アップル共同創業者も注目のスタートアップ。ユニファが提案するDX時代の新しい保育施設の在り方

待機児童問題の背景にある「保育士不足」は依然として社会課題です。保育士不足の原因の1つに業務負荷の高さという課題があります。それらの課題に対し、IoTやAIを活用して業界のDXを進め、注目を集めているのがユニファ株式会社です。
同社が提供しているのは、職員のシフト管理から、連絡帳や保育日誌の記入、園児の登降園管理、午睡(お昼寝)時の見守り、写真販売まで、保育施設の運営に関するありとあらゆる業務のDXを支援する「ルクミー」。すでに累計13,000件以上の導入実績があり、「スマート保育園・幼稚園・こども園」の実現に向けた取り組みを進めるモデル園も創出。DX時代の新しい保育施設の在り方について、ユニファ株式会社の代表取締役CEO土岐 泰之氏にお話を伺いました。

ざっくりまとめ

- これまでアナログに頼っていた保育の現場だが、ルクミーを導入することで大半の業務の効率化と保育者の時間と心のゆとりの創出を実現する。

- いずれは保育施設も、自宅や職場からの近さといった利便性だけでなく、保育や教育の質で選ばれる時代がやってくると考えられる。

- 子どもの興味や関心を可視化するデータプラットフォームはまだ確立されていない。これをいち早く実現できれば、子ども一人ひとりにパーソナライズされた教育機会の提供が可能となる。

共働き子育ての経験から、「家族の幸せ」をテーマにした起業を決意

——土岐さんが保育の世界で起業した経緯を教えてください。

以前は商社でベンチャー投資や、戦略コンサルティングファームでコンサルティング業務に携わっていましたが、学生時代からずっと起業したいという思いを抱えていました。激務の日々を送る中で結婚して、子どもが生まれたのですが、共働きの生活を続けながら子育てをするのには大きな苦労がありました。そこで一度、家族のためにキャリアを捨て、縁もゆかりもない愛知県豊田市に引っ越しをしたんです。転職して仕事と子育てを続ける中で、家族の幸せをテーマに起業したいという想いが込み上げてきました。家族のための起業であれば使命感もあり、命がけで取り組めるだろうなと。

——子育てで一番しんどかったのはどのような状況のときですか?

睡眠時間が削られると、精神的にも辛くなりますね。夜泣き対応をして眠れないまま朝ごはんの支度をする日々が続くと、心が摩耗していくと言いますか。とにかく自由がきかなくて、仕事をしているほうがよっぽど楽でした(笑)。

「業務の効率化」と「品質の向上」を同時に実現

——御社が提供する保育施設向けの総合ICTサービス「ルクミー」は、写真の共有サービス「ルクミーフォト」から始まったとお聞きしました。当時はそこにどんな課題があったのでしょうか?

保育施設などで販売する写真の準備にはものすごい手間と時間がかかるんです。保育者が撮影した何百枚もの写真をデジカメからパソコンに移すのにも時間がかかるし、販売する写真を間違いがないように選定するのにも大変な労力が必要です。そういった撮影後の作業を半自動化させることで保育者の業務時間や手間を大幅に削減できました。さらに、保護者がオンラインで写真を購入する際、AIの顔認証技術で自分の子どもが写っている写真を優先して表示することができるので、購入時の手間も省けます。それまでは販売する写真をすべて園内に貼り出しており、かなり写真の数が多いので皆さん選ぶのに時間がかかっていました。それがすべてオンラインで完結できますし、家族全員が写真を選べるようにもなりました。

——これまでは園に行かないと見られなかった写真が、ルクミーならオンラインで、どこからでも確認できるわけですね。

ご自宅のパソコンやスマホから購入する写真を選んでいただくだけで、データならそのままダウンロードできますし、プリントならもちろんご自宅まで郵送します。今までは注文を受けたら、保育者がフィルムやデータをカメラ店に持っていって現像してもらい、それを封筒に入れて手渡ししていました。そういった作業をすべて半自動化させました。当日撮った写真もすぐに販売できるので、それを見て親子の新しいコミュニケーションが生まれるようになったのも大きな改善点です。保育現場と家庭、双方の問題を解決できるので、ビジネス目線でも社会目線でも意義が大きいと考えています。

——お昼寝中の園児を見守るセンサーもありますね。それまでは保育者がすべて目視で園児の状態を確認して、体の向きを矢印でノートに書き込んでいたそうですが。

「ルクミー午睡チェック」は、乳児の肌着やパジャマ等に装着したセンサーで睡眠中の身体の向きを検出し、専用アプリで自動記録するサービスです。今までは保育者がお昼寝中の事故を防ぐために、5分おきに一人ひとりの体の向きを確認して、ノートに矢印で記入していました。人力では5分に1回が限度ですが、センサーなら常時園児の状態を確認できます。保育者の目とセンサーのダブルチェックになるわけですから、物理的・精神的な負荷を下げ見守りの質を向上させることができます。業務の効率化と品質の向上を同時に実現することが、保育施設のDX化においては必須の条件です。

「ルクミー」のサービスをすべて導入することで、1ヶ月130時間を削減可能

——保育の現場では、手書きやアナログへのこだわりが強いのでしょうか?

そういった面もあるかと思います。手書きの連絡帳の文字にはそのときの気持ちが反映されているように見えるというメリットもありますが、手書きの10行の日誌よりも、パソコンによる3行の文章+2枚の写真のほうが実は情報量は圧倒的に多いんです。ICTを活用すれば、より少ない労力で、より情報量の多い日誌を書くことができます。

——すでに累計で13,000件以上の導入実績ですが、どうやってここまでルクミーを広めていったのでしょうか?

2013年に名古屋でユニファを創業した当時、写真販売のDXについては同種のサービスがありましたが、現場のほとんどはアナログに頼っていました。当時は知人のつてから始めて50施設にルクミーを導入いただき、次の段階として法人が運営している保育施設にターゲットを変えました。上場している企業が運営する園は先進的な取り組みを好む場合が多く、ルクミーを受け入れてもらえる土壌がありました。その次の段階になると、絵本や遊具を保育施設に卸している保育商社と呼ばれる販売代理店が興味を持ってくれるようになりました。保育施設と密な関係を築き、園の経営者からも強い信頼を得ているので、今では新規案件の半数以上は代理店経由となっています。コスト的にもレバレッジが効くのでスケールしやすいというメリットがあります。

——保育士不足が問題になっていますが、その理由はどこにあるのでしょう?

離職理由は様々ですが多いのは人間関係や働き方など組織運営に関することですね。子どもが好きでこの業界に入ったのに、書類の作成に追われて子どもと向き合う時間が取れなかったり、人間関係のボタンの掛け違いがあったり。この問題にも私たちは向き合ってきました。ルクミーのサービスをすべて導入すると、導入前後で月当たり130時間ほどの業務時間を生み出せます。残業時間はもちろん減りますし、写真や動画などを活用することで個々の園児の好きなものや興味の方向性がより明確になるので、保育のカリキュラムを立てる際に重要な参考情報となります。この情報をもとに保育者同士で子どもの姿について語る時間やコミュニケーションが活性化して、組織の風通しもよくなっていくと思っています。

これからは保育施設についても「自宅や職場から近い」といった理由ではなく、具体的な保育や教育の内容で選ばれる時代が来ると考えています。私たちは選ばれる保育施設になるためにお客様に伴走し、業界全体の付加価値を高めていきます。

——たしかに、保育施設というと、カリキュラムよりも利便性を優先して選ばれているイメージがありました。今後は、保育施設の世界にも競争原理が働いてくるということでしょうか?

0歳から6歳という年齢は人間としての土台を作る根源的に重要な時期です。保護者にどれだけ愛され、見守られてきたのか。自身の好きなものが形成される期間でもあります。園児の場合、起きている時間の半分は保育施設で過ごします。その期間における保育や教育の重要性については、世界中の教育学者が発言しています。子どもにどのような教育を受けさせたいのかを考えた上で、保育施設を選択する。そう考えると、保育施設の差別化は必要でしょう。

まだまだAIが未発達なチャイルドケアの世界に革新を起こす

——御社は、世界最大級のグローバルピッチコンテスト・カンファレンスである「Startup World Cup 2017」をはじめ、数々の受賞歴がありますが、その理由はどこにあるとお考えですか?

このコンテストにスペシャルゲストとして参加していた、アップルの創業者であるスティーブ・ウォズニアック氏から言われたのは「チャイルドケアに関するAIはどこも研究が進んでいない」ということでした。0歳児の睡眠中の状態や、子どもの興味関心などを可視化するAIはどこにもないんです。農業やロジスティクスの世界ではAIが進んでいますが、チャイルドケアの分野ではまったく進んでいない。それが評価された理由だと思います。ユニファには約50名のエンジニアがいますが、その3割を外国人が占め、グローバルな人材で開発を進めています。

——保育に関する問題は世界共通ということでしょうか?

保育や教育、ヘルスケアについては世界中どこも同じような課題があります。子どもの興味関心や健康状態を可視化することをどこもやりたがっていますが、データが取れなくて困っているようです。私たちは子どもたちの写真だけで1億枚以上を所持していて、すでに顔認証の精度は相当なレベルに達しています。それ以外にも、子どもの視線を分析することで絵本を読んでいるのか、絵を描いているのかが判別可能です。まだまだ改善の余地はありますが、このデータは大きな価値を持つでしょう。子ども一人ひとりの状態抽出が可能になると、その子どもには次にどんな絵本やどんな知育玩具を準備すればいいのか、常に最適な回答を提案できます。

これまで子どもの興味や反応については解明されていないことが多くありました。絵本であれば知名度のある作品をとりあえず与えてみるなど、意図せずに選ばれていた面もあります。教育で最も重要なのは子どもの興味関心です。トンボに興味があるから昆虫の図鑑を読んだり、星座に興味があるから宇宙の図鑑を読んだり、興味関心を広げ、深めていく支援が重要で、当社に蓄積されたデータを利活用することでそこに寄与していきたいと考えています。

——最後に、今後の展望を教えてください。

子どもを預かるという視点では、現時点でも保育施設はインフラとして機能していますが、育児支援や教育の質の向上、子育て世代のライフスタイルを支えるといった観点に立つとまだまだできることがあると思います。例えば、子どもにあった離乳食を保育施設で配布して、それに手を少し加えればそのまま夕食にできるとか、園児に最適な絵本や知育玩具を保育施設で受け取れるようになるとか、信頼する保育者がレコメンドする絵本を自宅に配送する等、できることはたくさんあるでしょう。子どもたち一人ひとりの状況が分かれば、パーソナライズされた教育が可能になります。

しかし、そこには保育施設を取り巻く古いしがらみもたくさんあります。そのしがらみを受け入れながら解きほぐしていき、業界に受け入れていただく。ルクミーを導入することが子どものため、保育施設のためになると心の底から思ってもらえるよう、お客さまに寄り添っていきます。
土岐 泰之
ユニファ株式会社 代表取締役CEO

2003年に、住友商事に入社しスタートアップ投資及び事業開発支援に従事。その後、外資系戦略コンサルティングファームローランド・ベルガーやデロイトトーマツにて、経営戦略・組織戦略の策定及び実行支援に関与。2013年にユニファを創業。全世界から1万社以上が参加したスタートアップ・ワールドカップにて優勝。また採用率が全世界で2.5%未満であるEndeavor(エンデバー)起業家に選出されるなど、国内外で高い評価を受ける社会起業家。

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