AIによる「需要予測型自動発注システム」を中部薬品全店舗に導入 売り場利益の最大化をめざした店舗在庫量の圧縮・適正化と商品回転率向上に寄与

株式会社日立システムズは、中部薬品株式会社の国内400の全店舗にAIによる「需要予測型自動発注システム」を導入し、2023年8月から稼働を開始している。稼働後、中部薬品は自社が持つ棚割システムと需要予測型自動発注システムを連携させたことで、自動発注率を全体として従来比115%まで向上し、日配品*1では従来比160%に向上した。これにより、発注作業時間を1週間で約600時間削減するとともに、AIによる商品改廃時の在庫制御(売り減らし機能)により従来以上の円滑なMDサイクル*2を実現し、店舗在庫量の圧縮・適正化と商品回転率の向上に寄与した。

日立システムズは、今後も需要予測型自動発注システムの提案を積極的に進めることで、小売業のDX化の推進を支援していくとのこと。
*1 日配品:メーカーで製造され、毎日小売店に配送される日持ちのしない加工食品
*2 MDサイクル:マーチャンダイジングサイクル。ここでは棚を見直しする、商品の入替をするという売り場づくりのサイクルのこと。

■導入の背景

日本国内における少子高齢化に伴う労働人口の減少は、深刻な社会課題となっている。流通業界でもその影響を受けており、物流機能を維持するためにもサプライチェーン全体の最適化が急務となっている。そのためには、サプライチェーンの起点となっている小売業の発注・在庫管理についてDXツールの活用などを踏まえた業務改革の推進が求められている。発注・在庫管理の業務は、ベテラン担当者の経験と勘に頼った発注数量の算出が根付いており、属人化した発注ノウハウの継承は、小売業にとっての課題となっていた。

ドラッグストア・調剤薬局チェーン「V・drug」を展開する中部薬品は、業界に先駆けてAIを活用した需要予測など新たな仕組みを模索してきたが、これまでのシステムでは予測精度が低く、日配品など変動性の高い商品が対象外になることや、予測するだけで発注までつなげられないことに課題を感じていた。そのため、AIによる精度の高い需要予測と、それを在庫適正化にまでつなげる発注制御機能の両方を兼ね備えている点や、これまでの導入実績を高く評価し、日立システムズの需要予測型自動発注システムの導入を決めた。

■需要予測型自動発注システムの特長と導入効果

(1)精度の高い需要予測

変動要因となる30種類の要素データを分析する需要予測計算によって、従来は難しかった消費期限の短い日配品についても需要や適正在庫を予測できる。さらには特売や季節行事などのイベントを加味した需要を予測することもできる。
出典元:プレスリリース

(2) 「棚割システム」と連携した商品改廃

どの商品をどこにどれくらい陳列し、いつ販売するかなどの棚割に関する情報が入力された「棚割システム」と連携しながらAIが精度の高い需要予測を行い、それに基づく発注量を提案する。各店舗では毎朝、システムにより推奨された発注量を確認することで発注作業を完了できる。

シーズンごとに実施する商品の入替などの棚割計画情報との連携により、棚替え時の発注作業を強力にサポートするとともに、新商品および代替商品への入替時に、予定日に向けて在庫を自動抑制(売り減らし機能)し、円滑な商品改廃に寄与する。

(3)システム運用負荷の軽減

従来のシステムでは商品単品単位で安全在庫(指数の変更)を設定しており、運用の大きな負荷となっていたが、需要予測型自動発注システムでは、演出在庫*3や経済的発注量*4の調整パラメーター等を商品分類単位*5で設定し、在庫量や発注量をコントロールする運用が可能となり、システムの運用負荷を軽減している。

*3 演出在庫:特設コーナーを設けるために注力商品を売れる数より多めに発注するなど、演出のための在庫
*4 経済的発注量:発注において、関連するコストの総額を最小化する発注量のこと
*5 パラメーター調整は店舗商品単位での設定も可能

■今後の展開

中部薬品は、物流在庫センターに対し、対象商品の30日先までの販売予測データを提示することでセンターの在庫を最適にし、店舗への配送遅延防止につなげる施策を検討している。

日立システムズは、売り場利益の最大化をめざした中部薬品の店舗在庫量の圧縮・適正化と在庫の回転率向上に寄与していく。今後は、中部薬品への導入で効果が実証された「AIによる需要予測と発注制御の仕組み」による「在庫適正化や売り場利益の最大化」を他業種にも展開し、さらなる導入実績の拡大をめざす。

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