使うほどに社会貢献が出来るデビットカード“Aspiration”とは?
2020/9/7
今回は、北米でブレイク中のAspiration(アスピレーション)をご紹介したいと思います。
ずばり、何がすごいかというと、使うほどに社会貢献が出来るサスティナビリティなデビットカードを提供しているんです。お金を使うということは、資源を消費することとほとんど同義。なのにサスティナビリティにつながるとはどういうことなのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
■アスピレーションとは?
デビットカードが、そのサービスのコアとなります。利用者が払う、定額の利用料、あるいはデビットカードにチャージ、つまりアスピレーションの口座に入金した金額の一部が、アスピレーションの収入の主たるものです。アスピレーションはそのうちの10%をNPOや環境保護プロジェクトなどに寄付したり、投資したりしています。つまり、利用者はアスピレーションのデビットカードで消費活動をするほどに、社会貢献活動に参加していることとなります。
こちらは投資ジャンルの一例です。貧困、生活用水、教育、環境保全、健康、人権などの社会を豊かにする団体・プロジェクトに対して寄付されます。もちろんどの団体へ寄付するか希望を出すことも可能です。
また、社会貢献性の高い企業で買い物をするとキャッシュバックを受けられるといった特典も存在します。
■誰が利用しているのか?
ところが、このアスピレーションを保有しているのは、アメリカのサンフランシスコを中心とした富裕層。特にその子供世代なんです。この事象が表しているのは、お金儲けが出来ることよりも、社会貢献をしているヒトや企業がカッコいいし、相対的価値が高いという価値観が若者を中心に芽生えつつあるということかもしれません。もちろん多少の金銭的余裕が、そうした思想を支えるとも考えられます。その結果が、利用者の傾向に現れているのです。
さらに注目すべきは、社会貢献を謳って支持を集めるアスピレーションが、儲かっているという事実。ここがデジタルシフト(ビジネス構造の再定義)なポイントなんです。結果的に富裕層を顧客として抱えているため、何と一人当たり月に2,700ドルも利用しているというデータもあります。この事実だけ捉えるのであれば、アスピレーションは最初から富裕層をターゲットとした優れたマーケティング企業であるとも考えられます。
■アスピレーションが起こしたデジタルシフト
もちろん、それは簡単なことではありません。消費するほどに社会貢献できる仕組みは、実はデジタルの力が無くては実現しません。これまでのクレジットカードのポイントシステムはいくら使ったかだけを見ていたのに対し、アスピレーションのデビットカードは、“何に”いくら使ったかが重要になってくるからです。
そして、この消費行動データを、アスピレーションは独自指標でユーザーへ示す仕組みを開発しました。「Aspiration Impact Measurement (AIM)」というシステムです。環境や社会課題に対し良い取り組みをしている企業の製品を買ったり、サービスを利用したりするとポイントが加算されていきます。この数値は、SNSなどでもシェアが可能なので、個人の社会的ステータスに紐づく新たな指標と言えますね。消費行動の基準となる、新しい付加価値を与えた言っても過言ではないでしょう。
今はまだアスピレーションのビジネスモデルは、お金に余裕のある富裕層に注目されているに過ぎません。(もっとわかりやすくお得なカードがいっぱいありますからね!)しかし、単にお得であるだけが消費行動の基準にならない。そんな考え方がより多くの人に広まっていく次代も近いのかもしれません。
▼AspirationのHPはこちら▼
https://www.aspiration.com/
㈱デジタルホールディングス グループ執行役員
㈱オプト 上席執行役員
2003年、旧ソフトバンクIDC㈱に入社。ネットワークエンジニアとして従事した後、2006年に㈱オプト(現:㈱オプトホールディング)入社。営業、マーケティング職を経て、2010年にWebマーケ会社の㈱デジミホ(旧オプトグループ)の取締役に就任。SaaS系の新規事業を立ち上げ・グロース後、事業売却。2015年にオプト執行役員に就任し、エンジニアとクリエイティブの組織を拡大。2019年4月、オプトグループ執行役員に就任し、レガシー業界のデジタルシフトを狙った、顧客との共同事業開発を推進中。