顧客平均年齢71歳! シニア向けプラットフォームとして急成長「株式会社ハルメクホールディングス」 〜IPOから読み解く、デジタルシフト #5〜

多くの企業が目標の一つとして掲げ、憧れ、夢を見る言葉、「上場」。これを達成した企業は資金調達の規模が大きくなり、さらなる挑戦ができるとともに、社会的に認められたという箔が付く。何百万社とある日本企業のなかで、上場企業は約3,800社。非常に狭き門を突破した、選ばれし企業たちだ。
本記事では、デジタルシフトを実現しながら新規上場を果たした企業に焦点を当てていく。今回は、シニア女性をターゲットとした事業を手がける「株式会社ハルメクホールディングス」を取り上げる。同社は、2023年3月23日に東証グロース市場に上場した。初値は1,981円で公開価格の1,720円を上回った。

雑誌だけでなく、物販事業・コミュニティ事業も展開。「株式会社ハルメクホールディングス」とは

ハルメクホールディングスの前身となる「ユーリーグ株式会社」は、1989年に編集プロダクションとして創業された。「いきいき株式会社」を経て、2016年に商号を「株式会社ハルメク」とし、2018年には持株会社として「株式会社ハルメクホールディングス」が設立された。現在では、シニア女性をターゲットとし、1996年に発刊された雑誌「ハルメク」を中心とする「情報コンテンツ」事業、オリジナル商品の開発・販売を手がける「物販」事業、オフライン・オンラインのイベントや講座などを扱う「コミュニティ」事業といった3領域を中心に展開している。

雑誌「ハルメク」や、その公式サイト「ハルメクWEB」では、シニア女性への「お役立ち情報」を提供している。ハルメクは2022年12月号で定期購読者数が50万人を超え、ハルメクWEBは2022年7月の月間アクセス数が約641万PVとなるなど、出版不況といわれるなかでも独自の地位を確立している。オリジナル商品はD2Cモデルで販売しながら、「ハルメク おみせ」という実店舗も8箇所で運営している。雑誌からWebサイトまで、実店舗からD2Cまでと、リアルとオンラインを組み合わせながら事業を拡大している。

2022年3月期の売上高は約252億3,000万円で、営業利益は約13億5,000万円だった。2023年3月期は第3四半期累計で売上高が約229億6,000万円、営業利益が約21億3,000万円となっている。
ハルメク おみせ

ハルメク おみせ

2030年には全女性の56%を占める、50歳以上がターゲット

ハルメクホールディングスは、ターゲットを「50歳以上の女性(シニア女性)」と定めている。日本の高齢化に伴い、シニア女性の比率は増えており、全女性に占めるシニア女性の割合は、2010年の46%から右肩上がりで増加し、2030年には56%になる推計だという。同社の顧客数は年平均成長率23%で増加し、2022年3月期の顧客の平均年齢は71歳だった。また、50歳以上の人は、50歳未満よりも金融資産が多い傾向にあり、シニア女性の市場はまだまだ高いポテンシャルがあると考えているとのことだ。

また同社では、ユーザーの集客から育成、ファン化までを自社で行い、ロイヤリティの高い顧客が生まれていることも特徴的だ。雑誌やWebサイトで情報を発信し、その内容に関連した商品を開発・販売する。さらに、関連するイベントや講座を提供しコミュニティ化することで、それぞれの事業が連動しシナジーが生まれ、商品やサービスの利用率が上がるという戦略だ。実際に、3事業全ての利用経験があるユーザーの顧客単価は、1事業利用ユーザーの6倍以上、2事業利用ユーザーの1.5倍以上となっている。

Webメディアを刷新し、サブスクリプションサービスを開始

ハルメクホールディングスは、2022年8月、ハルメクWEBをリニューアルし、サブスクリプション型の動画/音声サービス「ハルメク365」を開始した。ファッションや料理など複数のジャンルを扱うオリジナル動画コンテンツや、雑誌「ハルメク」の電子版などが提供されている。有料会員の料金は、雑誌「ハルメク」購読者で月額550円、非購読者で月額770円だ。現在はブラウザサービスだが、将来的にはアプリ化を視野に入れているという。ユーザーのデジタル化に対応することに加え、顧客データを蓄積する狙いもある。顧客データは、自社の既存ビジネスで利用することはもちろん、シニア市場への展開を考える企業向けにも活用することで、B2Bビジネスの強化も目指している。サブスク型のサービスが、シニア女性にどれだけ受け入れられるかが、今後の鍵を握りそうだ。
ハルメク 365

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