DX戦略

早く、安く、簡単に実現するファストDXとは?オプトデジタル×LINEで仕掛ける顧客接点のデジタルシフト

4月1日、ファストDXカンパニーとして、株式会社オプトのもとに設立されたデジタルシフトにおけるモノづくり会社「株式会社オプトデジタル」。その代表を務めるのが、これまで損害保険業界で自らデジタルシフトを推進してきた代表取締役の野呂健太氏です。同社が掲げるファストDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何なのか? 同社の事業に深いかかわりを持つ、LINE株式会社から、プラットフォーム事業開発室マネージャーの高木祥吾氏をお招きし、二者が描く顧客接点のデジタルシフトを紐解いていきます。

ファストDXによりクライアントのデジタル化に貢献

―まず始めに、オプトデジタルの事業内容を教えてください。

野呂:ミッションに「企業のデジタルシフトを柔軟さと実行力で実現する」を掲げており、LINE社とともに、受託開発と、自社で提供予定のSaaS開発の大きく2つの事業に取り組んでいます。

受託開発は、大企業からご依頼いただくケースが多いです。特に最近は、新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークが広がり、コールセンターの運営方法を変えようとする企業様が多く、LINEを活用したチャットサービスやオンライン受付サービスを導入できないかとご相談いただくケースが増えています。

私自身が、もともと大手損害保険会社でデジタルシフトをプロジェクトリーダーという立場で主導していたという関係で、金融業界に強いという特徴もありますね。

特にこだわっているのは、開発にアジャイル方式を採用していることです。アジャイル開発とは簡単に言うと、例えば新しいサービスを開発する際、まずは必要最小限の機能を実装させた状態で世に出し、ユーザーからのフィードバックを受けながら改善を重ねていく手法のことです。IT業界では当たり前の手法かもしれませんが、意外と大手企業などにおいては、まだこの手法がうまく馴染んでいないのが現状です。

アジャイル手法を取り入れる背景として金融業界などは特に、サービスの要件定義だけでも何ヶ月もかかり、いざ開発に着手しても1~2年など長い期間がかかる傾向があります。しかし今、世の中の変化は早く、2年前に考えたサービスのあり方はリリース時には廃れてしまっていることもあります。
また結局のところ、ユーザーのニーズが多様化している現代ではモノは出してみないと本当に受け入れられるかどうかは分からないというのも、スピーディーな開発を心がける理由の一つです。アジャイル開発では世にサービスを出すという作業を必要最小限のコストとスケジュールで実現できます。初期段階では機能が絞られていても、リリース後に地道に改修を続けることで、結果としてユーザーの声を最大限取り入れた大きなサービスとして育っていくわけです。
このあたりの軸となる考え方は損保業界で実際にデジタルシフトを推進してきた私の経験を踏まえてのものとなります。その分、クライアント企業とは密なコミュニケーションが必要ですし、息の長いお付き合いとなりますね。

このようにスピード感ある開発で、デジタルシフトを進める手法を我々はファストDX(デジタルトランスフォーメーション)と名付けました。ただ、これにはアジャイル開発だけでなく、LINEのようなプラットフォームの活用が不可欠と考えています。
高木:LINEが企業のデジタルシフトに効果的である理由は、大きく3つのポイントにあると思っています。

1つ目は、LINEは国内で月間8,400万人以上(2020年3月時点)のユーザーに使ってもらえているので、それを活用すれば新しいアプリケーションをインストールいただく手間が省けるということです。2つ目は、開発コストが軽減できる点です。利用画面などのUXを一から作る必要がないのが良い点だと思います。3つ目は、ユーザーからすると毎日使い慣れたインターフェースなので、同じような操作感で新しいサービスがリリースされれば、利用に対するハードルがすごく下がるということです。

LINE社でも、数年前から「プラットフォームのオープン化戦略」に取り組んできました。LINEのAPI(※)を公開し、多くの企業にLINEのさまざまな機能を活用いただきたいと考えていたのです。

※ソフトウェアの一部を公開して、第三者が機能を拡充したり、外部のアプリケーションを連携させたりできるようにする仕様のこと

その結果、企業から個人まで多くの方々からご活用いただけるようになりました。しかし、利用の範囲はビジネスの一部にとどまっているケースも多く、お客様のビジネスモデル全体に影響を与えるようなデジタルシフトという文脈でLINEを活用いただくケースはまだまだこれからだと思っています。オプトデジタルのような、クライアントの課題を把握したうえでLINEの活用方法を考えるパートナー企業に入ってもらうことで、この領域でのLINE活用も進んでいくと考えています。

野呂:我々はよく「生々しく」と呼んでいるのですが、デジタルシフトの実現に向け、泥臭く歩みを進められることが強みだと思っています。

デジタルシフトは、具体的なソリューションが世に出てからがスタートです。我々は、机上で絵を描くだけで終わるのではなく、モノづくり集団としてソリューションの開発までサポートできるところが強みだと思います。

また、私自身が前職でデジタルシフトに関するプロジェクトを担当しており、その経験からクライアントが抱える課題やニーズを理解しながら伴走できることも強みだと思います。

―実際に、受託開発を行うなかで気をつけているポイントはありますか。

とにかく、スモールスタートさせることです。

特に大企業は、何か始めるとなると、社内のたくさんの関連部門との調整が必要になります。ようやく各所から了承がもらえ、いざ開発に向けて動き出し始めても、具体的にサービスを作る過程で「この機能はいらない」「この機能は追加してくれ」と細かい要望がたくさん出てきます。

そこで大事になるのが、必要最小限の幹となるサービスだけをユーザーが使いやすい導線上に置いていち早くリリースしていくかです。そういった手法をとることでエッジを立てたまま、当初のコンセプト通りのサービスを送り出すことができます。また、早く出すことで、ユーザーの反応を獲得し、評価を受けることで、サービスの質も改善されていきます。そのうえで次に追加する機能の枝葉のイメージもふくらんでいくのです。そのための手段として、LINEの活用は有効的です。

高木:LINE社としても、大企業からデジタルシフトのためにご活用いただけることに力を入れたいと考えています。あらゆる業種の企業に、もっとLINEを使って欲しいと思っていますが、特にこの分野は他の領域に比べてパワーが必要だと思います。

これからのカスタマーサクセスのあり方に対応するために

―現在、オプトデジタルがサービスを提供するうえで、注力している領域はありますか?

野呂:コールセンター業務の代替など、企業における契約者向けのカスタマーサポートの領域でのソリューション提供には注力しています。まだこの分野はLINEの展開の可能性が大きく残されていると考えています。

高木:LINE社でもカスタマーサポートの面で、LINEをよりご活用いただきたいと考えていて、そのためのAPIも数年前から出しています。カスタマーサポートと呼ばれる業務は企業によって様々ですが、ユーザーがより企業とカジュアルにコミュニケーションをとるためのツールにLINEを組み込んでもらうと価値を提供できるのではと考えています。

―新型コロナウイルス感染症の影響で、新しく生まれているニーズなどあれば教えて下さい。

野呂:対面の商談をオンラインで出来ないかと相談されるケースは増えましたね。また、オフィスで行なっていた電話や郵送などの業務が遠隔でできないかと聞かれることも多くなっています。

高木:新型コロナウイルス感染症に関するアンケートの配布(参考:https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2020/3208)など、インフラとして厚生労働省を始め、行政や自治体などとLINEが連携させていただく機会が増えました。また以前から取り組んでいたものではありますが、学校現場において、保護者と教職員の連絡手段にLINE公式アカウントを活用するサービス(参考:https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2020/3112)の開発もより加速しています。

また、飲食店など店舗の経営をサポートするための機能開発や施策が急速に進んだのもここ数ヶ月の傾向です。(参考:https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2020/3184

オプトデジタル×LINEでデジタル化が難しい領域にも踏み込みたい

―オプトデジタルの親会社であるオプトには、4月1日にLINE Innovation Centerという組織も設立されていますね。こことの協業関係について教えてください。

野呂:LINE Innovation Centerは新しいサービスの種をLINEさんと一緒に育てていくことを目的に、親会社である株式会社オプト内に設立した組織です。すでにいくつかのサービスが生まれつつあります。

立ち上げた背景には、クライアントのご要望をLINE社に共有し、新しい機能開発のためのコミュニケーションを行いたかったことがあります。

基本的には、限られた機能の中でプラットフォームをどう活用するのかが我々の仕事だと思っています。しかし、クライアントに伴走してソリューションを作っていると「LINEってこんな機能はないの?」といった要望をよく伺います。そんなご要望を元に、LINE社に対して、新機能をご提案することができるのがLINE Innovation Centerです。

LINEの上手な活用の仕方を模索しつつ、クライアントの要望もお伝えすることでお互いにサービスの質を高め合える関係を築ければと思っています。

高木:我々としても、クライアントのご要望を伺えることで、プラットフォームの磨き込みができます。また、オプトデジタルと一緒に開発したソリューションは、特定の企業への提供のみに留めるのではなく、他業界に横展開していくことも可能だと思っています。

―最後に、両社の今後の展望を教えてください。

高木:LINEとしては、プラットフォーム自体の底上げを行いたいです。プロダクト自体をより便利にすることはもちろん、我々のプラットフォームを活用いただくパートナーとの協力体制もより強化していきたいですね。

そのためには、APIの公開だけでなく、世の中のニーズを把握し、適切なサービスを、適切なタイミングで、適切なクライアントやパートナーさんに提供する必要があると思っています。そのバランスはオプトデジタルとも一緒に調整できると良いですね。

加えて、企業のデジタルシフトに貢献し、ユーザーのライフスタイルを変えるようなサービスの創造にも取り組んでいければと思っています。

野呂:オプトデジタルとしては、金融機関を中心にカスタマーサポートの点で企業やユーザーにメリットのあるサービスを提供させていただいている実績があります。

今後もLINE社と協力し、さらに我々のノウハウでご支援できる業種、業界を広げていくこと、その上でLINEを顧客接点のフロントシステムとして使いながら、企業の顧客基盤との連携を実現する部分まで踏み込んでサービスを提供していきたいと考えています。また、サービス提供の在り方としても、対一企業の受託開発ではなく、SaaS型のサービスを展開し、一気に特定業界・業種のデジタルシフトを推進していく構想もあります。結果としてそれはwithコロナ時代の企業の顧客接点を変革する可能性もあるかもしれません。

今後もLINE社と協力しつつ、泥臭く「生々しい」デジタルシフトサポートを行い、クライアントのイノベーションに貢献していきたいです。
LINE株式会社
マーケティングソリューションカンパニー
広告事業本部 プラットフォーム事業開発室
マネージャー
高木祥吾

2012年日本オラクル株式会社に入社。コンサルタントとして業務用パッケージソフトウェアの提案および導入に従事。米国本社と協業して担当製品の開発領域などにも携わる。2017年LINE株式会社に入社。大手クライアントを中心にLINE APIの導入支援を担当。2018年よりテクノロジーパートナーとのアライアンスを担当し、現在はAPIを活用した新しいサービスの企画などオープンプラットフォームとしての事業全般を推進している。
株式会社オプトデジタル
代表取締役
野呂 健太

大学院卒業後、2011年株式会社NTTドコモに入社。経営企画部門にて事業計画立案に携わる。その後dポイントの立ち上げ、プロモーションを経験。2017年より損害保険ジャパン日本興亜株式会社(現:損害保険ジャパン株式会社)にて新規サービス創出に取り組み、「LINEによる保険金請求サービス」「SOMPO AI修理見積」においてプロジェクトリーダーとして企画を立ち上げる。その他在籍3年弱で約20のプロジェクトを世に送り出す 。2020年、株式会社オプトデジタルの設立とともに代表取締役に就任。(現任)

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