲーム市場にとどまらず、ファッション、エンターテイメント、教育、航空宇宙・防衛などへの適用も期待されており、メタバースの市場規模は2028年には90兆円規模に達するとのレポートもあるという。その一方で、メタバースのコンテンツ創出において広く利用されている「Blender」など既存3D制作ツールはプロ向けであり、一般の人たちが活用するにはハードルが高いものだった。
しかし、モバイルデバイスの高性能化が着実に進んでいることに加えて、2020年3月にはアップル社が従来のスマホカメラに加えて3DセンサーをiPhoneに初めて搭載するなど、急速に個人がスマホで手軽に3Dコンテンツを作成できる下地が整いつつある。その中で、株式会社WOGOは「3D制作の民主化」をビジョンに掲げ、2021年1月に東京大学情報理工学系研究科所属のメンバーを中心に設立された。2021年にはアプリのベータ版をリリース。3Dスキャンの実装をスマホに落としこんだ。さらに今回リリースしたWIDAR正式版では「3D編集機能」をスキャンアプリに搭載した。これによって、Blenderなどの従来の3D制作ツールでは数時間かかっていたゼロから形状を構築する作業が、WIDARでは3Dスキャンと編集の組み合わせによって10分程度に短縮。誰でも3Dモデルの生成が手軽にできるようになったとのことだ。
株式会社WOGOは2022年3月5日、WIDAR正式版をiOSおよびAndroidプラットフォームにてリリースした。さらには、3D編集機能の初回リリースとして複数データ配置機能、背景変更機能と動画像出力機能をアプリ内に新規追加した。また、自身の作品を投稿できるコミュニティー画面を用意し、3Dデータが共有、再利用されていく土台を用意。WIDARではゲームエンジンをベースとした本格的な編集機能をアプリに搭載していて、形状変形やペイント、CGエフェクトの付加のような複雑な処理が比較的実装しやすくなっているという。今後は調達した資金を元に編集ツールの追加リリースを継続的に行い、3Dスキャンと編集機能による多様な3D作品の創出が、スマホで誰でも手軽にできる世界の実現を目指す。また、コミュニティー機能を一層充実化し、3Dデータが蓄積して、データがさらに新しく素材として活用されるようなコラボ制作の流れを作り出し、3Dコンテンツ作成のハードルを引き下げる。さらには、創出された3Dデータの活用を促進し、メタバースへよりたくさんのコンテンツの供給を実現すべく、データの外部接続APIの開発と提供も図るとのことだ。