テレワークでストレスが生じる原因と軽減する方法について解説

働き方改革の推進や新型コロナウイルス感染症の感染拡大の防止のため、テレワークの導入を検討する企業が増えています。
その一方で、テレワークにより、今までにないストレスを訴える人も増えています。具体的にどんなストレスが生じるのか。今回はテレワークでストレスが生じる原因と軽減する方法について解説します。

外出自粛の長期化により、「テレワークうつ」が急増中?

働き方改革の推進や新型コロナウイルス感染拡大の防止のため、テレワークの導入を検討する企業が増えています。テレワークとは「遠方の」や「遠距離」といった意味を持つ「tele」と「work(仕事)」を組み合わせた造語で、オフィスに通勤することなく自宅や出先、シェアオフィスなど遠隔地で業務を行うというワークスタイルを指します。

都市部であれば満員電車に乗る必要もなくなり、通勤にかかっていた時間を家事や育児に割り振ることができるため、QOLが高まると考えられています。とくに新型コロナウイルスの感染が長期化によって、テレワークを取り入れる企業が増加し、働き方のひとつとして定着しつつあります。一方で、自宅でこもっての業務が長期間にわたって続いたことで、ストレスを感じる人も増えていると言われています。テレワークでストレスが生じる原因と軽減する方法を考えます。

約6割がストレスを実感という調査結果に

リクルートキャリアが行った、新型コロナウイルス禍でテレワークをするようになった就業者約2200人へのアンケート調査によると、回答者の59.6%がテレワーク前にはないストレスを実感しており、そのうちの67.7%の人は、まだストレスの解消ができていないと答えています。年代別に見ると、20代が58.9%、30代が64.6%、40代が67.8%、50〜60代が83.6%となっており、年代が上がれば上がるほど、ストレスの解消できていないことがわかりました。また、仕事中に「雑談」がある人と、「雑談」がない人を比べると、ストレスの解消具合に大きな差があり、「雑談」がない人はとくにストレスが解消できていないことがわかっています。

ストレスが減ったと感じている人も

テレワークの長期化でストレスを抱えるようになった人が増える一方で、テレワークを歓迎する声もあります。とくに通勤時間が長く、利用していた交通機関が混雑する人にとっては、通勤がなくなる分、自由に使える時間が増え、ストレスから解放されたと言います。

テレワークでストレスが生じる原因

では、テレワークによる疲れはどのようなことが原因で起こるのでしょうか。
テレワーク疲れが起こる原因4つを具体的に解説していきます。

仕事とプライベートの切り替えがうまくいかない

テレワーク疲れが起こるひとつに仕事とプライベートの切り替えがうまくいかないことがあげられます。

テレワークの特徴として、仕事をする場所とプライベート空間が一緒になりやすいという特徴があります。人は学校に行けば勉強し、職場に行けば仕事をするというように、場所を変えることによって行動の変化を促すことができます。そんな中プライベート空間が一緒になることによって趣味や余暇の時間が減る、一人の時間が減る、子供の声などで仕事に集中できないなど、今までにない問題が起こり、オンオフの切り替えがうまくできないことで、結果的にテレワーク疲れにつながります。

コミュニケーションがとりづらい

テレワーク疲れが起こる、もうひとつの原因がコミュニケーションのとりづらさです。
テレワークは、一人ひとりで働く場所を選択できる一方で、コミュニケーション不足が起こりやすいといわれています。社員一人ひとりが離れた場所で勤務することになるため、毎日自然と顔をあわす機会が少なくなり、結果として従業員同士の雑談や、上司や部下、同僚に対する気軽なコミュニケーションが取りにくいなどの現象が起きやすいです。
コミュニケーションを取る際にも、顔が見えない、細かな情報共有が不十分といった課題が起きやすいゆえに、従業員間での意思疎通が上手くいかないという問題も起きやすくなります。

コミュニケーション量の減少はテレワーク疲れが起こる1つの原因といえるでしょう。

孤独を感じる

自室にこもって仕事をしていると、作業に没頭しているときは良いのですが、ふとした瞬間に孤独を感じることもあるでしょう。メールやチャット、電話などで同僚や上司とやりとりができるといっても、すぐそばに人の気配を感じるわけではありません。とくにリモート会議が終わった後などは、回線を切ると、目の前に広がるのはいつもの自室の風景です。ビジネスモードから急にプライベートに戻ったような感じがして、虚しさや寂しさが襲ってきても、不思議ではありません。

作業環境が整っていない

オフィスと自室との作業環境の違いもストレスになります。とくにコロナ禍でテレワークが急速に広まったため、多くの人は仕事をするための環境を整えていなかったはずです。長時間、作業しても疲れないデスクやチェア、収納スペース、デスクライトなど、普段利用していたオフィスとは比べて、自室のものはデスクワークに向いていないのではないでしょうか。それでもちょっとした作業なら耐えられますが、毎日、使うとなると、使いづらさが気になり、ストレスが溜まっていく原因になります。

成果が正しく評価されるか不安

頑張って働いていても、オフィスでの勤務と比べて、成果や働きぶりが格段に見えにくくなるのが、テレワークのデメリットです。とくに営業職など、数字で成績が図れる職種ならまだしも、数字として成果があらわれにくい職種の場合、正当に評価されているのか不安が募っていきます。ノルマや目標を達成するまでの途中経過が上司やリーダーに見えづらく、努力しているのに評価されていないと不満に感じてもおかしくはありません。急に普及したテレワークだけに、社内の評価制度が現状に追いついていないということもできます。

テレワークにおけるストレスを軽減する方法

テレワーク疲れが起こる原因について解説しました。次にテレワークにおけるストレスを軽減する方法について解説していきます。

快適な作業環境を整備する

テレワークにおけるストレスを軽減するためには、快適な作業環境の整備することが必要です。厚生労働省は、具体的には下記のような環境を整えることを推奨しています。
・安定していて、簡単に移動できる
・座面の高さを調整できる
・傾きを調整できる背もたれがある
・肘掛けがある椅子を用意する
参考文献:自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備

従業員同士の交流の機会を作る

テレワークにおけるストレスを軽減するためには、従業員同士の交流の機会を作ることが必要です。テレワークでのコミュニケーションを活性化することにより、気軽なコミュニケーションで従業員同士で心身の健康状態をチェックすることや、社員の稼働状況を「見える化」することにも繋がります。
従業員同士の交流の機会を作るために、気軽にコミュニケーションを取りやすいオンラインツールを取り入れて、朝礼、終礼などで意識的に従業員同士で雑談をつくることも効果的です。ビデオ通話やバーチャルオフィスで直接的な対話をするようにしましょう。

適切な労務管理をおこなう

テレワークにおけるストレスを軽減するためには、会社として適切に労務管理をすることが大切です。オンとオフの境目がなくなる、成果で評価されるという強迫観念、コミュニケーションコストの増大などにより、テレワークの導入によってついつい長時間労働になってしまう従業員は多いです。そのため、会社として適切な労務管理を徹底することは大切でしょう。業務時間外や深夜、休日に仕事上の連絡をしないようにし、メール(チャット)送付の抑制を行ったり、深夜や休日は外部から社内システムへアクセスできないように設定したりするなどの対策が必要です。また、場合によっては長時間労働を行う従業員への注意喚起も行う必要があります。

テレワークの不安を相談できる体制を整える

テレワークで抱えたストレスを誰にも言えないまま、大きく膨らませてしまうのは、適切ではありません。企業は社員からの小さな不調のサインを見逃さないよう、テレワークの不安を気軽に相談できるような体制を整えることも大切です。カウンセラーとの面談の時間を設けたり、オフィスが密にならないように配慮しながら、オフィスへの出勤と併用する形を採用するのも良いでしょう。

テレワーク疲れによってもたらされる不調・ストレス

テレワーク疲れが起こる原因について解説しました。では、テレワーク疲れによってもたらされる不調・ストレスはどのようなものなのでしょうか。ここからは、テレワーク疲れによってもたらされる不調・ストレスについて解説していきます。

体のこり

テレワーク疲れによってもたらされる不調・ストレスの1つとして、体のこりを訴える人が増えています。

オフィスでは、仕事に適した机や椅子、働く環境が整えられていますが、自宅でテレワークを行うことにより、人によっては、自宅内にオフィス用の机や椅子を置くスペースがなく、床に座り、ローテーブルなどで仕事をしている方もいるかもしれません。仕事に適していない環境で仕事をすることで、1日中身体に変な負担をかけて勤務することにつながり、短時間であれば問題ないものの、今まで以上に手首や腰に大きな負担がかかり、腰痛、肩こり、首コリ、膝の痛みなど慢性的な症状があらわれます。

可能な限り仕事に適した机や椅子を導入することを検討したり、仕事の合間でセルフマッサージやストレッチを取り入れ、定期的にこりをほぐすことが必要でしょう。
テレワーク疲れが起こる原因、テレワーク疲れによってもたらされる不調・ストレスについて解説しました。次にテレワークにおけるストレスを軽減するポイントについて解説していきます。

精神的なストレス

テレワーク疲れによってもたらされる2つ目の不調・ストレスに、精神的なストレスがあげられます。仕事とプライベートでのオンオフの切り替えがうまくできない、従業員同士で雑談や気軽なコミュニケーションが難しくなるなどにより、精神的にストレスを感じてしまう人も多くいます。
ひとり暮らしであれば、毎日のように顔を合わせていた会社の同僚たちとの交流も途絶えがちとなり、誰とも会わず1日が終わることもあるでしょう。また、お互いの業務が見えづらいことにより、必要以上に評価に対する不安を感じることもあるようです。その結果、孤独感・孤立感を感じてしまうことが精神的なストレスの大きな一因となっているようです。

意識的にオンラインで会話する時間をつくるなど、孤独感を緩和する時間を意識的につくることが大切です。

眼精疲労

テレワーク疲れによってもたらされる3つ目の不調・ストレスに眼精疲労があります。テレワークが導入されてから目の不調が増えたと感じる人は全体の61.7%と半数以上いるという調査結果があります。今まで顔をあわせて行っていた打ち合わせもオンラインで行うようになり、パソコンやスマートフォンの画面を見る時間が以前より増える人が増えています。また、定期的に休憩時間を取ることを忘れ、長時間パソコンを見続ける作業をしてしまったり、集中して作業しているとついまばたきを忘れてしまったりして、眼の表面が乾いてしまうなど、パソコンが原因によるドライアイも増えています。

1時間に10分程度の休憩を意識的に取るようにし、意識的にまばたきをするなども大切です。

むくみ・冷え

テレワーク疲れによってもたらされる4つ目の不調・ストレスにむくみ・冷えがあります。テレワークが続くことによって、座りっぱなし状態が続いて運動不足になり、血流が滞ってしまったり、脚が冷えてパンパンにむくんでしまうなど、テレワークによるむくみ・冷えを訴える人は多いです。

このような現象を解消すべく、ツボ押しをしたり、ストレッチを取り入れるなどして1日のうちにむくみ・冷えを解消するようにしましょう。お風呂の湯船につかり、身体をあっためたり、体を温める飲み物を飲むことも効果的です。

睡眠不足

テレワーク疲れによってもたらされる5つ目の不調・ストレスに睡眠不足があります。
テレワークにより在宅勤務になると、就寝・起床時刻や食事の時間が日によってまちまちになってしまったり、朝日を浴びないまま仕事を始めてしまったりする人もいるでしょう。夕方以降のうたた寝で夜眠れなくなり、深夜まで仕事をしてしまっている人もいるかもしれません。また、運動不足により身体が疲れない、寝る直前までパソコンで業務をしてしまい、夜になって上手く寝ることができないという声もあります。そのような生活を続けた結果、体内のリズムが乱れ、睡眠の質が落ちてしまいます。

このような寝不足を解消するためには、日中に適度な運動をする、寝る前1時間はテレビやスマートフォンといったブルーライトを避けるなどの工夫が必要です。

テレワークによるストレス軽減のための企業の取り組み例

続いては、テレワークによるストレス軽減のために、企業が実際に行っている事例をいくつか紹介しましょう。参考にしてみてはいかがでしょうか?

サイボウズ株式会社

グループウェアの「サイボウズ Office」シリーズなどを手掛けてるサイボウズ株式会社では、テレワークが普及する以前のおよそ15年ほど前から「ザツダン」という慣習があると言います。これがテレワークにおけるストレス軽減策として注目されています。勤務時間中に、上司とメンバーが毎週30分の雑談をするというものです。どちらかがテレワーク中ならテレビ会議を繋ぎ、両者ともに出社していたら、会議室などで行います。会話の内容は、仕事のことでも、それ以外のことでも構いません。マネージャーが一人ひとりと話をする時間を作ることが、業務として求められており、このザツダンでは上下などは持ち込まないとされていると言います。何気ない会話ができる時間を定期的に設けることが、ストレスの軽減につながっているようです。

日産自動車

日産自動車には、以前から在宅勤務制度があったものの、当初は育児や介護による利用に限られており、また1カ月前に申請をする必要があったと言います。そのため利用者が少なく、2010年になると生産工程以外の全社員に対象を広げられ、育児や介護だけではなく、目的を問わずに制度が利用できるように変更されました。利用する際には、前日までに在宅勤務の開始時間と、終了時間、業務内容をメールで伝えます。またチャットや音声テレビ会議システムを活用し、勤務する様子がリアルタイムで他のスタッフに伝わる仕組みになっていると言います。あえて、画面にテレワーク中の様子を表示することで、オフィスに集まって仕事をして状態と同じような環境を作っているわけです。

ストレスをうまく解消しながらテレワークをおこなおう

会社に通勤するよりも、自分のために使える時間が増えるというメリットがテレワークにはありますが、あまりに長期化すると、慣れない環境にストレスを感じる人もいます。今後も働き方のひとつとして認められていく可能性が高いため、どうすればストレスを軽減できるのか、ストレスを感じたら、どう対処すればいいのか、など理解しておくと良いかもしれません。

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