①映像技術
今回のCESでは、トヨタやソニー、Amazonなどモビリティに関する発表が目立ったが、もとは家電見本市としてスタートしただけに、CESの展示の大半を占めるのが、コンシューマー向けの家電製品だ。昨年は、LGが世界初の巻取り型テレビを発表し話題となったが、今回も曲げることができるフレキシブルディスプレイを活用した大型展示が来場者の目を集めた。
145型の超特大マイクロ LEDディスプレイも展示されていた。
マイクロLEDパネルは、従来のLEDよりも小さなLEDでディスプレイを構成する次世代ディスプレイの有力候補だ。従来のLEDディスプレイでは1個のLEDの大きさは約1mm角だが、マイクロLEDその100分の1ほどのサイズしかない。極小の光点で描かれる映像の美しさは写真では伝えきれないが、来場者は一時足を止めて画面を見入るほどだった。
そんななか、同じくフレキシブルディスプレイを展示していた「ROYOLE」は、ディスプレイの新しい活用の場を提案した。例えば、写真のようにハンドバックにディスプレイを貼り付けたものだ。ファッションに新しい潮流を生むかもしれない。
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【CES2020】「ROYOLE」フレキシブルディスプレイ展示
②スマートホームとコミュニケーションロボット
今回も、Google、Amazonを筆頭に、スマートホームを実現する製品群や
AI アシスタントの発表が目立った。特にAmazonは音声AIアシスタント「Amazonアレクサ」と、他社製品との連携をアピールし、生活のシーンに合わせたわかりやすい展示が好評を博していた。
例えば、こちらのブースは、「BUSY PARENT」と銘打って、子どもがいる夫婦を助けるようなアイテムを展示してある。日本では、音声AIアシスタントに対応している家電が少ないが、欧米ではすでに、多様な家電がつながり、現実としてスマートホームを成り立たせられる状況にある。
一方、スマートホームは、ただ家電がネットワークされている状態で完成するものではない。そう気づかせてくれたのが、サムスンの発表した、AI搭載のコンパニオンロボット「Ballie(ボーリー)」だ。
仮に音声AIアシスタントですべての家電を操作できるとして、いちいち口で指示を出すのは手間に感じる。そこでBallieの出番だ。Ballieは本体にカメラを搭載していて、家の中を動き回りモニタリングすることができる。さらに、近くにいるユーザーを認識して自動で追従し、生活をサポートする。具体的には、ユーザーの状況や行動を予測し、代わりに家電を操作してくれるのだ。このBallieはコンセプトモデルではなく、商用展開を目指している製品とのことだ。
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【CES2020】AI搭載のコンパニオンロボットサムスン「Ballie(ボーリー)」
Ballie以外にも、サムスンは野心的な発表を行った。
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【CES2020】サムスン 人工人間「NEON」
サムスンの研究開発部門Samsung Technology and Advanced Research Labs(STAR Labs)からNeonという企業が出展し、同名の「Neon」というバーチャル・ヒューマンを発表した。後日、このデモは現時点ではまだ本物の人間のものであり、あくまでも「Neon」が将来どのように見えて動作するかについてのビジョンということだったが、これが実現するのであれば、生身の人間と見間違える外観と動作で感情や知性を示すことのできるビデオチャットボットが誕生することになる。明確な活用方法は明らかにされていないが、単なるAIアシスタントやインターフェースの役割を果たすのではなく、バーチャルな一個人として存在することを目指し開発が進められているようだ。
④新しいモビリティ
自動車メーカーがEV車や、
MaaS を実現するためにコンセプトを発表するなかで、様々な企業がラストワンマイルの課題を解決する電動キックボードや、運搬能力を持った電動バイクなどを展示していた。
新たなモビリティという観点で本命ともいえるのが、UBERが2023年にサービスを開始するとしている空飛ぶタクシーだ。これまでイメージなどが公開されていたが、CES2020では、ヒュンダイと共同開発したコンセプトモデル「S-A1」が実寸サイズでお披露目された。
S-A1は電動垂直離着陸型(eVTOL)で5人乗り。Uber Elevateの開始時には、パイロットが同乗することになるが、将来的に無人運転になるだろう。いよいよ未来の移動が現実味を帯びてきた。
⑤フードテック
開催期間中、長蛇の列が途切れなかったのは、植物由来の人工肉や乳製品を製造・開発する
フードテック 企業、インポッシブル・フーズのブースだ。これまでにも牛肉の味を再現した人工肉を開発し、同社のレストランで提供するなど食文化に一石を投じてきたが、今回発表したのは、豚肉の味を再現した人工肉。主な原料が大豆とは思えないほどに、風味、食感ともに再現している。形状としてはひき肉にあたるため使用できる料理は限られるものの、イスラム教徒など、これまで宗教的な理由で豚肉を食べられなかった人々にも食してもらえる新しい食材として、そのマーケットの広さは計り知れない。
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【CES2020】インポッシブルフーズ 人工肉ハンバーガー 実食レポート!
大手企業のブースに人だかりができる一方で、CESは興味深いアイデアを持ち寄ったベンチャー企業の出展も多い。次回は、
CES2020のベンチャーブースの模様 をお届けする。