本研究は、眼鏡型ウェアラブルデバイスで計測した、受診者の目や体の動きに関するデータとAI技術を活用し、認知症の疑いを判定する検査手法の確立を目的としている。富士フイルムと東京都健康長寿医療センターは、共同研究の一環として認知症患者約100名を対象に臨床研究をスタートした。本臨床研究では、高精度センサーを搭載した眼鏡型ウェアラブルデバイスを用いて患者の視線移動、まばたきの回数、頭部の傾き、歩行時の左右バランスなどのデータを、AI技術を用いて解析することで、認知症疑いの判定に有効なデータ指標を見出すことを目指す。
認知症患者は、日本に約600万人(2020年時点)いると推計され、さらに、2025年には約700万人に増加すると予測されているという。認知症の診断は、一般的に、専門医による問診、MMSE(認知症のスクリーニングとして使用される神経心理検査)、MRI画像検査などによって行われる。しかし、これらの検査は、専門の医療施設で長時間かけて実施されるため、受診者にとって身体的・心理的負担が大きいという課題があるという。認知症の早期発見・早期治療につなげるために、より多くの人がスクリーニング検査を簡便に受けられる新たな検査手法の確立が望まれているとのことだ。
富士フイルムと東京都健康長寿医療センターは、今回の共同研究では、認知症の中核症状のひとつとして知られる運動機能の低下を、眼鏡型ウェアラブルデバイスで計測した、受診者の目や体の動きに関するデータから判定できる可能性に着目した。高齢者専門の医療機関として多くの認知症患者の診断と治療にあたる東京都健康長寿医療センターの認知症研究における知見と、医療をはじめさまざまな領域で培ってきた富士フイルムのデータ解析技術を活用することで、受診者にとって負担の少ない、簡便な認知症スクリーニング検査手法の確立を目指す。
臨床研究で認知症患者のデータを収集し、AI技術を用いてそれらのデータを解析することで、認知症疑いの判定に有効なデータ指標の特定に取り組む。さらに次のステップとして、特定したデータ指標を使った、認知症疑いを判定するアルゴリズムの構築や、そのアルゴリズムをもとに認知症疑いを判定する症例の収集・評価を計画している。