使うほどに社会貢献が出来るデビットカード“Aspiration”とは?

皆さん、こんにちは。オプトの石原です。

今回は、北米でブレイク中のAspiration(アスピレーション)をご紹介したいと思います。
ずばり、何がすごいかというと、使うほどに社会貢献が出来るサスティナビリティなデビットカードを提供しているんです。お金を使うということは、資源を消費することとほとんど同義。なのにサスティナビリティにつながるとはどういうことなのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

■アスピレーションとは?

アスピレーションはサービスを提供する企業の名前でもあります。インターネット銀行に分類されますが、新しい金融サービスをデザインしたことで、他の銀行との差別化に成功しました。彼らがデザインした新しい金融サービスは、消費と社会貢献を結び付けたものでした。

デビットカードが、そのサービスのコアとなります。利用者が払う、定額の利用料、あるいはデビットカードにチャージ、つまりアスピレーションの口座に入金した金額の一部が、アスピレーションの収入の主たるものです。アスピレーションはそのうちの10%をNPOや環境保護プロジェクトなどに寄付したり、投資したりしています。つまり、利用者はアスピレーションのデビットカードで消費活動をするほどに、社会貢献活動に参加していることとなります。

こちらは投資ジャンルの一例です。貧困、生活用水、教育、環境保全、健康、人権などの社会を豊かにする団体・プロジェクトに対して寄付されます。もちろんどの団体へ寄付するか希望を出すことも可能です。
これだけではありません。アスピレーションを通してガソリンを購入すると、同時にカーボン・オフセットのクレジットも購入される仕組みになっています。カーボン・オフセットとは、消費活動の際に、どんなに努力をしても発生してしまうCO2を、森林による吸収や省エネ設備への更新により創出された他の場所の削減分で埋め合わせ(=オフセット)する取り組みのこと。ガソリンを買っても、CO2を回収するための社会活動に同時に貢献する仕組みとなっているため、環境への負荷を抑えることができるのです。

また、社会貢献性の高い企業で買い物をするとキャッシュバックを受けられるといった特典も存在します。

■誰が利用しているのか?

突然ですが持っているとかっこいいクレジットカードって何でしょう?ひと昔前、もしかすると今でも、プラチナやブラックといった、高所得者であることを示すクレジットカードがかっこいいと思う人も多いのではないでしょうか?資本主義社会において、クレジットカードは、成功者という意味での“ステータス”を表していたとも言えます。

ところが、このアスピレーションを保有しているのは、アメリカのサンフランシスコを中心とした富裕層。特にその子供世代なんです。この事象が表しているのは、お金儲けが出来ることよりも、社会貢献をしているヒトや企業がカッコいいし、相対的価値が高いという価値観が若者を中心に芽生えつつあるということかもしれません。もちろん多少の金銭的余裕が、そうした思想を支えるとも考えられます。その結果が、利用者の傾向に現れているのです。

さらに注目すべきは、社会貢献を謳って支持を集めるアスピレーションが、儲かっているという事実。ここがデジタルシフト(ビジネス構造の再定義)なポイントなんです。結果的に富裕層を顧客として抱えているため、何と一人当たり月に2,700ドルも利用しているというデータもあります。この事実だけ捉えるのであれば、アスピレーションは最初から富裕層をターゲットとした優れたマーケティング企業であるとも考えられます。

■アスピレーションが起こしたデジタルシフト

カードを発行する金融会社は、これまでメディアに対して高い広告費とインセンティブを払って富裕層を獲得してきました。しかし、アスピレーションは投資の軸を“社会貢献そのもの”に置く事で、社会貢献意識の高い富裕層にアプロ―チしているのです。

もちろん、それは簡単なことではありません。消費するほどに社会貢献できる仕組みは、実はデジタルの力が無くては実現しません。これまでのクレジットカードのポイントシステムはいくら使ったかだけを見ていたのに対し、アスピレーションのデビットカードは、“何に”いくら使ったかが重要になってくるからです。


そして、この消費行動データを、アスピレーションは独自指標でユーザーへ示す仕組みを開発しました。「Aspiration Impact Measurement (AIM)」というシステムです。環境や社会課題に対し良い取り組みをしている企業の製品を買ったり、サービスを利用したりするとポイントが加算されていきます。この数値は、SNSなどでもシェアが可能なので、個人の社会的ステータスに紐づく新たな指標と言えますね。消費行動の基準となる、新しい付加価値を与えた言っても過言ではないでしょう。
この「Aspiration Impact Measurement (AIM)」があってこそ、アスピレーションのビジネスモデルは成り立ちます。スコアリングがユーザーの動機づけになっているからです。
この不確実な時代、「ヒトはどうあるべきか?」という根本的な問いに向き合いながら、ユーザー体験を考え、ビジネスモデルを構築すべきである。そんなメッセージをアスピレーションの仕組みからは感じます。

今はまだアスピレーションのビジネスモデルは、お金に余裕のある富裕層に注目されているに過ぎません。(もっとわかりやすくお得なカードがいっぱいありますからね!)しかし、単にお得であるだけが消費行動の基準にならない。そんな考え方がより多くの人に広まっていく次代も近いのかもしれません。



▼AspirationのHPはこちら▼
https://www.aspiration.com/
石原靖士
㈱デジタルホールディングス グループ執行役員
㈱オプト 上席執行役員

2003年、旧ソフトバンクIDC㈱に入社。ネットワークエンジニアとして従事した後、2006年に㈱オプト(現:㈱オプトホールディング)入社。営業、マーケティング職を経て、2010年にWebマーケ会社の㈱デジミホ(旧オプトグループ)の取締役に就任。SaaS系の新規事業を立ち上げ・グロース後、事業売却。2015年にオプト執行役員に就任し、エンジニアとクリエイティブの組織を拡大。2019年4月、オプトグループ執行役員に就任し、レガシー業界のデジタルシフトを狙った、顧客との共同事業開発を推進中。

Special Features

連載特集
See More