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家族向け写真・動画共有アプリ「家族アルバム みてね」は、なぜ高齢者のデジタルシフトの成功事例になり得たのか? ミクシィ会長笠原氏に直撃。

核家族が増え、3世代同居率がどんどん減少する中で起こった新型コロナウイルスの感染拡大。離れて暮らす親としばらく会えていない、子どもの顔を見せられていないという方も多くいらっしゃると思います。そんな中、利用するユーザーである子育て世代・その親世代の間でコミュニケーション量が増大しているのが、株式会社ミクシィのVantageスタジオが提供する家族向け写真・動画共有アプリ「家族アルバム みてね」(以下『みてね』)。子育て世代向けのアプリと捉えている人も多いかもしれませんが、実はその親にあたる高齢者世代の利用率が非常に高いアプリとしても知られています。今回はそんな『みてね』の創業者である笠原 健治氏にインタビュー。コロナ禍において『みてね』が果たした役割から、高齢者の方に使ってもらえるアプリをつくるポイント、高齢化社会におけるデジタルテクノロジーの役割まで、たっぷりと語っていただきました。

ざっくりまとめ

- コロナの影響で世界的にユーザーのコミュニケーション量が増加。背景には「日常を共有することで互いに安心を提供し合いたい」という心理が。
- 2015年のリリース以来、祖父祖母世代へのスマホ浸透も追い風としてサービスを拡大。全世代を対象にしているからこそ、UXが大事。
- 単に写真や動画を共有するだけでなく、離れて暮らす家族がコミュニケーションできる場であるとともに、互いを「見守る」役割も担っている。
- 『自律型会話ロボットRomi』や『みてねみまもりGPS』などを展開し、高齢者のコミュニケーションをモチベートするテクノロジー活用を。

「会えない」状況から、国内外でコミュニケーション量が急増

——昨年は新型コロナウイルスの感染拡大によって、社会にさまざまな変化が起きた年でした。『みてね』にとって、2020年はどのような1年でしたか?

まず大きなトピックスとしては、昨年の8月に国内外の総ユーザー数が800万人を突破したことが挙げられます。ただしユーザー数の伸び率自体は、昨年以前までと大きくペースが変わったわけではありません。むしろ新型コロナウイルスとの関連性がみられるのは、『みてね』内のコミュニケーション量の増大です。

たとえば2020年1月と5月を比較すると、写真や動画の共有による家族のコミュニケーション量(『みてね』内のコメント数)は約1.6倍に、海外では2020年1月と7月を比較すると約2倍に増えています。

タイミングでいうと、まずは欧米、特にアメリカがロックダウンに突入した瞬間に、海外全体のコメント数が大きく跳ね上がりました。日本はそれよりもやや遅れて、4月の緊急事態宣言の発令をきっかけに、やはりコメント数が伸び始めた。それから今日まで、家族で活用されている方のアクティブ率は(週に1度以上『みてね』を使うユーザーの割合)は約8割と、高い水準を維持しています。

——コロナ禍が生み出した「物理的に会えない」という状況が、ユーザーの利用を促したのでしょうか?

あくまでも実感ですが、そうした側面はあると思います。アップロードされる写真や動画の傾向にも変化があったように感じています。今までは、週末にアップロードされることがより多かったのですが、平日も変わらないくらいアップロードされるようになりました。ユーザーの声から推測すると、これまでは週末のお出かけなど「ハレの日」を撮影したものが中心だったところが、コロナ禍以降は、何気ない日常のワンシーンを撮影した動画や写真の共有が増えているのではないかと思っています。もちろんそれは外出が制限されたことが要因として考えられるのですが、やはりこのような状況のなか、「日常を共有することで互いに安心を提供し合いたい」という心理も働いたのではないでしょうか。

ロックダウンのなかで子どもが生まれたのだけれど、夫婦以外の親族には会わせることができない、という方も非常に多いようです。そんななか『みてね』があるから、新しく生まれた子どもの様子を日常的に共有できるし、祝福の言葉もかけてもらえる。特に0歳児は本当に、日に日に成長していく時期なので、ちょっとした変化を共有できるのが嬉しいという声をいただいています。

「1秒動画」が人気沸騰。紙のアルバムではできない体験が鍵に

——運営側としてはコロナ禍において、何か特別な対応があったのでしょうか?

卒園・入学シーズンに合わせて、有料会員(「みてねプレミアム」加入者)のみに限定していた3分以上の動画を投稿する機能を、無料会員にも開放しました。2020年は、卒園式や入学式への参加制限がかかった地域もたくさんありましたよね。そんななかで、せめて『みてね』のなかでだけでも思い出を共有しやすくして、コミュニケーションをとっていただければと思っての判断です。

——動画といえば、『みてね』の機能のなかでは「1秒動画」がとても人気だと伺いました。

ありがたいことにご好評をいただいています。「1秒動画」はある一定期間に共有された動画や写真を少しずつつなぎ合わせて、自動で一本の動画を作成する機能です。短時間でお子さまの成長を一気に振り返ることができる点に、皆さん魅力を感じてくださっているようで、思わず涙ぐんでしまった、なんて声もよくお聞きします。

「1秒動画」のようなリッチな動画コンテンツを手軽に楽しむというのは、紙のアルバムの時代にはなかなかできなかったことですよね。ビデオカメラやパソコンが普及してからも、動画を編集して共有するとなると、それなりの労力がかかっていたはずです。みてねの「1秒動画」ならいいシーンだけを集めた動画を自動で作ってくれます。

また、写真や動画の撮影自体もスマホのカメラの性能が良くなったことで、今ではスマホで撮影して、スマホで共有できてしまう。スマートフォンというツールが一般に広く普及したことも、『みてね』が多くのユーザーに使っていただける一つの要因だと感じています。

——『みてね』がリリースされたのは2015年。スマートフォンが世代を超えて普及しはじめたタイミングだったように感じます。

仰るとおりで、まさに2015年からの6年間というのは、祖父祖母世代の皆さんがガラケーからスマホへと乗り換えはじめた時期だったと思います。それが『みてね』にとって追い風になったことは間違いありません。逆に『みてね』を使いたいから、ガラケーからスマホへ乗り換えた、なんてお話もよく伺います。

スマートフォンという新たなガジェットに最適化したアプリによって、まるでリビングで一緒に紙のアルバムを眺めているように、子どもの成長をいつでもどこでも家族みんなで共有できる。それこそが『みてね』が提供する新しい体験なのだと考えています。

「こんなに簡単なんだ!」ご高齢の方の「成功体験」になるようなUXを

——UXについてはどのようにお考えですか? 高齢者の方も頻繁に利用されるアプリならではの工夫があれば教えてください。

まずは大前提として、どの世代の方にも好感を抱いていただけるような洗練されたUIでありたいと常に心がけています。その上で、高齢者の方への配慮ということでいえば、「いかに直感的に操作できるか」という点にかかってくるかと思います。

世の中にはさまざまなアプリケーションやWebサービスがありますが、ユーザー登録やログインでつまずいてしまう方は少なくありません。利用規約がとても分かりづらい所に表示されていたり、記号を混ぜた複雑なパスワードが要求されたりして辟易したという方は少なくないのではないでしょうか。

特に高齢者の方は、一度そういう失敗体験をするとスマホ自体を敬遠してしまうこともあります。だからこそ『みてね』では、利用開始にあたってのハードルは可能な限り排除しました。IDやパスワードを登録せずに利用できるようにしているのは、そのためです。使い方もシンプルに、アプリを開いたら、ぱっとアルバム画面が表示されるようにしています。

先ほども述べたように、『みてね』はスマホを使い始めた高齢者の方が、最初にインストールするアプリの一つです。だから『みてね』が「スマホって、こんなに簡単で便利なんだ」という成功体験になれば嬉しいですね。それは高齢者の方も含めた社会全体のデジタルシフトにおいても、ポジティブな影響になるはずです。

mixi足あと機能を踏襲した『みたよ履歴』は互いに見守る役割も担う

——「お孫さんとコミュニケーションしたい」というモチベーションがあれば、皆さん使い方を覚えることにも積極的になれそうですね。

そうですね。小学生くらいになると、お子さんが直接コメントを返してくれたりもするので、それが嬉しくてついつい何度も返事をしてしまう、なんて声も伺っています。

そうそう、よく「おじいちゃんおばあちゃんがアルバムを作って、息子・娘に共有してもいいのですか?」というご質問があるのですが、私たちとしては大歓迎です。たしかに本来は子どもの写真や動画を共有することを前提にしたアプリで、1秒動画などもそこに特化した機能ではあるのですが、ユーザーの皆さんが互いに共有したい写真があるのであれば、どうぞ自由にお使いいただいてかまいません。

——祖父祖母世代の方から写真が送られてくると、父母世代の方は「元気にやってるんだな」と安心することもできそうですね。

そうなんです。実は「みたよ履歴」という機能もその役割を担っていて。mixiの足あとではないですが、『みてね』では家族同士で最終アクセス時間が分かるようになっているんです。私自身も『みてね』を使っているのですが、父や母が何日もログインしていないと少し心配になりますし、逆に30分前とかにログインしていると「今日も元気に過ごせているんだな」とホッとします。だから『みてね』は実は、コミュニケーションを促すだけではなく、互いを見守る役割も担っているのだと感じています。

次はロボット!?高齢化社会におけるテクノロジーの役割とは

——『みてね』の今後の展望を教えてください。

去年リリースした機能の一つに、兄弟が一緒に写った写真などに対して、子どもごとに自動でタグ付けをする機能があります。これがあるとお兄ちゃんならお兄ちゃんで、子どもごとに簡単にアルバムを見られたり、つくれたりするようになる。子育ての時期ってとても忙しいので、極力お父さんやお母さんのストレスにならないよう、ユーザーの利便性は引き続き高めていきたいと思います。

また直近では『みてねみまもりGPS』というサービスを3月8日にリリースしました。お子さまに小さなGPS端末を持たせるだけで、スマホからいつでも位置を確認できるサービスです。これもいずれは高齢の方の見守りにも活かせるかもしれません。
『みてね』を通じて、ギフトのレコメンドを実施する「みてねギフト」というサービスも開始しています。特にこのサービスを活用していただいているのは、やはり祖父母世代の方々。お子さまの年齢に合わせて「今はこんなプレゼントがおすすめですよ」と表示されるので、プレゼント選びがスムーズになったと好評です。プレゼントが届いたら、それで遊ぶ子どもの様子を動画や写真におさめて『みてね』で共有し、おじいちゃんやおばあちゃんがコメントを返す。そんな風に、家族内でのコミュニケーションを活性化させるサービスになれば幸いです。

——高齢者がコミュニケーションのモチベーションを失わないように、テクノロジーをどのように活用していくべきなのかという視点は、高齢化が進む日本において、とても重要だと感じました。

仰るとおりですね。弊社が4月21日に一般販売を予定している自律型会話ロボットRomi(ロミィ)にも、そうした課題意識があります。Romiは、あらかじめ返答が登録されている一般的なコミュニケーションロボットとは違い、最新の会話AIがその都度会話を作り出していく、まったく新しい会話ロボットです。

何を話すのか予想できない、まるで人と話しているかのようなコミュニケーションができるRomiを、ひとり暮らしの高齢の方にはぜひ使っていただきたい。それと同時に『みてね』を使って、離れて暮らす家族ともコミュニケーションを重ねていく。そんな未来を想像しています。
笠原 健治
株式会社ミクシィ 取締役会長

1997年、大学のゼミで学んだITビジネスのケーススタディや、当時米シリコンバレーにおけるインターネットサービスの興隆に触発され、同年11月、求人情報サイト「Find Job !」を開始。1999年6月に法人化し、代表取締役就任。2004年2月、ソーシャル・ネットワーキング サービス「mixi」を開始。2006年2月、社名を「株式会社ミクシィ」と変更し、同年9月にマザーズ市場に上場。2013年6月、取締役会長就任(現任)。2015年4月より「家族アルバム みてね」を開始。2020年6月よりAIロボット「Romi」を先行販売開始。「家族アルバム みてね」は日本語、英語など6言語で展開し、世界で800万人を超えるサービスとなっている。

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