農業用ドローン、日本の農業の未来を救うのか?
2020/1/17
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問題解決に対応していたバイオテクノロジーの開発は、さまざまな改良を重ね進められましたが、最近は停滞状況にあり、農業業界では新たに対応できる手段が求められています。
そんな中、新たな担い手として、農業用ドローンに注目が集まっています。今回は農業用ドローンにスポットをあて紹介していきます。
農業用ドローンとは?
農業用ドローンの登場により作業を効率化し、農業従事者の負担を軽減することができます。
農業用ドローンのメリット
農業人口の減少・高齢化など、農業業界における諸問題は深刻です。このような諸問題に対応する手段となるのが農業用ドローンです。少ない人手で農作業を効率良く進めることが可能になりました。
農業用ドローンのメリットを紹介します。
■ コストダウン
これまで農業用無人ヘリコプターで行っていた農薬散布を、ドローンで行えます。導入費用や点検費用が、ヘリコプターよりも安価に抑えられます。
■ 軽量・コンパクト
従来の農業用重機では難しかった狭い場所や奇形地域での作業も可能になります。コンパクトなサイズなので、格納場所にも困りません。
■ 簡単なコントロール・夜間飛行可能
パソコンやスマホに接続し、ルートを指定して飛ばすだけです。夜中でも作業が可能です。
■ データ管理
作業の工程や農作物の状態を記録し、データで管理することができます。"
農業用ドローンを使用するには
農作業に大きなメリットをもたらすドローンですが、利用するにはどうすればいいのでしょうか。農業用ドローンを使用する際の注意事項を解説します。
ドローンの操縦に特別な免許はありませんが、国への申請が必要になります。農薬散布に利用する場合「危険物の輸送」と「物の投下」2つを申請します。農薬は劇薬という扱いになり危険物とされ、散布は物を投下するということから2件の申請が必要になります。
この申請には、ドローンの知識と10時間以上(約5回以上)のドローンの飛行経験が必至とされています。今は農業用のドローンスクールもあるので、専門的な知識・飛行技術を学ぶことができます。
また、農林水産航空協会が認める「農薬を散布する小型無人飛行機(ドローン)操作の認定制度」で資格を取ることができます。
活用事例
農林水産省が発表した農業用ドローンの活用事例について、導入経緯やメリットを見ていきましょう。
【農薬散布:福井県越前町】
委託していた水稲への航空防除にかかる費用の負担が大きかったため導入
・必要に応じ適期防除が可能になり、病虫害の発生が少なくなり、収穫量も向上・農薬費の削減が実現
・作業時間も効率化
【農薬散布:長崎県西海市】
無人ヘリでは中山間地への適期防除や臨機防除が難しいため導入
・小型で軽量なドローンにより不正形・狭小圃場への農薬散布が可能に
・無人ヘリと連携し防除作業の効率化
農業用ドローン、気になる費用は?
車と同様に任意保険加入や定期点検は必要です。任意保険は加入プランにもよりますが、16,000円からあります。農水協認定機体は年に一度の定期点検が必要です。整備工場によって違いもありますが、点検費用の相場は10,000円~行えます。
代表的な農業用ドローンを紹介
多くのメーカーも参入し始め、高性能化が進む農業用ドローン、初心者にも好まれる代表機体を紹介します。
1. AGRAS MG-1(DJI社製)
広範囲に均一な農薬散布ができ、操縦もしやすくドローン初心者におすすめです。
価格:180万円前後、(購入時に1年間の対人・対物の賠償責任保険がセットになっています)
機体幅・重量:150cm・9.5kg
2. DAX04(TED社製)
日本初、農林水産航空協会から認定を受けた農業用ドローンです。8~10分で1ヘクタールの農薬散布ができます。飛行中に出るモーター音も制御され騒音対策設計になっています。
価格:255万円前後
機体幅・重量:163cm・16.6kg
3. TSV-AH1(東光ホールディングス社製)
小型・軽量なサイズで、低空飛行、0.5ヘクタールの農薬散布ができます。モーター駆動で音が静かな設計になっています。
価格:約120万円、低コストスタートで始めたい方にもおすすめです。
農業用ドローンに使える補助金・融資制度
ドローン導入費用で躊躇される方にもおすすめな、農業用ドローンにも使える国や自治体から交付される制度について紹介します。
■ 「強い農業・担い手づくり総合支援交付金」農林水産省管轄
地域活性のため次代の農業の担い手を育成し、経営向上のために必要となる農業用機械・施設の導入などをサポートします。
1. 先進的農業経営確立支援タイプ
2. 地域担い手育成支援タイプ
■ 「人材開発支援助成金」厚生労働省管轄
農業用ドローンの技術を学ぶための講習費用などの一部が助成されます。受講後の清算になります。
■ 「スーパーL資金」日本政策金融公庫管轄
認定農業者が、経営改善のために必要な資金を長期間(最長25年)・低金利で融資します。農地・農業用機器購入などの際にローンが組めます。融資限度額は、個人3億円・法人10億円となっています。
公募期間や申請に必要な条件などもありますから、詳細は管轄先のホームページなどをチェックしてください。
農業ドローンの今後の課題
ドローンを飛ばすため、さまざまな法律による規制があり、人手不足の解消と業務効率化のブレーキになっています。国も農業でのドローン活用普及を推進しているだけに、一部の法律は改善・緩和されてきました。
航空法:操縦者の他1名の義務付けが不要になりました。
農薬取締法:検査の一部を不要にし、ドローンで使用できる農薬の種類を増やしました。
携帯電話でもドローンが活用できる電波は制限があります。現在はこの電波法の改善のため総務省の検証が待たれています。
ドローンによる農業現場の技術革新
農業用ドローン活躍の範囲は
農業用ドローンの普及は、農薬散布以外にも、さまざまな農作業での活用に向け技術革新が進んでいます。労働作業の軽減・生産の効率化・コスト削減に向け大きな期待が寄せられています。
1. 肥料散布:農薬散布同様、効率良い肥料散布と地力(ちりょく)ムラが少なくなります。
2. 播種:空中から散播することで、種まきが難しかった中山間地域等でも短時間で行うことができます。
3. 受粉:果樹農園で行われる人工授粉を、ドローンで花粉を散布することで作業が効率化します。
4. 農産物の運搬:ドローンにコンテナを付け、圃場から集荷場を往復させることで、高齢化の進んだ農業従事者の負担を軽減します。
5. 圃場センシング:圃場の状況をドローンで空撮し画像を分析することで、生育状態や病害虫を瞬時に確認できます。
6. 鳥獣被害対策:ドローンからの空撮により、鳥獣生息の把握と捕獲の場所を特定します。
農業用ドローン拡張指針とは
農業業界に関わる深刻な諸問題への対応策として進められた農業用ドローンは、急速な需要と発展が求められています。
農林水産省も2022年を1つの目途に、さまざまな農作業に適応するドローンの開発・技術革新をサポートし、実用化レベルの実現を目指しています。
農業用ドローン拡張に向けての対策
「官民協議会」の設立
農業用ドローンを利用する農業者と機体を提供する民間企業、サービス事業者、開発・技術提供者、関係省庁などを取りまとめた協議会が設立されました。農業現場や開発・技術、さらに法規制などの情報を共有し、農業用ドローンの普及と実用化を促進することを目的とされています。
各団体の連携や協力をもとに、農業用ドローンを安全に利用できる仕組みを確立していきます。
農林水産省は、農業用ドローンの地方説明会を20回以上開催すると計画されています。
法の規制緩和や後継者の育成などの課題はあるものの、農業用ドローンの活用は日本の農業に明るい兆しを見せていると言えるでしょう。"