精神疾患向け治療用アプリのemol、臨床研究に向けて資金調達を実施

emol株式会社は、プレシリーズAラウンドにおいて、新規投資家としてみずほライフサイエンス第1号投資事業有限責任組合、The Independents Angel2号投資事業有限責任組合、G-STARTUPファンド、廣瀬智一氏、加藤浩晃氏、藤本修平氏と既存投資家のF Ventures、MIRAISEを引受先とした第三者割当増資により資金調達を実施したと発表した。今回の資金調達により、強迫症・不安症向け治療用アプリの臨床研究の推進と人材採用の強化を進める。

これまでemolでは、一般向け、企業向け、自治体向けなど非医療領域へアプリでの認知行動療法プログラム(emolアプリ内名称:デジタルプログラム)の提供を行なっている。サービス提供の背景ではアプリを使った効果検証を実施し、未病者の不安減少、ポジティブ感情の増幅などの効果を示すことができたとのことだ。
出典元:プレスリリース

■目的と背景

日本国内で保険診療で認知行動療法が適用されている疾患は、うつ病などの気分障害、強迫症、社交不安症、パニック症、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、神経性過食症などの疾患があり、医師による認知行動療法では1回30分以上の実施で480点(4,800円)を上限16回までが保険診療により実施が可能だ。認知行動療法が適用される疾患の年間患者数は、おおよそ207万人に上るという。しかし、医療機関で認知行動療法が実施されたのは6.2%程度と報告されており、ほとんどの患者が保険適用内で認知行動療法を受けることができていないとのことだ。その背景として、医師が30分以上の時間を患者一人当たりにかけることが難しい、また、認知行動療法の研修を受けなければ実施できないなどの理由があるという。そのため、現状で認知行動療法を受けたい場合は、公認心理師による認知行動療法を受ける患者がほとんどだが、公認心理師による疾患に対する認知行動療法は保険適用外であるため自由診療で受ける必要があり、患者の金銭的負担が大きくなっているとのことだ。
出典元:プレスリリース
アプリで認知行動療法の治療が行えることは、患者にとっても医師にとってもメリットがあるという。精神科を受診する患者は、さまざまな病院を転々とする(ドクターショッピング)ケースが多くある。その理由はいくつかあるが、一つには「症状が軽減しないから」が挙げられるとのことだ。強迫症はもちろん、それぞれの疾患を専門として診察し認知行動療法を実施できる専門医は少なく、うまく治療が進まない場合もあるという。しかし、アプリで各疾患に合わせた認知行動療法の治療が実現できれば、その疾患の専門医でなくてもアプリでの疾患に合わせた認知行動療法を実施することができる。また、患者も色々な病院を巡り、遠方の病院に何度も通うことなく、最低限の診察回数で自宅でアプリによる認知行動療法を実施できるようになる。アプリでの治療が広まることにより、これまで治療を断念していた数多くの人に、認知行動療法の治療を提供することを目指しているとのことだ。

■共同研究による臨床研究の実施

2023年より兵庫医科大学精神科神経科学講座と共同研究のもと、強迫症の患者を対象とした臨床研究を開始する予定だ。本研究は、2022年より強迫症治療において国内有数の実績と知見を持つ兵庫医科大学医学部精神科神経科学講座と共同研究により強迫症の患者を対象とした認知行動療法アプリの開発を行なってきた。兵庫医科大学精神科神経科学講座では、強迫症診療ガイドライン、社交不安症診療ガイドラインなどに携わり、数多くの強迫症の患者の診察を行なっている。今回の特定臨床研究では兵庫医科大学のこれまでの知見やノウハウをアプリに落とし込み、患者自身でできる限り認知行動療法を実施できることを目指し研究を進めているとのことだ。

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