自動運転とはどんな技術?6つのレベルや開発状況について説明します

世界中で開発が進んでいる自動運転。自動運転は6つのレベルに分かれており、それぞれ機能が違うだけでなくドライバーの責任範囲も異なります。ここでは、自動運転技術の概要や自動運転レベルごとの特徴や違い、自動車メーカーの開発状況を説明します。

5G通信やAIの技術が進歩することにより、それらの技術を自動車に応用することで自動運転技術がさらに進むのではないかと言われています。自動運転技術が進めば、より安全な交通社会を築けるようになるだけでなく、有意義な移動時間を過ごすことができるようになります。

そんな自動運転ですが、そもそも自動運転とはどのようなことを言うのか、自動運転レベルによってどのような特徴や違いがあるのか、自動車メーカーごとの自動運転の開発状況を知らない人は意外と多いもの。自動運転技術が社会にどのように普及していくのかを知るためには、自動車運転に関して幅広い知識を持っておくことが大切です。

そこで今回は、自動車運転の仕組みや6つのレベル、日本や海外の自動車メーカーにおける自動運転技術の現状について、詳しく説明します。

そもそも自動運転とは?

自動運転について知識を深めるためには、まずは自動運転とはどのようなものであるかを知っておくことが大切です。近年少しずつ身近になってきた自動運転ですが、自動運転の歴史は意外と長く、何年にもわたって試行錯誤を繰り返しながら性能を高めています。

ここからは、自動運転の仕組みや開発の歴史、自動運転のレベルがどのように定義されているのかということについて、詳しく説明します。

機械が自律的に自動車を運転する仕組み

そもそも自動運転とはどのようなことを言うのでしょうか?自動運転は、「機械が自律的に自動車を運転する仕組み」であると言えます。しかし、人によっては「人の手を使うことなく自動車を目的地まで運ぶ技術」や「人間の判断や操作を必要とせずに車を走らせること」など、明確な定義が決まっていないのが現状です。

それは、自動運転にも、人とシステムが一体となって車を運転するものや、人間の操作に頼らずシステムのみで車を動かすものなど、幅広い技術があることが要因となっています。そのため、一言で「自動運転」といっても、人によっては認識が異なるケースがあるため注意が必要です。

自動運転の歴史は長い

自動運転車の開発は歴史が長く、日本では1970年代から開発が始まったと言われています。中でもつくば機械技術研究所の津川定之教授が開発に取り組んだことは有名で、その頃は自動運転ではなく「知能自動車」と呼ばれていたそうです。そこで開発した自動車は、信号処理にアナログコンピュータ技術を利用した2つのカメラを備えたもの。高架式レールを利用して時速30kmまでの速度で走行できたようです。

その後も世界中で自動運転の開発が行われ、2017年にはGoogleが「ロボットタクシー」の公道走行実験を行ったり、2018年には「Waymo」が自動運転車配車サービス「Waymo One」を提供開始するなど、自動運転の一般化に向けた取り組みは現在も続いています。

自動運転車の開発は、自動車会社だけでなくIT企業やベンチャー企業など、さまざまなジャンルの企業が開発競争を行っています。また、最近はAIや5Gを活用した自動運転技術の開発にも注目が集まっています。

自動運転のレベルはSAEを参考にしている

自動運転レベルは、自動車に搭載されているシステムがどの程度運転をサポートしているのか、どの程度人間が運転に関わるかによって、6つの段階に分けています。

レベルの分け方は、米国自動車技術者協会(SAE)が定めたレベルを用いています。SAEは、自動車全般や航空機、鉄道や航空宇宙用ビークルなどを対象として、人間に役立つモビリティ技術を促進している団体です。自動車の馬力や自動車用オイル分類の標準化など、さまざまな分野での標準化活動を行っているだけでなく、機関誌の発行やイベントの開催、技術者の育成などを行っているのが特徴です。

以前は米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が定めた自動運転レベルを採用していた時期もありましたが、日米で認識が異なるのはよくないとされ、現在はSAEの自動運転レベルに統一されています。

自動運転の6つのレベルとは?

米国自動車技術者協会(SAE)が定めている自動運転のレベルは、6段階に分かれています。日本では、2020年9月の時点でレベル2までの自動運転車が市場に出回っており、実際に公道を走行しています。

自動運転レベルは、自動車はどれくらいの自動運転性能を持っているのかを把握するだけではありません。万が一自動運転車が事故を起こしたときに、自動車運転レベルに応じて保険の対象範囲を決めるための基準にもなっているのです。

そのため、今後普及するであろう自動運転車を利用する際に、どのレベルの自動運転車なのか、レベルごとにどのような違いがあるのかを知っておくことが大切です。ここからは、自動運転レベルごとの特徴について説明します。

自動運転レベル0

自動運転レベル0は、「自動運転なし」とも言われており、従来の自動車のようにドライバーが自動車の走行においてすべての主制御を行うことを指します。主制御とは、例えばアクセルを踏んで加速したりブレーキを踏んで減速するといった操作や、カーブに差しかかったらハンドルを切って曲がるといった操作が該当します。

急ブレーキ時のタイヤの固定と解除を自動的に繰り返すABS(アンチロック・ブレーキシステム)や、死角検知、前車走行通知やソナーセンサーによる衝突回避通知といった技術が搭載されている車は、自動運転レベルが上がると思うかもしれません。ですが、これらの仕組みは運転操作に関与しないことから、自動運転レベル1以上に該当しないのです。

自動運転レベル1

自動運転レベル1は、「運転支援」とも言われ、自動車の加速や減速、またはハンドル操作による左右の移動のどちらかをシステムが行うもの。そのため、自動車の加減速をシステムが行うのであれば、ハンドル操作をドライバーが行い、ハンドル操作をシステムが行うのであれば、自動車の加減速をドライバーが行わなければなりません。

例えば、高速道路において前方車両を設定したら、その車の速度や車間距離に応じて自動的に自動車を加減速するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)が自動運転レベル1に該当します。ほかにも、車線からはみ出さないようにハンドル操作を行う機能である「LKAS」や、駐車の一部を支援してくれるシステムなども、自動運転レベル1に該当します。

自動運転レベル2

自動運転レベル2は、自動車の加減速とステアリング操作による左右の方向転換を連携しながらサポートしてくれる技術を持った自動車が該当します。自動運転レベル1では、アクセルとブレーキの操作か、ハンドル操作のどちらかをドライバーが行わなければなりません。自動運転レベル2になると、これらの操作をまとめてサポートしてくれるので、ドライバーの負担が大幅に軽減されると言われています。

ちなみに、現在公道を走行している自動車の中では、自動運転レベル2のものが最高水準となっています。すでに自動運転レベル2の要件を満たす自動車が各自動車メーカーから販売されているので、実際に自動運転レベル2の自動車を体験したことがあるという人は多いかもしれません。

自動運転レベル2までの自動車を使用する際の注意点は、事故を起こした場合の過失責任をすべてドライバーが負うこと。自動運転レベル2であっても、その機能があくまでドライバー主体の運転を「サポート」しているものであることを知っておきましょう。

自動運転レベル3

自動運転レベル3は、自動運転システムごとに設けられた条件下では、ドライバーが自動車の運転をシステムに委ねられるもの。「特定条件下における自動運転」とも言われており、自動運転中にシステム側からドライバーに運転を引き継ぐように通知されると、ドライバーが主体で自動車を運転しなければなりません。

しかし、システムに委ねて自動運転をしている場合、ドライバーはスマートフォンでコンテンツを楽しんだり、車載ディスプレーを操作・閲覧することが認められます。それによって今まで以上に移動中の時間を有効活用できるようになったり、移動のストレスを軽減できるようになるでしょう。

2020年4月からは、自動運転レベル3の公道走行を認める、「道路交通法」と「道路運送車両法」が施工されたため、今後日本の公道で自動運転レベル3の自動車が走る日は近いでしょう。ただし、万が一事故が発生した場合は、事故の発生状況や保険会社の規定によってはドライバーに責任が発生してしまう可能性もあるので、保険会社ごとの規定をよく確認しておく必要があります。

自動運転レベル4

自動運転レベル4は、特定の場所でシステムが自動車の走行すべてを操作するもの。システムが周囲の環境を認識しながら自動走行してくれるので、ドライバーの運転負担が大幅に軽減します。

特定条件下での自動運転という点では、自動運転レベル3と同じように思えるかもしれません。しかし、自動運転レベル3は、システムが自動運転を継続できないと判断した場合にドライバーが運転を引き継がなければなりません。いざというときに運転しなければならないという意識を持っておかなければならないため、自動運転レベル3と4では走行中の過ごし方に大きな違いが出るでしょう。

自動運転レベル5

自動運転レベル5は、完全自動運転とも言われており、運転に関するすべての動作をシステムが制御するもの。自動運転レベル4と自動運転レベル5の大きな違いは、一定の環境下で無人走行ができかどうかです。完全に無人で自動車を運転できるようになれば、移動時間を有意義に過ごせるだけでなく、物流システムなど社会全体に大きな変化を与えます。

しかし、自動運転レベル5を実現するためには、法整備や事故発生時の法的責任、交通環境の整備といったさまざまな課題があります。自動運転技術の開発だけでは実現できない部分もたくさんあるため、今後どのように自動運転が普及していくのかを注視しておきましょう。

日本の自動車メーカーにおける自動運転

2020年の4月から自動運転レベル3の自動車が公道を走行できるようになることから、各自動車メーカーが自動運転技術の開発を急いでいます。しかし、自動運転車といっても自動車メーカーごとの考え方や搭載する機能に違いがあるため、それぞれの違いを知っておくことは大切です。

ここからは、日本の自動車メーカーにおける自動運転技術の開発状況について、詳しく説明します。

トヨタ自動車

トヨタ自動車では、レクサスの最上級セダン「LS」の新型車に、自動運転技術を集結させると発表したことが話題になっています。高速道路で手放し走行が可能になるだけでなく、購入後にソフトウェアを自動更新する機能を設けるなど、より質の高い自動運転ができるようになると期待されています。

独自のAI技術も活用することで、今まで以上にドライバーへの支援を充実させることも目指しており、より安全で確実な運転を可能にするだろうと言われています。それに加えてレクサスの強みである快適な乗り心地と静粛性も重視されているため、より上質な移動時間を過ごせるようになるでしょう。

日産自動車

日産自動車は、自動運転レベル2の機能を持つ「プロパイロット」をいち早く提供していることが特徴。「セレナ」や「エクストレイル」、「日産リーフ」といった車種に搭載することで、幅広いユーザーが自動運転レベル2の技術を体感できるようになっています。

最近は高速道路の同一車線内でハンズオフが可能な「プロパイロット 2.0」が搭載されている車種が話題。ナビゲーションシステムで目的地を設定することで、高速道路の本線と合流するとナビと連動したルートの走行支援を開始してくれます。ドライバーが周囲の状況や自車の状況を常に監視できる条件になっていれば、ハンズオフで走行を支援してくれるのでより快適な移動ができるでしょう。

ホンダ

ホンダは、2020年中に高級車である「レジェンド」で自動運転レベル3のモデルを発表するとしています。日本国内では自動運転レベル3の自動車がまだ発売されていないことから、無事に発表されれば国内初の自動運転レベル3の自動車が公道を走行することになります。

自動運転レベル3の機能を搭載した「レジェンド」には、一定条件下の高速道路であればドライバーが周囲の環境から目を離して自動車を走行させられる「アイズオフ技術」が採用されているのが特徴。米ゼネラル・モーターズ(GM)との連携も深めており、自動運転レベル4の開発にも出資していることから、今後の自動運転技術の進歩が期待されています。

海外の自動車メーカーにおける自動運転

自動運転技術の開発は、海外でも進んでいます。日本における自動運転技術の開発状況も気になりますが、海外でどのように技術開発が進んでいるのかを知っておくことも大切です。

ここからは、海外の自動車メーカーにおける自動運転について、詳しく説明します。

テスラ

テスラは、ほぼすべての車両に自動運転レベル2の「オートパイロット」機能が搭載されているのが特徴。高速道路での加減速やステアリングを行うだけでなく、カーブの多い道路でも同様に運転をサポートしてくれるので、幅広い条件で自動運転レベル2を体感できるようになっています。
また、これらの車両には、将来的に完全自動運転が利用できるようになったときでも必要な機能を提供できるよう、最新のハードウェアが標準装備されています。ソフトウェアのアップデートにより常に最新の機能で運転をサポートしてもらえるとともに、法改正などの社会情勢の変化にスムーズに対応できるのも魅力です。

ボルボ

ボルボは、次世代ボルボ車に、ルミナー社の「LiDAR(ライダー)技術」を搭載することを発表しています。ライダーは、自動運転車に信頼性の高い長距離認知機能を与えるとともに、複雑な交通環境や高速走行といった条件でも安定的に自動車を走行させられる技術。

この技術を活かした自動運転技術の開発により、ボルボ初の完全自動運転車が実現されるのではないかと言われています。

メルセデスベンツ

メルセデスベンツは、自動運転レベル3である「DRIVE PILOT」が2021年後半からドイツの高速道路で利用できるようになると発表しています。コネクトサービスの「Mercedes me」と組み合わせることによって、専用インフラの整った駐車場で自動運転レベル4の駐車が可能になるとのこと。

「DRIVE PILOT」を作動させて自動車を走らせていれば、周囲の環境から目を離してスマートフォンを操作することもできるので、より快適な移動時間を過ごせるようになると期待されています。ただし、あくまで自動運転レベル3なので、環境の変化などによってシステムが自動運転を維持できなくなった場合は、ドライバーがすぐに運転を変わらなりません。

日本では自動運転に関する法整備が遅れているのが課題

すでに自動運転に関する法整備が整っている欧州や中国、北米などでは、自動運転レベル3の公道走行が少しずつ普及しています。しかし、日本では2020年4月からようやく自動運転レベル3の公道走行が認められるようになっており、2020年9月の時点では自動運転レベル3の自動車が公道走行していないことから、他国よりも法整備が遅れていると言えます。

また、自動運転レベル4や5になると、自動車だけでなくインフラの整備も必要になるので、より法整備を整えるのは難しくなります。自動車メーカーによっては自動運転レベル4や5の自動車開発を進めているところもあるので、よりよい交通社会を築き人々の移動の負担を削減するためには、スムーズな法整備が求められます。

自動運転の仕組みを知ったうえで自動運転技術の普及状況を注視しよう

ここでは、自動運転がどのようなものなのか、自動運転レベルごとの特徴や違い、各自動車メーカーがどのように自動運転車の開発に取り組んでいるかということを説明しました。より高いレベルの自動運転技術を普及させるためには、新たな技術の開発だけでなく法整備やインフラ整備も重要です。また、安心して自動運転車を利用するためには、自動車メーカーごとにどのような違いがあるか、保険会社ごとにどのような条件を持ってているかを確認しておくことも大切になります。

ここで説明した内容を参考にして、自動運転の仕組みを知ったうえで自動運転技術の普及状況を注視し、時代の変化にスムーズに対応できるようにしておきましょう。

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