「次世代のAI」の開発へ。AI開発・コンサルティング企業「株式会社Ridge-i」 〜IPOから読み解く、デジタルシフト #8〜

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多くの企業が目標の一つとして掲げ、憧れ、夢を見る言葉、「上場」。これを達成した企業は資金調達の規模が大きくなり、さらなる挑戦ができるとともに、社会的に認められたという箔が付く。何百万社とある日本企業のなかで、上場企業は約3,800社。非常に狭き門を突破した、選ばれし企業たちだ。
本記事では、デジタルシフトを実現しながら新規上場を果たした企業に焦点を当てていく。今回は、AI事業を手がける「株式会社Ridge-i」を取り上げる。同社は、2023年4月26日に東証グロース市場に上場した。初値は4,445円で公開価格の1,750円を上回った。

AI開発・コンサルティング企業「株式会社Ridge-i」とは

Ridge-iは、2016年に創業された、AI活用のコンサルティングやAI開発を手がける企業だ。AI活用やDX戦略について、プランニングから実際の開発、さらにDX人材の育成プログラムまで一気通貫で取り扱うことを強みとしている。また、同社が開発したAIのプログラムや利用ライセンスの提供、人工衛星データのAI解析などもサービスとして提供している。クライアントには、トヨタやNTTドコモ、三菱商事など名だたる企業が並ぶ。

実際に携わったAIソリューションとしては、白黒フィルムのカラー化や、ゴミの種類を認識するAIクレーンなどがある。従来、白黒フィルムをカラーにする作業は、静止画を1枚ずつ人間の手で彩色しており膨大な時間がかかっていたという。そこにAIを活用することで作業工数が60%削減された。AIによってカラー化された映像はNHKで放送された。また、貯蔵されたゴミの写真を撮影し解析することで、AIがゴミの種類を自動で判別するシステムを構築した。これにより自動運転時間が4倍に向上し、保守作業以外はほぼ自動での稼働が可能になった。

Ridge-iは、2022年7月期の売上高が約9億6,800万円で、営業利益は約5,600万円だった。2023年7月期は第2四半期累計で売上高が約4億3,700万円、営業利益が約8,300万円となっている。

順調に進まない日本のAI/DXプロジェクト

Ridge-iの創業の背景には、AIやDXというトレンドの高まりとともに生まれた課題の存在がある。技術の進歩に伴って、AIやデータの活用が進む一方、AI・DXのプロジェクトは順調には進まないケースも見られる。そこには、プロジェクトの発注側と受注側の認識の齟齬や、受注側のなかでもプランニングと実装が別々に行われることで、溝が生まれてしまうことなどが原因としてあるという。同社は経済産業省の調査をもとに、日本のAIプロジェクトの成功率が3%と非常に低く、AI導入が進んでいないことを指摘している。そこで、AIやDXのプロジェクトを推進し成功へ導くために、ビジネスの専門家と技術の専門家の両方を備え、プロジェクトをワンストップで進める体制を整えたとのことだ。

時代の波となった「生成AI」

ここ最近、AI業界ひいてはテクノロジー業界を席巻している話題は、ChatGPTをはじめとする「生成AI」だ。Ridge-iでも、中長期の成長戦略においてAIマーケットの動向として「生成系AIの台頭」を挙げるなど、注目している様子がうかがえる。実際に同社では、2023年4月にChatGPTを活用し、Slackから対話形式で利用できるFAQツールの提供を開始した。さらに、2023年5月には社内で「ChatGPT Plus」を導入したと発表している。

同社は、現在のAIの課題として「単一の種類のデータが対象」「AIの出力結果がアクションにつながらない」などを挙げており、これらの課題を乗り越えるために、「次世代のAI」の開発に注力している。そして、その「次世代のAI」のなかには生成AIも含まれている。2022年末から始まった生成AIの波に乗り、同社も含めたAI業界全体が注目されているが、AIの専門企業として、その真価が問われるのはこれからだろう。

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