12月17日オープン、「Maison KOSÉ」を先行体験リポート!体験型ストアを軸に描く、コーセーのオムニチャネル戦略

いよいよ来週17日、銀座にオープンする、コーセーの新しいコンセプトショップ「Maison KOSÉ(メゾンコーセー)」。目玉となる体験型コンテンツを、一足先にリポートする。

一歩踏み入れれば目を引く大型のデジタルサイネージ。Maison KOSÉの1階は、日本初上陸となる米国の自然派コスメブランド「tarte(タルト)」のアイテムが並べられている。“ハイパフォーマンスナチュラル”をコンセプトに掲げた同ブランドは、自然由来の素材を使用しながら、高発色な色味が特徴だ。新しい店舗のオープンを盛り上げる注目ブランドといえよう。
だが、Maison KOSÉで特筆すべきなのは、こうした新ブランドの取り扱いにあるのではない。1階はシーズンごとにモデルチェンジされる期間限定の展示場にすぎず、店舗全体で提供する“体験”を通し、新しい顧客接点の在り方を開発していくことにメゾンコーセーの本質がある。

2階に上ればその全貌がわかる。コーセーが取り扱うほぼすべてのブランドが一堂に会しているのだ。従来のストアの陳列とは異なることは一目瞭然。これまでコーセーはブランドごとに商品をPRしてきたが、この店舗ではスキンケアやメイク、ヘアケア用品に至るまで、ブランドを横断し、カテゴリーごとにアイテムが配置されている。“Find Your Own beauty” をテーマとしていて、ブランド軸にとらわれないアイテム選びができるようにしてあるという。

デジタル活用でパーソナルな体験と新しい化粧・美容を提案

豊富なアイテムのなかから、顧客一人ひとりにあった商品選びをサポートするのが、AI技術を使用したAR(拡張現実)ミラーだ。これを使えば、実際にメイクをしなくてもカメラに移した自分の顔にメイクを施し、リップやファンデーションなどの色味を確認することができる。店内には20台以上のARミラーが設置されていた。
市販されている商品を試せるだけではない。Maison KOSÉでは、デジタル技術を活用した体験が豊富だ。オープン当初は、オープンイノベーションによって開発が進む2つのサービスを試すことができる。
ひとつはこちらの「Snow Beauty Mirror(スノービューティーミラー)」。パナソニックが開発中の製品で、肌状態を分析し数値化することができる。分析結果から、使用者がイメージするであろう“理想顔”の画像を複数枚自動生成する。使用者はそのうちの一枚を選ぶことで、現在の自分の肌状況と“理想顔”を比較することができる。理想とのギャップを提示するだけでなく、そのギャップを埋めるためのメイクテクニックなどが参照できるという。

さらに、今回の内覧会で記者団を驚かせたのが、理想顔とのギャップを即時に埋めてしまう、とある技術だ。

下の写真のモデルは、実は右か左の頬に薄いシートを貼って、毛穴やシミを隠しているという。あまりに自然な馴染み具合だった。一見して見分けることはできない。
モデルが実際にシートをめくってみせると、会場からは驚きの声があがった。
このシートはパナソニックが開発した厚さ100ナノメートルという超極薄の「メイクアップシート」を、コーセーが保有する化粧品開発の知見を生かすことで、より肌になじみやすいようにしたもの。Snow Beauty Mirrorで分析した使用者の肌色から、一人ひとりの肌に合わせた色味のシートを作成できるという。

現在は商品化されていないものの、Maison KOSÉでSnow Beauty Mirrorを試した際に、サンプルをオーダーできるという。
もうひとつは、カシオ計算機と共同開発しているネイルプリンターだ。

一般的なネイルプリンターは、塗料を塗布する前に、爪の周りをマスキングして、プリントの“ズレ”や“はみだし”をカバーする必要があるというが、このプリンターはカシオのカメラ技術を用いて、一人一人の爪の形を分析。マスキングなしに爪の淵まで、きれいに塗料をのせることができるという。

Maison KOSÉでは、一人10~15分の所用時間で指一本分を試すことができる。
これらのサービスは、化粧や美容の未来を想起させる意味でも新しい体験といえる。訪れる人々にとっても楽しいコンテンツだが、コーセー側にも、顧客の声を製品開発に反映できるという大きなメリットがある。

特にBeauty Snow Mirrorでは、肌質に関する実際のデータを蓄積することができ、そのほかの商品開発にも役立てることができるだろう。Maison KOSÉは、消費者をも巻き込んだオープンイノベーションを実現する実験場でもあるのだ。

コンセプトストアとオウンドメディアを軸としたコーセーのオムニチャネル戦略

あらためて店内を見渡してみると、豊富なアイテムのために、店内の陳列は一覧性を高めたものになっていることがわかる。在庫を並べるような展示ではなく、実際にストアに置かれている在庫にも限りがあり、来店者にECでの購入も推奨していくという。

これは、店舗を情報発信のためのひとつのメディアと位置づけているからだろう。

実は、コンセプトストアのオープンに先駆け、コーセーは11月に自社ホームページをリニューアルし、EC機能を持ち合わせたオウンドメディア「Maison KOSÉ」(https://maison.kose.co.jp)を立ち上げている。ブランドを横断した商品紹介や店舗検索を可能とした。また同時にポイントプログラム「Maison KOSÉ Rewards」を導入し、オウンドメディア上、あるいは今回オープンするコンセプトストアでの顧客の活動に応じてポイントを付与。ECで商品を購入するときに発生する手数料、送料等に充てることができるという。

まさに、ウェブと実店舗を結びつけるオムニチャネル的発想だ。

コーセーは、オウンドメディアとコンセプトストアを総称して「Maison KOSÉ」としていて、「お客様との新たな接点づくりの一貫として開発を進めているデジタルプラットフォームと融合させた新しいサービス」と位置付けている。
出典元:プレスリリースより
ウェブと実店舗に加え、SNSやアプリなどの情報発信ツールを有機的に連携させ、顧客とコーセーを双方向に結び付けることで、顧客の利便性をデジタル時代に即した形へ高めていく考えだ。

消費者の購買行動が大きく変わっていくなかで、コーセーが打ち出した「Maison KOSÉ」というコンセプトが、コーセーというブランドそのものをどう変革させていくのか注目していきたい。
Maison KOSÉ
オープン日:2019年12月17日(火)
住所:東京都中央区銀座7-10-1
営業時間:11:00-20:00(不定休)

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