自治体向け予算編成・経営管理システム「BnS」を活用して内閣官房「行政事業レビュー見える化サイト」を構築・公開

GovTechベンチャー「WiseVine」開発、全省庁約5千件の事業を横断検索可能

株式会社WiseVineは、内閣官房行政改革推進本部事務局から受託した「行政事業レビューシートシステムの整備に係る設計・開発業務」について、2024年4月から職員向け内部システムをリリースしていたが、8月30日に満を持して一般の方向けの「行政事業レビュー見える化サイト」を公開する。本サービスは、どなたでも自由にhttps://rssystem.go.jp/から利用可能で、2021年度以降の国の事業について、行政事業レビューシート(以下「レビューシート」)をはじめとする事業評価を横断検索することができる。

■本事業の実施背景

行政事業レビューとは、各府省庁が予算や基金を用いて行う原則すべての事業を毎年度、自ら点検し、その点検結果を公表する取り組みである。EBPM(*)の手法等を用いて、事業の目的・課題を踏まえて成果指標を設定し、外部の視点も活用して点検を行う。点検結果は翌年度の予算要求や事業の執行等に反映し、事業の効果的・効率的な実施につなげる。レビューシートは、このレビューのために作成される基礎資料となる。

(*)EBPM(エビデンスに基づく政策立案)とは、政策目的、政策手段、その目的達成のための効果的な政策手段とデータ等のエビデンスに基づいて、政策の実効性や効率性を高めていく手法である。

従来、レビューシートは表計算ソフトで作成され、各府省庁のホームページでシートごとに公開されていた。そのため、手作業による入力のために法人名や金額等に表記の揺らぎや記入ミスが発生する、関係者の確認がメールベースであり、確認やファイル管理等に手間がかかる、各府省庁のHPで年度ごとにシート単位で公開されているために関心ある事業を探しにくい、などの課題があった。

■本事業での改善点

本事業では、自治体向け予算編成・経営管理システム「WiseVine Build & Scrap(BnS)」をベースに、各府省庁が用いる「行政事業レビューシートシステム(以下「RSシステム」)」と、国民に対して「見える化」を実現する「行政事業レビュー見える化サイト(以下「レビュー見える化サイト」)」を一体的に整備している。RSシステムでは、クラウドベースのデータ管理を導入し各部門間の情報共有を円滑にすること、職員によるデータ入力から国民への公開までが本システムで完結する、といったレビューシートの作成・管理・公表の効率化を実現している。さらに、強力なデータ分析機能と見える化機能を備えており、さまざまなデータを直感的に理解しやすいグラフとして出力することが可能である。

また、レビュー見える化サイトは、全府省庁横断での事業の検索機能や、集計、グラフ化などの機能を提供し、どなたでもひとつの入り口から直感的にレビューシートの情報へアクセスし分析できる仕組みとして整備した。本システムの運用開始により、レビューシート作成業務の効率化・高度化・国民からのアクセス性向上が期待される。

■特徴

(1)「RSシステム」及び「レビュー見える化サイト」でユーザーが自由に使える検索・分析機能
(2)2021年度以降のレビューシートデータを横断検索・経年分析が可能
(3)法人番号との連携など、高度な入力支援機能
(4)ガバメントクラウド上で稼働

■画面のイメージ

グラフによる見える化

グラフによる見える化

出典元:プレスリリース
各府省庁が公開している事業の一覧

各府省庁が公開している事業の一覧

出典元:プレスリリース
詳細な条件を指定して検索・分析が可能

詳細な条件を指定して検索・分析が可能

出典元:プレスリリース

■ベースとなったBnSとは何か

WiseVineは、愛媛県との共創により、予算編成を中心とした経営基幹システムである「WiseVine Build & Scrap(BnS)」を開発・提供している(予算編成部分はローンチ・稼働済み)。
人口オーナスで歳入が減っていく日本国の自治体においては、
①個々の事業の効果を高める
②全体を眺めたうえで予算の集中と選択
が不可避である。

一方で、①については、自治体は長年、予算・執行・評価という一連であるはずの事業サイクルを別々の部署が管理していることで、情報の統合・連携が難しく、PDCAを効果的に回すことが困難だった。また②については、上位政策のKPIを意識しながら、傘下の施策、またその下の事業を立案・廃止するという事は各行政官が意識しながらも、それを実現する仕組みは十分ではなく、結果的に、ゴールと効果からの検証が十分でないまま、事業のBuildは出来るが、Scrapは出来ない状況に追いやられていた。

解決策として、WiseVineは、この原因を、予算は予算、執行は執行、評価は評価として独立で処理する業務フロー、そして「タスク指向型デザイン」の基幹業務システムにあることを特定した。改めて、予算、執行、評価を「オブジェクト指向デザイン」でとらえ直し、「事業オブジェクト」の傘下に予算・執行・評価という業務があり、いつでもその3つの業務を行き来するようにシステムをデザインし直したことで、”予算の管理”から”事業の管理”という経営全体の管理システムに昇華することに成功した。②については、KPIマネジメントという、上位KPIからバックキャストして、末端事業の存続を決める仕組みを導入することで、一層のBuild & Scrapの実現を目指している。
自治体向け予算編成・経営管理システム「Build & Scrap」(ビルドアンドスクラップ)

自治体向け予算編成・経営管理システム「Build & Scrap」(ビルドアンドスクラップ)

出典元:プレスリリース

■今後の展望

WiseVineは、GovTech(行政×テクノロジー)領域の中でも、特に行財政改革分野のデータ分析に強みを持つベンチャー企業として、「横浜市財政見える化ダッシュボード」の開発や、愛媛県との共創により開発を進める「WiseVine Build & Scrap(BnS)」など、独自のサービスを展開してきた。今般の「行政事業レビューシートシステムの整備に係る設計・開発業務」は、WiseVineとして初の政府事業案件となるが、SaaSとして開発を進めている「BnS」をベースに、国固有のニーズに対応するカスタマイズを行った。開発にあたっては、行政における勤務経験を有するスタッフも、多数活躍している。今後もWiseVineは国・都道府県・市区町村それぞれの領域において、「BnS」をSaaSとして展開しつつ、深い行政事務への理解をもとに行政職員が使える「仕組み」を構築し、「行政の進化を促す伴走者」として、WiseVineのミッションである「未来の世代に豊かな世界を残す」の実現に貢献する。

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