DX戦略

高血圧治療は遠隔患者モニタリングの時代!? オムロン ヘルスケアに聞く、遠隔診療サービスおよびバイタルデータにより変わる医療

日本の高血圧患者は約4,300万人と推定されており、今や日本人の3人に1人が高血圧といえる状況です。オムロン ヘルスケアは、高血圧により引き起こされる脳卒中や心不全などの脳・心血管疾患の発症ゼロを目指して、スマートフォン健康管理アプリ「オムロンコネクト」による家庭で測定したバイタルデータを活用した疾病予防や治療の推進に力を入れています。
これまでアナログ主体だったバイタルデータの管理をデジタル化することで、患者にはどのようなメリットが生じるのでしょうか。オムロンコネクトの事業企画責任者を務める船尾 公喜氏と広報部の富田 陽一氏にお話を伺いました。

ざっくりまとめ

ー オムロンコネクトは日々の健康管理を目的としたスマートフォンアプリ。アナログ主体だった血圧の記録などもデジタル化することで医師との効率的な共有が可能となり、より適切な治療に活かせる。

ー オムロン ヘルスケアのウェアラブル血圧計は国内で唯一、医療機器として認証を受けた腕時計型の血圧計。24時間のうちに気になった時にいつでも血圧を測定できるので一日の血圧変動が分かるようになり、これまで以上に綿密な体調管理が可能に。

ー アメリカやイギリスなどでは家庭で測定したバイタルデータを医師と共有する遠隔診療サービスがはじまっている。北米では血圧値が改善した事例や、治療費が低減した事例も。

ー データを活用した医療で高血圧による脳卒中や心不全などの命に関わる脳・心血管疾患の根絶を目指す。

血圧・体重・基礎体温。さまざまなデータがアプリで共有可能に

――オムロンコネクトの概要と利用状況について教えてください。

船尾:オムロンコネクトは当社の健康医療機器で測定したデータを転送して、毎日の健康管理ができるアプリです。現在リリースされている他社製の健康管理や食事管理、生活習慣病予防や遠隔診療などのアプリとも連動できるようになっています。対応している健康機器は血圧計、体重体組成計、体温計、パルスオキシメータなどがあります。オムロンコネクト全体では、おおよそ20代後半から60代前半の方がメインユーザーで男女比はほぼ半々、週3日以上利用する方が6割を占めています。日々測定したデータを転送すればグラフ化されるので、体重であれば順調に減っているのか、血圧であれば基準値と比較してどうなっているのかが一目で確認可能です。

――オムロンコネクトで管理しているデータを医師と共有することで、患者にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

船尾:オムロンコネクトには毎日の血圧を管理する「かんたん血圧日記」という機能があります。朝と晩の血圧を測って記録するとともに、その日の歩数や食事などの生活のログを残すことができます。これにより、血圧に影響を与えている生活習慣が見えてくるので、よりよい血圧コントロールの役に立ちます。データを紙として出力すれば手書きの血圧手帳と同じ感覚で診察時に医師と共有できます。一般的に血圧は睡眠中が低く、起床前後に徐々に上昇していきます。しかし、人によっては起床後に極端に血圧が上昇する人もいます。また前日の飲酒などの外部要因にも影響されます。病院では把握できない血圧の変化を医師と共有することで、高血圧治療に役立ちます。

データの活用方法には、治療目的で医療従事者に診てもらうケースと、生活習慣を改善するために保健師さんなどに診てもらうケースがあります。高血圧の治療ではもちろん血圧のデータが必要ですが、肥満は血圧を上昇させる要因にもなるので、体重のデータも重要になります。また、心疾患の予兆を捉えるには心電図のデータが、生理不順やPMS(月経前症候群)など婦人科系の診療では基礎体温が、生活習慣を見直す保健指導では体重や日々の活動量などが重要になってきます。このように、目的に沿ったデータを必要に合わせて共有できることが一元管理のメリットの一つです。

――ちなみに、高血圧といわれたらどうしたらよいのでしょうか?

富田:まずは、きちんと医療機関にかかることが大切です。高血圧の方は、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まりますので、普段の生活の中で血圧を適正にコントロールしていく必要があります。しかし、高血圧は自覚症状が少ないので健康診断などで指摘されても放置してしまったり、通院を途中でやめてしまう方がいらっしゃいます。普段から家で血圧を測定し、アプリなどに記録することで自分の血圧の状態や変化を把握できます。また、薬を飲まれている方はそれが効いているかの判断材料の一つにもなります。自分の身体の状態がわかることは安心につながります。また、蓄積された日々のデータは診察時にも役立つと考えています。

ウェアラブル血圧計はスマートウォッチの競合なのか?

――御社のウェアラブル血圧計の利用状況とユーザーの反応について教えてください。

船尾:主な利用者はオムロンコネクトのメインユーザーと同じ世代である40代~50代が多いです。購入者の方にインタビューをすると、健康感度が高く普段は据え置き式タイプの血圧計を利用しているけれど、もう少し詳しく自分の血圧を知りたいという理由で買われていく方が多いですね。日常生活で主に血圧を測るシーンというのは、家庭で朝晩の定期測定、医療機関で測るといった場面ですが、腕時計のように手首に巻いて測定するウェアラブル血圧計があれば、それ以外の場面でも手軽に測定することができます。点ではなく線として血圧変動が分かるので、日中の血圧はどのように変化しているのか服用している薬がどの程度効いているのか、より詳しく把握することで治療に役立てていただきたいです。

――このウェアラブル血圧計はスマートウォッチの競合になると考えてよろしいのでしょうか?

富田:当社のデバイスは血圧計ですので目的や提供価値を考えるとスマートウォッチとは異なります。本来「血圧計」は医療機器ですので、きちんと医療機器認証を受けた製品である必要があります。現在では国内で「血圧計」として医療機器認証を受けた腕時計型のウェアラブル血圧計は当社の製品のみです。

――患者のなかには病院に行くだけで血圧が高くなってしまう、白衣高血圧と呼ばれる症状の方もいるとお聞きしました。

船尾:高血圧の治療ガイドラインでも家庭血圧が診察に使われています。医療機関で測定した時に緊張してしまって血圧値が高めにでてしまう人がいます。そのような方でも家庭で測定した普段の血圧データがあれば医師に自分の身体の状態を伝えることができます。

進む海外での遠隔診療。導入から2年で具体的な成果も

――すでにアメリカやイギリスではITを使って家で測定した血圧データを医師と共有して、遠隔診療に役立てているそうですね。

富田:当社が提供しているのは、患者さんが家で通信機能付デバイスを用いて測定したバイタルデータを電子カルテなどと連携して医療従事者と共有できる遠隔患者モニタリングサービスです。当社が遠隔患者モニタリングサービスをリリースしてまだ2年ほどです。その中でも北米の事例では、遠隔モニタリングサービスを一定期間継続した患者さんの血圧値が改善した、治療費が低減したというデータが出ています。また、イギリスでは家庭での血圧データを活用した投薬提案の支援サービスを展開しています。

――それらの国に比べて、日本における遠隔診療は遅れているイメージがあります。

富田:国やエリアによって医療を取り巻く環境が異なります。日本の医療制度に合った遠隔診療やデータ活用は今後どのようになるのか注視していく必要があると考えています。

データ共有および遠隔診療で、生活習慣病治療はどう変わるのか

――オムロンコネクトをはじめとするデータと、オンラインと診療を結びつけた方法で日本の医療をどう変革させたいとお考えですか? 今後の展望を教えてください。

船尾:オムロンコネクトをできるだけ多くの方に使っていただくには、当然アプリ自体の進化が必要です。ユーザー数が増えれば増えるほど、ノウハウがたまり多くの人にとって使いやすく価値のあるアプリになります。まずはそういったサイクルを大きくしていくことが私たちのミッションです。また、生活習慣病の治療にデータを活用することは非常に効果的だと思います。日々、家庭での数値の変化を記録していれば、医師の介入が必要なタイミングも分かります。血圧が安定してコントロールできている患者さんは普段どおり薬を飲み続けてもらい、よりリスクが高い患者さんには医師が介入する。これは患者さんと医療従事者の双方にとって大きなメリットがあるので、今後グローバルで拡大していくことを期待しています。

当社は「ゼロイベント」という事業ビジョンを掲げています。イベントとは、脳卒中や心不全などの命に関わる脳・心血管疾患の発症を指します。高血圧や心疾患の早期発見、タイムリーな医療介入がおこなえる環境をつくりだすことによる「ゼロイベント」の実現を私たちは目指しています。
船尾 公喜
オムロン ヘルスケア株式会社
循環器疾患事業統轄部 アプリ事業企画部 部長

オフィス用品メーカーにて、一貫してマーケティング業務に従事し、幅広い商品カテゴリーの企画・異業種との協創・店舗運営・新規ブランドの立ち上げなどに携わった後に、オムロン ヘルスケアに入社。血圧計・体温計などの健康機器やアプリ企画のマネージメント、新規サービスやコミュニケーションデザインなどを担い、現在はオムロンコネクトを中心としたグローバルアプリ事業企画を推進する。Red dot Design AwardやiF Design Awardなど多数受賞。
富田 陽一
オムロン ヘルスケア株式会社
グローバルコミュニケーション統轄部 広報部 部長

オムロン株式会社に入社後、制御機器事業や電子部品事業の販売所属。本社広報部にて社外広報を担当後、2005年よりオムロン ヘルスケア株式会社の広報を担当。営業マーケティング部にて血圧計をはじめ国内で販売している商品全般のセールスマーケティングを担当後、2017年よりふたたび広報業務を担当。

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