ファッションテックの5つの種類とは?国内外のサービス例も紹介

ファッション業界でも徐々にテクノロジーの活用が進みつつあります。こうしたファッションへのテクノロジーの活用はファッションテックと呼ばれています。国内外で存在感を示すファッションテックサービスを紹介しつつ、ファッションテックが秘める可能性について解説します。

ファッション業界は他の分野と比べ、デジタル化などテクノロジーの活用に遅れを取っていました。歴史と伝統のある老舗ブランドがマーケットで力を持っていたことや、古い商慣習が長く残っていたことも影響していたのかもしれません。そんなファッション業界でも徐々にテクノロジーの活用が進みつつあります。こうしたファッションへのテクノロジーの活用はファッションテックと呼ばれています。国内外で存在感を示すファッションテックサービスを紹介しつつ、ファッションテックが秘める可能性について解説します。

そもそもファッションテックとは?

ファッションテックとは、5Gやビッグデータ、AI、ブロックチェーンといった最先端のデジタルテクノロジーをファッションと融合させることを指します。ファッション業界ではECサイトを中心としたオンラインショッピングのシステムは早くから導入されてきましたが、その他のデジタル化は遅れを取ってきました。しかし、近年はスタートアップ企業が参入したことで、その状況に風穴が空きつつあります。そこで、ファッションにテクノロジーを組み合わせた事業をとくにファッションテックと呼んでいます。

ファッションテックの5つの種類とは?

そんなファッションテックは以下の5つに分類することができます。デジタルファブリケーション、バーチャルフィッティング、バーチャルスタイリスト、クロージングサブスクリプション、パーソナルオーダーです。それぞれどんなビジネスモデルなのか、解説します。

デジタルファブリケーション

ファッション業界でのものづくりでは、従来、型紙を使ったアナログ的なデザイン作業が行われていました。それがデジタルデータに変わりはじめたのが、1980年代に入ってからです。デジタルでのものづくりになったことによって、製造が難しい複雑なデザインのファッションアイテムを作ることができるようになり、また作業が簡略化したことで、ものづくりに関わってこなかったデザイナーの参入を促すことになりました。そこからさらに進化したのが、レーザーカッターやCNCミリングマシン、ペーパーカッター、その他の電子工作機器を使ってデザイン・製造を行うファブラボ(FabLab)という手法です。FabLabはFabrication LaboratoryとFabulous Laboratoryの造語で、日本では2010年代に入り、業界で認知されるようになりました。ファブラボによって製造のプロセスが簡略化し、製造スピードも大幅に速くなったことで、生産ロットの制約にとらわれない、よりパーソナライズされたファブリックの生産が可能になっています。

バーチャルフィッティング

アパレル系ECサイトではデザインや価格を比較しながら、手軽にショッピングを楽しめるメリットがある一方で、サイズ感の誤認識をどう払拭するかが課題となっていました。購入したけれど、思ったようなサイズではなかった、あるいは着てみたら似合わなかったという不満が発生するからです。こうしたフィッティングの問題は返品の増加にもつながり、非効率です。そこでデジタルテクノロジーを活用すること、スマホ上に自分のアバターやシルエットを表示し、欲しい商品を事前に試着し、サイズや着こなしを確認できるようにする仕組みがバーチャルフィッティングです。

バーチャルスタイリスト

アパレル系ECサイトが次々と立ち上がったことによって、ショップに行かずともショッピングができるようになりましたが、一方で多くのアイテムから時間をかけて選ぶことができるため、選びきれないという課題が同時に発生しました。店頭であれば、ショップスタッフがアドバイスをしたり、迷う顧客の背中を押すことで販売につなげることができましたが、ネットショッピングではそうもいきません。そこで台頭してきたのが、プロのスタイリストからアドバイスを受けたり、スタイリングの提案をしてくれるファッションテックサービスです。自分では選ばないような組み合わせの商品を購入できたり、他人から魅力を指摘されることで、購買するモチベーションも高まり、結果として売り上げが伸びるという効果が期待できます。

クロージングサブスクリプション

クロージングサブスクリプションは近年、流行している月額定額でサービスが使い放題になるサブスクリプションをファッションに適用したものです。たとえば、月額の利用料を支払えば、洋服やアクセサリーなどを使い放題で利用できるというものです。モノで溢れる時代になったことで、消費者の意識が購買から共有へとシフトしています。クローゼットのスペースも限られることから、次から次へと新しい商品を購入するのではなく、他人とシェアすることでお得におしゃれを楽しもうというわけです。こうしたクロージングサブスクリプションの仕組みもテクノロジーによるシステム構築が必要で、ファッションテックのひとつとして知られています。

パーソナルオーダー

パーソナルオーダーはZOZOが開発したZOZOスーツのようにセンシング技術を活用し、メジャーで計測しなくても、身体にフィットする洋服を注文できる仕組みのことです。従来は専門の仕立て屋などで測定し、時間をかけて製造されていたものを、手軽かつ安価な価格で手にすることができます。こうしたパーソナルオーダーもファッションテックです。

海外発のファッションテックの具体例を紹介

続いては海外で展開されているファッションテックの実例を紹介します。まだ日本には上陸していないサービスもありますが、近い将来、同様のサービスが国内でも展開されるかもしれません。

Focals(North社)

Focalsとはカナダのスタートアップ企業のNorth社が手がけるスマートグラスのことです。見た目は普通のメガネと変わりないのですが、レンズ部分にプロジェクターが内蔵されており、メガネをかけた状態でスマートフォンに届いた通知や天気などを見ることができるという製品です。ARやVRに関するデバイスを開発しているグーグルの親会社が買収を試みたというニュースが一部で報じられたこともありました。

Stitch Fix

Stitch Fix(スティッチフィックス)はアメリカのスタートアップ企業が提供するAIスタイルが商品の提案をしてくれるファッションテックサービスです。通常のアパレル系ECサイトと同じように、ウェブサイトで商品を閲覧し、購入することができますが、自分で選ぶだけではなく、3000人以上のスタイリスト、80人以上のデータサイエンティストが独自のアンケート手法とSNS分析を通じて、ユーザーの好みに合うアイテムをセレクトしてくれるというサービスで、新しいショッピング体験を提供してくれると、話題を集めています。

GUCCI DIY(GUCCI)

伝統のあるハイブランドはブランド価値を守るために、ビジネスにおいて保守的な面がありますが、GUCCIによるファッションテックへの試みのひとつが、GUCCI DIYです。GUCCIのファッションアイテムやバッグなどに、イニシャルを追加したり、パッチや素材を購入時にセレクトすることで、自分好みにカスタマイズした状態で購入することができるというサービスです。

The Dressing Room(GAP)

世界的アパレルブランドのGAPが手がける「The Dressing Room by Gap」は、自分のボディサイズを入力すると、3Dのマネキンが生成され、洋服の丈の長さや肩幅、袖の長さなど、シルエットを確認しながら、購入ができるというヴァーチャルフィッティングのサービスです。体型は一人ひとり異なるため、サイズ表示だけでは、細かいサイジングがわかりません。その点、The Dressing Room by Gapなら3Dマネキンで表示してくれるので、写真で見るよりもイメージしやすいというメリットがあります。

日本のファッションテックの具体例を紹介

日本のファッション業界でも、ファッションテックを取り入れたサービスに参入するブランドやアパレルメーカーが増えつつあります。ファッション関連の消費が冷え込むなか、新たな消費を喚起する手法として定着するのか、挑戦が続いています。

エアークローゼット(株式会社エアークローゼット)

airCloset(エアークローゼット)は、2015年2月にサービスを開始した月額制のファッションレンタルサービスです。3つの料金プランがあり、毎月洋服が借り放題になる「レギュラー」、月1回3着まで借りることができる「ライト」、そして月1回5着まで借りられる「ライトプラス」があります。いずれのプランでも、プロのスタイリストが好みや悩みにあわせて洋服をセレクトしてくれる点が大きな特徴になっています。また、もし選ばれた洋服に満足できなければ、全額返金される制度もあります。あくまでレンタルなため、季節が変わるごとに新品の洋服を購入する必要がなく、クローゼットがいっぱいになってしまうこともありません。洋服を買うよりも節約することができます。洋服をみんなでシェアするという点で、シェアリングエコノミーサービスのひとつで、ファッションテックによって実現しています。

sitateru(シタテル株式会社)

シタテル株式会社は2014年創業のアパレル製造業に関するさまざまなサービスを展開している企業です。アパレルに関する専門知識がない企業やクリエイターでも在庫リスクを抱えることなく、洋服づくりにチャレンジできる受注・生産・配送が一体となったECパッケージサービスの「sitateru SPEC(シタテルスペック)」や、アパレル事業者のさまざまな業務をデジタル化によって支援するクラウドツールの「sitateru CLOUD(シタテルクラウド)」などを主な事業としています。

Stock Park(park & port株式会社)

シーズンが過ぎてしまった洋服やバッグ、あるいはファッション小物をアウトレットに出して、売り切ってしまいたいというアパレルブランドもあると思います。Stock Parkはそんなときに利用できる、ファッションアイテム専門の買い取りサービスです。商品の査定が極めて簡単な点が特徴で、商品を送らなくても、スマホで撮影し、その画像を送るだけで査定が完了します。また、査定した商品は独自のルートで販売されるため、定価に近い値段で買い取ってくれます。

リネット(株式会社ホワイトプラス)

株式会社ホワイトプラスが提供するネット完結型のクリーニングサービスが「リネット」です。注文から宅配の手配まですべてウェブやアプリで完結できるため、忙しい人でもクリーニングサービスを気軽に利用することができます。申し込みを行ったら、クリーニングに出したい洋服を袋に詰めて、配達員に渡すだけで、早朝や深夜の集配も行っています。また1枚からでも申し込みができる点も日常的に利用しやすく、利便性の高いサービスとして人気があります。

nutte(株式会社ステイト・オブ・マインド)

nutte(ヌッテ)はプロの職人に縫製を依頼することできるクラウドソーシングサービスです。商品として販売したい洋服の縫製はもちろん、ダンスやバレエの発表会で使用する衣装の制作、ペットに着せたいオリジナルの洋服の制作など、目的を問わず、nutteを通じてプロに縫製を依頼することができます。

boohoo

boohoo(ブーフー)はイギリス発祥のオンライン特化型ファストファッションサイトです。ファストファッションといえば、次から次へと新商品を発売し、少ないロットで生産することで売れ残りなどの在庫を持たないようにする、効率的な生産が特徴ですが、boohooではオンラインに特化することによって、月間約3000種類以上のアイテムをリリースしています。毎日のように新しいデザインの商品がサイトに追加されるため、眺めるだけでも楽しいと言われています。

ファッションテックで必要とされる人材になるためには?

今後もファッションテックを採用する企業が増えることが予想されていますが、従来のファッションビジネスとは異なる視点やスキルを身につける必要があります。どんな人材が求められているのか、解説します。

デジタルリテラシーを身につける

ファッションビジネスでは、これまで最先端のトレンドやカルチャーに精通することが重要でした。しかし、ファッションテックでは情報通信や先端テクノロジーに関する知識も必要不可欠になります。デジタルリテラシーを身につけ、AIやVRを使えば、どんなプロモーションが可能になるのか?など、テクノロジーとファッションを結びつける接点を考えるマインドも求められます。

専門スクールでスキルを身につける

業界でファッションテックに注力する企業が増えてきたことによって、専門学校などでも積極的にファッションテックのプロフェッショナルを目指す人を対象にした講座なども増えています。eコマースの立ち上げに関する知識や、VRの特性が学べる授業も徐々に見られるようになっているため、どこに行けば、知識を深めることができるのか、リサーチするスキルも大切になります。

ファッション業界の未来を救うかもしれないファッションテック

ファッション業界はかつてない逆風にさらされています。一部のブランドでは増収増益が続くものの、大半のアパレルブランドでは売り上げの低迷が顕著で、ファッションに対する消費が冷え込んでいると指摘されています。こうした状況を打破するためには、ファッションテックの活用が欠かせません。新しい技術やテクノロジーに敏感になり、どうすればファッションと融合させることができるのか、アイディアを絞る必要があります。

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