スニーカー限定のリセールモデル 米「StockX」が満たしたファンニーズとは? ~デジタルシフト未来マガジン〜

「デジタルシフト未来マガジン」では、オプトグループで新たな事業を創造しデジタルシフトによる変革を推進している石原靖士氏が捉えた国内外のデジタルシフトの最新事例を紹介する。
石原 靖士 -Yasushi Ishihara-
㈱オプトホールディング グループ執行役員
㈱オプト 執行役員

SaaS系の新規事業を立ち上げ・グロース後、事業売却。2015年にオプト執行役員に就任し、エンジニアとクリエイティブの組織を拡大。2019年4月、オプトグループ執行役員に就任し、レガシー業界のデジタルシフトを狙った、顧客との共同事業開発を推進中。
今回は、スニーカーの二次流通を担う「StockX」を紹介します。

StockXは、新品や試着されただけの新古品のスニーカーを売買するCtoCのマーケットを運営しています。いわゆる「リセール」市場ですね。ただのCtoCサービスではなく、販売されるスニーカーが本物かどうかの鑑定や状態の確認をしたり、二次流通での価格の推移を公開したりと手厚いサービスを提供しています。

ちなみに日本のスニーカー市場も1990年代をピークに縮小していましたが、2010年代に入って右肩上がりに伸び、現在は90年代のピークを越える勢いで成長しています。世界的には、ナイキとアディダスの2強で、ナイキのスニーカーの売上は約2.5兆円、アディダスが約1.5兆円、日本発のアシックスは約3000億円という巨大市場です。

ここにStockXはどんな商機を見出したのでしょうか?

StockXとは?

StockXは2015年、プレミアムスニーカーの時価のデータベースを運営していたジョシュ・ルーバー氏が創業しました。

StockXはスニーカーを売りたい人と買いたい人とをマッチさせるマーケットサービスですが、ヤフーオークションやメルカリとは少し仕組みが異なります。

販売者は直接購入者に商品を送るのではなく、一度StockXにスニーカーを送るのです。StockXの鑑定士が販売者から送られてきたスニーカーが本物かどうかを確かめ、商品の状態を調べます。本物と鑑定され、状態に問題のないスニーカーのみがマーケットで販売されるのです。販売されるスニーカーには、StockXのロゴがあしらわれた緑のタグが添えられ、StockXによる鑑定済みを証明します。StockXには毎日数千足のスニーカーが届き、流通量は1日で約2億円を越えるほどです。

また、購入者は販売者が設定している値段が適切かを判断するために、同じスニーカーの過去の価格推移や流通数などのデータを見ることができます。そのため、今このスニーカーを買うべきかどうか、納得して決められるのです。

StockXには毎日数千足のスニーカーが届き、流通量は1日で約2億円を越えています。

StockXのビジネスポイント

StockXのビジネスは、ボリュームのあるスニーカーファンの課題を的確に解決したところにあります。

そもそもStockXはなぜ、わざわざ一度商品を取り寄せ、鑑定までするのでしょうか。これにはスニーカーファンが抱えてきた「課題」が関係しています。

一部のプレミアムスニーカーは、購入するために長時間並ぶ必要があったり申し込み抽選で外れたりと、人気商品でも「買い逃し」が頻繁に発生します。買い逃したスニーカーファンは転売品を買うことになるため、もともとCtoCのマーケットは存在していました。しかし、転売品の中にはニセモノも存在しており、希少価値の高い高額な商品を買い、届いたらニセモノだったというケースも発生していたのです。ここにスニーカーファンの課題がありました。つまり、スニーカーファンは「二次流通でも安心して取引できる場」を求めていたのです。

そこでStockXは、鑑定という手間のかかる作業をあえて挟むことで、「本物しか販売していないマーケット」を作り出し、見事にスニーカーファンの課題を解決しました。スニーカーファンは世界中に一定数存在しており、市場規模も順調に拡大しているのです。

・ブランドも認める「二次流通」市場

スニーカーファンのニーズを見抜き、成長を続けるStockXですが、スニーカーを製造、販売している各ブランドは、このような「二次流通」市場をどのように捉えているのでしょうか。実は、StockXのような二次流通市場は、スニーカーブランドにとってもメリットがあると言われています。

カラクリはこうです。二次流通市場でファンがスニーカーを売買することで、希少価値の高い「プレミアムスニーカー」の存在が明らかになります。ブランドだけではリーチできていなかった層の認知を獲得できるとともに、ファンにとってみれば、価値が可視化され、次のスニーカーを買い増すモチベーションに繋がります。

さらに、スニーカーがコアなファンの手に届くことで、SNSなどで発信され、ファンがブランドのインフルエンサーとして機能します。

このような点から、二次流通市場が活性化することが、結果的にスニーカーブランド自体の売り上げ拡大にも繋がると考えられているのです。

日本の先を行くCtoCモデル

StockXはコレクション要素の強いスニーカーを、まるで株式市場の金融商品の様にダイナミックプライシングで「売り/買い」出来るビジネスをつくり急成長を果たしました。

日本では、2次流通の価格釣り上げを「転売」とし、規制する動きが強いですが、世界では「転売」を「金融」と再定義し、一般的に普及している上に、ブランド自身もこういったメディアをうまくマーケティングに活用しているのです。

日本のCtoCモデルには、まだまだ成長の余地があります。

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