創業3ヶ月で22億円超を調達。Relux創業者が背水の陣で挑む、海外旅行DX

コロナ禍で我々の生活は大きく変わりました。人とのコミュニケーション、働き方やライフスタイル、人生の価値観。これまで当たり前のように可能であった旅行もまた、さまざまな制限のなかで行われ、今後もこうした生活スタイルがしばらく続くことが予想されます。
そんななか、旅行・観光業界の多くの課題をデジタルの力を活用して解決し、これまでのスタイルを根底から変えていく「あたらしい旅行代理店」が誕生しました。その名も「令和トラベル」。そして創業したのは、宿泊予約サービス「Relux」を創業した篠塚 孝哉氏。この会社、創業3ヶ月でありながら22億円超を調達し、話題を集めています。なぜ今、海外旅行事業で起業するのか、目指していく「海外旅行業界のDX」とは何か、「あたらしい旅行代理店」が誕生することで生活者の旅行体験はどう変わるのか、篠塚氏にお話を伺いました。

ざっくりまとめ

- 創業3ヶ月で22億円超を調達。Relux創業者が海外旅行領域で起業。

- 海外旅行の需要は10年後には必ず戻る。戻るまでの準備期間を使えるからこそ、海外旅行事業を選択。

- 旅行代理店のオペレーションに多いアナログな部分を、デジタルで変革する。

- プロダクトをつくる上で重視しているのは、完全にカスタマーオリエンテッドなサービスであること。

- コロナ禍の影響で入国時の手続きなど海外旅行の難易度が上がる。驚くほど早く簡単に、安く予約ができるサービスに。

「Relux」創業者があえて今「海外旅行事業」を選択したワケ

―創業からわずか3ヶ月で22億円超という、ものすごい調達額についてどのように捉えられていますか?

まず、投資家の皆さまがそういう意思決定をしてくださったことがすごいと思っています。僕自身としては、高級ホテル・旅館の予約サービス「Relux」の運営会社を起業・売却したあとの、2度目の起業です。なので、最初から10億円前後の調達では意味がないと思っていました。そのくらいの額なら自分の資産から拠出してできてしまいますから。もっと大きな額を調達して背水の陣で戦わないと、もう一度スタートアップをやる意味がない。だからこそ、最初から20億円前後を目標に資金調達を始めました。投資家の皆さまが、海外旅行という逆張りのマーケットをすごく気に入ってくださったことが1つ目の要因。また、「Relux」はここ10年の旅行系スタートアップのなかでは日本で最も伸びた事業だと思いますし、全てのステークホルダーに対して出資分以上をお返ししています。この実績で得た信頼残高にフルレバレッジをかけてお金に変えられたことが2つ目の要因だと捉えています。背水の陣で、絶対に転べないなと意気込んでいます。

―コロナ禍の今、なぜあえて「海外旅行領域」で起業されたのでしょうか?

「Relux」運営会社を売却し、2020年3月末に退任した後、1年間ほどはメルカリの山田 進太郎さんのように海外を巡って、新しい事業ややりたいことを探す時間に充てたいと思っていました。でも新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、それができなくなり、結果的には日本にずっといることに。その状況がかえって、海外旅行領域での起業に直結しました。コロナ禍の影響で海外に行くことができない状況になったからこそ、自分のなかで、海外旅行がしたいという自然な欲求を感じたんです。シンプルに海外旅行は学びの宝庫であり、大事な体験だったんだなと気づきました。

当時、海外旅行はほぼゼロに近いくらい不可能な状況でしたが、いろんな人に「10年後、海外旅行ができる状態に戻っていると思いますか?」と聞くと、100%の人が「絶対戻っている」と答える。でも「明日戻るか?」と聞くと「明日は戻っていない」と言うわけです。つまり、明日海外旅行をするのは不可能でも10年後、場合によっては数年後には必ずできる状態に戻っている。必ず戻りゆく産業に備えて、今から始めれば準備する期間はたくさんある。「準備期間がある」ことはかなりのボーナスタイムになると思ったんです。だからこそ今、海外旅行という領域で起業しました。

―令和トラベルという名前もかなり特徴的ですよね。何か狙いがあるのでしょうか?

昭和っぽいですよね、とよく言われます。まあ、令和なんですけどね(笑)。実は、旅行事業を行うために必要な旅行業種免許を取るには、結構時間がかかるんですよ。だから、昨年の11月時点でまずは会社をつくる必要がありました。その際に、どうせあとから変えるんだから適当な名前にしようと思ってつけたのが「令和トラベル」です。令和観光、篠塚観光も候補でした(笑)。でもその名前と調達額とのギャップの影響か、一度聞くと一発で覚えてもらえるという独特な強みになって。サービス名ができたら変えようと思っていたんですが、思ったよりも反響がよく、悩んでいるところです(笑)。

アナログなオペレーションをデジタルの力で解決! 目指していく「海外旅行業界のDX」とは

―「海外旅行業界のDX」に取り組むとのことですが、具体的にどういうことでしょうか?

僕たちはパッケージ旅行を販売するアプリ「NEWT(ニュート)」を展開しようと考えています。パッケージ旅行とは、例えば、29,800円の韓国三日間弾丸旅行とか、128,000円のハワイハネムーン旅行のように、飛行機もホテルもセットで販売されている商品です。海外旅行の消費額は、コロナ禍直前で年間4.4兆円を超えていて、ずっと右肩上がりです。そして実は4.4兆円のうち、半数を占めるのがパッケージ旅行です。僕たちは、まず、このパッケージ旅行に着目し、デジタル化が遅れているパッケージ旅行予約の体験をアップデートしていきます。

今、パッケージ旅行を取り扱っているのは、大手の旅行代理店など複数社ありますが、裏側のオペレーションを見ると驚くほどアナログなんです。例えば、旅行の条件書や企画書を紙でやり取りしたり、飛行機やホテルの手配を電話でしていたり、国内の支店間でFAXを使っていることもあります。この工程をデジタル化しようというわけです。

お客様がアプリからパッケージ旅行のプランを選択し、予約していただく。その瞬間に裏側でAPIが動き、飛行機やホテルの最新の空き情報と最安料金を確認して予約を完了させ、自動的に発券されたチケットがアプリ上にアップロードされる。現在、アナログなオペレーションで行っている、例えばパスポートチェックなどの業務は、機械学習を使えばOCR(Optical Character Recognition: 文字認識)で人間よりも精度高く行うことができます。それが、僕たちが描く「海外旅行業界のDX」です。

―アナログなオペレーションをデジタル化することで、生活者の旅行体験はどう変わるのでしょうか?

社会にあるサービスのイノベーションとは「はやい」ことなんですよ。はやさ・スピードの価値は常に過小評価されていると思っています。例えば、鈍行列車より新幹線が高く、飛行機はもっと高いですよね。Facebookはコミュニケーションの世界に「はやさ」をもたらし、メルカリは「はやく」出品できて「はやく」売れるわけです。全てのイノベーションは、「はやさ」で説明がつきます。

では、旅行代理店における「はやさ」とは何か。それは、予約が早く簡単にできることです。でも早くても高ければ、なかなか一般にまで普及させることができません。だからこそ、早さに加えて、安さも提供する必要があります。僕たちが提供予定のアプリは、Amazonで商品を購入するのと同じぐらい簡単に、そしてスムーズに海外旅行予約を完了させることを目指しています。また、最低価格保証もしていきたいと思っています。

今まで大量の人が行っていたアナログ業務をデジタルのオペレーションにシフトすることで、パッケージ旅行という、日本独自のレガシーなビジネスモデルでも、中身はきわめてモダンに提供していけると思っていますし、そうすることで今の日本にはないオンリーワンな会社になれると信じて準備を進めています。

重視するのは「完全にカスタマーオリエンテッド」なサービス

―二度目の起業だからこそ重視していることはありますか?

「どんな会社が伸びるのか」を改めて考えてみると、AmazonやGoogle、Facebookをはじめ、日本のユニコーン企業を見ても、プロダクトに強い創業者であることが多いんです。だからこそ、創業者はモノに時間を使うべきだと思っています。でも、スタートアップや新規事業立ち上げって、ヒト・モノ・カネの管理にかなりの時間が取られるわけですよ。なので、最初からCHROを設けてヒトの部分をお願いし、カネの部分は資金調達を繰り返さなくてもいいように一度で大きな金額を調達するなど、かなり工夫してプロダクトに時間を使えるようにしていますね。今は自分の時間の半分ほどは、プロダクトに使えるようになっています。

―プロダクトをつくる上で、篠塚さんが大切にしていることは何ですか?

言い古されていることですが、完全にカスタマーオリエンテッドなサービスにこだわることです。Reluxのときもそうでしたが、BtoC事業に取り組んでいると、BとCの両方のバランスを取ろうとしたくなるんです。でも、ビジネス側をよくしようとすると、カスタマー側にデメリットが発生しがちですし、結局平均値のものしかつくれなくなります。とにかくカスタマーにとって価値があることが正義であり、使われないサービスに意味はないと考えています。たとえ、ビジネス側にとって好ましくない内容でも、カスタマーのためになるなら実施するという意思決定を心がけています。

―DXを進める上での課題はありますか?

DXは結局、バックエンドが肝であり、どれだけプロセスを自動化できるかがポイントだと思っています。予約者がパッケージ旅行を予約した瞬間にAPIが動いて、飛行機予約もホテル予約も完了させると口で言うのは簡単ですが、飛行機会社のシステムは各社異なりますし、ホテルも国ごとに地場の会社が存在するため、それぞれのシステムに合わせる必要があります。それをどうやって効率よく乗り越えていくのかが大きな課題ですね。

海外パッケージ旅行予約で一番に選ばれるサービスに

―「NEWT」はいつローンチする予定でしょうか? また、今後の展望についても教えてください。

アプリの準備はできていますが、今は国が定めている入国後の隔離期間があります。この隔離期間がなくなってからを想定しています。まずはハワイのパッケージ旅行の販売から始める予定です。僕自身、パッケージ旅行をこれまで使ったことがなかったのですが、サービスをつくっていくなかで気づいたことは、本来は合理的で簡単に予約が取れる選択肢だということです。例えば、7日間という予定が決まっていれば、飛行機もホテルも日程に合わせて一気に予約ができたほうが一番楽なはずです。でも今そう感じられないのは、既存サービスに課題があるから。だからこそポテンシャルを感じています。

コロナ禍を経て、5〜10年後に海外旅行需要が戻っていくのは確実です。でも今は、国によって入国ルールもバラバラですし、自分で調べるにしても限界がある。そして家族四人で旅行に行きたいと思っても、一人にミスがあったら出国できなくなってしまうんです。しばらくは海外旅行の難易度が高くなっていく。だからこそ、海外旅行代理店など、タスクの明確化ということが提供されているサービスの価値は上がっていく気がするんです。そういう価値を僕たちも提供していきたいと思います。

またアプリの使い勝手や、早さには徹底的にこだわっていきます。「NEWT」を利用いただいた方に、今までなんでなかったんだろう、と思っていただけるような価値を提供したいですね。アプリを使うことで驚くほど簡単に早く予約ができ、一元管理もできる。初めての方も、旅に慣れた方も満足できる。パッケージ旅行を予約する際に一番に選ばれるサービスにしたいです。

Reluxは6年でだいたい500億円ほどの流通額を達成しました。なので、今回は5年で1,000億を目指し、そのために必要なことを実行していきたいですね。
篠塚 孝哉
株式会社令和トラベル 代表取締役社長

2011年株式会社Loco Partnersを創業、2013年に宿泊予約サービス「Relux」を開始。17年春にはKDDIグループにM&Aにて経営参画、最年少子会社社長(当時)として経営執行を担う。2020年3月にLoco Partnersの社長を退任。
2021年4月、株式会社令和トラベルを創業。同年6月には、シードラウンドで22.5億円の大型資金調達を実施。「あたらしい旅行を、デザインする。」をミッションに海外旅行代理業を展開すべく、現在サービスを準備中。

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