MaaSとはどんな概念?必要とされる背景をわかりやすく解説
2020/10/5
新たな移動サービスとして世界中で注目されているMaaS。日本でも少しずつ導入が進んでいますが、「MaaSとはどのようなサービスなのだろう?」と疑問に思う人は多いです。MaaSの概念や導入の必要性、海外の導入事例や課題について説明します。
Contents
そもそもMaaSとは?
まずは、MaaSが持つ概念や仕組みについて、詳しく説明します。
全ての移動サービスを1つにまとめる概念
現在は交通をメインにしてMaaSが捉えられることが多いですが、将来的には物流や住宅、ゲームや医療など、幅広い分野にMaaSが応用されるのではないかと言われています。
移動に関するサービスを一元化できる
ICTを活用してクラウド上で移動サービスを一元化できるため、移動手段やルートの検索だけでなく、利用時の決済などをまとめることも可能。それによって、よりスムーズで快適な移動ができるようになるでしょう。
MaaSの導入が必要とされる背景とは?
・環境汚染が深刻化している
・産業振興の発展が求められている
・交通改革の必要性が増している
なぜ世界中でMaaSの導入が検討されているかを知っておけば、MaaSを導入することで現在の移動手段や移動サービスの問題点を解消できることが理解できるだけでなく、社会における幅広い課題の解決につなげられることもイメージできるはずです。ここからは、MaaSの導入が必要とされる背景について詳しく説明します。
環境汚染が深刻化している
MaaSを導入すれば、自家用車を利用せずに公共交通機関を利用して移動する人が増えると予想されています。自家用車の利用者数が減少すれば交通渋滞も緩和されるため、結果的に環境汚染の拡大を防止することにもつながると期待されています。
産業振興の発展が求められている
MaaSを導入すれば、路線検索や決済といった交通サービスの利用を一元化できます。それによって、観光業においてはより多くの旅行客を誘致できると期待されています。また、物流業界などにおいても、トラックと事業所をうまく連携させるといった施策をとることで、効率的な事業運営を目指しやすくなります。このように、MaaSを導入して人々の移動に対するハードルを下げたり、限られた人員で大きな成果を出す仕組みが構築されることによって、産業振興がより発展していくと考えられているのです。
MaaSの仕組みを利用することは、サービス利用者だけでなくサービス提供者にも恩恵があります。例えば、どのような移動方法を用いているのか、どこに移動したいのかといったユーザーのニーズを分析することで、新たなサービスを展開することが可能です。ユーザーに対しておすすめの移動方法を提案したり、適正な料金設定をすることで、顧客満足度を高めてさらに事業を成長させられるでしょう。
交通改革の必要性が増している
近年は、経路検索と運賃情報が統合されたサービスや、検索と予約が一元化されたサービスなどを利用できるようになっています。しかし、ほとんどのサービスでは、バスと飛行機、タクシーとレンタサイクルなど、移動サービスごとの連携が実現できていないものが多く、スムーズな移動サービスが実現したと言えるまでには、まだ時間がかかりそうです。
MaaSが導入されれば、交通機関ごとのサービスが一元化できるだけでなく、自家用車や徒歩といった移動方法も連携させることで、より個別的な移動サービスが利用できるようになると期待されています。例えば駐車場と自家用車を連携させることで、遠方の地域に行ったときもスムーズに駐車できるようになるでしょう。それによって、仕事や観光がより快適になると考えられます。
世界におけるMaaSの導入事例
また、日本でも試験的に導入している地域があるので、どのような取り組みをしているのかを知っておくことも大切です。ここからは、世界におけるMaaSの導入事例や、日本におけるMaaSの導入状況について詳しく説明します。
台湾のMaaSの導入事例
国土交通省の2019年のヒアリングによると、「Men-GO」のアプリ利用者数は20,000人程度で、アクティブユーザー数は約7,000人。公共交通機関の利用者数が約20万人であることを考えると、アクティブユーザーの割合は約3%程度です。「Men-GO」が導入された結果、利用者の交通費が削減できたり交通事業者の収益が拡大したとも言われているので、MaaS導入の効果が現れているようです。また、学生のスクーター事故が減ったという印象もあるようなので、社会の交通課題がどのように解消されていくのかという点もあわせて注視していきたいですね。
フィンランドのMaaSの導入事例
実際に「Whim」を導入してから、「Whim」ユーザーの中で自家用車の利用率が40%から20%に減少し、公共交通機関の利用率が48%から74%に増加したという結果が出ています。ヘルシンキ全体で見ると「Whim」の登録者数はまだ多くはありませんが、今後もさらなるサービス拡大や利用者の増加が期待されています。
「Whim」のサービス提供者は、日本でのサービス展開も視野に入れているようです。もしかしたら近い将来、日本で「Whim」を利用できる日が来るかもしれませんね。
日本でもMaaSが導入されている
例えば、トヨタ自動車と西日本鉄道では、各種交通機関や店舗、イベント会社などと連携して開発した「my route」を、2019年11月から福岡市と北九州市で本格的に導入しています。このアプリは、公共交通機関や自動車、自転車や徒歩といったあらゆる移動方法を一元化してルートを検索でき、必要に応じて予約や決済ができるのが特徴。これまで福岡市では、西鉄バスや西鉄電車のフリー乗車券だけでなく、訪日外国人専用1日フリー乗車券「FUKUOKATOURIST CITY PASS」を提供していましたが、「my route」に一元化することでシームレスな交通社会に近づいています。
また、東京急行電鉄とJR東日本、ジェイアール東日本企画は、2019年に「伊豆MaaS」の実証実験を行っています。「伊豆MaaS」は、鉄道やバス、レンタサイクルや観光施設などを連携させることで、検索・予約・決済を一元化したサービス。国内外の観光客を対象にしており、サービスエリアの拡大やメニューの拡充、キャッシュレス化の推進といった取り組みを積極的に行っています。実際に多くの観光客がサービスを利用しており、交通機関の利用者数や1人あたりの乗車回数が増加するなどの効果が出ているようです。本格的にサービスを導入することによって、観光客の利便性が増すとともに、観光地にとってはさらなる観光客の増加や観光に携わる事業者の収益アップが見込めます。今後のどのようにサービスが進化するのか、いつから本格導入されるのかが気になるところです。
MaaSを導入する際に検討すべき課題
・公共交通機関が持っている情報を開示する必要がある
・運賃の設定や支払い方法を決めなければならない
・法制度を整える必要がある
MaaSを普及させるためにどのような課題を乗り越えなければならないのかを知っておけば、問題点を意識しながらMaaS導入の動向をチェックできるようになります。ここからは、MaaSを導入する際に検討すべき課題について詳しく説明します。
公共交通機関が持っている情報を開示する必要がある
しかし、情報を開示することで、事業者によっては不利益が発生するリスクもあります。ライバルの多い交通機関の場合、情報の開示が競争に悪影響を与えてしまい、経営が不安定になる危険性があるのです。MaaSは社会的なニーズが高いという側面がありますが、事業者によっては導入することでリスクが増えることから、MaaS導入に前向きになれないところもあるかもしれません。
運賃の設定や支払い方法を決めなければならない
また、支払い方法をどうするかということも、MaaSを導入する際の課題。近年キャッシュレス化が進んでいますが、事業者によってはキャッシュレス決済で対応していなかったり、導入するために多くの手間や費用をかけなければならない場合もあります。
決済方法によっては利用者が増えないことも考えられるので、MaaS導入にあたってどのように決済システムを整えていくかも検討しなければなりません。
法制度を整える必要がある
個人情報保護や安全な決済サービスが行えるようなセキュリティに関するルールづくりなど、MaaS導入にあたって法制度をしっかり整備する必要があるので、サービスが普及するまでに時間がかかってしまうこともありえます。
まとめ:MaaSの概念を理解して今後の動向を注視しよう
今回紹介した日本におけるMaaS導入事例以外にも、MaaSを試験的に導入している地域や企業がいくつかあります。それぞれどのような取り組みをしているのか、進捗がどのようになっているのかをこまめにチェックしておくと、MaaSに関する動向がつかみやすくなるはずです。ここで説明した内容を参考にして、MaaSに関する理解を深めたうえで、新たな移動サービスがどのように普及していくかを注視しましょう。